ご注意…キャラクターやその関係に自己解釈が含まれています、そういった物が平気な方のみお読み下さい。
「動かないでね、美鈴」
「はい、可愛く描いて下さいね!」
「あ~もうっ、動いちゃダメだってば~」
秋晴れが心地よい紅魔館の正門前。フランドールは美鈴の前でお絵かきの真っ最中。美鈴手製の小さな椅子に腰掛け、大きなパラソルの下で熱心に線を描いている。モデルの美鈴はといえば、一心不乱に色鉛筆を動かす小さな絵描きさんに手を振ってみたり、インタビューの真似事をしてみたりして動かない様窘められている。その微笑ましい光景を前庭で眺めているのは、レミリアとパチュリー、そして咲夜の三人である。
「芸術の秋か、たまには良いかもね」
「あらパチェ、通年読書日和の貴女が珍しいわね」
「私だって読書以外の事はやるわよ、咲夜、クッキーおかわり」
「差し当たっては食欲の秋ですわね…太りますよ?パチュリー様」
「……」
無言で睨み付けるパチュリーにクッキーのおかわりを差し出すと、咲夜は紅茶とクッキーを携えてフランの所へと向かった。
フランは画用紙と美鈴を交互に見ながらなにやらうんうんと唸っており、時折色鉛筆で目測をしているさまに思わず笑みがこぼれる。
「何かお困り事ですか?妹様」
「うん、上手く描けないとこがあるんだ~」
フランはそう言うとまたにらめっこを始めた。咲夜は顎に手を当てて何やら考えている風であったが、やがて傍らにしゃがみ込み、フランに訪ねる。
「見せて頂いても良いですか?」
「え~?咲夜絵描けるの?私見たことないよ~?」
「それなりに…ではありますが」
「う~ん、じゃあさ…ここなんだけど…」
「成る程…では僭越ながら…ここは…こうして…」
「すごーい!咲夜うまーい!なんで?なんでこんなに上手いの?」
「知りたいですか?」
「知りたい知りたい!」
「…内緒…です」
そういってフランに片目を瞑ってみせる咲夜、途端にフランの目がまん丸になり、すぐに頬を膨らませる。咲夜はフランの頭を撫でてやると、笑顔で再びアドバイスを始めた。
「でーきたっ!美鈴出来たよ~見て見て~」
「うわぁ!有り難うございます!私の宝物にしますね!」
「うきゅっ…大げさだよ美鈴」
嬉くて思わずフランを抱きしめている美鈴の横で、レミリアが絵をしげしげと眺め、何故か胸を張りだした。
「中々上手く描けてるじゃない、流石は私の妹だわ」
「レミィは絵が下手じゃない、何いってるのよ?」
「パチェ…最近冷たくない?」
「えへへ…咲夜にちょびっと手伝ってもらったんだけどね。咲夜すっごく絵が上手いんだよっ!」
「及ばずながら、ですわ」
「へえぇ…意外ね、お前に絵心があるなんて…何処かで習ったの?あ、ひょっとして美鈴?」
「それは秘密です」
「ほほう?主である私に対しても秘密だと言うの?お前には仕置きが必要みたいね」
「美鈴は知らないの?」
「いいえ、私も絵が下手ですから…」
「あれ?咲夜?さーくやー無視しないで~」
「さて、お仕事お仕事、妹様、大変お上手でございましたわ」
「ありがとう!咲夜!今度は咲夜を描いてあげるね!」
「それは光栄ですわ。楽しみに待っていますね」
「咲夜!さっちゃん!咲姉!さーや!」
「流石は完全で瀟洒なメイドね」
「くすん…」
咲夜は館の中へ入るとメイド達に命を与える事もせず、かといって自ら仕事場へと赴く事もせずに自分の部屋へと戻って来ていた。そしてクローゼットを開けて中に大事そうに保管されていた古いクッキーの箱を取り出し、ベッドの端に座って蓋を開ける。
「久し振りだなぁ…これ見るの」
箱の中には何枚もの紙が入っていて、それを手に取り、懐かしげに眺める。そこに描かれていたのは、稚拙で単純な線で描かれ、まるで棒人間の様なお世辞にも上手とは言えない人物画。だが枚数を重ねる毎に線は複雑になり、はっきりとした人の形を造り出していく。やがて最後の一枚。そこに描かれているのは、美しく繊細な線で描かれた-真剣な表情で門前に立つ、凛々しい紅髪の女性の姿、そしてサインの代わりに添えられた感謝の気持ち。
「結局見せられなかったなぁ…」
大好きなあの人に絵をプレゼントしたい…、そう思った。ここにやってきてから彼女がずうっと世話をしてくれた、何も知らない自分に料理も、掃除も、洗濯も。そして何より…優しさと温もりを。
どうして渡さなかったんだろう?
