里の近くにある竹林の奥にその二人の人影はあった
片方は、モンペを着てポケットに手を入れている少女
もう片方は、黒く長い髪で、貴族のような服を着た少女
真夜中の竹林で、二人の少女が無言のまま対峙する
「…ケリをつけようぜ?輝夜…」
モンペを穿いている少女が如何なる魔術か知らないが
片手から炎を出し、それを握りこんで消す
「ふん…貴方の死をもってね…」
それに対抗するように、輝夜と呼ばれた黒髪の女性が
何も持っていない手を握りこむ
「輝夜!」
「妹紅!」
二人がおもむろに手を上げたあと、お互いに向かって走りこむ
そして、お互いの手が伸ばされると拳と拳がぶつかり合う
「ふっ…」
「ふふっ…」
妹紅と輝夜がお互いに笑みをこぼすと、拳を下ろした
「…くくくっ…」
「あははっ…」
そして、お互いに限界が来たのだろう
「「あははははははははっ!」」
二人ともお腹を抱えて笑い出す
「ちょ、か、輝夜…おま…似合わなさすぎ!」
「も、妹紅こそ…逆に似合いすぎよ~!」
先ほどの殺気など等に薄れ、そこに居るのは
仲の良い雰囲気の女の子二人であった
「い、いや~…でも、あそこは青い炎を頑張って出すべきだろ?」
「う、わ、分かっているけど…しょうがないじゃない」
こんな事をするのは、良くある事
今回は、とある格闘ゲームの主人公とそのライバルの台詞を真似て見たのだ
「いや~…笑った笑った…」
「ええ…ああ~おかしい…」
二人とも、ひとしきり笑うと、近くにある岩の上に座り込む
「じゃあ、今日は何の話するんだ?」
「え~とね…」
蓬莱山輝夜と藤原妹紅の二人は
満月の夜になると、よくこうして竹林の中で遊んでいた
この二人も、毎回殺し合いをするわけじゃない
昔はそうであったが、あと片付けが大変なのだ
主に、火災とか屋敷の被害とか…
むしろ、怖いのはそれによって怒った保護者のお仕置きなのだが
(渾身の頭突きや新薬の実験など)
そんなこんなで、輝夜と妹紅は前に比べて丸くなっていた
「ねえ、妹紅…」
「あん?どうした輝夜…」
「じ、実はね…何か良い仕事知らないかなって…」
輝夜が、言い辛そうにそう言うと妹紅も呆気に取られた
「そ、そんなに驚かないでよ!」
「あ~、その…すまん」
妹紅も流石に悪かったと思って、輝夜に謝る
「…でもなんで私になんだ?そういうのはあの薬師に言うべきじゃないか」
妹紅が言うのはもっともである
薬師こと、八意永琳なら輝夜が『仕事がしたい』って言えば
固まると同時に、輝夜の額を押さえて熱を確認して
弟子である鈴仙の頬をつねって現実を確認してから
目から涙を流して、永遠亭の患者の診療を臨時休業にしても
なにか仕事がないか、色々探し回るであろう
「そ、そうなんだけど…永琳の力を借りるわけにはいかないの」
「なんでだ?」
妹紅の質問に、輝夜が一瞬口ごもるが
「そ、その…実は一週間後に…」
「一週間後に?」
「…え、永遠亭の診療所が出来た記念のお祝い会があるんだけど
その時にサプライズで、みんな永琳になにかプレゼントをしようってなったから…」
つまり、永琳に何かプレゼントするために、仕事をする事を思い立ったのである
「それじゃあ、確かに頼めないよな…」
「でしょ?」
妹紅も納得する
「だから、貴方ならあの里の半獣経由で、仕事を…」
「あ~ごめん!慧音は無理!」
輝夜の言葉をさえぎるように、妹紅が両手を合わせる
「ちょ、な、なんでよ!?」
「じ、実はさ…」
「実は?」
今度は妹紅が口ごもる
「じ、実は…私もお前と同じでさ…」
「どういうことよ?」
「お前と同じく一週間後に…里の方の寺子屋でさ…慧音の誕生日会があるから
その時に、慧音にプレゼントを用意しようと思っているから…」
里の皆から愛されている慧音先生だから
とても忙しい、自分の誕生日の事は、多分忘れているので
妹紅が何かしだしたら、絶対に疑う
「気づかれたらアウトなんだ…」
「…それじゃあ、仕方がないわね…」
二人がため息をついて、肩をおろす
「とりあえず、お互いの状況を改めて確認しようか?」
「分かったわ妹紅」
とりあえず、このままではいけないので
状況を確認する
「まず、お互いに期限は一週間ね」
輝夜が地面に蓬莱の玉の枝で『一週間』の文字を書く
「それと、プレゼントを買うための仕事っと」
妹紅がその辺に落ちていた竹の破片で『お金』とかく
「…後、あまり事を大きくしないように…」
輝夜がその下に『ばれない様に』と注意を書く
「つまり『一週間で、周りに怪しまれないように、仕事してお金を稼ぐ』って事だな?」
「ええ、その通りね」
二人が腕を考え込んで一言呟いた
「「無理!」」
大体、そんな事が出来るほど幻想郷は難しくない
「それに、輝夜ってどんな仕事できるんだよ」
「え~と…お姫様?」
「そんなの、仕事じゃない!」
「妹紅こそどうなのよ!?」
「え~と…た、食べなくても一応生きてられるから…」
「仕事できないじゃない!」
「ふぅ~!」
「かぁ~!」
輝夜と妹紅がお互いに牽制しあう
そして、つかの間の取っ組み合いが行なわれる
(喰らえ!胴締めスリーパー!)
