Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

【南・西・胡】でハッピーハロウィン☆

2008/11/01 00:28:22
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※まにあわなかった………………………orz
※この作品には、作者の『ハロウィン=カボチャのランタン』といった偏った常識が盛り込まれています。ご迷惑おかけします。
※節分注意




























「…………にとり、何ですかこれは」
「いやだなー、射命丸。今夜はハロウィンでしょ」
「ええ、それは私にも分かります。で、これは何ですか?」
「だから、ランタンだよ、ランタン。河童の技術をなめてもらっちゃ困るね」
「こんなの作られる方が困りますよ」
「そーかなー」
「そーですよ」
「なかなかいい出来だと思うんだけどなー」
「それは認めますよ。努力も認めます。しかし──────


どうしてキュウリなんです?」










「だ、だって外界ではお化けカボチャをくり貫いてランタンを作るって言うじゃない!」
「だからってお化けキューカンバーでランタンを作るのは外道ってものじゃないですか!」
「キュウリのフォルムは、物理的、科学的に計算されつくしたまさに理想のフォームなんだよ!」
「でも、新聞に載せるためには、キュウリだと絵にならないんです!」
「カボチャもキュウリも大差ないじゃないか!」
「大有りです!」
「じゃあ、射命丸はどれがカボチャでどれがキュウリか分かるのか!(下)」
1・南瓜  2・胡瓜  3・西瓜  4・苦瓜  5・冬瓜
「き、決まってるじゃないですか!えっとぉ、確か『苦瓜』が、そうです、よ、ね?」
「それゴーヤ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」








──────という経緯で、泣きながら詰所に戻ってきた射命丸先輩は、ちゃぶ台の下から出てこない。
私、犬走 椛はすっかり困り果てていた。
「しゃ、射命丸先輩、元気だしてくださいよ。にとりさんだって悪気はないんですし」
「椛にはこの屈辱が分からないのよ!ハロウィン イコール パンプキン!これは世界の常識よ!」
「別にカボチャじゃなくてもハロウィンは成功しますよ」
「やっぱり分かってない!このパシリ!ハチ公!椛なんて豆腐の角に小指ぶつけて胃潰瘍にでもなればいいのよ!」
どういう体なんだ、私は。
「とりあえずちゃぶ台の下から出てきてくださいよぉ」
「いいえ、出ないわ!にとりが謝りに来るまで、私はゼッタイここを出ないから!」
駄目だこりゃ。
ここは1つ、にとりさんに大人になってもらわないと。
そうして私は詰所を出て、滝壺にとりラボに足を運んだ。



「に、にとりさん、元気出してくださいよ」
「射命丸が謝りに来るまではゼッタイここから出ないからね」
そう言って、にとりさんは一向にちゃぶ台の下から出てこない。何このデジャヴ。
と言うか、研究所内に転がりまくるキュウリの残骸、貴女も苦労したんですね。
「せっかくのハロウィンなんですから、そんなジメジメしないでくださいよ」
「カボチャなんかよりキュウリの方がさっぱりしてるよ」
「肝心のあなたがさっぱりしてないじゃないですか」
と言っても、にとりさんも聞く耳をもってくれない。
結局、数分後、私は頭を抱えながらラボをあとにした。
これは本格的にまずい。



