「ふむ・・・ふむ・・・」
レミリアは自室で一つの冊子に目を通していた。
その冊子の各ページには少女の写真が貼り付けてあり、生年月日、血液型、住所、性格、職業などが書いてある。
これはレミリアにとっての食事のメニューリストとして使われているものであり、特に満月の夜が近づくと少女をさらってはその血をいただいているのである。
幻想郷に住む妖怪の多くは老若男女問わず獲物の血肉を啜るが、レミリアは夜の王というプライドがあり、自分の口に合う者を選び、食しているのだ。
「ふむ・・・ん?」
と、一人の少女にレミリアの目が留まる。
目が留まると言っても、その少女のプロフィールだけで写真には目もくれない。
彼女は外見ではなく、内面を見て決めるからだ。
かつて貴族の娘をさらって血を吸ったことがあるが、運動もろくにせずただ贅沢な生活を送ってきた人間の血がドロドロとして不味いということがわかっている。
それ以来、食事とする少女のリストを作るようになり、ハズレを減らすことに成功した。
「今日のディナーが決まったわ。」
自分の傍に置いていたメイドの方を見てレミリアは嬉しそうに微笑み、メイドはその悪魔の笑顔に背筋を凍らせた。
「この子を連れてきて。」
リストに載っているその少女を指差して言うと、レミリアはメイドにリストを投げつける。
メイドは乱暴に渡されたリストを貰うと震えた声で返事をし、急ぎ足でレミリアの部屋を出て行った。
「・・・ククク」
レミリアは部屋で一人きりになると窓辺に行き、遠い目で少女が紅魔館へ訪れるのを待つのだった。
それから数時間後、メイドがリストの少女を連れてレミリアの部屋に戻ってきた。
少女は紅魔館に無理矢理引っ張って来られたようで、彼女の体は擦りむいた後やコブなどができていた。
「ダメよ。女の子は丁寧に扱ってあげなきゃ。こんなに震えているじゃないの。」
そう言って、レミリアが少女の肩に触れると少女は体を強張らせた。
「ひぃっ。」
少女には目の前にいる妖怪らしき女の子が自分をさらうよう指示した張本人であり、自分を食べようとしていることが安易に予想できた。
少女の外見年齢は13,4歳程度でレミリアよりも少し大きいくらいの背格好である。
体格差はあるが、それが関係するのは人間同士だけの話であり、妖怪の前では当然無意味である。
「紅魔館へようこそ。あなた、とてもおいしそうね。」
ドクン・・ドクン・・・
少女の胸の鼓動が高鳴り、冷や汗が出てくる。
自分の命が短くなっていくのを肌で感じていた。
「そこのメイド、もういいわよ。私はこの子と二人っきりになりたいから出て行ってちょうだい。」
メイドはペコリとお辞儀をするとレミリアの部屋を出て行く。
今度は一仕事を終えたということもあり、足取りが非常に落ち着いていた。
パタン・・・
「あっ・・・」
静かに扉が閉まるといよいよ少女は自分の死がすぐ傍まできているのを感じた。
目の前の妖怪は完全に自分を捕まえている。
現実的には肩に手が軽く置かれているだけだが、見つめられる赤い瞳の前に目を背けることもできず、逃げ道を探そうとすることも手段を考えることさえもできずにいた。
蛇に睨まれたかえるというやつだ。
「自己紹介が遅れたわね。私はこの紅魔館の主人であるレミリア・スカーレット。
吸血鬼と言われる妖怪よ。」
「レミ・・リア・・・?」
「そう。まぁそう堅くならずに、レミリア様と呼んでくれていいわよ?」
レミリアは軽い冗談を言ったつもりなのだろうが、怯えきった少女はコクコクと頷くしかなかった。
しかしその少女の態度が気に入らなかったのか、レミリアは不機嫌そうな顔をすると少女を自分の方に引き寄せて抱きかかえた。
「ぃ、いやっ!」
「大丈夫、痛くしないわよ。」
「やめて、放し――」
チュッ・・・
「ひぅっ。」
少女は首筋に妙な感触を感じると大人しくなった。
レミリアの唇が当たり、腰が抜けてしまったのだ。
「そう、いい子ね。手荒なマネはしたくないの。」
首筋にかかるレミリアの息が少女の力をどんどん削いでいくいようだった。
自分の体を自然とレミリアの方へと預けていってしまい、いつでも食べられる状態となった。
怖くても身を震わせることさえできず、もはや目を閉じて己が運命を任せることしかできないのであった。
「私の質問に答えて。」
「・・・はい。」
なんだろう――少女はどんな食べられ方が良いかを聞かれるのかと思った。
「あなたは町の飲食店で働いていて、美人と評判のようね。」
「は、はい、たぶん。」
たぶんとは後半の方だ。確かに彼女は職場では良くも悪くもそんな扱いを受けた覚えがあった。
「あなたのお店はおいしそうなヤツが揃っているわね。私も一度は行ってみたいわ。ねぇ?」
「だ、だめですっ。」
「冗談よ。あなたはただ私の言うことに従えばいい。そうすることで皆助かるんだから。」
つまりお店にいる従業員は人質で少女がどうするかでその運命が決まるということのようだ。
しかしこの取引に意味はあるのだろうか?
