今日も今日とて早苗さん
10月11日
寒さも増し初冠雪も観測された頃、私の居る山の神社では寒い居間が食事時の喧騒で満たされている。
旬のさんまを綺麗に食べようと手を尽くしていたがもう諦めよう。右隣に座っている神奈子様は、背骨だけを器用に取り出している。おっかさんは上手だねえ。私はできなくていいや。現代っ子だし。
それよりも言いたい事がある。私は箸を置いて口を開く
「信仰が欲しい」
「え、クリスマスプレゼントのおねだり?ちょっと気が早いよ早苗。まだ秋よ。季節感ないなあ」
「その歳でサンタを信じるのはひくよ、さなぽん。」
…うるさいよ、柱さん。行事の在るなし関係なく年中神様やってるあんたの季節感を心配しろ。外の世界の野菜並に季節感無いよ。蛙さんも黙りなさい。その歳でさなぽんなんてぶりっこしてるあなたにひくわ。里中で呼ばれたら恥ずかしいよ。
「それに信仰は靴下じゃなく心につめるもんだよー。」
「諏訪子うまい事いった!」
だからちょっと黙れ邪神ども。それに上手くない
「神奈子様、洩矢様、私たちはこの山に受け入れてもらえて人里の信仰も山の信仰も少しずつ増えてはいます。早苗教の事を知らない人はもうほとんどいません。しかしまだまだ信者が不足しています。先日買い物に訪れた里では入信率20%でした。」
私の言葉に言いたい事があるのか、おっぱいの大きい方が手を上げる
はい、柱さん、意見をどうぞ
「ついこの前、赤いのと黒白いの相手に大騒ぎしたばかりだよ。充分祈ってもらってるよ。欲張っちゃいけないよ。今あるものでなんとかしないと」
…信仰欲しさに結界超えの転勤までしたリーマンが何言ってんだ。向こうで、はやってた最新鋭の経営プランを知らんのか。融資を受けて支店を開いて将来有望を装いまた融資を受けて支店を開いての無限プランで行くとこまで突き進む自転車操業。行き詰まる前に他人に売却。これでパーフェクトだ。いっぱい聞けていっぱい喋れる会社は売りどころを誤ったのだ。まったく情けない。売却先は、もう一つの神社でいいだろう。巫女のコスプレした脇出し美少女に売ればいい。わざわざコスプレして日常的に巫女服着てるくらいだ。きっと喜んでくれるだろう。
「さなぽんさなぽん、信仰上げるにしたってどのようにするのさー」
「いつも偉そうにあぐらかいて御柱背負ってるのも疲れるんだよ。今でも1日15時間労働なのにこれ以上は無理だよ。」
「…そうですね。確かに無茶を言いました。すみません。」
目の前で微笑んでるお二人の言う事も間違いではないのだ。柱さん・蛙さんはよく働いてくれてる。これ以上残業増やしたらまずい気がする。何せここは幻想郷。「永遠に紅い幼き月」「萃まる夢、幻、そして百鬼夜行」「楽園の最高裁判長」「四季のフラワーマスター」etcこんなファンタジックな二つ名を自称までするメンバーで構成される人外魔境。きっと、「過労死直前の労働基準局長」なんて肩書きの持ち主が居るに決まってる。そして私たちにいちゃもんをつけてくるんだろう。それはまずい。
地道に布教していくしかないか。幻想郷に店舗を開いてまだ2ヶ月。焦る事もない。私は少し寂しさを覚えながら、頭を下げて言葉を続ける
「神奈子様、洩矢様、これからもよろしくお願いします」
「まかせて!がんばって柱背負うから!」
「あーうーうー」
柱さん、空気読め。しんみり決めさせろよ。蛙さん、あなたは紅魔館の館主とデュエットでも組んでなさい。
「けど、サンタが信仰持ってきてくれるかも知れないよー。クリスマス明けには人里支部が100店舗超えてたりしてねあーうー」
…無理に語尾を付けるな。だいたいサンタ信じてたらひくって言ったでしょう、あなた。
そう思っていると、柱さんまでも真面目な顔で口を開く
「そうね。だって幻想郷だし」
…それは確かに否定しがたい。
12月24日
私はお風呂上りの火照った体に吹き付ける夜風を我慢しながら自分の寝所へと歩いている。この2ヶ月、頭の中にはいつも神奈子様と洩矢様の言葉が残っていた。「サンタが信仰をもってくるかもしれないよ」「だって幻想郷だし」…そうなのだ。ここは外の世界で忘れられたものが辿り着く場所。もし、昔はサンタクロースが実在して、例えそのサンタクロースが子供を喜ばせようとした父親だったにしてもあるいは本当の人外で長命な白ひげのおじ様だったにしても、彼が寿命を終え亡くなったのならば、今は誰もサンタクロースの実在を信じていない外の世界からこちらに入ってきている事はおかしくない。だから、だから今日の夕方に願い事を書いた紙と靴下を枕もとに置いたのだって気まぐれだ。サンタさんが待ちきれなかったわけじゃない。寝る前に置き忘れるのを恐れたわけでは断じて無い。叶えばいいな。叶わなかったら自分で叶えよう。そう思っている。本心だ。そんな事を考えながら、寝所に通じるふすまを開ける。
