Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

とある飯屋の日常風景¥1

2008/11/05 03:44:55
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人里の飯屋。ここには様々な人妖が集まり、昼夜問わず食事をしたり酒を飲んだり語り合ったりしている。
それほど人気というわけではないが、常にお客はいる。閑古鳥が鳴いた日など一度もない。

ここに集まる人妖は、皆何かしらの土産話を持って入ってくる。不思議な話だ。
日頃の愚痴からちょっとした自慢話まで。この飯屋では、常に幻想郷の話題が飛び交っている。
お客の中には、その土産話を聞く為だけにやって来るはた迷惑な客もいる。まぁ別にいいのだが。

・・・飯屋の会話を、風変わりな店員達と共に、どうぞお楽しみいただきたい。
つ「水」
あ、こちらのお冷はサービスです。宜しければどうぞ。



とある飯屋の日常風景¥1


AM11:45 暗闇を愛した妖怪兎×色恋に疎い落武者

飯屋にとって、昼時は戦場だ。多くのお客が出入りし、多くのオーダーが飛び交う。
といっても、ここでは人の出入りは多くない。今店にいるのは、数名の妖怪のみだ。

「8番テーブル、カツ丼1つに親子丼1つ!後生小ジョッキ2つ!」
「あいよ!」

厨房からは元気な声が響く。若い奴らは元気だ。注文が入れば、声が枯れんばかりの声で答える。
私は無理をすると咳き込むので、あまり大きな声は出せない。年をとるのは怖いものだ。

ちなみに落武者といっても、腐っているわけではないぞ。私は完全な骨だ。
毎日綺麗にしているから、ここで働いていても衛生上問題はない。

「おっさん!この中華丼を7番カウンターに!」
「あい分かった」

出来上がった中華丼を、7番カウンターに座る少女へと手渡す。これで今店にいる客全てに料理が渡された。
新たにお客が入る様子はない。しばらくは暇な時間となる。
厨房では若者達による話で盛り上がっているが、私からすれば正直どうでもいい内容が多い。
「文のスカートの中を偶然見た」やら「天狗の中で一番可愛いのは椛だ」やら・・・。
べ、別に羨ましいというわけではないぞ。私は硬派だ。そんな話には興味がないだけだ。

「あら、いかにも話の輪に入りたいって顔してるじゃない」

声は真後ろから聞こえた。7番テーブルに座る少女だ。くそぅ。まさか客にそんな事を言われるとは。
外見は10代前半の少女。白いワンピースを着て、長い耳が特徴の妖怪兎だ。

「そりゃ男はそんな会話をしたくなるわ。むしろしない方が変よ」
「そ、そういうものなのか?」
「ええ。それが男っていう生き物よ」

鶉のゆで卵を掬い上げ、彼女は私を見る。と、彼女は不意にこんな事を言ってきた。

「貴方、『ルーミア』って妖怪を知ってるかしら?」
「ルーミア・・・?名前だけなら聞いた事があるが・・・」

あの妖怪は確か、周囲に闇を展開している妖怪だ。私はその素性を知らない。
一説によれば、あの中に入ると二度と出られないと聞いているが・・・。

「それはデマよデマ。本当はね、あの中には小さな女の子がいるのよ。
私は一目見てその子に惚れちゃって。今じゃあの子目当てに会いに行ってるの」
「随分と変わっているな・・・」

中華丼を半分たいらげ、ルーミアの事についてさらに詳しい話を始めた。

「あの子ったら、本当に困ったちゃんなのよ。見た物全てに『あなたは食べてもいい人間?』って。
私は食べ物じゃないって言ってるのに、もう右手は彼女に噛まれてる。パックンって。
・・・でも、それが私だけに見せる愛情表現なのよ!ああ、私って幸せ者だわ!」

それは愛情表現じゃなくて、ただ単に食べ物と勘違いしただけだろう・・・。
そんな私の心の突っ込みを無視して、彼女はさらに話を進める。

「この前なんて頭からパックン。これって愛情表現の中でも最上位に値するのよ!
きっと私を見て『貴女をずっと食べたいのー』って思っているのだわ!
私ったら、妖怪さえも虜にする魔性の女なのね!あ、それと白玉ぜんざい追加で」

