Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ウソツキウサギ

2008/09/23 01:43:55
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てゐ→鈴仙なお話。






初めて鈴仙を見た時、自分との違いが不思議で、それでいて面白かった。
ただそれだけだった。
新しく月の兎が永遠亭に世話になる。
ただそれだけの事にこの毎日の繰り返しが
少しは味のあるものになるんじゃなかろうかなんて
多少の期待を寄せながら目の前の月の兎をじっと眺めていた。

その視線に月の兎は困ったようにそわそわと落ち着かないものだから
からかってやりたい気持ちがむくむくと湧き出し更にじっと見つめていたら
師匠である八意永琳からあまり見つめると困ってしまうでしょう、とたしなめられた。


一緒に暮らすうちに月の兎は真面目でお堅いものだという事に気付く。
師匠のいう事は素直に聞くし、覚えも早い。
最初はどんな癖のある兎かと思っていたが、なんてことはない。ただの兎だ。
地上の兎と違って嘘も吐かない。


「…つまんない」
隣にいる鈴仙にわざと聞こえるほどの大きさでぽつりと呟くと
その言葉が耳に入ったらしい鈴仙がきょとんとてゐを見つめた。
「何が?」
脈絡も無く紡ぎ出された言葉に鈴仙が疑問を抱くのも無理はない。

「べつになにもー」
理由を明かすことはせずにふいと背中を向けた。
「そう」
そんなてゐの態度を見た鈴仙も特に突っ込んで理由を聞くこともしない。
それはてゐの性格を知っているからという理由もあるかもしれないが
何よりあまり突き詰めて聞く事をしない鈴仙の性格でもある。


…月の兎は諦めが早い。


そんな事を思いながら、てゐがちらりと鈴仙の様子を伺う。
どうやらてゐの視線には気付かずに
永琳から頼まれた薬草を選りすぐっては摘んでいた。

こういう所も真面目だ。自分とは違う。

月の兎と聞いて自分とはどう違うのだろうと期待を寄せていたが
蓋をあければなんて事はない、地上の兎と変わりない。
むしろ地上の兎の方がよっぽど癖があって面白い。

「ほら、てゐも手伝って」
手が止まっている事に気付いた鈴仙がてゐを見つめ諭すように言った。
「はいはーい」
と言ってもいつも返事だけなのだ。
正直地味で面倒なこの頼まれ事をいつもどうやって切り抜けようかを考えている。
鈴仙が来る前は自分でやっていた事だったけど
(それでもあまり真面目にはやっていなかったし)
鈴仙が来てからは鈴仙に任せてそこら中をぴょんぴょんと跳ね回っていた。
そんなてゐに対して鈴仙は何も言わずに黙々と仕事をこなす。

「…」
少し離れた場所から薬草を摘んでは籠に入れる鈴仙を見つめる。


…やっぱりつまらない。


跳ね回る事も楽しくなくなったてゐがとてとてと鈴仙の元へと戻ってくる。

「ねぇ」
「何?」
てゐが戻ってきても手伝ってはくれない事を知っている鈴仙は作業を止めずに返事だけを返した。
「どうしてサボってる事言わないの?」
てゐの質問に鈴仙が手を止める。
ぱたぱたと手の泥を払うと、うーんと考えるような素振りを見せた。

「師匠に報告してほしいの?」
鈴仙の言葉にてゐがふるふると首を振る。
「やだ」
「じゃあ、しない」
そう言って再び鈴仙は薬草を摘む作業へと戻ろうとした。
すると不意にその手がてゐの伸ばした腕に止められる。

「てゐ?」
どうしたのかとてゐを見ると、少しだけ悲しそうな表情を見せる。
永琳に注意を受けても、嘘を吐く時でもいつも飄々としているてゐにはとても珍しい事だった。
「それは、本当の話?」
「え?」
てゐの言葉の意味がよくわからなくて、眉を顰めるとてゐはふるふると首を振った。
「…なんでもない」
掴まえられていた腕が離される。
いつもと明らかに様子が違うてゐに鈴仙が不思議を感じないわけがなかった。

