このSSはガチ百合です。苦手な方はご注意下さい。
ある日の博麗神社、いつものように霊夢と魔理沙は縁側でお茶を飲んでいた。
「ねぇ魔理沙」
「何だ?」
「あんたが通い妻になって随分経つわよね」
「そうだな。求聞史記にも『出現場所・神社』なんて書かれたしな」
「…私と結婚するなんて言い出したせいで勘当された事後悔してない?」
「同じ事は言わせないでくれ。私は霊夢が側に居てくれば十分だ。霊夢は私じゃ嫌か?」
「そんな訳無いじゃない…」
霊夢は魔理沙の肩に頭をそっと寄せる。
何事にも例外はある。
中立である博麗の巫女にとっての例外は魔理沙だった。
彼女だけは親友だと最初からそう思っていた。
普通の人間から尊敬と同時に、畏怖され敬遠されていた霊夢。
そんな彼女に近づき、ずっと側に居るために里での豊かな暮らしを捨てた魔理沙。
「霊夢が好きだから」と彼女は言った。
それを知った時霊夢は生まれて初めて取り乱した。
同性から告白された事よりも、自分のせいで魔理沙の人生が狂ったと自責の念に駆られた。
魔理沙を里に追い返そうと冷たい態度も取った。
しかし魔理沙はずっと側に居た。
何日も諦めずに神社に通った。
それまで親友だと思っていた魔理沙に恋心を抱いたのはその時からである。
そして二人は恋人になった。
「でも私はこのままじゃ良くないと思うの」
「え?」
「このままじゃ魔理沙は里で暮らせない」
「そんなの気にしないぜ。『貴女のためにも別れましょう』とかゴメンだぜ」
「違うわよ。魔理沙のご両親に認められるためにも…」
「子供を作りましょう」
数日後、魔理沙は霊夢から指定された時間に神社にやって来た。
(子供を作るってどうやるんだろ)
(実はほとんど知らないんだよな)
(霊夢は全部任せてって言ってたけど)
(体を清めるように言われたから体は耳の裏から足の指まで徹底的に洗ったけど)
(爪も短く切ったし歯磨きも普段の5倍時間をかけた)
そんな事を思いながらも魔理沙は緊張の極みだった。
喉はカラカラで少し手が震えていた。
これから始まる未知の行為に対して頭の中は混乱状態である。
「魔理沙―こっちに来てー」
「わ、分かった」
急いで拝殿の方に向かう扉を開ける。
出迎えた霊夢は髪を下ろし白装束を着ていた。
「綺麗だ…」
魔理沙は思わず声を漏らす。
白いきめ細かい肌と流れるような黒髪、そのコントラストが薄暗い部屋の中で輝いて見える。
「さ、こっちよ」
霊夢が魔理沙の手を引いて拝殿にはいる。
さりげに恋人繋ぎである。
霊夢自身の香だろうか。
ほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐり魔理沙の頭の芯をクラクラさせる。
そして中に用意されていたのは巨大な陰陽珠だった。
「何これ」
「魔理沙って初心ね。可愛い。じゃあこれとこれ」
「何これ」
「玉串と祝詞を書いた紙よ。今から陰陽珠の周りを歩きながら祝詞を唱えるの」
「子作りって普通こうなのか?」
「そうよ。十月十日もかかる大変な行為なの。でも私たち二人ならきっと大丈夫」
何か想像していたのと違うけど霊夢が言うのなら間違い無いんだろう。
魔理沙はそう思い気を取り直した。
そして一緒に陰陽珠の周りを歩き始めた。
すると同時に凄まじい勢いで体力と魔力が吸い取られた。
霊夢によると吸い取られる力が強いほど早く生まれるとの事である。
これは「一晩に何回ももたない」そう言われる訳だ。
魔理沙はうろ覚えの知識を思い出していた。
「お休み霊夢」
「お休みなさい」
一日が終わると二人は一緒の布団で眠った。
お互いの額に口付けを交わす。
そしてお互いの髪を手櫛で梳きながら将来のことを語り眠りに落ちた。
それから数日後、アリスが神社にやって来た。
「誰も居ないのかしら…霊夢に頼まれてた物持ってきたんだけど」
アリスは呟きながら人形を使い辺りを探査する。
