かなーり間が空いてしまいました。
読んで下さっていた方には、申し訳ない。
本作は作品集30に1~4。 作品集31に5。 作品集32に6が存在します。
面倒でも、せめて5から読んでいただかないと、流れがつかめないかと思います。
では、以下に本文です。
妹紅が慧音に連れて行かれた翌日。
「お嬢様…ご無事ですか?」
「これが無事に見える?」
「いいえ」
「なら聞かないで。まったく…あのハクタクは加減ってものを知らないのかしら。」
「悲鳴が聞こえた時には既にオチていらっしゃってましたからね~」
あの時、慧音はレミリアの衣服をはぎ取ると、腋やら足の裏やらを同時にくすぐりまくったのだ。
そのテクニックたるや、すでに神技の域にまで達しており、いくらレミリアと言えど耐えられる範疇を超えていた。
抵抗しようと暴れてみるも、くすぐられている最中では自慢の怪力も発揮できなかった。
結局、腹筋が限界を突破しても慧音はやめようとせず、レミリアの意識が飛ぶまでくすぐり地獄は続いたようだ。
と言っても、ものの30秒ほどの間の出来事だったようだが。
おかげで
「まったk…うっ!」
「初めて聞きましたよ。腹筋の肉離れなんて」
「げほっ、げほっ…痛たたたたたたっ!!!」
「はぁ…パチュリー様の見立てでは、お嬢様の回復速度をもってしても1週間ほどはかかるようです」
「うぐ…ヘタにくしゃみもできないわね。ある意味じゃ、自分の腹にグングニルが刺さっているような感じがするわ」
腹をさすりながら、涙目で語るレミリア。
哀れ、この状況では泣くしかない。
と言っている間に…
「お姉様ー!!!」
バンッ!!
扉をぶっ飛ばしながら(破壊はされていないが)ベッドのレミリアめがけてタックルをかますフラン。
するとどうなるか。
がばっ
「ぶほおっ!?」
もちろん、フランの顔(というか頭)が向かっていくのはレミリアの胸、及び腹部。
悪気はないのだろうが、無邪気さがここまで凶器になるものかと咲夜は思った。
(腹筋崩壊直後に、妹様のパワーでデーモンクレイドルを腹部に直撃+受け身なしとは…)
「ああっ!?ど、どうしたのお姉様?なにをそんなに嬉し泣きしてるの?」
「妹様、あれは嬉し涙ではなく。悶えているんですよ」
「~~~~~~~~~っ!!(声にならない悲鳴)」
ふーんと言いながらレミリアのお腹をツンツンしているフラン。
その度に「ひぐっ!?」とか「ぎゃう!?」とか、妙な悲鳴をあげている。
「あはははは、お姉様面白~い♪」
「あああああああ…や、やめてフラン。そこはぁ…」
声だけ聞くと、やたらと卑猥に聞こえてくるため咲夜は手で顔を覆った。
別段、妄想を膨らませているわけではない。
この状況を打破する策が無いため、ガッカリしているのである。
「御免!レミリア殿はいるか!?」
と、玄関ホールの方で声がする。
声の主までは特定できないが、呼び方からは古風な感じがする。
こんな挨拶をする人物と言えば、1人しかいない。
「あら、慧音。妹紅は一緒じゃないの?」
「あぁ…」
ものすごくどんよりと曇った表情をしている慧音。
手には小さな包みが下がっている。
「妹紅から聞いてな。なにやらレミリア嬢に失礼があったとかで、お詫びに来たのだが」
「お嬢様なら…きっと自室で昇天している頃かしら?」
「な、なんだとっ!?そそそ、そんなことをしでかしたというのか!!」
血相を変えてレミリアの自室めがけてダッシュする慧音
ハクタク状態での訪問だったとはいえ、さすがに場所は把握しているようである。
慧音が必死の形相でレミリアの自室に到達したときは、すでにレミリアはぐったりしていた。
まぁ、理由はあえて言うまい。
「だ、だだだ大丈夫かっ!?」
「け、慧音?あぁ、うん。生きてる…わよね」
なんとか戻ってきたレミリアは、来訪者が慧音だと知ると、乱れた布団をゆっくりと直した。
いろいろと乱れまくっているのを、見かけだけでも整えたかったのか。
「なんと言っていいかわからないが、とにかく失礼した」
「何が?」
「えっ!?」
突如として、レミリアの目つきが真剣になる。
その鋭い眼光に一瞬ひるむ慧音。
「いや、獣化したときに色々とやってしまったと妹紅から聞いたのだが」
「そうね、おかげでしばらく起き上がれそうにはないわ。けど、それがなに?」
「なに と言われてもな。こっちは謝罪に来ただけだ。なにもつっかからなくてもいいだろう」
「これがつっかかっているように見えるの?残念ね、あなたの眼は節穴よ」
キョトンとする慧音。
わずかに湧いてくる怒りすら吹き飛ぶレミリアの一言。
『つっかかってはいない』
それはつまり、昨夜の無礼に対しては怒っていないということだろうか?