(ぎ、ギブギブ!)
「はぁ…はぁ…」
「ふぅ…ふぅ…」
「なあ、なにやってるんだ?私達?」
妹紅が胴締めスリーパーの体勢のまま輝夜に声をかける
「…なにやってるのかしらね?」
輝夜も呆れたように、呟いてから起き上がる
「でも、一週間でなんてな…」
「そうよね…仕事できるかどうかもわからないし…」
「それに、絶対にあの天狗が嗅ぎつけるだろうし…」
「じゃあ、室内でやれる仕事?」
「…だけど、短期の仕事でやれるなんて…」
「それに、雇ってくれるかもわからないしねぇ…」
二人が再び腕を組んで考え込む
「…いっその事、何か売るかな?」
「売れるもの…って何があるかしら?」
輝夜の言葉に、妹紅が答える
「まあ…まずは自分の持っている物だろうけど…」
「だ、駄目!パソコンを持ってかれたら!私、死んじゃう(主に精神的な意味で)」
「だろ?それに、そんなことしたら薬師も何か感づくぞ?」
「…そうね…」
「となると…」
「となると?」
妹紅が顔を赤くする
「か、身体?」
「だ、駄目~!それは駄目!」
いくら蓬莱人で死なないけど、プライドまではちょっと…
「ああ~もう!どうしようもないじゃない!」
輝夜が髪の毛を胴締めスリーパーの際に乱れた髪をかきあげる
「いや、まて?売るのは身体だ…」
「ちょ、妹紅!?」
突然の妹紅の言葉に、輝夜が驚く
「まてまて、何も『ハルですよ~』を売るわけじゃないんだ」
「じゃ、じゃあ何よ?」
輝夜が顔を赤くしながらも妹紅に続きを促すと
「髪の毛だよ」
「髪?」
輝夜が不思議そうに言うと妹紅が頷いた
「ああ、上質の髪の毛はカツラにしたり、場合によっては神聖な物に使ったりするんだ」
「…っていう事は…」
妹紅が親指を突き出す
「ああ、輝夜、お前の上質な髪なら売れる!」
「そうなの!?」
「ああ、間違いない!」
二人が新たな道を見出そうとした時
「で、でも…やっぱり駄目…」
輝夜が拒否をした
「なんでだ?」
「だ、だって…髪が短くなったら、絶対に永琳にばれるじゃない」
「し、しまった~!」
これでは『ばれないように』と言う部分に引っかかる
「くぅ…やれると思ったのに…」
「ごめんなさい…」
悔しがる妹紅に輝夜が謝る
「…まあ、お前が謝る必要はないさ」
妹紅も自分が悪いだろうと思って輝夜の頭を撫でる
(…まてよ!?)