すぐに拝殿に誰かが居る事を探知、そちらに向かう。
「霊夢―荷物持ってきたわよ」
扉を開けたアリスの目に飛び込んできたのは馬鹿でかい陰陽珠と何かブツブツ呟きながらぐるぐる周っている二人だった。
「っきゃあ!」
「子作りの最中に入るなよ!扉閉めて!」
「はぁ」
素直にアリスは扉を閉める。
「って子作り?」
アリスの言葉を聞いた途端に二人とも真っ赤になりモジモジしだす。
「荷物ありがとっ!」
「何か子作りにしては変ねぇ。一回私の前でやって見せて」
「そんなの恥ずかしすぎるだろ!」
二人にはこの行為に対して羞恥心が芽生えていた。
「間違った事やり続けるのも恥ずかしいわよ。何より間違ったままだと生まれてこないかもしれないのよ?赤ちゃん欲しいんでしょ。さ、見せて」
二人は真っ赤になりながら実演してみせる。
「うん。おかしいわね」
「何がおかしいの?何処が間違ってた?」
「質問するけど二人とも赤ちゃんの性別決めてる?」
二人は顔を見合わせる。
「髪の色は黒髪?金髪?顔はどっち似?」
答えられない。
「それじゃあ駄目よ。きちんとイメージしないと。二人で詳しく話し合ってどんな子が欲しいか具体的に描くの。二人ともイメージしている雰囲気が無かったから分かったわ」
「やり方は間違ってない?」
「うん。魔界は文化が違うから玉串や祝詞とかは無いけど大体は一緒ね。でも具体的なイメージが無いと。神綺様も創造する時は何よりイメージを大事にするわ。勿論イメージ通りには創造出来ないけど」
子作りで恥ずかしがるってのがそもそも文化として違うのよね、とアリスが呟く。
「そんなもんなのか?」
「その時の状況にも大きく左右されるから。本人の精神状態、月齢や天気、魔力や気の流れ、果ては温度や湿度まで関係してくるの。でもまずはイメージが無いと。それは下書き無しで絵を描くようなものよ」
「ありがとう。アリス。早速話し合うわ」
「いいえ気にしないで。あとこれ、霖之助さんのところから貰ってきた荷物ね。何か不思議そうな顔してたわ」
「霊夢それ何だ?」
魔理沙が首を伸ばして覗き見る。
興味津々である。
「ベビーベッドとか玩具、育児関連の本よ」
「最初は霊夢が託児所でも始めたかと思ったわよ。なるほどねぇ。魔理沙と」
「「うぅ」」
再び真っ赤になる二人。
「あと粉ミルクは紫に頼んだわ。香霖堂には無かったから。後で来ると思うわ」
「何から何までありがとう」
「ま、暇だったし良いわよ。赤ちゃん生まれたらすぐに教えてね」
「あぁ約束する」
「それじゃ」
アリスが去った後、二人は真剣に赤ちゃんについて話し合った。
性別は巫女になるかもしれないので女の子にあっさり決まった。
それから髪の毛は霊夢と同じ黒髪、髪質は魔理沙のような癖っ毛。
目や鼻の形、体格まで二人が共通のイメージを持つように徹底的に話し合った。
さらに一週間後。
スキマから紫が現れ不思議そうに降り立った。
「霊夢って粉ミルク何に使うつもりなのかしら」
「紫!調度良いところに!」
「あら魔理沙」
「急いで来てくれ!生まれそうなんだ!」
「え。何が」
「詳しい事情は後!こっちに!」
そして紫が目撃したのはヒビが入り始めている巨大陰陽球だった。
霊夢が近くでオロオロしている。
「何これ」
「信じられないよな。十月十日どころか十日で生まれるなんて。急すぎてどうすれば良いのか分かんなくて」
「何が生まれるのよ!?」
「霊夢と私の子供」
「はぃ!?」
(人間て卵生だったかしら)
(てか私は何をすればいいのよ、何を期待されてるのよ)
とりあえず紫は知識を総動員して産湯と清潔なタオルを用意させる。
「今からどうすれば?」
(今からどうしよう?ラマーズ?いや関係ないわね)
(お尻に油流し込む?それは鳥の難産対処法だわ)
(そうね!鳥よ!鳥の排卵じゃなくて、殻を割りそうな雛を参考にするのよ!)