圧倒的に少女が不利な立場だというのに、この妖怪が果たしてその約束に従うのか。
「あなたの道は一つしかないのだけれどね。」
しかし、それもそうであった。
少なくとも今自分は目の前の妖怪に捕らえられ、どの道ここで果てることが運命づけられているのだ。
もう、どうにでもなれ―――少女は理解したように、コクリと頷く。
「決まりね。」
レミリアはニタリと笑うとより強く少女を抱きしめた。
少女はとうとう最期の時がやってきたと覚悟を決めた。
吸血鬼に血を吸われる時、この世のものとは思えない快感を感じることができる。
少女は死の恐怖よりもその快感を受け入れようとレミリアに完全に身を任せた。
と、その瞬間に耳元で囁く声が聞こえる。
「ミラノ風ドリア」
耳元に聞こえてきたのは自分が働く店の安くて美味いと評判のメニューだった。
「え?」
何故レミリアがそれを知っているのか、彼女は驚いた。
いや、それよりもこの場で注文されたことに驚いた。
「食べてみたいの。作って。」
「あ、あの・・・」
突然の注文に少女は戸惑った。
いつもなら「かしこまりました」と言ってさがれば良いのだが、何せここは悪魔の城だ。
簡単にできるわけがない。
「私の言うことが聞けないと、どうなるかわかっているわよね?お店がどうなってもいいの?」
レミリアの吐息が首筋にかかるのを感じると再び緊張の時が訪れる。
そう、今従業員は人質に取られている。少女は状況を理解した。
つまりレミリアは少女にミラノ風ドリアを作らせるために紅魔館に連れてきて、できなければ自分諸共従業員を食べるという―――
「私一人で、あなたの店のドリンクを飲み干すわよ。」
「なっ!?」
サーバーの補充が大変なってしまうじゃないか―――少女を地味に困らせた。
「さぁ、やるの?やらないの?」
「・・・で、できません。」
少女の拒否をする言葉が出てきたその瞬間、レミリアの目が大きく開いた。
「ふざけるなっ!!」
「きゃあっ!!?」
スカーレットデビルの気の開放によって少女は後方に吹き飛ばされた。
その勢いは壁にぶち当たりそうなほどだったが、飛んだ瞬間にレミリアに胸倉を掴まれて引き寄せられる。
先ほどの冷たく重たい空気とは打って変わって、目の前に立っている妖怪は紅く燃えるようなオーラを立ち昇らせていた。
レミリア・スカーレットの本性が表れたのだ。
「できないだと?嫌でもやるんだよ!お前はそういう運命を強いられているんだから!」
「で、できないものはできません!私はただのウェイトレスなんですから!」
「なん・・だと・・・?」
服が握られることでぎちぎちと悲鳴をあげている。
少女はアイロンがキチンとかけられたワイシャツを着ていたが、シワだけでなくレミリアの強く握った拳から流れる血によって汚されていく。
しかし少女はそんなことは気にならない。いや、気付かないのだ。
圧倒される気によってレミリアの瞳から逃れられない。
「・・・いいわ。ドリアができないのは仕方が無いとする。オムライスならできるのでしょう?」
「た、卵の形が汚くてもいいのな――あぅっ!!」
「卵が汚かったらケチャップで上手く名前が書けないじゃない!!」
「ご、ごめんなさい・・・」
ワイシャツの襟がギリギリと締まって、徐々に少女の首を圧迫していく。
レミリアの感情のコントロールが効かなくなっているのだ。
「最後のチャンスだ!お前、カレーはできるな!?」
「で、できません。」
「あぁっ!?」
「そ、その・・・に、肉じゃがなら・・・」
「具が多少同じでも味が違ったら意味が無い!!」
「ひぐぅっ!」
「肉じゃがさえできれば世の中渡っていけると思っているのか!?私の舌は、甘くは無いぞ!!」
ミラノ風ドリア(~~円)はいいのだろうか――徐々に薄れていく意識の中で少女の中に疑問が浮かぶ。
