Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

けーねとこいぬ

2008/10/31 23:16:29
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  これはどうしたものだろう。


私、上白沢 慧音が朝起きて外に出てみると、門戸の前に何やら箱が置いてあった。
何だろうと思い開けてみると、その中には蠢く影が四つ。
危険な物かと思ったのも束の間、よくよく見てみると可愛らしい毛並みの子犬が四匹。
兄弟なのだろうか、全ての毛の色が茶色とも焦げ茶色ともとれる風合いだ。


  これは…一般的に柴犬と呼ばれる犬種だな。いやいや、雑種かもしれない。


正直それは大した問題ではない。
なぜ、この子たちは私の家の前に、それも箱に入れられていたというのだろうか。
首を傾けていると、箱の下に紙が置いてあるのを見つけた。


  これは…?
  『この子たちをお願いします』
  …まぁ、そんなことだろうとは思っていたさ。


犬は人間の友、しかし裕福でない家の者にとってそれを飼うというのは困難だ。
今回の場合など四匹もの子犬なのだ。一般の家庭であってもこれは厳しいだろう。
成程、誰かを頼らざるを得ない状況だったというのは把握した。


  しかし…どうしたらいいのやら。
  さすがに私でもこれだけの数は面倒を見切れないだろうし…


ふと視線を感じて箱に目をやると、つぶらな八つの瞳が私を見つめていた。
どうやら私に興味津々のようだ。子犬とは何にでも興味を示すからな。


  どれ、朝飯前に少し構ってやるとするか。出ておいで。


一匹ずつ丁寧に箱から出してやると、四匹全てが私の足元に群がってきた。
動くものが珍しいのだろう、体を擦りつけるようにして私の匂いを確かめている。
子犬の視線に合わせるのはさすがに無理だが、しゃがんで顔を近づけてみることにした。


  ふふ…みんな元気がいいな。何よりの事だ。
  こらこら、顔をなめるんじゃない。くすぐったいじゃないか。
  ちょ、おい、どこに顔を突っ込んでるんだ。やめなさ、あん…


ちょっと一悶着あったけど、どうやらみんな元気のようだ。しかし先程の行動はいただけない。
今はもう立ち上がってはいるが、それでも子犬たちは私の足元でたむろっている。
元気がいいのは結構なのだが、本当にどうしたものだろうか。


  …まぁ、何にせよまずは朝飯だな。子犬には何を食べさせたらいいのだろう?


味が濃いものは駄目だと聞いたことがあるような気がする。朝からそんなものを作る気にはならないがな。
ここは無難に牛乳が良いのだろうか…?


  少し温めてやれば大丈夫だろう。お前たちもそれでいいか?


私の問いかけに、四匹全員が元気よく返事をする。私の言っていることが分かっているのか?
……いやいや、さすがに偶然だろう。


  ちょっと待っていろ。すぐに準備してやるからな。


再び元気のいい返事が返ってくる。偶然だよな…?
幼いながらに賢い、ということにしておこう。
朝飯を食べたら…この子らを引き取ってくれる相手を探さないといけないな。




    ~    ~    ~




私は今、空を飛んでいる。その手には朝方家の前に置いてあった箱がある。そしてその中には、当然四匹の子犬たちが入っている。
朝食を食べ終わったので、早速引き取り手を探すために外に繰り出したのだ。
しかし、なかなかこれといった人物に出会えず、私は少し困り始めていた。


  霊夢辺りが丁度いいかと思ったんだが…まさか子犬を見て涎を垂らすとは思わなかった…
  はぁ、どこかにいい相手はいないものだろうか……おや、あれは。


私の視線の先には四人組の妖精やら妖怪やらが集まっていた。どうもみんなで遊んでいるらしい。


  氷精に屋台の店主の夜雀、それに蟲の妖怪に宵闇の妖怪か。そういえば仲がいいのだったな。


パッと見どこに共通点があるのか分からないが、一つだけ通ずるものがあの四人にはある。
それはあれだ。ちょっと頭が弱いというか、かわいそうな子たちなのだ。


  彼女らは四人…そして子犬もちょうど四匹か……さて、どうしたものだろう。


そういえば動物を飼うというのは情操教育に良いという話があるな。
もしかしたらこの子たちを彼女らに託すことで、子犬の飼い主は見つかるし、彼女たちの成長も促せるのでは…?
うん、これは我ながらよい考えだ。早速話をしてみるとしよう。


  なぁ、ちょっといいかな?

