※虫とか苦手な人はご注意ください。
……はいどうも皆さん、リグル・ナイトバグです。
私幻想郷の妖怪でして、一応、蟲の王とかやらせてもらってます。
まあ幻想郷縁起には「蟲の王がこんな少女の姿をしている時点でその衰退ぶりがよく分かる」とか書かれてますけどねアハハ。
でまあ、そんなこんなで楽しい日々を過ごしているわけですけれども、最近友達に聞かれたんですよ。
「リグルってキモい虫たくさん操れるじゃん。ゴキブリとか毛虫とかムカデとか纏わりつかせてやれば、巫女でも悲鳴上げて逃げ出すんじゃないの?」
ってね。
まあ、個人的には毛虫さんのふさふさの毛とか、ゴキブリさんのつやつや具合とか、ムカデさんの優雅な足さばきとかの魅力が分からない時点でどうも彼女とは感性が合わないなあ、と感じたりするわけですけれども。
いやいや、今はそんなことはどうでもよろしい。
で、そんな私が何故巫女に勝てないか、ですけれども。
近くにいた他の友達は、こんなことを言っておりました。
「馬鹿だなー、あんな辺鄙なところに住んでる巫女なんだから、虫ぐらい慣れっこに決まってんじゃーん」
と。
要するに、虫に纏わりつかれても平気だから、そういう嫌がらせ的な攻撃は効かないだろう、ということですね。
たぶん、あなたも同じような理由を想像されたんじゃないかと思います。
……でもね、違うんですよ。
あの巫女。あれはヤバい。正直ヤバすぎる。我々の想像の範疇を超えた存在ですね、アレは。
私も、昔は私の友達みたいに考えてたんですよ。
いかに博麗の巫女とは言え人間の女の子。蟲をたくさんけしかけてやれば悲鳴を上げて逃げ出すだろう、と。
つまり「博麗の巫女を退散させられる私最強」とか、内心で驕ってたわけです、私は。
今考えるとバカですね。井の中の蛙大海を知らずってやつです。いや私蛙じゃなくて蟲ですけど。
そんな私が、ある異変の晩に巫女と初遭遇しまして。
「お、これはチャンスだ! 蟲たちをけしかけて悲鳴を上げさせてやれ!」
と、こう考えて、早速実行したわけですよ。
私がパチンと指を鳴らすと同時に、嵐のような羽音を巻き起こしながら、虫たちが巫女に向かって一斉に飛んでいきます。
勝った! と思わずガッツポーズを決めましたね。巫女は抵抗もせずに、虫たちが群がるに任せていたんですから。
それで、5分ほどの時間が経ったでしょうか。
今や巫女は虫まみれで、多分服の中にもヤスデやコオロギが侵入しているだろうと思わせる、素敵なオブジェと化しておりました。
彼女の脇も顔も見えないその状態に、私は非常に満足していたものです。
そう、あの音が聞こえるまでは。
バリッ、バリッ、ゴリッ。
なんだろう、と最初は思いましたよ。
何かを千切るような、あるいは砕くような、そんな音が、虫まみれの巫女から聞こえてきていました。
正直、この時点である程度想像はついていました。でも認めたくはなかったんです。
まさか、そんな、って。
でも、その音が次第に大きくなっていって、虫の一部が体を引きちぎられた状態でポロポロと下に落ちて行くのを目の当たりにして、さすがに理解しないわけにはいかなくなりました。
ああ、食ってるんだ、って。
ええ、食ってたんですよあの巫女は。私の可愛い虫たちを。生のままでそりゃもう容赦なく、完食せんばかりの勢いで。
呆然とする私の前で、巫女は一心不乱に咀嚼を繰り返し、とうとう最後のゴキブリをごくりと丸のみにしました。
そして唇の周りを舌で舐めて、虫の残骸を欠片まで舐め取ったあとで、一言。
「美味」
……後のことは分かりますよね? ええもう逃げました、必死に逃げましたよ。逃げて逃げて巣に帰って自分の膝を抱いて、「巫女怖い巫女怖い」とか呟きながら一晩中震えて過ごしましたとも。
そりゃあね、蝗の佃煮とかが酒のつまみになるってことは知ってましたけどね、だからってあれはないでしょうよ。
巫女の生活が基本的に自給自足で、「虫はそこら中にいるし意外に美味だから結構いい食料になる」とか笑って話して、友達にドン引きされてたってことも後で聞いて知りましたよ。
以来、私は巫女に会っていません。宴会の誘いも断り続けてます。
だって、そうでしょう? 誰だって、安酒のつまみにされると分かってて、ノコノコ宴会に出向いたりはしませんよ。
ところでさっきからずいぶん青い顔をしてますけど、大丈夫ですか?
