ある日のこと。
今宵は新月。レミリアの魔力が著しく低下し、れみりゃになる日である。
れみりゃは美鈴の居る門に向かっていた。
「めーりん♪」
「何ですか?お嬢様?」
「んっとね……今日もおかーさんになってくれる?」
れみりゃの言葉を聞いた美鈴は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。そして、抱き上げて頬にキスをする。
「ええ。いいわよ、レミ。」
「わーい…おかーさんだぁ…♪」
甘えるように擦りついてくるれみりゃを抱き締める。
その姿を紅魔館の窓から見ている人物が一人。十六夜咲夜。この紅魔館のメイド長であった。
「あんなに楽しそうなお嬢様…初めて見るわ…」
少し悲しそうな顔をして呟く。凄く親しそうな二人を見て、疎外感を感じていたのだ。
ふと外を見る。れみりゃは美鈴の腕の中で寝ていた。
咲夜は窓を開けて外へと飛び出す。そして、美鈴の近くへと歩み寄った。
「気持ちよさそうに寝ているわね。」
「あ、咲夜さん。はい、可愛いですよ。」
笑顔になる美鈴。つられて笑顔になる咲夜だが、どこかぎこちない笑顔になっていた。
「咲夜さん……何かありましたか?」
美鈴の言葉にハッとする咲夜。時間を止めて平然とした顔を取り繕う。
「何も無いわ。アナタの考え過ぎよ。」
「嘘ですね。顔に出てますよ?」
「そんな事…あるわけないじゃない。」
「時間を止めて作った顔なんて…すぐに崩れちゃうんですよ?」
ぽふっと頭に暖かい感触。美鈴は自然と咲夜の頭を撫でていた。
咲夜の視界は、少し霞んでいた。どうして美鈴はこんなに優しいのか?今まで酷い仕打ちをしてきた事もあった。なのに、何故私にも優しくしてくれるのだろうか?
一人で自問自答をしていると、美鈴がそっと口を開いた。
「咲夜さん…無理してますね?言わなくて結構です。私が勝手に話すから…独り言として聞いてください。」
咲夜はコクリと小さく頷いた。
「私は門番として雇われています。咲夜さんが来る前は内勤メイド隊のメイド長もしてました。咲夜さんが来てからですね。外勤メイド隊門番隊長となったのは。強大な力を持つお嬢様の屋敷に門番等不要と思った時もありました。しかし…それでも私を門番として雇い続けてくださいました。それは、今まで働いてきた私を休ませようとするお嬢様の配慮だったんです。…この紅魔館で一番愛されているのは私かもしれません。だから私は皆を愛そうと決めたんです。皆に負けないくらいに愛そうと…」
一気に喋ると、ゆっくりと咲夜を抱き寄せる。
目に見えて狼狽する咲夜を軽く抱き締めて背中を撫でる。
「咲夜さんも…私に甘えて良いんですよ?」
「めい……りん…」
咲夜は泣いた。今まで心につっかえていた者が取れたような気がした。
結局の所、咲夜も甘えたかったのだ。しかし、レミリアと同じようにプライドが邪魔していた。完璧で瀟洒と言う名のプライドが。
所々で見かけていた、妖精メイド達を甘えさせる美鈴。美鈴の話を楽しそうにするレミリア。美鈴に抱き付くフラン。
全てが羨ましく思え、次第に甘えたいという気持ちに変わっていた。
声を押し殺して泣いていた咲夜は、やがて泣き疲れて美鈴の隣で眠っていた。
その日の夜。咲夜はレミリアの部屋に向かっていた。メイド服は着ていない。枕を小脇に抱えている。
レミリアの部屋の扉をノックすると、主の代わりに美鈴が出て来た。
「咲夜さん、どうかしたんですか?」
「その……私も一緒に寝ていい?お母さん…」
美鈴は柔らかく微笑むと、ゆっくりとした動作で部屋に招き入れた。ベッドの上では、れみりゃとふりゃんが小さな寝息をたてていた。
「二人とも今寝た所だから…静かにしてね?」
「うん…。ねえ…お母さん?」
「何かしら?」
床に布団を敷いている美鈴に、咲夜は抱き付いた。背中に顔を埋め、スリスリと甘える動作をする。
「ありがとう…吹っ切れたよ…。」
「どう致しまして。」
「偶には…二人で寝ようね…」
「歓迎するわ。咲夜…随分眠そうね?」
「お母さんの傍にいると…安心するの…」
美鈴は咲夜を布団に寝かせると自分も潜り込んだ。そして、頬におやすみのキスをする。
美鈴は、咲夜が寝付くまで背中を撫でていた。
紅魔のメイドは夢を見る。門番と一緒に居る夢を。主と主の妹と仲良く遊ぶ夢を。
そして…この幸せを忘れぬ夢を……
咲夜の美鈴は支えの美鈴。どんな事があっても、美鈴が居れば乗り切れる。
美鈴の咲夜は夢見る咲夜。願わくばこの子と何時までも…
今宵は新月。レミリアの魔力が著しく低下し、れみりゃになる日である。
れみりゃは美鈴の居る門に向かっていた。
