「私も、長いこと、機械と、生きて来ましたが、これは。分かりません」
紫に運ばれて来た未知の機械を前に、にとりは頭を抱えた。
紫は椅子にぶちかって不機嫌に傘を開き、回した。
「分かんないじゃ困るのよ、かっぱっぱ」
銀色の金属製の箱の上に時計が乗っており、どうやら箱部分に秘密がありそうなのだが、よく分からない。
「分解したいのは山々なのですが、見たところ分解できそうにありません」
ねじ穴がない。
「それねえ、苦労して手に入れたのよ」
「はあ」
「おんぼろい建物の中に、一個だけあったのよ。まるで「持って帰って」って訴えているようだったわ」
「へえ」
紫はますます不機嫌になる。
「何か分かった事は?」
にとりは、箱の上の時計を指さした。
「まず、これが時計かどうか怪しい。なぜならこの時計には針が一本しか付いていません。しかも6のところで止まっています」
「ふんふん」
「次に」
にとりは時計を持ち上げようとしたが、箱の上から取れない。
「この時計(仮)と箱は、何らかの原因でくっついています」
以上です、と言ったにとりは顔をしかめて付け加えた。
「後、これは。あまり言いたくないことですが、すごく嫌な予感がします」
何を馬鹿馬鹿しい。
紫は鼻で笑った。
(自称)科学者たる河童が、「嫌な予感」とは何たることか。
「あなた、出来ないことの言い訳にしてない?」
「そんな」
「本当は出来ないんでしょう」
「違います、私だって出来ます」
「じゃあ、やってごらんなさいよ」
にとりは地団駄踏んで、再び未知の機械への挑戦を始めた。
そして機械を前に黙々と思考を練り続けたが、紫はとっくに飽きてしまった。
「私、家に帰っていい? 何だかお腹減っちゃった」
「黙って、そこのキュウリでも食っててくださいよ。もう」
ばん、と、にとりが箱の上に拳を振り下ろすとブザーが鳴った。
<ぴ、ぴ、ぴ。タイマー機能が正しく設定されておりません>
にとりは再び考える姿勢に入った。
紫は、きちんと動くまで叩いたらどうかと思ったが、無知だと思われそうなので止めた。
「分かりました」
にとりが頷いた。
「へえ」
「信用してませんね。まあ、いいですよ」
大分すねさせてしまったらしい。
「ここの時計の12の所に赤い線が見えますか」
「見えるわ」
「タイマーというのは、あなたには分からないことかもしれませんが、時間のことです。分かりますか。分からないでしょうね、あなたには」
にとりは口早に続けた。
「タイマーを正しく設定するというのは、ここにこの針を持って来ることです」
紫は感心した。
やはり、河童はすごいのである。
「なるほどねえ」
「じゃあ、早速やってみますよ」
にとりは時計の表面のプラスチック板をはずし、一本しかない針に手をかけた。
興奮しているらしく、鼻息が荒い。
6にあった針が5、4、3、2、1と進められて
ところであとがきの「どかん」が消えてる……?
河童だって妖怪なんだ。この程度じゃ死なないよ。
・・・たぶん
落ちもなしで何が書きたいのやらさっぱり。
それから句読点が多いのもその人の個性ですよ。むしろ味があっていいと思う人もいることをお忘れなく。
がんばれにとり。
句読点は個人的には気になりませんでした。