「なにさ、あんた」
「ちん?」
「あ、人里の先生さんだ」
「そーなのかー」

  そう身構えることはない。今日はちょっとお前たちに頼みたい事があってやって来たのだ。

「ふーん。で、頼みたい事ってなに?」
「なんなのかー?」

  率直に言わせてもらうとしよう。お前たち、犬を飼ってみる気はないか?

「いぬぅ?」
「私たちが飼うの?」


私の突然の提案に氷精と蟲妖怪が困惑した声をあげる。
他の二人も声に出してはいないが、首をかしげてよく分からないといった表情をしている。 


  そうだ、ちょうどここに四匹の子犬がいる。この子たちは捨て犬でな、本当は私が面倒を見れたらよいのだが、さすがにこれだけの数は…

「ちん。それで私たちに貰ってほしいの?」

  そういうことだ。よかったらこの子たちの面倒を見てはくれないだろうか?


私の話を受けて、四人は顔を突き合わせて何事かを相談している様子だ。
恐らくは、どうしようかと話し合っているのだろう。
暫くして相談が終わったのか、四人が私の正面に立ち、氷精が代表して声を出した。


「いいよ。面白そうだし、あたいたちが貰ってあげる」

  おお、それは非常に助かる。この箱の中に子犬たちが入っているから、それぞれどの子を貰って行くかは相談して決めてくれ。

「どれどれ…うわぁ…」


四人は箱の中の子犬を目にすると、わずかな歓声をあげる。
やはり少女らしく可愛いものが好きなのだろう。各々が一匹ずつ抱き上げて早速じゃれ合っている。


  この様子なら大丈夫そうだな…


私はいくつかの注意点を四人に教授して、自宅へ帰ることにした。
いやぁ、良い引き取り手が見つかって安心した。彼女らなら子犬を可愛がってくれることだろう。




    ~    数日後    ~




  ふぅ…落ち着くなぁ。


昼食を食べ終わった私は、食後のお茶を楽しんでいるところだった。


  そういえば、あの子犬たちは元気だろうか。可愛がってもらっていれば良いが…


手渡した相手の事を思い出してみる。共通点は、頭が弱い…


  …今さらながらに不安になってきた。ちょっと様子を見てくるとするか。


先日と同じように、外へ出て空を飛ぶことにした。
どうなっていることやら…




    ~    チルノの場合    ~




フラフラと当てもなく彷徨っていると、つい先日出会った顔を見つけることができた。
どうやら子犬と一緒に遊んでいるようで、どちらも活発に動き回っている。


  なんだ、ある意味一番心配だったが、仲良くやっているみたいじゃないか。


ほっと一安心して、どんな調子か聞こうかとも思ったが、あまりに楽しそうに遊んでいるので、邪魔しては悪いと思いその場を去ることにした。
そんな私の耳に、氷精のとても元気な声が届いた。


「よーし、じゃあ次はこれだよ! 氷符『アイシクルフォー…』」

  待てぃ!!

「うわ! …なんだ、この前の奴じゃん。何か用?」

  『何か用?』、じゃない! お前は子犬相手に何をしているのだ!?

「何って…特訓よ」

  はぁ? 特訓?

「さいきょーのあたいのパートナーなんだから、よわっちいのは駄目なの。だから特訓してんのよ」

  そんなことでスペルカードまで使うやつがあるか!!

「だいじょーぶよ。ちゃんと手加減してるから、当たってもちょっと痛いくらいだって」

  そういう問題ではなくて…

「それに、イージーだからこいつでも頑張れば避けられるって。見ててよ」

  あ、ちょっと待て…!