「てゐ」
鈴仙の呼び掛けにゆっくりと顔を上げると、鈴仙が自分の隣の草地とぽふぽふと叩く。
「こっちに来て」
その言葉にてゐがゆっくりとその場所に腰を下ろした。

鈴仙に呼ばれて隣へ座ったものの、どうも落ち着かない。
すぐ隣にいる鈴仙はぼんやりと空を眺めていて
その横顔をちらちらと見ることくらいしかする事がなかった。
ふわりと吹く風が鈴仙の長い髪を揺らす。
自分とは違う赤い目がいつもよりも綺麗に見えた。

「もうすぐ満月が来るわね」
鈴仙の言葉にてゐがこくりと頷いた。
「満月が近くなると気持ちが落ち着かなくて困るわ」
そう言って鈴仙が困ったように笑った。
「月にいた時は毎日が満月のようなものだしね」
月に住んでいる時は月の形を見ることは無かった。
勿論月に月はないのだから当たり前なのだけど。


「月ってどんな所?」
地上の兎は月を知らないから、てゐにとってそこは未知の世界だ。
「どんなって…一言で言うには難しいわ」
そう言って鈴仙は困った顔をする。
「月も月でいいところよ」
「住めば都ってやつ?」
「うーん、ちょっと違うかも」

でも…。
そう言って鈴仙が微笑んだ。


「ここには姫様や師匠や…てゐがいるから、月よりも楽しい、かな…?」


鈴仙の言葉にきょとんとした表情を浮かべるてゐだったが
すぐにくすくすと笑い出した。

「月の兎も嘘吐きなのね」
「え、いや、嘘じゃないんだけど」
鈴仙の言葉にてゐがじいと顔を覗き込む。

「じゃあ月の兎は嘘を吐かない?」
てゐの質問に鈴仙が言葉を詰まらせる。
「いや、そういう訳でもないけど」
てゐの言葉に鈴仙はちらりと視線を逸らした。
嘘を吐いた事がないと言えばそれこそ嘘になる。
かといって嘘ばかり吐いている訳でもない。
てゐは時々不思議な事を聞いてくるから、ちょっぴり返答に困る。

「ほら、月の兎も嘘吐きだ」
鈴仙が返答を濁しているとてゐはけらけらと笑って
飛び跳ねるようにその場所を立ち上がった。
そしてとてとてと竹林の方へ走り出す。
少し先に行ったところでてゐがくるりと振り返った。

「地上の兎も嘘吐きだよ」
「それはよく知ってる」
鈴仙の言葉にてゐがにこにこと笑顔を見せた。


「うん、鈴仙の事なんて好きじゃないよ」


そう言い残しててゐが跳ねるように竹林の深くへと消えていく。
ぴょこぴょこ跳ねる後ろ姿を見ながら、鈴仙がぽつりと呟いた。

「ここに来て随分経つけど、相変わらずね…」
こうしちゃいられない、てゐを追いかけなきゃ。
そんな事を思いながら鈴仙がその場からゆっくりと立ち上がる。


ぴょんぴょん跳ねる後姿がいつもよりもほんの少しだけ嬉しそうに見えたけど
それが嘘か真実を知っているのはてゐだけだった。




―END―
てゐと鈴仙好き過ぎが高じて、とうとう書いてしまいました。
この組み合わせ好きな人いればいいなぁ、なんて思いながら布教を兼ねた投稿です。
C・B
コメント



1.転寝削除
騙し騙されな関係だけど、てゐと鈴仙は心で通じ合ってるよ
って師匠が言ってた
2.名前が無い程度の能力削除
わぁいほの甘いなー
3.名前が無い程度の能力削除
いい話ウサー
4.名前が無い程度の能力削除
いい話ウサー
5.名前が無い程度の能力削除
いい話ウサー