「そうだ!」
「ど、どうしたのよ妹紅?」
自分の頭を撫でた妹紅が突然声を上げた
「輝夜!良い方法を考えた!」
「えっ?」
「『一週間』で『極力ばれない様』に『お金を稼げる』方法!」
「ほ、本当!?」
「ああ、私達なら絶対に出来るはず!」
妹紅がそう言うと、輝夜の耳に口うちする
「そ、そのぐらいなら…私にも出来ると思う」
「だろ?…よし、明日までに準備を進めておくから、詳しい事はまた明日」
そうして、輝夜と妹紅はその日はお互いに家に帰った
「輝夜…いるか?」
「…ええ、何とか抜け出して来たわ」
次の深夜、再び輝夜と妹紅は竹林の中にいた
「それで?どうなの…その…あ、集まってるの?」
「…まあ、慧音にばれないように、こっそりと話をしてきたからな…」
妹紅と輝夜が静かに話をしながら目的の場所まで歩いていた
「でも、もう数人集まっていたから…」
「は、初めてだから…ちょっと心配ね」
「まあ、何とかなるさ…」
二人はそう言うと、目的の建物の前に着いた
「…荒れ寺ね…」
「ああ、もう男が数人集まっているから…」
妹紅と輝夜が覚悟を決めると、その中に入っていった
その日の朝早く、仕事を終えた妹紅と輝夜は妹紅の庵に戻ると
だるい体を押して、お風呂に入り…泥のように眠った
「ねえ…妹紅……私…こんなに疲れたの初めて…」
「…ああ、あんなに無茶されるとは思っていなかった…今度、禁止事項の紙を書いておく」
「…そうして……お休み…」
「ああ…今夜も一杯…来るから…」
その日の深夜…妹紅と輝夜は、更に増えた男達の相手をすることになった
二人とも、再び庵に戻るとお風呂に入る
「ふぅ……もう、どんな汚れ仕事でも出来そうな気がするわ」
「まあ、輝夜はそうかもな…」
「えっ?妹紅は?」
「…生きてきて、色々あったからね」
少しだけ悲しそうにする妹紅に対して輝夜は
「…妹紅、髪洗ってあげる」
「えっ?な、なんだよ急に」
「…いいから座りなさいよ」
少しだけ、妹紅の辛さを知ったような気がした
二人とも、庵の中で布団を敷いて横になる
「…明日は、念のためにお休みを入れてあるから、一旦永遠亭に戻る事」
「うん、そうしないと永琳も皆も心配すると思うから」
「…絶対に感づかれるなよ?」
「貴方こそ…知られたら、あの半獣が泣き崩れるわよ?」
「はは…違いない」
そこまで二人が話すと、再び泥のように眠りについた
次の日は、仕事はお休みなので輝夜と妹紅は
怪しまれないように、自分の家に戻った
二日間帰ってなかった輝夜は、永琳に怒られたが
「しばらく、妹紅の家で遊ぶ」
と、上目使いでお願いしたので
何とか、外出の許可をもらう事に成功した
一方、妹紅は慧音の家で一緒に食事を取っていた
「…なあ、妹紅」
「ん?どうしたの慧音」
妹紅が慧音の方を向くと、慧音が質問してきた
「…最近、里の男が深夜に出かけているようなんだが、妹紅何か知らないか?」
(ぎくっ!?)
心の中で妹紅がドキッとしたが、何とか顔に出さずに
「そうなんだ…」
とだけ答えた
慧音も妹紅は何も知らないと思っているので
「…もし、何かあったら困るからな…妹紅も何かわかった事があったら教えてくれ」
「あ、ああ…わかったよ慧音」
少しの間、居心地が悪い気がしたが
慧音はそんな事気にしないで、妹紅に最近の話をしてきた
「…妹紅?居る?」
「…ああ、準備できてるよ」
次の日の夜、輝夜と妹紅は人目につかない様に
竹林を歩いていた
「…どうだ?永遠亭の様子は…」
「ええ、しばらくの間、妹紅の庵に泊まるって言っておいたから、大丈夫」
「そうか…」
「そっちはどうなのよ?」
「…ちょっとだけまずい事になった」
「ど、どうしたの?」
「…慧音が里の男達が深夜に何処かに行っている事を調べている」
「…不味いわね…」
「…時間をもっと短くしよう」
「大丈夫なの?」
「お金は結構溜まっているから…」
二人がそこまで話すと、再び仕事をする場所にたどり着く
「…とりあえず、今は仕事だな」
「ええ、そのようね」
輝夜と妹紅は男達の欲望が待っている荒寺に入っていった
少し早めに切り上げる事を、中に居た男達に話すと
皆、少し寂しそうな顔をしたが、その分サービスをすると言ったら
納得してくれた
「…でも、料金は増えるのね」
「まあ、皆納得してくれたからね…」
その日の仕事を早めに切り上げて
二人が妹紅の庵に戻ると
「あれ?手紙が置いてある」
妹紅が身に覚えが無い手紙が庵の中に置いてあった
「…妹紅、ちょっと貸して」