少女にはもう力は残っておらず、両腕はだらんと重力に従って垂れていた。
何回も死を覚悟したが、とうとうその時が訪れたのだと感じ、目を閉じてこの世に別れを告げた。
「・・・帰れ。お前にもう用は無い。」
ところが、レミリアは少女を解放するのだった。
乱暴に放されると少女はレミリアの前に倒れ込んだ。
「ごほっ、ごほっ!」
ようやく息を吸えるようになり、涙目になりながら深呼吸を繰り返す。
そんな少女を虫ケラを見るような目でで伺うとレミリアは背を向ける。
「もう帰って。私に変な期待をさせないで。」
紅いオーラはすっかり消え、ピンと張っていた雄雄しい羽はしゅんとなり、背中からは悲壮感が漂っていた。
「な、泣いているんですか?」
「泣いてない!」
「で、でも・・・」
彼女の足元に数滴の雫が落ちている。
「目がゴミに入ったのよ!」
さらりと怖い間違いをするあたり、どうやら冷静さを欠いているようだ。
このまま話し続ければ自分は殺されてしまうかもしれない。
けれども、目の前で泣いている小さな背中を放ってはおけなかった。
「レミリア様・・・」
「帰って。」
「あ、あの、注文を承りました。近いうちに必ず作りに参ります。」
「・・・・・」
「約束します。」
「・・・覚えておくわよ、その言葉。」
背中の羽がぐんぐんと元気になっていくのが見えた。
なんて喜怒哀楽が激しいのだろう―――少女はレミリアのギャップの激しさに母性本能をくすぐられる。
「だけど勘違いしないことね。それはあなたの意思ではない。
何故なら、あなたはこのレミリア・スカーレットの恐怖に突き動かされているのだから。」
レミリアは振り向くと鋭い眼光で少女を威嚇する。
鼻は真っ赤だった。
「は、はい。」
「では行きなさい!あなたはこれからミラノ風ドリアの作り方を勉強をしてくるの!」
「し、失礼します。」
そう言って、少女は部屋を出ていく。
「ぎゃおーー!!」
後方から元気な子供の声が聞こえてきたと思って振り向いてみれば、レミリアが両手を上げながらこちらを睨みつけていた。
彼女は自分を脅かして逃げるように帰らせようとしているのだろう。
とりあえずこの場を走り去った。
「食べちゃうぞーー!!」
少女は後ろから聞こえてくる声に、込み上げる感情を抑えながら外に向かって走った。
「はぶぅぅううっ!!」
が、精神的に疲労した彼女が耐えられはずもなく、鼻から血が噴出す機関車となって館内を駆け抜けた。
そしてその姿は紅魔館のメイドたちを怖がらせたという。
少女の名前は十六夜咲夜。
この少女が後に紅魔館のメイド長になることをまだ誰も知らない。
レミリアは自室で一つの冊子に目を通していた。
その冊子の各ページには少女の写真が貼り付けてあり、生年月日、血液型、住所、性格、職業などが書いてある。
これはレミリアにとっての食事のメニューリストとして使われているものであり、特に満月の夜が近づくと少女をさらってはその血をいただいているのである。
幻想郷に住む妖怪の多くは老若男女問わず獲物の血肉を啜るが、レミリアは夜の王というプライドがあり、自分の口に合う者を選び、食しているのだ。
「ふむ・・・ん?」
と、一人の少女にレミリアの目が留まる。
目が留まると言っても、その少女のプロフィールだけで写真には目もくれない。
彼女は外見ではなく、内面を見て決めるからだ。
かつて貴族の娘をさらって血を吸ったことがあるが、運動もろくにせずただ贅沢な生活を送ってきた人間の血がドロドロとして不味いということがわかっている。
それ以来、食事とする少女のリストを作るようになり、ハズレを減らすことに成功した。
「今日のディナーが決まったわ。」
自分の傍に置いていたメイドの方を見てレミリアは嬉しそうに微笑み、メイドはその悪魔の笑顔に背筋を凍らせた。