それとも、怒りを通り越して呆れ返っているだけだろうか?
慧音には判断ができなかった。
「別に昨夜のことは怒ってはいないわ、あの行動も妹紅を思ってのものでしょう?」
「あ、あぁ。確かにそうだが」
「ならいいじゃないの。大切な人と離れてしまえば不安になるのは当然。ゆえに、あなたの行動も当然」
「…そうか」
慧音はしっくり来なかった。
普通であれば、これだけ怪我を負わされてしまえば、少なからず恨みを持つところだろう。
恨みとまで言わずとも、少し邪険に扱われることくらいは覚悟していた。
が、レミリアは許すと言う。
「咲夜、妹紅を連れて来て」
「かしこまりました」
さっきまで玄関にいたはずの咲夜が、いきなり慧音の横に出現する。
ちょっとビックリしてリアクションを取ってしまったが、その瞬間にはすでに居ない。
そして、気付けば妹紅がそこに居た。
「あ、慧音」
「妹紅…」
「ねぇ、妹紅。慧音はあなたのことを思って、私をこんな目にあわせたそうよ」
「そ、そういう言い方は無いんじゃないのか?」
言い方に多少トゲはあるものの、そこはレミリアだからということで納得できる範囲だ。
そして何より、レミリアの表情が物語っている。
怒ってはいないんだから と。
「大切な人を想うことはとても大事なことよ。これからもその気持ちを忘れないようにね」
「え、昨日のことはなんにも思ってないの?」
「だ、そうだ」
レミリアは「当然じゃない」と言うような表情を作ると
ゆっくりと、こう言い放った。
「だって、『紅魔館の主』を名乗るからには、これくらい寛容な心でなければいけないものね」
「レミリア…」
「礼を言う」
二人はそろってお辞儀をすると、部屋を出て行った。
それと入れ替わりになる形でパチュリーが入ってくる。
「ねぇ、レミィ。いまのは本音なの?それとも言い訳?」
「本音よ」
「そう。それがわざわざ痛覚神経を焼き切って言い放つセリフ!?」
ドムッ!!
「ぅはうっ!!」
持っていたブ厚い本で、レミリアのみぞおちのあたりをブッ叩くパチュリー。
というか、そんな所を叩いたら、誰しも呼吸ができなくなる。
「い、いまのは堪えたわよ…パチェ」
「まったく、私から言わせてもらえばねぇ」
「なによ」
「レミィが『紅魔館の主』を名乗るなら、部下や友人に余計な心労をかけさせないの!!」
「う…わかったわよ」
涙目になりながら、決して表情を変えることのない友人に対して、レミリアはこうも言う。
「なら、『スカーレット』を名乗るからには。どうすればいいのかしら?」
「別に」
「なによ、急に興味を無くさないでよ!」
「関係ないわ。私は『パチュリー・ノーレッジ』。間違っても『パチュリー・スカーレット』じゃないからね」
「つれないわね」
そこで会話が途切れると、これ以上は話すことはないとでも言うようにパチュリーは部屋から出ていこうとする。
その背中めがけてレミリアがぼそりと言う。
「私が、スカーレット。『紅』を名乗るからには、常に気高くありたいのよ」
「…そう。忘れてたわ、レミィが誇り高き吸血鬼だってことを」
「忘れてほしくはないわね。覚えておいて頂戴」
覚えておこう。
決してレミリアは単なるわがままお嬢様ではなく。
気高き吸血鬼「スカーレットデビル」を名乗る紅魔館の主なのだから。
読んで下さっていた方には、申し訳ない。
本作は作品集30に1~4。 作品集31に5。 作品集32に6が存在します。
面倒でも、せめて5から読んでいただかないと、流れがつかめないかと思います。
では、以下に本文です。
妹紅が慧音に連れて行かれた翌日。
「お嬢様…ご無事ですか?」
「これが無事に見える?」
「いいえ」
「なら聞かないで。まったく…あのハクタクは加減ってものを知らないのかしら。」
「悲鳴が聞こえた時には既にオチていらっしゃってましたからね~」
あの時、慧音はレミリアの衣服をはぎ取ると、腋やら足の裏やらを同時にくすぐりまくったのだ。