「はぁ」
ため息も滝の轟音に消えていく。
途方にくれた私は、滝を見下ろせる大木の根に座っていた。
「これからどうしよう」
考えてみれば、この喧嘩はかなり立ちが悪い。
まず、射命丸先輩、にとりさん、どちらもかなりの職人肌なのだ。
射命丸先輩は『漢字が読めなかった』ことにへこみ、
にとりさんは『キュウリスタイルを否定された』ことにへこんでいる。
ついでに私は、この溝にへこんでいるわけで。
「はぁ」
しかも、立ちが悪い理由はもう1つある。
2人とも、気が長いのだ。放っておくと、100年くらい余裕で喧嘩していそうである。
にとりさんの方はよく分からないが、射命丸先輩は少なくとも1000年生きているわけで。
「はぁ」
鬱だ。
「はぁ」
非常に鬱だ。
「はぁ」
いまならプリズムリバー楽団の長女さんと、メランコリー勝負できるかもしれない。
「はぁ」
とりあえず、マジ、鬱。
「さっきから、何にハァハァしているんだ?」
「誤解を招く表現をするなー!」
とりあえず、突然ボケをふっかけてきた相手に、私は何も考えずに犬耳ヘッドアタックをぶちかました。
そして、ぶちかました後に、相手を確認して、思わず背筋がパーフェクトフリーズ。
「あたたた、いきなり頭突きとはひどいじゃないか」
「ほ、ほほほ、星熊 勇儀さまァ!?」
紛れもなく、最近地上に時々やってくる元・山の主、勇儀さまであった。
「も、申し訳ございませんでしたぁ!」
と言い切る前に、土下座。
射命丸先輩がマッハで空を駆けることができるなら、私はマッハで土下座することができる。
「い、いや、そんな土下座するまでのことじゃないさ。と言うか、速すぎて見えなかったけど」
「では次はもう少しゆっくりやらせていただきます!」
「やめておくれな。祭りの前に何度も土下座されちゃ、酒も不味くなるってものさ」
「祭り?」
「今日は、アレだろ?えと、は、はろー…………ハローワークは違うしなぁ」
「ハロウィン?」
「そう、それ。ハロウィン。詳しくは分からないが、祭りなんだろ?」
「ええ、一応」
「なら呑むには絶好の日だ」
そう言えば、そうだった。この方は、1年間に365日、何かにことつけて酒を呑んでいるのだ。
「それで、どうしたんだ?そんなため息ばかりついて」
「ため息って分かってたなら、最初からそう言ってください」
これこれこうこう、詳しくはWebで。
「なるほど、井戸を掘ったらふかひれスープがあふれ出たと」
「駄目だ、伝わってない」
かくかくしかじか、続きもWebで。
「なるほど、あの2人が喧嘩したと」
「ええ、つまりはそういうことです」
「ふむ……………難題だな」
「だから私も頭が痛いんです」
「じゃあ、ここは荒療治といくか」
「荒療治?」
「私は河童の方をやろう。おまえは鴉天狗の方だ」
「で、でもどんなことを?」
「ちょっと耳を貸せ」
ひそひそこそこそ、詳しくはフリーダイヤル、024-(ry
「わ、私にそんなことできますかねぇ」
「なんなら酒を一杯呑んでいくといい。勢いがつく」
「い、いえ、酒なしでやってみます」
そして私は、万が一のために遺書を書いた。



「駄目いまるはどこだぁ!」
詰所のドアを開けると、まだ射命丸先輩はちゃぶ台の下にいた。
「も、椛、どうしたんですか?」
「どうもこうもふかひれもあるかぁ!」
勢いに任せて、ちゃぶ台をひっくり返す。
当然、射命丸先輩はすっかりおびえきっている。まあ、仕方ない。
「おい、駄目いまる」
「射命丸です」
「いいから正座ぁ!」
「は、はいぃ!」
いつもの私と射命丸先輩の立場が完全に入れ替わっている。
「いつまで拗ねてるんだ!それも、たかがキュウリとカボチャのことぐらいで!」
「し、しかし…………」
「口答え厳禁!」
「はいぃ!」
「キュウリだからハロウィンが失敗する訳じゃない。カボチャだからハロウィンが成功する訳でもない。
大切なのは、祭りを楽しもうとする粋な心!今のあんたがそれじゃ、成功するわけないだろう!」
射命丸先輩は黙っている。とりあえず、ひと呼吸してから
「とりあえず、やれることやってみなさい。と、今までのが、伝言です」
「で、伝言?」
「はい。先輩に、と」
「誰からですか?」
「誰からだっていいじゃないですか」
その後、しばらく、射命丸先輩は何か考え事をして、その後、行き先も告げずに詰め所を出ていった。
「…………ふぅ」
「おつかれさん」
「うわぁ!びっくりしたぁ」
天井がカパッと開いて、勇儀さまが現れた。
「どうしてそんなところから?」
「細かいことはどうでもいいだろう」
勇儀さまはそう言うと、天井からすたっと降りた。
「こっちも成功したよ」
「大丈夫でしょうかねぇ」
「大丈夫さ。膠着状態を続けられるよりは、マシな結果になることは間違いない」
「………………………」
「なぁに、心配するな。2人がどうでるか、待とうじゃないか」