「この子を連れてきて。」
リストに載っているその少女を指差して言うと、レミリアはメイドにリストを投げつける。
メイドは乱暴に渡されたリストを貰うと震えた声で返事をし、急ぎ足でレミリアの部屋を出て行った。
「・・・ククク」
レミリアは部屋で一人きりになると窓辺に行き、遠い目で少女が紅魔館へ訪れるのを待つのだった。
それから数時間後、メイドがリストの少女を連れてレミリアの部屋に戻ってきた。
少女は紅魔館に無理矢理引っ張って来られたようで、彼女の体は擦りむいた後やコブなどができていた。
「ダメよ。女の子は丁寧に扱ってあげなきゃ。こんなに震えているじゃないの。」
そう言って、レミリアが少女の肩に触れると少女は体を強張らせた。
「ひぃっ。」
少女には目の前にいる妖怪らしき女の子が自分をさらうよう指示した張本人であり、自分を食べようとしていることが安易に予想できた。
少女の外見年齢は13,4歳程度でレミリアよりも少し大きいくらいの背格好である。
体格差はあるが、それが関係するのは人間同士だけの話であり、妖怪の前では当然無意味である。
「紅魔館へようこそ。あなた、とてもおいしそうね。」
ドクン・・ドクン・・・
少女の胸の鼓動が高鳴り、冷や汗が出てくる。
自分の命が短くなっていくのを肌で感じていた。
「そこのメイド、もういいわよ。私はこの子と二人っきりになりたいから出て行ってちょうだい。」
メイドはペコリとお辞儀をするとレミリアの部屋を出て行く。
今度は一仕事を終えたということもあり、足取りが非常に落ち着いていた。
パタン・・・
「あっ・・・」
静かに扉が閉まるといよいよ少女は自分の死がすぐ傍まできているのを感じた。
目の前の妖怪は完全に自分を捕まえている。
現実的には肩に手が軽く置かれているだけだが、見つめられる赤い瞳の前に目を背けることもできず、逃げ道を探そうとすることも手段を考えることさえもできずにいた。
蛇に睨まれたかえるというやつだ。
「自己紹介が遅れたわね。私はこの紅魔館の主人であるレミリア・スカーレット。
吸血鬼と言われる妖怪よ。」
「レミ・・リア・・・?」
「そう。まぁそう堅くならずに、レミリア様と呼んでくれていいわよ?」
レミリアは軽い冗談を言ったつもりなのだろうが、怯えきった少女はコクコクと頷くしかなかった。
しかしその少女の態度が気に入らなかったのか、レミリアは不機嫌そうな顔をすると少女を自分の方に引き寄せて抱きかかえた。
「ぃ、いやっ!」
「大丈夫、痛くしないわよ。」
「やめて、放し――」
チュッ・・・
「ひぅっ。」
少女は首筋に妙な感触を感じると大人しくなった。
レミリアの唇が当たり、腰が抜けてしまったのだ。
「そう、いい子ね。手荒なマネはしたくないの。」
首筋にかかるレミリアの息が少女の力をどんどん削いでいくいようだった。
自分の体を自然とレミリアの方へと預けていってしまい、いつでも食べられる状態となった。
怖くても身を震わせることさえできず、もはや目を閉じて己が運命を任せることしかできないのであった。
「私の質問に答えて。」
「・・・はい。」
なんだろう――少女はどんな食べられ方が良いかを聞かれるのかと思った。
「あなたは町の飲食店で働いていて、美人と評判のようね。」
「は、はい、たぶん。」
たぶんとは後半の方だ。確かに彼女は職場では良くも悪くもそんな扱いを受けた覚えがあった。
「あなたのお店はおいしそうなヤツが揃っているわね。私も一度は行ってみたいわ。ねぇ?」
「だ、だめですっ。」
「冗談よ。あなたはただ私の言うことに従えばいい。そうすることで皆助かるんだから。」
つまりお店にいる従業員は人質で少女がどうするかでその運命が決まるということのようだ。
しかしこの取引に意味はあるのだろうか?