そのテクニックたるや、すでに神技の域にまで達しており、いくらレミリアと言えど耐えられる範疇を超えていた。
抵抗しようと暴れてみるも、くすぐられている最中では自慢の怪力も発揮できなかった。
結局、腹筋が限界を突破しても慧音はやめようとせず、レミリアの意識が飛ぶまでくすぐり地獄は続いたようだ。
と言っても、ものの30秒ほどの間の出来事だったようだが。
おかげで
「まったk…うっ!」
「初めて聞きましたよ。腹筋の肉離れなんて」
「げほっ、げほっ…痛たたたたたたっ!!!」
「はぁ…パチュリー様の見立てでは、お嬢様の回復速度をもってしても1週間ほどはかかるようです」
「うぐ…ヘタにくしゃみもできないわね。ある意味じゃ、自分の腹にグングニルが刺さっているような感じがするわ」
腹をさすりながら、涙目で語るレミリア。
哀れ、この状況では泣くしかない。
と言っている間に…
「お姉様ー!!!」
バンッ!!
扉をぶっ飛ばしながら(破壊はされていないが)ベッドのレミリアめがけてタックルをかますフラン。
するとどうなるか。
がばっ
「ぶほおっ!?」
もちろん、フランの顔(というか頭)が向かっていくのはレミリアの胸、及び腹部。
悪気はないのだろうが、無邪気さがここまで凶器になるものかと咲夜は思った。
(腹筋崩壊直後に、妹様のパワーでデーモンクレイドルを腹部に直撃+受け身なしとは…)
「ああっ!?ど、どうしたのお姉様?なにをそんなに嬉し泣きしてるの?」
「妹様、あれは嬉し涙ではなく。悶えているんですよ」
「~~~~~~~~~っ!!(声にならない悲鳴)」
ふーんと言いながらレミリアのお腹をツンツンしているフラン。
その度に「ひぐっ!?」とか「ぎゃう!?」とか、妙な悲鳴をあげている。
「あはははは、お姉様面白~い♪」
「あああああああ…や、やめてフラン。そこはぁ…」
声だけ聞くと、やたらと卑猥に聞こえてくるため咲夜は手で顔を覆った。
別段、妄想を膨らませているわけではない。
この状況を打破する策が無いため、ガッカリしているのである。
「御免!レミリア殿はいるか!?」
と、玄関ホールの方で声がする。
声の主までは特定できないが、呼び方からは古風な感じがする。
こんな挨拶をする人物と言えば、1人しかいない。
「あら、慧音。妹紅は一緒じゃないの?」
「あぁ…」
ものすごくどんよりと曇った表情をしている慧音。
手には小さな包みが下がっている。
「妹紅から聞いてな。なにやらレミリア嬢に失礼があったとかで、お詫びに来たのだが」
「お嬢様なら…きっと自室で昇天している頃かしら?」
「な、なんだとっ!?そそそ、そんなことをしでかしたというのか!!」
血相を変えてレミリアの自室めがけてダッシュする慧音
ハクタク状態での訪問だったとはいえ、さすがに場所は把握しているようである。
慧音が必死の形相でレミリアの自室に到達したときは、すでにレミリアはぐったりしていた。
まぁ、理由はあえて言うまい。
「だ、だだだ大丈夫かっ!?」
「け、慧音?あぁ、うん。生きてる…わよね」
なんとか戻ってきたレミリアは、来訪者が慧音だと知ると、乱れた布団をゆっくりと直した。
いろいろと乱れまくっているのを、見かけだけでも整えたかったのか。
「なんと言っていいかわからないが、とにかく失礼した」
「何が?」
「えっ!?」
突如として、レミリアの目つきが真剣になる。
その鋭い眼光に一瞬ひるむ慧音。
「いや、獣化したときに色々とやってしまったと妹紅から聞いたのだが」
「そうね、おかげでしばらく起き上がれそうにはないわ。けど、それがなに?」
「なに と言われてもな。こっちは謝罪に来ただけだ。なにもつっかからなくてもいいだろう」
「これがつっかかっているように見えるの?残念ね、あなたの眼は節穴よ」
キョトンとする慧音。
わずかに湧いてくる怒りすら吹き飛ぶレミリアの一言。
『つっかかってはいない』
それはつまり、昨夜の無礼に対しては怒っていないということだろうか?