待ち時間の間に西瓜(スイカ)でランタンを作ったのは内緒。
「ふむ、なかなかいいできじゃないか」
「やっぱり角はつけるんですね」





そうこう待ち続けて、もう夕暮れ。
すっかり暗くなった山道の途中に、私と勇儀さまは来ていた。
位置的には、詰所と滝つぼの中間ぐらい。
「先輩、遅いなぁ」
「たしかに、予想よりちょっとかかってるな」
私たちの会話は、外には漏れていない。外からは私たちは見えないし、気配も感じ取れない。
射命丸先輩の取材7つ道具の1つ『盗聴盗撮バッチリ☆天狗の隠れ蓑』を無断拝借しているからだ。
「本当に大丈夫ですかね。なんだか、不安になって────」
「おしゃべりはここまでにしよう。あれを見てごらん」
と、勇儀さまが指差したほうを見ると、山道の向こうに、1つの灯りが走ってくるのが見える。
おそらくランタンの灯りだろう。
「こっちから来たってことは、あれはにとりさんかな」
「ってことはそろそろ………お、あいつも来たみたいだねぇ」
今度は空を見上げる。すると確かに、そこには明らかに星明りとは違う、1つの灯りがあった。
「あややややー、減速しきれないー!誰か止めてー!」
空の灯りが叫び
「その声は、しゃまい、って、ちょ、こっち来るなー!」
地上の灯りが悲鳴をあげ、
ドスンと鈍い音がして、2つのランタンと同時に射命丸先輩とにとりさんの2人はぶつかって倒れた。
「あいたたた、射命丸、もうちょっと気をつけて飛行してよ」
「あやや、すみません、焦っていてつい」
と、2人は痛いところをさすりながら身を起こし、
「あれ?射命丸、そいつは?」
「そう言うにとりこそ」
互いのランタンを見て、固まった。
射命丸先輩はキュウリのランタンを、にとりさんはカボチャのランタンをそれぞれ手に持っていたのだ。
「な、なんだよ、カボチャの方が絵になるって言ってたのは射命丸じゃないか!」
「にとりだって、キュウリは物理的、科学的に洗練されたフォームだって言ってじゃないですか!」
そして、再び沈黙。
「………………ぷ」
「………………くく」
「「あっはははははははははは!」」
と、今度は2人そろって、互いのちぐはぐなランタンを見て笑いあった。
やがて、それもひと段落ついて
「…………そうだ、人里に行きません?」
「はい?」
「確か、今日は里でプリズムリバーのハロウィンライブがやってるんですよ」
「え、で、でも、人ごみはちょっと……………」
「まだその人見知りは治らないんですか?」
「言ったなー!射命丸と一緒ならどこにでも行ってやるー!」
「決まりですね」
と、2人は手をとりあって、人里への道を歩みだそうと
「あ、そうだ、椛、そこにいるでしょう。出てきなさい」
「え?ば、ばれてる!?」
気がつけば、天狗の隠れ蓑は、勇儀さまと一緒にどこかに消えてしまっていた。
私のすぐ足元に、西瓜のランタンだけが転がっていた。
「椛も一緒に来なさい」
「え、でも…………」
「そうだね、それがいいさ」
「………じゃ、お言葉に甘えて」
こうして、暗い夜の山道を、南瓜と西瓜と胡瓜のランタンが、仲良く3つ並んで人里に下りていった。







「いやー、たまには椛に一喝されるのも斬新ですねー。ところで、にとりの家には誰か来ました?」
「ああ、なまはげの仮面をかぶった誰かが『ワリぃ子はいねぇかぁ』って、包丁振り回して来たよ」
勇儀さま…………………(絶句












(麓の道にて)

「へっくしゅん、誰かが私のうわさをしてるな?」
カラン、カラン、と下駄の音。
「それにしても冷えるねー。こういう日は、萃香と熱燗に限るねぇ。さて、あいつはどこにいるかな?」
カラン、カラン、と下駄の音。
「トリック・オア・アルコール♪」
妖気で、陽気な、一人歌。
「今夜も酒が鬼を、待っている~♪」
カラン、カラン、と下駄の音。







 
【博麗神社前】
「勇儀ぃぃぃ!」
「おや、萃香じゃないか。どうした、鬼が泣いちゃさまにならんぞ」
「ひっぐ、ひっぐ、だってぇ………霊夢に『トリック・オア・アルコール』って突撃しようとしたら」
「私とおんなじこと考えていたんだな」
「神社の、神社の鳥居に、柊の葉といわしの頭が…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「泣くな、萃香。今夜は呑もう。呑んで呑んで、嫌なことはすべて流そう。な?」
「う、うん………よーし、勇儀ー!今夜は呑むぞー!」
「よし、行くぞ、萃香!夜雀の屋台はまだやってるさ!」
地球人撲滅組合
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ハロウィンのランタンって一番最初はカブだったんですよね、アメリカにわたってカボチャになったみたいですけど、
なら幻想郷のハロウィンはキュウリってことにしてもOKな気がしないでもないですけどね。
2.謳魚削除
勇儀姐さんカッコいー。
そこでなまはげチョイスなんて痺れちゃう。
読み終わった後にふと文にとが頭を過ぎったのは何故なんだろう。
3.名前を表示しない程度の能力削除
なぜか駄目いまるにツボったww
しかし椛勇とは珍しい組み合わせ。新鮮さをありがとう。

>射命丸先輩がマッハで空を駆けることができるなら、私はマッハで土下座することができる
四行で終わる話を思い出したw
4.喚く狂人削除
きゅうりはほとんどが水分でできている。
つまり、中身をくりぬき乾燥させてランタンにすると、しわしわのくちゃくちゃになっちゃう。
等と真面目に考えてみる



大丈夫、私なんて今から書くところですよ?
5.名前が無い程度の能力削除
十月ーはハロウィンーで酒が飲めるぞー
酒が飲める飲めるぞー酒が飲めるぞー
という歌が頭をよぎった。