「さなえっ」
「さなぽーん!」
「わ、わ、わ」
寝所から神奈子様と洩矢様が飛び出して抱きついてくる。二人ともにこやかに笑っていた。
「ちょ、ちょっと、離れてください。息苦しいです」
恥ずかしくて照れくさくてけど嬉しくて、顔が真っ赤になってしまった私が言ってもきっと意味は無いだろう。
「やだ。早苗、今日はいっしょに寝よう。明日はみんなで大掃除しよう。年が明けたら神社に参拝に行こう。自分のところは味気ないからふもとの神社に。」
「いいたいことあったら言ってね。聞くから。今日だけじゃなく毎日同じ部屋で寝よう。町に買い物に行く時はさそってね。私も行くから。」
「「ずっといっしょにいようね!!」」
足元に私の願い事を書いた紙が落ちている。神奈子様と洩矢様はこれを見たのだろう。---神奈子様と洩矢様にもっと甘えたいです。抱きしめて欲しいです。一人で布教に行くのは寂しいです。私は素直じゃないのは自覚しています。自分では甘える事ができません。だから素直になれるなにかが欲しいです。サンタさんへ--- 改めて見ると思うままに書き連ねて恥ずかしい。私は、二人に抱きつかれて顔を緩めながらそんな場違いな事を思った。
12月25日
次の日起きてみても靴下にプレゼントは詰まってなかったけれど、サンタクロースは来てくれなかったけれど、私の隣には愛しい二人が居てくれた。二人とも気持ちよさそうに寝ている。自分達が居ればプレゼントは十分でしょなんてこじゃれた機転の利く二人じゃない。三人でおしゃべりしながら夜更かししてたら私を驚かすために用意してたクリスマスプレゼントを入れるのを忘れたんだろう。
「もう一眠りしときますか。」
私は、プレゼントを置き忘れた事で文句を言い合いながらじゃれあう二人を想像しながらまぶたを落とした。
10月11日
寒さも増し初冠雪も観測された頃、私の居る山の神社では寒い居間が食事時の喧騒で満たされている。
旬のさんまを綺麗に食べようと手を尽くしていたがもう諦めよう。右隣に座っている神奈子様は、背骨だけを器用に取り出している。おっかさんは上手だねえ。私はできなくていいや。現代っ子だし。
それよりも言いたい事がある。私は箸を置いて口を開く
「信仰が欲しい」
「え、クリスマスプレゼントのおねだり?ちょっと気が早いよ早苗。まだ秋よ。季節感ないなあ」
「その歳でサンタを信じるのはひくよ、さなぽん。」
…うるさいよ、柱さん。行事の在るなし関係なく年中神様やってるあんたの季節感を心配しろ。外の世界の野菜並に季節感無いよ。蛙さんも黙りなさい。その歳でさなぽんなんてぶりっこしてるあなたにひくわ。里中で呼ばれたら恥ずかしいよ。
「それに信仰は靴下じゃなく心につめるもんだよー。」
「諏訪子うまい事いった!」
だからちょっと黙れ邪神ども。それに上手くない
「神奈子様、洩矢様、私たちはこの山に受け入れてもらえて人里の信仰も山の信仰も少しずつ増えてはいます。早苗教の事を知らない人はもうほとんどいません。しかしまだまだ信者が不足しています。先日買い物に訪れた里では入信率20%でした。」
私の言葉に言いたい事があるのか、おっぱいの大きい方が手を上げる
はい、柱さん、意見をどうぞ
「ついこの前、赤いのと黒白いの相手に大騒ぎしたばかりだよ。充分祈ってもらってるよ。欲張っちゃいけないよ。今あるものでなんとかしないと」
…信仰欲しさに結界超えの転勤までしたリーマンが何言ってんだ。向こうで、はやってた最新鋭の経営プランを知らんのか。融資を受けて支店を開いて将来有望を装いまた融資を受けて支店を開いての無限プランで行くとこまで突き進む自転車操業。行き詰まる前に他人に売却。これでパーフェクトだ。いっぱい聞けていっぱい喋れる会社は売りどころを誤ったのだ。まったく情けない。売却先は、もう一つの神社でいいだろう。巫女のコスプレした脇出し美少女に売ればいい。わざわざコスプレして日常的に巫女服着てるくらいだ。きっと喜んでくれるだろう。
「さなぽんさなぽん、信仰上げるにしたってどのようにするのさー」