「あ、うん」
輝夜がそれを取ると、中身を見る
「…うどんげからの情報だわ」
「あのへにょ耳兎か?」
「ええ、あの子、思っている以上に隠密行動に長けているのよ…なになに…」
『姫が何をなされているかは分かりませんが、天狗が永遠亭を嗅ぎ回っています
てゐの情報ですから、信頼は高いはずです…御気お付けください
この手紙は、師匠には話してない私の独断なので秘密裏にしてもらえるとありがたいです』
「…そうか、天狗が動き出したのか…」
「どうするの?妹紅」
二人が考え込む…
慧音にも少しばれそうな気がする上
永遠亭経由で射命丸文も動き出した
「よし、明日の仕事で終わりにしよう」
「大丈夫なの?」
「…多分、今日の内に、慧音と天狗が組むと思うんだ」
慧音と文がお互いの情報を持ち出したら
輝夜と妹紅の事がばれるのは時間の問題である
「だけど、一日でばれる事はない」
だが、そこから輝夜と妹紅がバレルには時間がかかる
「…それと、一つ仕掛けをしておいた」
「えっ?」
「まあ、今から眠ることになるから…お休み…」
「ま、まあ…妹紅に任せるわ…お休み」
全ては今日決まるのだ…男の欲望を受ける仕事は、今日で終る
「…うふふっ…『里の男性が深夜に向かう場所の正体は!?』
明日の見出しはこれで完全に決まりですね」
「正直言って、あまり気は進まないのだがな…」
妹紅の想像通り、慧音と文はお互いの話を合わせる事で
里の男達が集まるとされる荒寺にたどり着いた
「慧音さんは、里の男達が何をしているのか分かればよし
私は、スクープが取れればよし…完璧じゃないですか?」
「…ゴシップ自身があまり好きじゃないんだ」
「そんな事言わないで、文々。新聞取ってくださいよ」
「む?静かに」
慧音の声で文は静かになる
ばれたりしたら、元も子も無いのだ
慧音と文は静かに、荒寺の様子を回りから見渡す
(里の男達はすでに表に出ているのは確認済みだ)
(ってことは…もう、中に居るって事ですね?)
文の言葉に、慧音が小さく頷く
(…何をしているのか分からんが…危ないから怒らないといかん)
(『里の守護者…怒りの荒寺』これもいいネタになりますよ)
余計な事を行った文の慧音が軽く頭突きを入れると
(お前は後ろの方から回ってくれ)
(いたた…わ、分かりました)
慧音と文は荒寺の入り口と裏手の方に回りこむ
そして、思いっきり扉を開く
「お前ら!一体…」
慧音が荒寺の中で見たものは
「あ、あやややや?」
「ば、馬鹿な!?」
誰も居ない、ただの荒寺であった
「逃げられたんでしょうか?」
「だ、だが、文、逃げる者を見たか?」
「み、見えませんでした」
その時、慧音の頭に一つの答えが導き出された
「しまった!嵌められた!」
「ど、どういう事ですか?」
「もう、皆里に帰っている…」
「な、なんだって~!?」
慧音が言ったとおり、里の男達はもう帰っていた
「それじゃあ、気をつけて帰れよ」
「じゃあね~」
輝夜と妹紅が里に帰る男達に手を振っていた
男達も、その手を振り返していそいそと里に帰っていった
「…皆、寂しそうだったわね」
「ああ…皆喜んでたもんな…」
無事に里に帰っていくのを見届けてから
「「ふぁ~」」
妹紅と輝夜は同時にあくびをした
「…さて、これから寝て、プレゼントを考えないとな」
「そうね、それじゃあ…庵に戻って寝ましょうか?」
二人はそう言うと
今まで男達と一緒に居た庵に戻っていった
妹紅の秘策『早めに始めて、場所を変える』は大成功したのだ
「さて、これで…仕事は終ったんだけど…妹紅、どの位お金溜まったの?」
「ああ、今数えている…ひぃ…ふぅ…みぃ…おお~凄い量あるぞ?」
眠りから覚めた、二人は仕事で稼いだお金を数えていた
四日間の仕事で稼いだお金は、かなりの額になってい
お金を均等に分けると、その辺の物なら簡単に買えるぐらいのお金は残っていた
「よし、後は何処かのお店でプレゼントを買うだけだ」
妹紅がそう言うと、輝夜が手を上げた
「妹紅、お勧めのお店知ってるから行かない?」
「お勧めなら、行ってみるか」
『かんぱーい!』
永遠亭が開かれた記念、そして幻想郷に認められた記念
その記念を祝って、永遠亭の中で宴会が開かれていた
この日ばかりは無礼講…輝夜に抱きつく兎
永琳に頭を撫でられる兎、てゐと飲み比べをする(ジュース)兎
うどんげに膝枕をしてもらう兎…皆楽しそうにしていた
そして、宴会の半ばに差し掛かった時
(姫様…)
(あら、てゐ…どうしたの?)