紫が自信に溢れた口調で言う。
「殻が今よりヒビが大きくなって割れそうになったら、殻を割る手助けをしてあげなさい」
「分かった。でもこういうのって親が手助けしても良いのか?」
「生まれるのは人間の子でしょう?嘴みたいに殻を割る力が無いから手助けしないと」
「成るほど。流石紫ね」
(よし!自信満々に言い切ったから安心して落ち着いたみたいね!)
「あと粘膜とかで鼻の穴とかが塞がっているかもしれないから、柔らかい布で慎重にそっと拭き取って上げてね」
(臍の緒はあるのかしら)
「分かった。後は何をすれば良い?」
「後は暫く待ちなさい」
言いながらも紫は不安だった。
そもそも生まれるのは人間の子なのだろうか。
鬼子程度で済めば良いが、生まれるものによっては二人に恨まれようが消してしまった方が良いのではないだろうか。
紫はずっと考えていたため二人の声に気付くのが遅れた。
「紫!さっきから何か光ってるけど、どうすれば良いの!」
「何か気が膨らんでるから念の為離れるぞ。霊夢」
そして眩しい閃光と軽い爆発が起きた。
「きゃあ!何!誰がスタングレネード投げ込んだのよ!?」
閃光が収まった後二人の目に映ったのは「目が、目が」と呟きながらウロウロしている紫と、とても愛らしい赤ちゃんだった。
ふっくらして目が利発そうにキラキラ輝いている。
その笑顔には人を心の底から幸せにする魅力があった。
気の強そうな顔が魔理沙に似ている。
「可愛い!」
「わぁ。この子が私たちの子供…もう結構大きいんだな」
「え?何?どうなってるの?」
「紫、見て私たちの赤ちゃん。女の子よ」
「名前は魅魔様と同じ『ミマ』だぜ」
紫は気合で視力を回復させ赤ちゃんを見た。
「あら」
(大きいわね。生後三ヶ月くらい?髪の毛もフサフサで黒いし、鬼子って子かしら。でも悪意や歪んだ気は微塵も無いわね)
「全然汚れてないけど産湯を使おう。私が洗ってるから霊夢は服を持ってきてくれ」
霊夢は頷き外へ出て行く。
「で、紫。これからどうすれば良い?哺乳瓶でのミルクのあげ方、抱っこの仕方、オムツの換え方は本で読んだけど、まだお腹も空いてないみたいだし」
魔理沙が優しくミマにお湯をかけながら聞く。
特に嫌がる様子も無くニコニコしている。
「へ?あぁ、そうねぇ…」
この赤ちゃんは確かに人間に見える。
だが十日で生まれ、もう三ヶ月以上の大きさに成長している。
どう考えても普通ではない。
「体を綺麗に拭いて服を着せたら永琳の所へ行きましょう」
結局、確かなところは診てもらわなければ分からない。
「何だ。病気だったりするのか」
魔理沙が不安そうな顔で聞く。
「いやいや、外の世界では乳幼児健診って言ってお医者様に診てもらうのが普通なのよ」
そうか良かった、魔理沙は呟きミマに視線を戻す。
霊夢が服とオムツを持って戻ってきた。
「あぁ、霊夢今から永琳の所へ行こう。紫が言うには乳幼児健診ってものを受けないと駄目なんだってさ」
「そうなの。じゃあ道中のミルクも用意しなきゃね」
「アリスの所に行くのはその後だな」
「スキマ経由で行きましょう。その方が早いわ」
「じゃあアリスも呼んでこよう」
用意を全て整えた後、アリスと合流し永琳の居る竹林へ向かう。
「赤ちゃんの検診ね?じゃあ向こうの診察室でやるから。霊夢と魔理沙も来てね」