「いつも偉そうにあぐらかいて御柱背負ってるのも疲れるんだよ。今でも1日15時間労働なのにこれ以上は無理だよ。」
「…そうですね。確かに無茶を言いました。すみません。」
目の前で微笑んでるお二人の言う事も間違いではないのだ。柱さん・蛙さんはよく働いてくれてる。これ以上残業増やしたらまずい気がする。何せここは幻想郷。「永遠に紅い幼き月」「萃まる夢、幻、そして百鬼夜行」「楽園の最高裁判長」「四季のフラワーマスター」etcこんなファンタジックな二つ名を自称までするメンバーで構成される人外魔境。きっと、「過労死直前の労働基準局長」なんて肩書きの持ち主が居るに決まってる。そして私たちにいちゃもんをつけてくるんだろう。それはまずい。
地道に布教していくしかないか。幻想郷に店舗を開いてまだ2ヶ月。焦る事もない。私は少し寂しさを覚えながら、頭を下げて言葉を続ける
「神奈子様、洩矢様、これからもよろしくお願いします」
「まかせて!がんばって柱背負うから!」
「あーうーうー」
柱さん、空気読め。しんみり決めさせろよ。蛙さん、あなたは紅魔館の館主とデュエットでも組んでなさい。
「けど、サンタが信仰持ってきてくれるかも知れないよー。クリスマス明けには人里支部が100店舗超えてたりしてねあーうー」
…無理に語尾を付けるな。だいたいサンタ信じてたらひくって言ったでしょう、あなた。
そう思っていると、柱さんまでも真面目な顔で口を開く
「そうね。だって幻想郷だし」
…それは確かに否定しがたい。
12月24日
私はお風呂上りの火照った体に吹き付ける夜風を我慢しながら自分の寝所へと歩いている。この2ヶ月、頭の中にはいつも神奈子様と洩矢様の言葉が残っていた。「サンタが信仰をもってくるかもしれないよ」「だって幻想郷だし」…そうなのだ。ここは外の世界で忘れられたものが辿り着く場所。もし、昔はサンタクロースが実在して、例えそのサンタクロースが子供を喜ばせようとした父親だったにしてもあるいは本当の人外で長命な白ひげのおじ様だったにしても、彼が寿命を終え亡くなったのならば、今は誰もサンタクロースの実在を信じていない外の世界からこちらに入ってきている事はおかしくない。だから、だから今日の夕方に願い事を書いた紙と靴下を枕もとに置いたのだって気まぐれだ。サンタさんが待ちきれなかったわけじゃない。寝る前に置き忘れるのを恐れたわけでは断じて無い。叶えばいいな。叶わなかったら自分で叶えよう。そう思っている。本心だ。そんな事を考えながら、寝所に通じるふすまを開ける。
「さなえっ」
「さなぽーん!」
「わ、わ、わ」
寝所から神奈子様と洩矢様が飛び出して抱きついてくる。二人ともにこやかに笑っていた。
「ちょ、ちょっと、離れてください。息苦しいです」
恥ずかしくて照れくさくてけど嬉しくて、顔が真っ赤になってしまった私が言ってもきっと意味は無いだろう。
「やだ。早苗、今日はいっしょに寝よう。明日はみんなで大掃除しよう。年が明けたら神社に参拝に行こう。自分のところは味気ないからふもとの神社に。」
「いいたいことあったら言ってね。聞くから。今日だけじゃなく毎日同じ部屋で寝よう。町に買い物に行く時はさそってね。私も行くから。」
「「ずっといっしょにいようね!!」」
足元に私の願い事を書いた紙が落ちている。神奈子様と洩矢様はこれを見たのだろう。---神奈子様と洩矢様にもっと甘えたいです。抱きしめて欲しいです。一人で布教に行くのは寂しいです。私は素直じゃないのは自覚しています。自分では甘える事ができません。だから素直になれるなにかが欲しいです。サンタさんへ--- 改めて見ると思うままに書き連ねて恥ずかしい。私は、二人に抱きつかれて顔を緩めながらそんな場違いな事を思った。
12月25日
次の日起きてみても靴下にプレゼントは詰まってなかったけれど、サンタクロースは来てくれなかったけれど、私の隣には愛しい二人が居てくれた。二人とも気持ちよさそうに寝ている。自分達が居ればプレゼントは十分でしょなんてこじゃれた機転の利く二人じゃない。三人でおしゃべりしながら夜更かししてたら私を驚かすために用意してたクリスマスプレゼントを入れるのを忘れたんだろう。
「もう一眠りしときますか。」
私は、プレゼントを置き忘れた事で文句を言い合いながらじゃれあう二人を想像しながらまぶたを落とした。
あぁかにゃこたまに頬膨らませたまま「やだ。」って言われたい……。(すいません逝き着く先まで行っててすいません)