圧倒的に少女が不利な立場だというのに、この妖怪が果たしてその約束に従うのか。
「あなたの道は一つしかないのだけれどね。」
しかし、それもそうであった。
少なくとも今自分は目の前の妖怪に捕らえられ、どの道ここで果てることが運命づけられているのだ。
もう、どうにでもなれ―――少女は理解したように、コクリと頷く。
「決まりね。」
レミリアはニタリと笑うとより強く少女を抱きしめた。
少女はとうとう最期の時がやってきたと覚悟を決めた。
吸血鬼に血を吸われる時、この世のものとは思えない快感を感じることができる。
少女は死の恐怖よりもその快感を受け入れようとレミリアに完全に身を任せた。
と、その瞬間に耳元で囁く声が聞こえる。
「ミラノ風ドリア」
耳元に聞こえてきたのは自分が働く店の安くて美味いと評判のメニューだった。
「え?」
何故レミリアがそれを知っているのか、彼女は驚いた。
いや、それよりもこの場で注文されたことに驚いた。
「食べてみたいの。作って。」
「あ、あの・・・」
突然の注文に少女は戸惑った。
いつもなら「かしこまりました」と言ってさがれば良いのだが、何せここは悪魔の城だ。
簡単にできるわけがない。
「私の言うことが聞けないと、どうなるかわかっているわよね?お店がどうなってもいいの?」
レミリアの吐息が首筋にかかるのを感じると再び緊張の時が訪れる。
そう、今従業員は人質に取られている。少女は状況を理解した。
つまりレミリアは少女にミラノ風ドリアを作らせるために紅魔館に連れてきて、できなければ自分諸共従業員を食べるという―――
「私一人で、あなたの店のドリンクを飲み干すわよ。」
「なっ!?」
サーバーの補充が大変なってしまうじゃないか―――少女を地味に困らせた。
「さぁ、やるの?やらないの?」
「・・・で、できません。」
少女の拒否をする言葉が出てきたその瞬間、レミリアの目が大きく開いた。
「ふざけるなっ!!」
「きゃあっ!!?」
スカーレットデビルの気の開放によって少女は後方に吹き飛ばされた。
その勢いは壁にぶち当たりそうなほどだったが、飛んだ瞬間にレミリアに胸倉を掴まれて引き寄せられる。
先ほどの冷たく重たい空気とは打って変わって、目の前に立っている妖怪は紅く燃えるようなオーラを立ち昇らせていた。
レミリア・スカーレットの本性が表れたのだ。
「できないだと?嫌でもやるんだよ!お前はそういう運命を強いられているんだから!」
「で、できないものはできません!私はただのウェイトレスなんですから!」
「なん・・だと・・・?」
服が握られることでぎちぎちと悲鳴をあげている。
少女はアイロンがキチンとかけられたワイシャツを着ていたが、シワだけでなくレミリアの強く握った拳から流れる血によって汚されていく。
しかし少女はそんなことは気にならない。いや、気付かないのだ。
圧倒される気によってレミリアの瞳から逃れられない。
「・・・いいわ。ドリアができないのは仕方が無いとする。オムライスならできるのでしょう?」
「た、卵の形が汚くてもいいのな――あぅっ!!」
「卵が汚かったらケチャップで上手く名前が書けないじゃない!!」
「ご、ごめんなさい・・・」
ワイシャツの襟がギリギリと締まって、徐々に少女の首を圧迫していく。
レミリアの感情のコントロールが効かなくなっているのだ。
「最後のチャンスだ!お前、カレーはできるな!?」
「で、できません。」
「あぁっ!?」
「そ、その・・・に、肉じゃがなら・・・」
「具が多少同じでも味が違ったら意味が無い!!」
「ひぐぅっ!」
「肉じゃがさえできれば世の中渡っていけると思っているのか!?私の舌は、甘くは無いぞ!!」