・・・どこから突っ込めばいいのだ。いや、敢えて突っ込まないと言うのも有りか。
とりあえず追加注文を厨房に伝えると、若い奴らが元気に答える。

「で、結局私が言いたい事は唯一つ。『恋なんてそこらじゅうに落ちている』」
「そこらじゅうに?」
「そう。私は今まで恋をしようとして失敗して、その度に恋に対して臆病になっていったの。
だけどルーミアと出会って、私の身体に電流が走ったわ。『好きだ!』って。
妖怪だろうが幽霊だろうが関係ない。大切なのは『私、今恋している!』という想い。
貴方がそれを失った瞬間、スカートの中を見たとか誰が一番可愛いとかの会話をどうでもいいと感じてしまう。
そうなったら、男としての価値は無くなってしまうのよ?」
「そ、そうなのか・・・」

その言葉は私の心にグサリと突き刺さった。小娘に恋愛の何が分かるんだと思っていたが、
ここまで正確に言われたら、もうグウの音も返せない。

「おっさん!追加注文の白玉ぜんざいが出来たから運んで!お客さん可愛いから蜜柑を乗せといたよ!」
「あ。ありがとねー」

中央に苺が乗った白玉ぜんざいを運んでやると、厨房の奥の若い奴らに笑顔を振りまく少女。
流石は自称魔性の女。白玉ぜんざいに蜜柑を乗せる事など容易いと言うわけか・・・!

「どう?私の発言、少しは役に立った?」
「心が痛いが、君の言葉で少しだけ恋が分かった気がするよ」
「それさえ分かれば大丈夫!老いも若いも恋をした者勝ちなんだから、ジャンジャン人や妖怪を好きになりなさい!
当たって砕けろ。それが恋よ!私も何度も砕け散って、ついに掴み取ったの。本当の『恋』って奴をね!」

・・・いま私の目の前には、恋愛の女神が中華丼と白玉ぜんざいを召しあがっておられます。
皆様、彼女の有難いお言葉にご共感を得られた場合、誠に恐縮ですが、蜜柑を送ってあげましょう。

「御馳走様。それじゃあ、貴方に素敵な恋が訪れますように!」
「有難う御座いました!またお越し下さいませ!」

私は他の誰よりも大きな声で、女神様に挨拶を送りました。
その後、私は改めて恋の偉大さに知りました。

「・・・我が世の春は近い!さてと、私も恋をするか!」

お昼を迎えた飯屋で、私は恋をする喜びを知ったのです!



・・・そう。人生は恋した者勝ちなのよ。恋する心を失わなければ、きっと幸せな人生を送れるわ。
                                             -因幡てゐ-


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お知らせ
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・皆様の要望を受け、通年メニューに『冷やし中華』が追加されました。
・原材料高騰の影響を受け、一部メニューの値段が上がりました。
・最近、雑誌の乱暴な扱いが相次いでいます。雑誌は大切に扱って下さい。

創業50年。皆様に笑顔と満腹を提供する 飯屋『松庵』
おっさん!それはう詐欺の罠だ!気をつけ・・・無茶しやがって。

というわけで、もう・・・ニートしてもいいよね・・・?によるプチ創想話の処女作。どうでせう?
けっこう飯屋物とか食堂物はあると思うので・・・。

ちなみに松庵は『皆様に笑顔と満腹を提供する』のがモットーです。
豊富なメニュー、財布に優しく、ボリューム多く。人里でも人気な飯屋。
朝7時から開き、夜はなんと深夜2時まで開いているとの事。
一番人気は『豚生姜焼き定食』だそうな。

後、お知らせはまれに広告になったりする予定。
もう・・・ニートしてもいいよね・・・?
コメント



1.謳魚削除
おっさん…………あんたの魂は私の背中にこの胸に一つとなって逝き続ける!(ちょ
てゐ×るみゃは希少すぎる。
でもそこが良い。
2.名前が無い程度の能力削除
あかん!まだニートしたらあかん!アンタまだまだ始まったばっかりやん!まだいっぱいSS書けるんやで!?
とりあえず。
「故意に対して臆病になっていた」は誤字ですか?
3.もう・・・ニートしてもいいよね・・・?削除
「故意に対して」→「恋に対して」
誤字指摘ありがとうございました。訂正しておきました。