「どうしたの?貴女が相談なんて」
いつものように神社に遊びに来たある日、紫様が霊夢から相談を持ちかけられた。
紫様が不思議そうなのも頷ける。
あの紅白が紫様に相談なんて驚きだ。
弱みを見せない人間なのではなく、弱みや悩みを持たなさそうな人間に思えるのだが。
落ち込んだ雰囲気の霊夢が相談事を話し始める。
聞けば最近、弾幕ごっこで魔理沙の方がよく勝つらしいのだ。
もともと6割だった勝率はいつの間にか5割に。
最近では逆転して霊夢の勝率が4割になってしまったと言う。
魔理沙が成長して強くなっているのもあるが、どうも自分が弱くなっている気がしてならないらしい。
永遠亭で診て貰ったが特に異常なし。
困り果てた霊夢はついに紫様へ相談をしに来たのだ。
紫様と私にはこの件に心当たりがある。
既に何回もあった事だ。
「博麗の巫女としての寿命が尽きかけてるのよ」
「何よそれ」
霊夢は知らないようだが、博麗の強力な力は人間の器に留めおけるものではない。
その強力な力で器が壊れる前に次の巫女、次の巫女へと代々力を継承させてゆくのだ。
紫様がその事を説明する。
「じゃあ私はどうなるの?」
「先代の巫女は里に降りて結婚。2児の母親よ」
「私、里に当てなんて無いわ」
「そうねぇ。今度の宴会の時に皆に話しましょう。貴女の受け入れ先も見付かるかも」
こんな曖昧な結果で相談が終わったからか、霊夢がぼんやりと縁側に座り込んだ。
「紫様、霊夢は何故あんな虚脱状態に?」
「あの子自分が好かれてるって自覚イマイチ無いのよ。だから巫女じゃなくなったら皆が拒絶するんじゃないかって思ってるみたいね。でも今度の宴会が楽しみ。周りがあの子を好く程、あの子が周りを好く程にとても悲しい終りが待つわ」
どう言う事だろう。
先代の巫女は普通の人間に戻ったはずだが。
「その時が来れば分かるわ。あの子は特別だから」
いつもの「胡散臭い」と評される笑みを浮かべる紫様からは、それ以上のことは聞けなかった。
思わせぶりな物言いには慣れてるが気になる。
そして宴会の日に紫様から、巫女の代替わりと巫女で無くなった霊夢の受け入れ先を探している事が説明された。
「霊夢。魔法の森に住めよ。私やアリスと一緒に魔法の研究するんだ。
香霖堂も近いから便利だぜ?」
「紅魔館に来なさいな。一人暮らしで家事全般は出来るんでしょ?咲夜を手伝って欲しいわ。衣食住は一流を保障する」
「妖怪の山で暮らしましょう。巫女の経験者がいると助かります。河童さん達からの道具で面白くて便利なものも沢山あります。ウチなら家事は全部河童さんたちの機械がやってくれますよ?」
「私と一緒に旅しようよ。天界から地底まで好きな所どこでも連れてってあげる。鬼は嘘付かないよ」
「あたい達妖精と暮らそう。毎日遊んで暮らすの。時々悪戯したりして。
お金は無いけど友達なら沢山いるよ」
「えーと。もし死んじゃったら来てね。歓迎するわ」
次々と霊夢の元に集まり自分たちの元へ勧誘する。
霊夢が感動したのか涙ぐんでいる。
余程受け入れられるか否かが、内心怖かったのだろう。
結局は「迷って決めきれない」と言う事になったが。
