夜も更け丑三つ時と呼ばれる時間も過ぎた頃、宵闇の中に赤提灯がひとつ灯っていた。
少し前まで賑わっていたこの屋台も、今では残っているものは僅かばかりしかいない。
「さてと、私もそろそろお暇します。どうもご馳走様でした」
次にそういって席を立ったのは射命丸文。
今は取材ではなく飲みにきただけのようである。いつも連れている烏もいない。
「えーと、彼女はどうします?」
「うう・・・うふ・・うふふふふ・・・・」
「まったく、私と呑み比べなんてするから」
「いつもこんな感じだから、大丈夫うちは朝までやってるわ」
「はは、それじゃあお先に失礼します」
そういうと文は風を纏い飛んでいった。
そして屋台に残っているのは店主のミスティアと、すっかり潰れて机に突っ伏している魔理沙の2人っきりとなった。
魔理沙は右手に呑みかけの杯、左手に「二日酔い防止効果があるんだぜ」というキノコを持ったまま突っ伏していた。
「まりさー?だいじょうぶなのー?」
「・・・・うふふ・・・うふふふふふふふふ・・・・・・うぇ」
魔理沙は突っ伏しながら不気味に呻いている。
「ダメそうね。今晩もここに泊まっていくのかしら・・・仮にもここは妖怪の屋台なのに」
人間を襲うこともあるミスティアだが、屋台を出している間はそういうことも自重している。
だからこそこの屋台に人間も来るようになった。
しかしここに来る人間なんてそもそも数えるほどであるし、そのほとんどは何人かで来るし、さらに1人で来るような人間は本当に片手で数えるに足りる。
そして1人で来たあげく、たらふく酒を喰らって安心しきったように眠り出すなんて、それこそこの人間だけである。
「私ったら、人間から恐れられていないのかな・・・」
ミスティアは不満そうに呟いた。
これでもそこそこ人間に怖がられているという自覚はある。
相変わらず人間をからかうのも続けているし、少し前にも人間が書いているナントカという本に紹介された。
それなのにこの人間と来たら、こんな寅の刻までここでくだを巻いている。
「うーん・・・・まあ、いいか。ここでやらかすと巫女が怖いし」
少し悩んだようでは合ったが、結局ミスティアは毛布を引っ張り出してくる。
ついでに調理場の火を落し、提灯の火から蝋燭へと火を移す。
「魔理沙、まーりーさ。ダメかぁ、ずいぶんグッスリなことで」
しばらく肩を揺すってみたが効果はなく、仕方なくそのまま毛布をかけることにした。
「・・・・みあしゃま!」
「イタッ!」
魔理沙はミスティアにしがみついた。
急にしがみつかれたミスティアはそのまま地面まで倒れ、後頭部を強かに打ちつける。
「みまー、みましゃまー、あのね、まりさね、まりさね」
「っ~~~。ちょ、ちょっと待って~!」
バサバサと羽を動かして暴れるミスティアに対し、魔理沙は腹部に顔を擦り付けて引っ付く。
「みましゃまあったかーい」
「だれよ『みま』ってー!はーなーしーて!」
ミスティアがなんとか引っぺがそうとすればするほど、魔理沙は腕の力を強くする。
「いっちゃやだよう、まりさをおいていっちゃやだよう・・・うっく、えぐ・・・」
普段の姿からは想像もつかない位声健気に泣くので、ミスティアはなんとなく引き剥がせなくなってしまった。
しかし地面に直接転がっているのはどうにも背が痛んだので、とりあえず手に持っていた毛布を敷きその上へ魔理沙ごと誘導する。
「子守唄でも歌った方がいいのかしら」
「えへへ・・・みましゃまー・・・」
「ちっちゃな頃から悪カギで~♪」
「みましゃま・・・うるしゃい・・・」
夜風が蝋燭の火を消した。
確かに蓮子に似てると思ったさ!むしろそっくりさ!!
ゆかりんいえ、メリーがとても可愛いです。
また後書きから始まるSSを期待。
あとがきだけを別作品として投稿しても十分いけるんじゃないかと。