あ、お帰りですか。そうですか、気をつけてお帰りくださいね。
やだなあ、別れの挨拶は「ご愁傷様です」じゃなくて「さようなら」ですよ。変な間違い方しますねえ。
おっと、雨が降ってきましたね。なんだか妙にべとべとしてて、涎みたいな雨だなあ。
<終わり>
……はいどうも皆さん、リグル・ナイトバグです。
私幻想郷の妖怪でして、一応、蟲の王とかやらせてもらってます。
まあ幻想郷縁起には「蟲の王がこんな少女の姿をしている時点でその衰退ぶりがよく分かる」とか書かれてますけどねアハハ。
でまあ、そんなこんなで楽しい日々を過ごしているわけですけれども、最近友達に聞かれたんですよ。
「リグルってキモい虫たくさん操れるじゃん。ゴキブリとか毛虫とかムカデとか纏わりつかせてやれば、巫女でも悲鳴上げて逃げ出すんじゃないの?」
ってね。
まあ、個人的には毛虫さんのふさふさの毛とか、ゴキブリさんのつやつや具合とか、ムカデさんの優雅な足さばきとかの魅力が分からない時点でどうも彼女とは感性が合わないなあ、と感じたりするわけですけれども。
いやいや、今はそんなことはどうでもよろしい。
で、そんな私が何故巫女に勝てないか、ですけれども。
近くにいた他の友達は、こんなことを言っておりました。
「馬鹿だなー、あんな辺鄙なところに住んでる巫女なんだから、虫ぐらい慣れっこに決まってんじゃーん」
と。
要するに、虫に纏わりつかれても平気だから、そういう嫌がらせ的な攻撃は効かないだろう、ということですね。
たぶん、あなたも同じような理由を想像されたんじゃないかと思います。
……でもね、違うんですよ。
あの巫女。あれはヤバい。正直ヤバすぎる。我々の想像の範疇を超えた存在ですね、アレは。
私も、昔は私の友達みたいに考えてたんですよ。
いかに博麗の巫女とは言え人間の女の子。蟲をたくさんけしかけてやれば悲鳴を上げて逃げ出すだろう、と。
つまり「博麗の巫女を退散させられる私最強」とか、内心で驕ってたわけです、私は。
今考えるとバカですね。井の中の蛙大海を知らずってやつです。いや私蛙じゃなくて蟲ですけど。
そんな私が、ある異変の晩に巫女と初遭遇しまして。
「お、これはチャンスだ! 蟲たちをけしかけて悲鳴を上げさせてやれ!」
と、こう考えて、早速実行したわけですよ。
私がパチンと指を鳴らすと同時に、嵐のような羽音を巻き起こしながら、虫たちが巫女に向かって一斉に飛んでいきます。
勝った! と思わずガッツポーズを決めましたね。巫女は抵抗もせずに、虫たちが群がるに任せていたんですから。
それで、5分ほどの時間が経ったでしょうか。
今や巫女は虫まみれで、多分服の中にもヤスデやコオロギが侵入しているだろうと思わせる、素敵なオブジェと化しておりました。
彼女の脇も顔も見えないその状態に、私は非常に満足していたものです。
そう、あの音が聞こえるまでは。
バリッ、バリッ、ゴリッ。
なんだろう、と最初は思いましたよ。
何かを千切るような、あるいは砕くような、そんな音が、虫まみれの巫女から聞こえてきていました。
正直、この時点である程度想像はついていました。でも認めたくはなかったんです。
まさか、そんな、って。
でも、その音が次第に大きくなっていって、虫の一部が体を引きちぎられた状態でポロポロと下に落ちて行くのを目の当たりにして、さすがに理解しないわけにはいかなくなりました。
ああ、食ってるんだ、って。
ええ、食ってたんですよあの巫女は。私の可愛い虫たちを。生のままでそりゃもう容赦なく、完食せんばかりの勢いで。
呆然とする私の前で、巫女は一心不乱に咀嚼を繰り返し、とうとう最後のゴキブリをごくりと丸のみにしました。
そして唇の周りを舌で舐めて、虫の残骸を欠片まで舐め取ったあとで、一言。
「美味」
……後のことは分かりますよね? ええもう逃げました、必死に逃げましたよ。逃げて逃げて巣に帰って自分の膝を抱いて、「巫女怖い巫女怖い」とか呟きながら一晩中震えて過ごしましたとも。
そりゃあね、蝗の佃煮とかが酒のつまみになるってことは知ってましたけどね、だからってあれはないでしょうよ。
巫女の生活が基本的に自給自足で、「虫はそこら中にいるし意外に美味だから結構いい食料になる」とか笑って話して、友達にドン引きされてたってことも後で聞いて知りましたよ。
以来、私は巫女に会っていません。宴会の誘いも断り続けてます。
だって、そうでしょう? 誰だって、安酒のつまみにされると分かってて、ノコノコ宴会に出向いたりはしませんよ。
ところでさっきからずいぶん青い顔をしてますけど、大丈夫ですか?