結果、巫女の資格を譲った後は落ち着くまで紫様や私と住み保留する、その後ゆっくり行き先を決めるという事になった。
「今日ので決定的ね。楽しみだわ」
「何が楽しみなんです?」
紫様が楽しみにされたいた宴会は終わったのだが。
感動で涙ぐむ霊夢なんて珍しいものも見られたし。
しかし紫様はいつもの笑みを浮かべながら言った。
「博麗の巫女の終焉がよ」
その後、紫様が外の世界から博麗を継ぐに相応しい女の子を連れてきた。
可哀想だがこの子は外の世界での記憶を消される事になる。
そして霊夢の元へ連れて行き、巫女としての教育をしばらくの間、受けさせる事になるのだ。
本当は巫女自身の子供が巫女を継ぐのが良いのだろうが、親が優れていても子供も優れているとは限らない。
現実では蛙の子は蛙で無いのだ。
安定性を求めた結果、何代か前からこのシステムになった。
人間扱いしていないようで可哀想だが、仕方の無い事だと割り切るしかない。
巫女を譲る際は自由になるのだといつも言い訳がましく思ってしまう。
「新しい子も博麗の力を受け継ぐ準備が整ったし、そろそろ儀式を行いましょう」
そして10日後、博麗の巫女交代の儀式が行われた。
儀式は紫様と霊夢、そして新しい巫女の三人だけで行われている。
霊夢と仲の良い人妖たちは、参道の麓で全員待機中だ。
私だけが参道の中程での待機を命じられている。
儀式が無事終了したようだ。
紫様と霊夢が連れ立って降りてくる。
「霊夢、皆が待ってるから先に行きなさい」
「分かったわ。何か体は重くなった感じだけど、地に脚がついたみたいで心はしっかりしてる感じ」
霊夢が呟きながら降りていく。
「特に霊夢に異常は見られないようですが」
「まだ博麗の力が影響してるからよ。皆の下にたどり着く頃には始まるわ」
「?」
話していると下から悲鳴が聞こえてきた。
大勢の悲鳴だ。
何事かと不安を覚えながら一気に駆け下りる。
そこで見たのは信じられない光景だった。
「好き好き!大好きー!」
霊夢が文字通り皆の尻を追っかけまわしていた。
魔理沙が捕まり押し倒される。
霊夢が唇を尖らせキスを試みる。
「れ、霊夢、気持ちは嬉しいがこんな場所で…」
「魔理沙!なに錯乱してるの!上海、蓬莱、霊夢を引っぺがすわよ」
「霊夢、魔理沙から離れなさい!」
アリスと咲夜が引き離そうと近づいた途端、二人とも霊夢から胸を鷲づかみにされた。
しかも揉まれた。
「「きゃあーーーっ」」
あっさり二人ともうずくまる。
「霊夢!魔理沙とキスしたくば、私とキスしてからにしなさい!」
レミリアが霊夢と魔理沙の間に割って入り回転しながら突撃する。
キスにその技を使う必要があるのか。
驚いた霊夢があっさり避けレミリアはそのまま後ろの木々に激突。
木をなぎ倒し、さらに岩を粉砕したところで気絶した。
気絶しても日傘を手放さないあたりは流石だ。
霊夢は再び追いかけっこを開始している。
萃香にタックルして取り押さえた。
ちょっと待て。
鬼を取り押さえるって一体どんな腕力してんだ。
思わず呟く。
「何だこれ…」
紫様が大笑いしながら降りてくる。
涙流すほど面白いですか。
貴女が原因か?