(もうそろそろ…)
確かに、もうそろそろ良い頃合だ
うどんげも、永琳に皆のたくらみがばれない様にうまく誘導している
(…よし、カウント開始よ)
(了解ウサ!)
輝夜とてゐが頷くのを見て、周り中の兎達も頷く
「カウント開始!」
輝夜の言葉に、倒れていた因幡達が起き上がると
宴会場の奥に向かって走り込む
『3』
いきなり始まったカウントに、永琳だけがきょとんとする
『2』
皆のカウントがドンドン過ぎるなか、宴会の奥の幕を兎達が掴む
『1』
そして『せーの!』の掛け声で幕を引っ張る
『0』
最後のカウントと共に、奥の幕が引っ張られ、後ろにある新たな幕が光に当たる
『永琳様いつもありがとう記念パーティ』
垂れ幕を見た、永琳がしばらく硬直する
「永琳、いつもありがとう!」
「師匠!」
「永琳様!」
輝夜、うどんげ、てゐが順に永琳にお辞儀すると
周りに居た兎達も合わせて
『いつもありがとう!』
大きな声で永琳に向かってお礼の言葉をかける
突然の事に固まっていた永琳の目から涙が零れる
「え、永琳?」
「師匠?」
「ウサ?」
突然泣き出した永琳に皆が慌てるが
「こ、こんな…こんな…嬉しいサプライズ…皆…ありが…とう…」
そこまで、呟いてから感動の限界だったのだろう
永琳が感動で泣き始めた
「師匠、ハンカチです」
「あ、あり…がと…うどんげ…」
「主賓が泣いちゃ駄目うさ」
「ええ…そ、そうね…」
ハンカチで涙を拭きながら、永琳が起き上がる
「それじゃあ、永琳にみんなからプレゼントがあるから、真ん中に座って」
「そ、そんな…プレゼントまで!?」
「師匠、ハンカチ二枚目です」
「ありがと、うどんげ…」
そんな事を言っている間に、永琳の元にウサギ達が数人がかりで何かを持って来た
「こ、これは?」
遂に姿を現したその何かを見て、永琳も驚く
「てゐと因幡の二人でこの特大ケーキを作ったのよ」
輝夜の言葉通り、四段重ねのケーキをうどんげとてゐの二人で作り上げたのだ
「こ、これ以上泣かせないでください…」
すでに永琳は四枚目のハンカチが涙でびしょびしょに濡れているのだ
「だ~め!…永琳のおかげで、私達は無事に過ごせるんだから
たまには思いっきり泣いてもらわないと」
だが、輝夜の言葉に、周りに居た兎達が頷く
「も、もう…ひっぐ…これ以上…」
濡れたハンカチの数が七枚目に達しそうな位、永琳は感動で涙が流れていた
(ここで止めね)
そのタイミングを見計らって、輝夜が最後のプレゼントを懐から取り出した
「…永琳…」
懐から取り出したプレゼントを永琳の首に巻く
姫がプレゼントを用意している話は誰も知らないので
兎達も少しどよめく
「これが、私からのプレゼント」
「ひ、姫から?」
永琳が驚く、そして首に巻かれたそれを手で触れた
「うん、珍しい名前の宝石のネックレス…永琳なら絶対に似合うはずよ?」
それは青い光を放つ宝石
「仕事をしたお金で何とか買えたわ…お店の店主もかなり割り引いてくれたし」
永琳魅力にも決して引けを取らない宝石
「…これからもよろしくね?永琳」
それから、一時間永琳は泣き通しだった
これほど嬉しい事は永琳自身の人生でも初めての経験だった
「それじゃあ、永琳様の顔写真取るうさ!」
「ちょ…や、やめ…こん…こんな…情けない顔」
必死に泣いている顔を取らせまいと永琳が顔を手でガードするが
「因幡、永琳の右手持って」
「あ、はい…姫様左手お願いします」
「ひ、姫!?う、うどんげ!?」
ボロボロに泣いている永琳の顔など、見る事は出来ない
輝夜とうどんげが永琳の手を取る
そして
「はい、チーズ!」
「や、やめ…」
(ぱしゃっ!)