あ、お帰りですか。そうですか、気をつけてお帰りくださいね。
やだなあ、別れの挨拶は「ご愁傷様です」じゃなくて「さようなら」ですよ。変な間違い方しますねえ。
おっと、雨が降ってきましたね。なんだか妙にべとべとしてて、涎みたいな雨だなあ。
<終わり>
が必要な話ですね。
巫女怖い巫女怖い腋怖い巫女怖い……!
あれはムカデ同様、すべて足ですよ。
我が家にも何匹か住み着いてますよw
虫が食べられてしまうのなら、毒を持つ虫を食べさせる。これなら勝てるでしょうw
おうどうも、ゲジゲジから毛虫へ修正いたしましたよ。
毒持った虫食べさせてもなんか平気で生きてそうな感じですよ巫女様。
種類と食べ方で違うのかな
それはともかく、上手く纏まっていて良い文章でした。
多分カミキリムシでしょう
糞をしごき出して串焼きにすると(皮に穴を開けとかないと破裂する)美味しいとのこと
ベトナムなどにいるオオムカデはクルマエビに似た味らしく、山間部では普通に食べているとのこと
日本でも、信州一帯ではクロスズメバチを養殖しているし、フランスの蛆入りチーズやアメリカのセミ料理などもある
生はともかく、虫食文化の無い国の方が異端
面白くない
すっきりあっさり、面白かったです。
蟲を食べる描写を具体的にして、吐き気が出るぐらいグロくするとまた違った面白みがでそう。
昆虫は、地球上で一番少ない土地と飼料で大量に養殖可能な、動物質タンパク質とも言われてるそうです。
近い将来、今よりも大きな食料危機が訪れた場合、貴方の食卓に上には…
豚肉や牛肉の代わりに昆虫肉が、出されてるかも知れませんよ?
…でも、養殖された無菌ゴキなら兎も角…
流石に有菌状態のゴキチャンとか”踊り喰い”は無いよなぁ…でも、中々楽しませて頂きました。
>>9
私の知る限りでは、
ボウフラの卵で作られたハンバーグ…見た目は普通のハンバーグそのものだそうです
お腹に蜜をパンパン溜め込む蟻…中の蜜は美味だそうです
朽木だったかな?に住む白っぽいミミズ…ある所ではタレを付けて生飲み、別の所ではタレ無しで生飲み
レモンに似た味のする昆虫(蟻の一種だったかな?)
アーモンンドに良く似た味のする昆虫
…果ては、中国か韓国では、生きたサソリの生齧り(無論、尻尾を噛み千切って捨ててから頂きます…○匹までなら問題ないようです)
まぁ色々あるよ
追伸:釣り餌にも使用される川の中の虫も、(味付けして)炒めると中々の美味だそうですよ?
基本的に田舎モンは虫に強い、リグルは甘いなぁw 色んな意味で。
でも落語みたいに見事にまとまった綺麗なお話なのが悔しい……!
たしかに服の色とかからそんな気がしていました。
ヤマメちゃんを食べたいですね。
駄目だ、俺はリグルと決定的に感性が合いそうに無い。
奴らは邪神ですよ。シドーみたいなもんです。
関係ないけど、虫は火を通さないと色々と危なそうな気がするなあ。
川魚よりかはマシなんだろうか。
>>9
日本でも昔はわりとポピュラーだったようですが、今は面白おかしくゲテモノ扱いですからねぇ。
機会があれば食ってみたいもんです。
一部は臭みがあるから香辛料があるとモアベター
成虫は苦い物から甘い物までピンキリだそうで
無菌の食用中なら好き嫌いせずに食べてみたい気はします
ただ生は避けたい
ましてや踊り食いはないわ
『生きた虫を生で食った』ことだ