「ね?博麗の巫女の終焉って面白いでしょ?」
「いや、おかしいでしょ。何でこんな事に。何かしたんですか」
「私は何も。良い?代々の巫女は『空を飛ぶ程度の能力』のせいで何にも縛られなかったの。権力、お金、地位、そして他人に関してもね。
人間だからやっぱり特別な人が出来る。でも能力のせいで淡い想いしか抱けないの。巫女を譲ると能力から解放されて本来あるべき想いに戻るの」
「先代の巫女もそうでしたっけ?」
「そうよ。霊夢に巫女の資格を譲ったその日の内に、里の好きな男に逆プロポーズしてたわ」
知らなかった。
あ、激写してた文に狙いが変わった。
あー。霊夢が突進してるのに全然避けようとしない。
ファインダー越しだと現実感乏しくなるのかな。
やっぱ押し倒された。
「早苗さん!代わりに撮影して!」って根性が凄ぇ。
その早苗さんは袴を引き摺り下ろされて半泣きだ。
さっき霊夢が太ももに頬ずりしまくってたからなぁ。
「霊夢が特別というのは」
「力との相性かしらね。特別に抑制が効いてたのよ。だから喜怒哀楽は激しいのに他人に興味があまり無いなんて状態だったの。その霊夢がこの前の宴会で、ここに居る皆に改めて友情や感謝の気持ちを抱いたのよ?能力が消えたおかげで現在感情が大暴走中」
「そろそろ止めた方が良くありません?」
「そうね。面白いけど被害者が出る前に行きましょうか」
まだこの人大笑いしてるよ。
もう既に被害者だらけな気がするんですが。
そもそも悲しい終わり方云々って、単に私を煽りたかっただけなんですね。
「霊夢」
声を掛けられた瞬間、セクハラ街道暴走中の霊夢が固まる。
信じられないようなものを見る目だ。
そして顔が真っ青になりオロオロしだす。
これってマタタビこっそり舐めてるのを見付かった橙と同じだ。
「ゆ、紫これは違うの!その私…」
「良いから。皆に迷惑かけない内に帰りましょう」
スキマが開き紫様が中に入る。
次の瞬間、霊夢の目が爛々と輝きだした。
顔全体は微笑んでるが口元が歪んでおり怖い。
手がわきわきと妖しく動いている。
そのまま一緒にスキマに入って二人が消えてゆく。
「藍…霊夢に一体何が」
魔理沙が話しかけてきた。
半裸で汗だくなので妙に色っぽい。
「あれが霊夢の素らしい。一時的なもので落ち着くとは思うけど」
「紫が犠牲になってくれて助かった」
「藍ちゃんはこれからどうするの?」
「しばらく橙の家で過ごします」
「それが良いわね」
幽々子様は無事なようだ。
妖夢は半霊を弄られまくってぐったりしている。
お姫様が従者をお姫様抱っこしてる光景も中々無いだろう。
いや、そうでもないか。
向こうで同じく、ぐったりしている永琳を輝夜がお姫様抱っこしている。
身長差あり過ぎで違和感があるが。
無駄に乳がでかいから霊夢から狙われるんだ。
しかし紫様は気付いていないのだろうか?
ご自分が霊夢にとって一番の存在になっていた事に。
多分、いや絶対あの様子だと気付いてない。
自分は霊夢の大暴走の対象外だと思い込んでいたからこそ、あんな余裕があったのだ。
地底に行った時のさとりとの会話を完全に忘れているとは。
あのスキマの向こうで一体何が起こっているか想像もしたくない。
まぁ自業自得だ。
考えてみれば二人とも好かれている事に自覚が無い訳だし、お似合いかもしれない…。
「そうだ。橙と一緒にご飯を作ろう」
先の事を考えたら思わず現実逃避してしまった。
三日後、私が戻ると足腰が立たないで艶っぽいうめき声を出すだけの紫様と生き生きしすぎの霊夢が居た。
もちろん全裸の。
それから霊夢は紫様から式を憑けて貰い、式神となった。
式に狸の霊を組み込んだらしく狸耳と尻尾付きである。
今では紫様がウットリとした表情で霊夢から離れなくなっている。
もう嫌だ、この状況。
「そうだ。橙の所へ行こう」
ゆかりん俺と変われぇぇぇぇぇ!
でも師匠を抱っこしてくれた姫さまGJ。
狸は霊夢にぴったりな気が凄くします。
体は人間だからー……?ま、いいや。それよりも何よりも!
末永くお幸せにww
というか、ゆかりんと霊夢の三日間を詳しk(スキマ
だがそれがいい
前半の空気はどこへやらwww
さあ、霊夢と紫の内容を事細かに書く作業に戻r(弾幕結界
てか最後の一行で吹いたwwww
さぁ、ねちょな話を夜伽に投稿するのだ!
>さぁ、ねちょな話を夜伽に投稿するのだ!
激しく同意
でもたまらなくいいっ……!
いやあ、面白かった。ここ最近読んだ中で一番ツボにハマったww
おもしろかったです
頑張れ藍様
>題名で敬遠
あれ、いつのまに書き込んだんだおいら?
邪ーナリスト根性の文ちゃんに拍手。
ついでに焼き増し希望。
霊夢\(^o^)/ハジマタ
その発想がうらやましい
それとスキマの3日間についてはもっと詳しくry