ああそうだ、渡せなかったんだ。
母と慕っていたあの頃からずうっと、こっそり彼女を描いていた。最初はひどい出来だった、上手く描けない自分が悔しくて泣いた日もあった。ちゃんとしたものが描けるまでは見せない、見せられない!そう誓って来る日も来る日も練習して、満足な出来になる頃には成長し過ぎていた…
もう、甘えてなどいられない程に。
「今渡したらなんて言うかな…」
大好きなあの人は。
「…渡してみよう…かな?」
大切なあの人に。
咲夜は絵を見ながら呟く。その顔からはまるであの懐かしき日々の無垢な笑顔がこぼれている。
「ライバルも出来ちゃったし、負けられないわ」
そう呟いた後、立ち上がって部屋を後にする。すると開いた窓から吹く風が絵を舞い上がらせた。その絵の一枚一枚に書かれているのは「ありがとう」という言葉。
だが、そこにあの一枚は。
最後に描いた最高の一枚は。
そこに無かった。
よっしゃー、おれも絵書いて美鈴にプレゼントするか。
・・・・・・、俺、この絵が上手く書けたら結婚するんだ・・・・。
今からスケッチブック持って紅い館に行ってくる。なぁに、すぐ戻るさ。チャイナな花嫁と一緒に・・・な
しっとりとしていて、それでいてサッパリとした読後感が良かったです。
>「へえぇ…以外ね、
意外では
咲美親子はよく見るネタだけれども、ここまで咲夜が幼く可愛く見えたのは初めて…かもしれません。
でもレミリアの扱いに吹いたw
さて、
>忌憚なきご意見をお願い致します。
とのことですので、ここから気づいた点の疑問&指摘です。
>そういってフランに~アドバイスを始めた
>大切なあの人に
この二ヵ所の末尾だけ句読点なしで改行されているのですが、つけ忘れか故意かどちらか判断がつきません…。
>「それは光栄ですわ。楽しみに待っていますね。」
>「貴女は優しい子~私は幸せ者ですね。」(あとがき)
この二ヵ所のセリフのみ他のセリフと違い、カギカッコ内の末尾に句読点が使用されています。
完全に間違いではないのですが、カギカッコ内の句読点を「使用する・使用しない」のどちらかで統一すると文章としては自然となるようです。
長文申し訳ありません。
「咲っきゅんがとても幼女でありがとうございます」としか伝える言葉が御座いません。
……すいませんもう一つ程。
レミリアお嬢様に愛を、溢れんばかりの愛情を次回作に出来ればで良いのでお願いします。
紅魔館の皆様を優しく捉えた綺麗な描写、万葉さんも咲夜さんに負けず劣らず描くのが上手でござますね。
ここまで描写されてるだけに、小悪魔の出番が無かったのがちょっとだけ残念。
……あぁ、私もこんな咲美が書きたい。
>>1様
お読み頂き有り難うございます。流石とか…期待とか…照れます、凄く照れます(笑)私も絵心があればすぐにでもプレゼントに行きたいです。ああ、そうそう、だめぇぇぇぇ!フラグはだめぇぇぇ!!