ミラノ風ドリア(~~円)はいいのだろうか――徐々に薄れていく意識の中で少女の中に疑問が浮かぶ。
少女にはもう力は残っておらず、両腕はだらんと重力に従って垂れていた。
何回も死を覚悟したが、とうとうその時が訪れたのだと感じ、目を閉じてこの世に別れを告げた。
「・・・帰れ。お前にもう用は無い。」
ところが、レミリアは少女を解放するのだった。
乱暴に放されると少女はレミリアの前に倒れ込んだ。
「ごほっ、ごほっ!」
ようやく息を吸えるようになり、涙目になりながら深呼吸を繰り返す。
そんな少女を虫ケラを見るような目でで伺うとレミリアは背を向ける。
「もう帰って。私に変な期待をさせないで。」
紅いオーラはすっかり消え、ピンと張っていた雄雄しい羽はしゅんとなり、背中からは悲壮感が漂っていた。
「な、泣いているんですか?」
「泣いてない!」
「で、でも・・・」
彼女の足元に数滴の雫が落ちている。
「目がゴミに入ったのよ!」
さらりと怖い間違いをするあたり、どうやら冷静さを欠いているようだ。
このまま話し続ければ自分は殺されてしまうかもしれない。
けれども、目の前で泣いている小さな背中を放ってはおけなかった。
「レミリア様・・・」
「帰って。」
「あ、あの、注文を承りました。近いうちに必ず作りに参ります。」
「・・・・・」
「約束します。」
「・・・覚えておくわよ、その言葉。」
背中の羽がぐんぐんと元気になっていくのが見えた。
なんて喜怒哀楽が激しいのだろう―――少女はレミリアのギャップの激しさに母性本能をくすぐられる。
「だけど勘違いしないことね。それはあなたの意思ではない。
何故なら、あなたはこのレミリア・スカーレットの恐怖に突き動かされているのだから。」
レミリアは振り向くと鋭い眼光で少女を威嚇する。
鼻は真っ赤だった。
「は、はい。」
「では行きなさい!あなたはこれからミラノ風ドリアの作り方を勉強をしてくるの!」
「し、失礼します。」
そう言って、少女は部屋を出ていく。
「ぎゃおーー!!」
後方から元気な子供の声が聞こえてきたと思って振り向いてみれば、レミリアが両手を上げながらこちらを睨みつけていた。
彼女は自分を脅かして逃げるように帰らせようとしているのだろう。
とりあえずこの場を走り去った。
「食べちゃうぞーー!!」
少女は後ろから聞こえてくる声に、込み上げる感情を抑えながら外に向かって走った。
「はぶぅぅううっ!!」
が、精神的に疲労した彼女が耐えられはずもなく、鼻から血が噴出す機関車となって館内を駆け抜けた。
そしてその姿は紅魔館のメイドたちを怖がらせたという。
少女の名前は十六夜咲夜。
この少女が後に紅魔館のメイド長になることをまだ誰も知らない。
いいぞもっとやれw
ちょっとドリアとオムライスとカレー喰ってくる!
地味な嫌がらせw素晴らしすぎるww
あーもうおぜうさまカリスマだよおぜうさま
レミリアがカリスマかと思ったら途中から駄々漏れwwwww
ようやったwwwようやったwwwwうぇwwうぇwwww
話が始まってから違うと思わせて結局このオチかw
緋想天のレミリアのVSCOMでの天子に対する勝ち台詞を思いだした。
あー面白かったwww(涙目)
最後のぎゃおー!たb(ryが無かったら文句なしだったんだけどなぁ
それで興ざめた・・・
何か大切な事を気付かされた気がした!
お、こんなところに肉じゃがが・・・・・・
なんて地味な嫌がらせw
お嬢様かわいすぎるw
ぎゃおー たb のくだりで萌え死んだwwwwww
ミラノ風ドリアを作った日に正式採用かな?w
なんだこのイヤガラセwwwwwwww
面白いじゃないかえww
カリスマどこいったwww