それとも、怒りを通り越して呆れ返っているだけだろうか?
慧音には判断ができなかった。
「別に昨夜のことは怒ってはいないわ、あの行動も妹紅を思ってのものでしょう?」
「あ、あぁ。確かにそうだが」
「ならいいじゃないの。大切な人と離れてしまえば不安になるのは当然。ゆえに、あなたの行動も当然」
「…そうか」
慧音はしっくり来なかった。
普通であれば、これだけ怪我を負わされてしまえば、少なからず恨みを持つところだろう。
恨みとまで言わずとも、少し邪険に扱われることくらいは覚悟していた。
が、レミリアは許すと言う。
「咲夜、妹紅を連れて来て」
「かしこまりました」
さっきまで玄関にいたはずの咲夜が、いきなり慧音の横に出現する。
ちょっとビックリしてリアクションを取ってしまったが、その瞬間にはすでに居ない。
そして、気付けば妹紅がそこに居た。
「あ、慧音」
「妹紅…」
「ねぇ、妹紅。慧音はあなたのことを思って、私をこんな目にあわせたそうよ」
「そ、そういう言い方は無いんじゃないのか?」
言い方に多少トゲはあるものの、そこはレミリアだからということで納得できる範囲だ。
そして何より、レミリアの表情が物語っている。
怒ってはいないんだから と。
「大切な人を想うことはとても大事なことよ。これからもその気持ちを忘れないようにね」
「え、昨日のことはなんにも思ってないの?」
「だ、そうだ」
レミリアは「当然じゃない」と言うような表情を作ると
ゆっくりと、こう言い放った。
「だって、『紅魔館の主』を名乗るからには、これくらい寛容な心でなければいけないものね」
「レミリア…」
「礼を言う」
二人はそろってお辞儀をすると、部屋を出て行った。
それと入れ替わりになる形でパチュリーが入ってくる。
「ねぇ、レミィ。いまのは本音なの?それとも言い訳?」
「本音よ」
「そう。それがわざわざ痛覚神経を焼き切って言い放つセリフ!?」
ドムッ!!
「ぅはうっ!!」
持っていたブ厚い本で、レミリアのみぞおちのあたりをブッ叩くパチュリー。
というか、そんな所を叩いたら、誰しも呼吸ができなくなる。
「い、いまのは堪えたわよ…パチェ」
「まったく、私から言わせてもらえばねぇ」
「なによ」
「レミィが『紅魔館の主』を名乗るなら、部下や友人に余計な心労をかけさせないの!!」
「う…わかったわよ」
涙目になりながら、決して表情を変えることのない友人に対して、レミリアはこうも言う。
「なら、『スカーレット』を名乗るからには。どうすればいいのかしら?」
「別に」
「なによ、急に興味を無くさないでよ!」
「関係ないわ。私は『パチュリー・ノーレッジ』。間違っても『パチュリー・スカーレット』じゃないからね」
「つれないわね」
そこで会話が途切れると、これ以上は話すことはないとでも言うようにパチュリーは部屋から出ていこうとする。
その背中めがけてレミリアがぼそりと言う。
「私が、スカーレット。『紅』を名乗るからには、常に気高くありたいのよ」
「…そう。忘れてたわ、レミィが誇り高き吸血鬼だってことを」
「忘れてほしくはないわね。覚えておいて頂戴」
覚えておこう。
決してレミリアは単なるわがままお嬢様ではなく。
気高き吸血鬼「スカーレットデビル」を名乗る紅魔館の主なのだから。
結局レミリアお嬢様はカリスマなのですね。
お嬢様のヘタレっぷりとカリスマが堪能できたよ
つ100点