おつかれちん～死神さんいらっしゃい～作者: 漢字太郎

やあ、最近冷えるねぇ

今日も頼むよ

・・・・・お、なんだ先客がいたのかい

人間かい？

人間がこんなとこに来るたぁ珍しいね

それもこんな暗いってのにさ

あたいも長い間生きてきたけど、こんな夜中に人間と会うなんてそうないよ

なんだってまた？

・・・はっは！ああ確かにここの鰻と酒には、それだけの価値があるねぇ

いや、あんた面白い人間だなぁ

あたい気に入っちゃったよ

大将！こっちにも一つおくれよ！

・・・はいよ、どーも

・・・・・・・・・・・・っぷはー！！生き返るわー！

これがあるから、大変な仕事も辞められないんだよねぇ

ああ、ほんと最高

大将もう一本！あ、あと鰻もね！

え？さ、サボってなんかないよ！

人聞きの悪い！

・・・たまにしか、ね

いや、て言うかなんでそんなこと知ってんだい

あんた、さてはただの人間じゃあないね？

一体何者・・・・・

ああ、いや、どうでもいいか

ここでそんなこと言ってちゃあキリないわ

大方あのカラスの奴が触れ回ってんだろう？

あいつも本当に懲りないからねぇ

あんたも気をつけなよ？

・・・ああ、いい匂いだ

この匂いで、酒がまた一段と旨くなるってもんさね

出来上がってからは言わずもがな

こう二重に旨いってのが居酒屋の醍醐味だ

そうは思わないかい？

・・・う、確かに説教臭いのは居酒屋に良くないやね

こいつは失敬

人間様に言われちゃあ、死神様もカタ無しだ

そうそう、説教と言えば

うちの閻魔様、今日もあたいにお説教してきてさ

あたいはただ休憩時間をほんのちょ～っと過ぎて居眠りしてただけなのに

・・・二時間くらい

そう『いつも言っていますがあなたには死神としての自覚が無さすぎる』って

いや、確かにあたいはよくサボるし、サボらない日も何かと迷惑かけちゃうけどさ

何もそこまで言うことないと思うわけよ

あたいはただ、いつも根詰めてる四季様が力を抜けるように

そう、道化をやってるだけだってのに

あの人はちっともわかりゃしないんだ

まったく堅物なんだから

見た目通り、もっと楽にやったってバチは当たらないだろうに

・・・ていうかそもそも、バチを当てるのはあの人の仕事じゃないか

なぁ？

・・・なぁあんた、あんたならどうする？

例えばあんたの好きな上司がすごく忙しいとする

そう、すごく好きな上司さ

そんな時、あんたはどうやって上司を助ける？

・・・・・その通り

部下は一生懸命に働くのが一番だ

それなのにあたいときたら・・・・・

・・・ああもう！あたいの馬鹿野郎！！

胸ばかり大きくなりやがって！！

脳みそはいつまで経っても成長しないのか！！

この無能死神！！！

・・・・・

・・・・・

・・・・・う

・・・・・うぅ～

・・・うわぁああん畜生～！！

あたいはただ四季様を思って～！！

・・・ほら、あんたは笑えばいいだろう！？

惨めなサボマイスタの死神様をさぁ～！！

わぁぁあああ～！！

・・・・・ヒック、あ、ありがと（ズズ～）

・・・あんた、優しいんだねぇ

ごめんよ、あたいとしたことがつい酔っちまって

・・・・・そうだね、あたいがこんなとこで泣いてても四季様のためにゃならない

そんな暇があったら一人でも多くの魂を運べってんだ

・・・よし！じゃあ今からまた戻って、もう一仕事してくるかね！

ん？ああ、もちろん本気さ！

閻魔様は、生憎まだ仕事中だしね

それが終わったらまた来るよ

今度は怖～い閻魔様も一緒にね

あん？ああ、いいっていいって

その鰻は私の奢り

こんないい女からのご馳走なんだ

ちゃんと味わって食べないと承知しないよ？

・・・大将！勘定はここに置いとくよ！

それじゃあね！

・・・男前なお兄さん！

今度は三人で、改めて飲むとしよう！

今日も一日、お疲れさん！

巾着には、銭がどっさり入っていたそうな