「めーりん♪」
「何ですか?お嬢様?」
「んっとね……今日もおかーさんになってくれる?」
れみりゃの言葉を聞いた美鈴は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。そして、抱き上げて頬にキスをする。
「ええ。いいわよ、レミ。」
「わーい…おかーさんだぁ…♪」
甘えるように擦りついてくるれみりゃを抱き締める。
その姿を紅魔館の窓から見ている人物が一人。十六夜咲夜。この紅魔館のメイド長であった。
「あんなに楽しそうなお嬢様…初めて見るわ…」
少し悲しそうな顔をして呟く。凄く親しそうな二人を見て、疎外感を感じていたのだ。
ふと外を見る。れみりゃは美鈴の腕の中で寝ていた。
咲夜は窓を開けて外へと飛び出す。そして、美鈴の近くへと歩み寄った。
「気持ちよさそうに寝ているわね。」
「あ、咲夜さん。はい、可愛いですよ。」
笑顔になる美鈴。つられて笑顔になる咲夜だが、どこかぎこちない笑顔になっていた。
「咲夜さん……何かありましたか?」
美鈴の言葉にハッとする咲夜。時間を止めて平然とした顔を取り繕う。
「何も無いわ。アナタの考え過ぎよ。」
「嘘ですね。顔に出てますよ?」
「そんな事…あるわけないじゃない。」
「時間を止めて作った顔なんて…すぐに崩れちゃうんですよ?」
ぽふっと頭に暖かい感触。美鈴は自然と咲夜の頭を撫でていた。
咲夜の視界は、少し霞んでいた。どうして美鈴はこんなに優しいのか?今まで酷い仕打ちをしてきた事もあった。なのに、何故私にも優しくしてくれるのだろうか?
一人で自問自答をしていると、美鈴がそっと口を開いた。
「咲夜さん…無理してますね?言わなくて結構です。私が勝手に話すから…独り言として聞いてください。」
咲夜はコクリと小さく頷いた。
「私は門番として雇われています。咲夜さんが来る前は内勤メイド隊のメイド長もしてました。咲夜さんが来てからですね。外勤メイド隊門番隊長となったのは。強大な力を持つお嬢様の屋敷に門番等不要と思った時もありました。しかし…それでも私を門番として雇い続けてくださいました。それは、今まで働いてきた私を休ませようとするお嬢様の配慮だったんです。…この紅魔館で一番愛されているのは私かもしれません。だから私は皆を愛そうと決めたんです。皆に負けないくらいに愛そうと…」
一気に喋ると、ゆっくりと咲夜を抱き寄せる。
目に見えて狼狽する咲夜を軽く抱き締めて背中を撫でる。
「咲夜さんも…私に甘えて良いんですよ?」
「めい……りん…」
咲夜は泣いた。今まで心につっかえていた者が取れたような気がした。
結局の所、咲夜も甘えたかったのだ。しかし、レミリアと同じようにプライドが邪魔していた。完璧で瀟洒と言う名のプライドが。
所々で見かけていた、妖精メイド達を甘えさせる美鈴。美鈴の話を楽しそうにするレミリア。美鈴に抱き付くフラン。
全てが羨ましく思え、次第に甘えたいという気持ちに変わっていた。
声を押し殺して泣いていた咲夜は、やがて泣き疲れて美鈴の隣で眠っていた。
その日の夜。咲夜はレミリアの部屋に向かっていた。メイド服は着ていない。枕を小脇に抱えている。
レミリアの部屋の扉をノックすると、主の代わりに美鈴が出て来た。
「咲夜さん、どうかしたんですか?」
「その……私も一緒に寝ていい?お母さん…」
美鈴は柔らかく微笑むと、ゆっくりとした動作で部屋に招き入れた。ベッドの上では、れみりゃとふりゃんが小さな寝息をたてていた。
「二人とも今寝た所だから…静かにしてね?」
「うん…。ねえ…お母さん?」
「何かしら?」
床に布団を敷いている美鈴に、咲夜は抱き付いた。背中に顔を埋め、スリスリと甘える動作をする。
「ありがとう…吹っ切れたよ…。」
「どう致しまして。」
「偶には…二人で寝ようね…」
「歓迎するわ。咲夜…随分眠そうね?」
「お母さんの傍にいると…安心するの…」
美鈴は咲夜を布団に寝かせると自分も潜り込んだ。そして、頬におやすみのキスをする。
美鈴は、咲夜が寝付くまで背中を撫でていた。
紅魔のメイドは夢を見る。門番と一緒に居る夢を。主と主の妹と仲良く遊ぶ夢を。
そして…この幸せを忘れぬ夢を……
咲夜の美鈴は支えの美鈴。どんな事があっても、美鈴が居れば乗り切れる。
美鈴の咲夜は夢見る咲夜。願わくばこの子と何時までも…
次は誰にとっての美鈴が見られるんですかねぇ。応援してますよ。
そんなのを目の前にしたら咲夜さんも瀟洒という殻を脱ぎたくもなるというもの。
ごちそうさまでした。
次の作品を心待ちにしております。
ただ、一つだけ
もちっと自信持っても良いと思いますよ