泣き崩れている永琳と笑顔で立っているうどんげと輝夜の写真が出来上がった
次の日…
「やっほ~、妹紅元気にしていた?」
「ああ、うまくいったのか?」
「うん、永琳本気で泣いていた」
「…信じられないな」
妹紅と輝夜は、再び竹林の中で話をしていた
「でも、いいのか?片付けの最中なんだろ?」
「…今、写真を片付けるために永琳顔を真っ赤にして暴れているから」
「逃げてきたのか…」
今、幻想郷の中で永遠亭が一番危険な場所になっている
「それより、貴方の方は?」
「ああ、慧音にプレゼント渡したら、泣いて喜んでくれたよ」
「何を渡したのよ」
「うん?ドレス…」
「へぇ…貴方にしては良いセンスじゃない」
「どういうことだよ…」
「気にしないで…どんなドレスなの?」
「ああ、白くてフリフリが一杯ついていて」
「(ゴスロリ系?)ふんふん」
「それに、頭に白いケープも…」
「待ちなさい!それは違う意味で泣いてるわ!」
二人がしばらくの間、話を続けてから
「…でも、あの仕事はもう出来ないのね」
「ああ、なんだかんだで結構楽しかったからな…」
二人が静かに空の月を見上げた
「楽しかったわね『撫でられ屋』」
「ああ、私達がただ頭を撫でられるだけだったけどな」
これはちょっと予想の斜め上だったw
……でも、蓬莱人関係なくね?
撫でまくって喜ぶなんて、ムツゴロ○さんじゃないですかww
>卯月由羽様
確かに蓬莱人関係ないですね…タイトル変えることにします
>欠片の屑様
な、舐められ屋…そっちの方がいい!
可愛い女の子の頭を撫でるなんてそうそうできるものじゃないんです
男達の欲望(愚痴とか)を一身受けるのはある意味大変です
人里にも永遠亭にも
あの素晴らしい愛をもう一度。
二人ともさぞストレス溜まって疲れるだろうなー、と考えたところで
でもどうせなら1000円払って、逆になじってもらったほうが自分としてh…
でもそれじゃないなと思い再思考。
で、思い付いたのが5の方同様『詰(なじ)られや』です。
いやぁ蓬莱人なら「鬱だ…死のう…」→「リザレクション!」でいけるかなと。
良い蓬莱人を堪能させて頂きました。
本命(ぐ)、対抗(げ)、大穴(す)
大穴すら駄目だったか…………
なでられや……その発想はなかった!
ちょっと1万円持って行ってきます。
俺髪の匂いフェチだから
この程度すぐ看破できたぜ!
>今、写真を片付けるために永琳顔を真っ赤にして暴れているから
女の子のこの行動はかわいいシーンのはずなのに。
シャレにならない想像しかできないのはなぜだろう…
珍しい名前の石、青い光、安売り・・・これって都市伝説の「呪いのネックレス、その正体は放射性物質」じゃ? まぁ永琳なら本物の放射性物質だったとしても何とかしそうだけどねw
>4番様
なぞるのは二人のからd(この先は血で汚れて見えない)
>5番様
「ほら!これが!いいのかしら!?この!汚らわしい!変態!」
姫様に頑張ってもらいました
>6番様
むぅ、頭を撫でるのは私の十八番、ばれてしまっては仕方がない
今度新しい技を考えようと思います
>謳魚様
『ならやれや』…そっちのほうがこの二人にはあっているかもしれませんねww
>地球人撲滅組合様
三つとも外れましたか、でも本当にいろんな文字が入りますね『な○られや』
>名前を表示しない程度の能力様
一万円持っていっても、もうお店やってませんよ?
>十番様
姫様の髪の毛は特上品ですからね 撫でてみたいです
妹紅の場合は、撫でた時の表情を見てみたいですね
>十一番様
しまった、簡単に看破された!
では、姫様と妹紅さんの髪の毛を撫でる権利をあげます
>十二番様
幻想郷でもトップクラスの永琳の暴走
巫女でも核でも隙間でももってこいって言うんだ!
多分、止められないと思う
>十三番様
実は架空のネックレスで
『ブルーラビット』と言う名前のネックレスです
幸せと沢山の人に恵まれるという程度の宝石です
手に入れたお店はもちろん、閑古鳥が鳴いているお店で
店主はフラグクラッシャーです