「いいからいいから、無理しないでゆっくり休みなさいよ。今からお茶入れてきてあげるから輝夜」
「何を言うのかしら妹紅。あなたこそゆっくりすべきよ。お茶は私に任せなさいって」
「気にするなって」
「そっちこそ気にしないで任せなさいよ」
「ふふふふふふ…」
「うふふふふふ…」
「で、あれは何をやってるのかしら?うどんげ」
少し離れた所で様子を伺っていた私こと永琳は、この場に呼んだ鈴仙に説明を求めた。
「えっと、言い争いの喧嘩ですね」
「ならいつものことでしょう。この後殺し合いが始まると思うから箒とちり取りを用意しなきゃ…」
「あ、いえ。ちょっと違うんですよ~」
「何が違うのよ?」
「あの、今日は何の日かご存知ですか?」
「今日?」
「敬老の日です」
「あら、そうだったわね。でも、それがどうしたの?」
「えと、敬老の日は文字通り年寄りを敬う日じゃないですか」
「そうね」
「それで、敬老の日に休むというのは、老人だと言ってることになる事になる、と」
「…誰がそんな事を」
大体予想はついちゃったけど。
「てゐです。最初は姫様に、敬老の日に妹紅を敬えば老人ってからかえますよーみたいなことを言ってたのですが」
「どうもてゐは妹紅にもそのことを既に伝えてあったみたいで」
「二人で言い争い始めたってわけね」
「…です」
「あら、妹紅。そういえば物凄くもんぺが似合ってるじゃない。とてもいいわよ?おばあちゃんみたいで」
「お前も着物が似合うなあ。やっぱり長い間生きてると着付けが上手くなるんだなあ」
「あらあら、妹紅も髪が真っ白になる位生きてるじゃない。今日位ゆっくりしなさいよ」
「これは生まれつきだ。お前もゆっくりしなよ。今日ぐらいは」
完全にヒートアップして、もう目的も忘れて単なる悪口の言い合いになってしまっていた。
どうしたもんかと考える。
とりあえずこのままじゃラチがあかないので間に入ってみる。
「あのー」
「何かしら、永琳」
「何のようだ、永琳」
物凄い笑顔で振り返る二人。
だがお互いに足を踏みあっていて、下半身は殺伐としている。
またその足が踏んだり捻ったりフェイントを入れて踏みつけたりと、地味だがもの凄い攻防を繰り広げている。
「それで、何のようかしら?私は妹紅を労おうと忙しいんだけど?」
「まったく持ってその通りだ。私も輝夜を休ませたくてしょうがないんだよ」
「い い か ら そ っ ち が や す め 妹紅~~」
「お ま え が や す ま ん か い 輝夜~~」
「はぁ…」
お互いの額を打ち合わせ言い合う二人。
もう、埒があかない。
「えいっ」
ぷす
「「うっ」」
首筋に注射器を一本ずつ打ち込む。
すると二人は、糸の切れた人形のように倒れ静かになった。
「うどんげ、二人分の布団を用意。それから寝かしといて頂戴」
「は、はぃ!」
今さっきまでオロオロしていたうどんげに指示を出す。
すると耳をピーンと立たせ、布団を出しに飛んでいった。
「あの、師匠…」
「なに?」
姫と妹紅を出した布団に寝かしつけた後、暫くしてからうどんげがおずおずといった感じで聞いてきた。
「あの、敬老の日っていうのは長く生きた人に感謝をするって意味なんですよね?」
「そうね。正確には年寄りの知恵を借りるのを感謝ってことらしいけど」
「ええっと、そうですけど~…。その、年は取ってるけど老人ではなくてですね…。そのお世話になった方に感謝をしたいって言うか…」
「?」
何が言いたいのかしら。
「…あの、師匠は…。その、長生きはしてますけど…、う~…。」
「はっきり言いなさい」
少し言葉を強めて言う。
「は、はひ!その、…師匠は今日労われるのは嫌ですか…?」
…びっくりした。
私が自分でもわかるくらい目を大きくなっているのがわかる。
「あの、決して年寄りといいたいわけじゃないんです…。ただ、いつも薬の知識を教えて貰ったりしてますから、敬老の日に当てはまるんじゃない…かと」
最後の方には声が小さくなって聞こえないほどになっていた。
「うどんげ」
「…はい」
「私は笹団子とお酒がほしいわ」
「ごめんなさ…、はい?」
「聞こえなかったの?笹団子とお酒」
「えっと…?」
「労ってくれるんでしょ?」
「は、はい!すぐお持ちします!」
うどんげは直ぐ台所に走って言った。
まさに脱兎のごとく速さだった。
最年長か?
どっちが年上だ?
でもえーりんは(下二桁)17歳だよ!!
月人は元地上の人間、と進化の過程を考えると、
1.神主の冗談の類。
2.実は月人は類人猿か、恐竜人間。
3.東方世界じゃ人類の歴史が長い。
まじめな話だと、てゐは人がつづる神話の時代の生まれ、永琳は世界がまだ幼く地球が平らだったころの生まれ。つまり東方香霖堂の恐竜の化石の話にあるように東方Projectの本質のひとつは幻想性にあり、現代的かつ具体的な年数に意味などない。