>>2様
お読み頂き有り難うございます。咲夜さんがちっちゃい子になりました。恐らく美鈴さんの雰囲気がそうさせるのかと…またフラグが!ちなみに戻る時には彼女の娘達も一緒にお願い致します。
>>3様
お読み頂き有難うございます。お褒め頂き嬉しい限り、私ってば照れすぎね!
誤字のご指摘有り難うございます。早速修正致しました。今後もご指摘、アドバイスを宜しくお願い致します。
>>4様
こんなにも早い時間からお読み頂き有り難うございます。幼くし過ぎた感はありますが…可愛いと言ってもらえて咲夜さんも喜んでくれて、いるといいなぁ。
ご指摘の部分ですが文中の句読点は付け忘れです、いつまでも至らなくてすみません…台詞内末尾の句読点は悩み処だったりしたのですが、私としては使用しない方が良いと思いましたのでそうさせて頂きます。ちなみに今回の台詞中の句読点は…無かった事に!無かった事に!こんな事を言っていては駄目ですね…頭突きを頂いてきます。
ご指摘、そしてアドバイス本当に有り難うございます。文章は修正致しました、今後も何かございましたらご指導の程を…長いなんてとんでもないです!それが私の頑張りに繋がるのですから!
>>喚く狂人様
お読み頂き有り難うございます。この作品が貴方のジャスティスに適うものであったなら幸いです。これからも宜しくお願い致します。
>>6様
お読み頂き有り難うございます。[幼女な咲夜ちゃん]すみません…今リリカルな何かが脳内で構築されました。
お嬢様に愛をですか、うん!もうタイトル決定ですね!え?もうあるんじゃないかって? くすん…さて!気を取り直して頑張って考えてみます!次回作では無いかも知れません、そこは何卒ご容赦の程を…
>>欠片の屑様
お読み頂き有り難うございます。こんなに幼女ばっかりでどうするんでしょうかね?私ってば。小悪魔は出してあげたかったのですが…私の技量では生かしてあげられるか心配でしたので今回はお休み頂きました。至らぬ書き手をお許し下さい。ちなみに私、絵が絶望的に下手です(笑)
>>8様
お粗末さまでした。「美味しかった」の一言が私にとってのご馳走です。後になりましたがお読み頂き有り難うございます。
いつのまにか腕をあげられましたなぁ。
紅魔メンバーは、どんな組み合わせも許され、かつ綺麗に仕上がるからおもしろいwww
>>地球人撲滅組合様
お読み頂き有り難うございます。腕を上げただなんてそんな…光栄の極みでございます!よーし!他キャラでも面白いって言われるように頑張ろう!とはいえ、紅魔メンバーは堪らない私でした。
読んでいて、なにかホンワカとした気分になりますね。
>>苦有楽有様
お読み頂き有り難うございます。 紅魔館はあったかファミリー、いつでも穏やかで優しい空気が流れています。
さて、嬢様の権威は何処へ行ったのやら…ちょっと探しにいきますか。
フ「わたしはおとーさんっ!」
パ「咲夜、グランパって呼んで良いのよ?」
こあ「私は……そのお姉ちゃんで……駄目ですか?咲ちゃん……」
咲「ふえっ!?」
美「良かったね咲夜、家族が一杯よ」
むぅー、やっぱりお嬢様にグランマは無理が有りますかね?
いや「美鈴は私の娘!」みたいなノリならば何とかかんとか……!
>>コメ6
昔の……話(わたし)さ……
>>謳魚様
まだまだお嬢様への愛が足りなかったりする私です。
流石にグランマ発言は危険かと思われます……ほら、貴方の後ろにお嬢様が……
「ねえ、私は夕餉を食べたかしら?」