そう言って氷精は私の制止も聞かずに高々と宣言する。
氷符『アイシクルフォール ‐easy‐』と…


「むむ…! 相変わらずやるじゃないの。でもまだまだ残り時間はたっぷりあるんだからね!」


子犬はチルノの目の前で鎮座したまま動かない。チルノを見上げて小首をかしげている。
そして、相変わらず…という言葉。今まで同じことをやってきたのだろうか…?
氷精が放つ弾幕は、子犬を見向きもせずに明後日の方向へ飛んでゆく。心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。


  …まぁ、手加減しているみたいだし、いいか。次に行こう。

「さすがあたいのパートナーね。これを避けきるなんて。
 でも次はそう上手くいくかしら? いくわよ、氷符『アイシクルフォール ‐easy‐』!」


さっきと一緒じゃないか…


「むきー! なんで当たんないのさ!? ちょっと生意気よ、アームストロング!!」


……それ名前? 突っ込む気力も湧かないな。好きにやっていなさい。




    ~    ミスティアの場合    ~




彼女の居場所に関してはおおよその見当が付いている。
いつも屋台が置いてある場所に顔を出すと、そこには仕込みをしている彼女の姿があった。そのすぐ傍には子犬の姿も確認できる。


  こんにちは。精が出るな。

「あ、この間の。何か用かしら?」

  いやなに、子犬の様子が気になっただけさ。

「そうだったの。ちんちん」 「キャンッ」

  元気そうだな。心配するまでもなかったか。しかし、ちょっと太った気がするな…

「ついついご飯を多くあげすぎちゃって…」

  それはあまり良くないな。可愛がるのは結構だが度が過ぎては良くない。加減というものを覚えないと駄目だぞ。


私の説教にうなだれながら、彼女が「ちんちん」と鳴くと子犬が「キャンッ」と鳴く。
……なんかおかしくないか?


  一つ聞いてもいいだろうか。

「なぁに? ちんちん」 「キャンッ」

  ……その子の名前は何だ?

「私はまだ決めてなかったんだけど…」

  だけど?

「この子に向かって鳴いてるうちに、それを自分の名前だと思うようになっちゃって…ちんちん…」 「キャンッ」

  …ということは、この子の名前は、その、つまり…ち、ちん…ち…ん…なのか?

「そうみたい…でもね、この子すごく賢くって、もう芸を一つ覚えたんだよ」

  ほう、それは大したものだ。見せてもらってもいいかな?

「いいわよ。コホン……ちんちん、ちんち」

  いや、やっぱり結構だ。私は先を急ぐので、これで失礼するよ。

「あれ、もう行っちゃうのー? ほらほら、こんなにちっちゃなちんちんが立ってるんだよー?」


背中から聞える声を絶対に聞かないように耳を塞ぎながら飛び立つ。
あの夜雀め……よりにもよって一番教えてはならない芸を教えおって…狙ってやってるんじゃないだろうな?




    ~    リグルの場合    ~




次は蟲の妖怪の少女を探しているのだが、正直彼女が一番安心できる。
あの四人の中では、恐らくトップクラスに理性的だろうし、なんとなく面倒見が良さそうだ。


  しかし…彼女はどこにいるのだろうか?


当てもなくフラフラ飛んでいたら、不意に下の方から犬の鳴き声がした。
もしやと思って視線を降ろすと、そこには緑色の髪をした少女と子犬の姿があった。間違いなさそうだ。
降りる時に彼女が子犬と戯れている様子が見受けられた。木の枝を投げて、それを取りに行かせているようだ。
戻ってきた子犬を優しく抱き上げて労っている様子が見て取れる。顔を舐められてくすぐったそうにしているのが何とも微笑ましい光景だ。


  こんにちは。上手くやっているようだな。

「あ、先生さんだ。こんにちは」

  ああ。どうやらちゃんと可愛がっているみたいで安心したよ。

「様子を見に来たの? でも大丈夫。私たちはこんなに仲良しなんだから。ね?」 「キャンッ」

  ふふ、そのようだな。ところで、その子に名前はもうつけたのか?

「うん。ブラックタイガーっていうの」

  ブラック…そ、それはまた大層な名前だな。何か由来でもあるのか?

「私がつけたんじゃないんだ。どうしようか悩んでる時に竹林の兎さんに会って、その子に考えてもらったの。
 何でも、そういう名前の虫がいるから私のペットにピッタリだって。格好いい名前だったから、それでいいかなぁと思って」

  竹林の兎…? それは、あの黒髪の?