そのまま三人は扉の奥へ消える。
「心配だわ…」
「何がよ」
「あの子普通じゃないもの。霊夢や魔理沙がショックを受ける事になったら嫌だわ」
「?よく言ってる意味が分からないけど、とにかく待ちましょう」
「そうね」
しばらくして三人が現れる。
紫が心配そうに声を上げる。
「どうだったの?間違いなく人間?どっか異常な点はない?」
「何だか紫がお母さんみたいね。もちろん人間よ。何にも問題ないわ。凄く健康。後一ヶ月くらいで少しづつ離乳食に変えていけば問題ないわよ。定期的に検診に来るように二人にも伝えてるわ」
永琳が振り向き霊夢と魔理沙に話しかける。
「里の赤ちゃんを引き取って自分たちの子供として育てるのね。立派よ」
二人がキョトンとした顔をする。
「違うわよ」
「じゃあ紫が連れてきた外の世界の赤ちゃんなの?」
「違うぜ。正真正銘私たちの子供」
永琳はアリスと紫を見る。
「間違いなく二人の子供よ」
「信じられないけど」
暫くの空白の時間。
永琳は高速で何か思考しているようだった。
そして。
「有り得ないわよ!」
永琳が叫んでぶっ倒れた。
「何だ。何が起こった」
「まぁ検診も済んだし帰りましょ。ミマも疲れたでしょうし。紫、スキマ開いてくれる?」
「あー。うん。分かったわ」
「私も付いていくわ」
四人はスキマに消えていった。
「えーりん。赤ちゃんどうだった……きゃー!しっかりして!永琳!」
その後永琳の口からこの話が広まり、博麗神社は「同性でも子供を授かるくらいに子宝に恵まれる神社」として多くの参拝者で賑わうようになった。
ミマが生まれ魔理沙も両親と和解出来た。
「霊夢お母様。霧雨道具店経営しながら巫女をやるのは無理ですか?」
「そうねぇ。決めたわ。ミマ、今度貴女に妹ができるわよ」
「わーい」
「結局あの巨大陰陽珠何だったのかしら…」
紫は楽しげな親子三人を眺めながらポソリと呟いた
しかしなんとも新しい子づくり方法だ……。
紫最高w
それはそうとして、文章の良し悪しはともかく貴方の作品はお話として十分楽しめますよ。
お早い復帰をお待ちしております。
ここは幻想郷、そして努力家の魔理沙…他の子作りの方法を新たに生み出しても何ら不思議ではない
それに他に、一時的な性別転換位、何らかの方法で可能に出来そうな方々も居られるかも知れませんしね
そしてナクト氏へ、一皮も二皮も向けて脇役氏や紫氏に肩を並べるか
それに順ずる位に成長なさる日を心待ちにしております
ガチ百合の何たるかを叩き込まれた気がする。
やっちゃいけねぇ突っ込みをwwww
紫と永琳が混乱しているのに、アリスが対応して指導しているのがもうねww
ガチ百合とかじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を見た気がする。
紫のおろおろっぷりが最高!それでも冷静に対処できるのは、知能故か、母性故か・・・。
えーりんが倒れるSSもめずらすぃ。
故にこの着想、流石としか、見事としか言うべき言葉が見つからず。
悔やむは語彙力の無さ。
もっと読みたい。
いや~なによりなにより。めでたい!
かわいいゆかりんおばあちゃん見れたし。
えーりんの蓬莱人らしい豪快なコケツッコミ見れたし。
めでたい!
「ありえないわよ!」