「うん。てゐっていう子だよ」


それでブラックタイガーとは…つまりそういうことなんだろうな。
この子に関しては心配していなかったというのに、こんな所で落とし穴があったとは…


  …一つだけ教えてやろう。

「なに?」

  ブラックタイガーとは、食用のエビの名前で、ましてや昆虫ではないぞ。

「マジで!?」


もはや何も言うまい。哀れなり。




    ~    ルーミアの場合    ~




呆然自失のリグルから、なんとか宵闇の妖怪のいそうな場所を聞き出し、今はそこに向かっている。
すると、真昼だというのに明らかに不自然な暗闇が一つフワフワ飛んでいた。あれだな。


  おぉーい。ちょっと待ってくれないか。

「だーれ? 私を呼ぶのは」

  私だよ。ほら、つい先日会ったばかりだろう。

「あー、この間の。お久しぶりなのかー」

  ああ、久しぶりだな。

「今日はどうしたの? 私に何か用?」

  そうだな…お前に用というか、子犬の様子を見に来たのだが、一緒にいないのか?

「子犬? 今は家に置いてあるよ」

  そうなのか? しかし子犬だぞ。迂闊に家に置きっ放しにしては、どんな悪戯されるかわかったものじゃないぞ?

「悪戯なんてやりっこないわよ」

  む、それほどまでに躾けたということか。大したものだ。


彼女に関してはチルノ並に心配だったのだが、どうやら杞憂だったようだ。
いや、見た目で判断するとは私もまだまだ甘い。彼女に対して失礼だったな。


  ところで様子はどうだ? 元気にしているか?

「んー……元気はないと思う」

  おいおい、それは大変じゃないか。ほったらかして大丈夫なのか?

「大丈夫よ。もうそんなこと気にする必要ないし」

  ということは、何がしかの処置を施したというのだな?

「処置? うーん、そういうことになるのかな?」

  そうか…それならいいんだ。ところで、子犬を飼い始めて数日経ったわけだが、あの子はどうだ?

「あの子? うん、とっても…」

  可愛いか? そうだろうとも。何であれ子供とはかわい…

「美味しいよ」

  ………なんだと?

「昨日の夜に半分だけ食べたの。まだ半分家に置いてあるから、今晩が楽しみなんだ」


私は何も言わずに、即座に彼女に子犬を与えた歴史をなかったことにした。
この手のルーミアのオチは何番煎じか分かりませんが…

本当は注意書きを冒頭に置きたかったのですが、それをやった場合、ただでさえ分かりやすいオチがモロバレになると思いましたので…

このお話を読んで不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら、心よりお詫び申し上げます。本当にごめんなさい。
お腹が病気
コメント



1.喚く狂人削除
とりあえず、犬がどこに顔を突っ込んだか詳細を書く作業に戻るんだ。
2.名前が無い程度の能力削除
なるほど、無かったことになった子犬は今は慧音か妹紅のところで元気いっぱいなんだろな。ちょっと見てみたい

それにしてもみすちーの最後の台詞、笑うところなはずなのになんで心に痛いんだろう…おかしいな…
3.欠片の屑削除
ルーミアに上げたらイカンだろ、センセw
それとブラックタイガーてwww
4.亜虎削除
羊頭狗肉の故事では、犬の肉は相当不味いそうなんだが……。
ルーミア、もしや悪食?
5.灰華削除
落ち着け、喚く狂人よ!

・・・・・・で、子犬はどこに顔を突っ込んだんですかな?w
6.名前が無い程度の能力削除
ブラックタイガーwwww

で、子犬がどこに顔を突っ込んだのか早く続きをwwwwww
7.名前が無い程度の能力削除
子犬がどこに顔を突っ込んだのかだって?
そんなの胸と股の間にきまっ(ry
おや?けーねが来たようだ。ちょっと逝ってくる。
8.シリアス大好き削除
>ルーミア、もしや悪食?
昔の人の話だと、犬肉って割合いけるそうです。
(チャウチャウは元々中国で食用として飼育されてました)
逆に猫肉はアクって言うかギトギト脂が出る為、あんまり美味しくない。
(調理が面倒な上、口当たりも...)
9.名前が無い程度の能力削除
慧音には悪いが、この結果は仕方が無いかと…