「ね、ねえ、フラン?」
「…………(むしゃむしゃ)」
フランが返事をしてくれない。姉として私はひどく悩んでいた。
ヨーロッパの貴族は食事の際、やたら細長い机を用いることは有名だと思う。
しかし、今、私の目の前にあるこれはやりすぎだと思う。
私とフランは、その両端に座っているのだが、その距離、50m。
なんでも、フランに頼まれた咲夜が食堂の空間を引き伸ばしたらしい。
さらに、屋敷中の机を総動員して、この超ロング机ができた。
突貫工事の証拠でもあるつぎはぎは全部、テーブルクロスで隠れている。
「フラン、お願いよ、機嫌を直して」
「…………(むしゃむしゃ)」
フランが返事をしてくれないのには、たいした訳はない。
ただ、ちょっと寝込みを襲っただけ。襲っただけでこうも怒るのよ?ちょっとパジャマ破いただけで。
理不尽なこと限りないわ。さらに、そのせいで
『これから私の半径50m以内に近づいたら、宣戦布告と受け取るから』
なんて言われて、その結果机がこれなのよ。
「咲夜、おかわり」
向こう側でフランが紅茶のおかわりを要求。咲夜が向こうに行ってしまう。
間が50mもあると、なんだか真ん中に国境が見えるわ。なんでだろう。
「ね、ねえ、フラン?お願いだから返事だけでもしてちょうだい」
「…………(もぐもぐ)」
「フラン、ゴメンなさい、私が悪かったわ。だから───」
「咲夜、おかわり」
もう口もきいてくれない。もう姉妹も末期らしい、2人の心の溝は50mよりも深かった。
「フラン、お願いだから。謝るから。なんでもするから」
「……お姉さま」
やっとフランから返事がきた。それだけで無性にうれしいわ。ソウルゴーハッピー、私ソウルゴーハッピー。
「うるさいから出てって。お姉さまの顔見てると食欲なくす」
ソウルゴーメランコリー、私ソウルゴーメランコリー。
その後、私は食堂を追い出された。私は1人寂しく私の書斎に戻る。
「(ノック)お嬢様、少々よろしいでしょうか」
声からすると、ノックしたのは咲夜のようだ。
「いいわ、はいって」
「では、失礼します(シューコー)」
シューコーシューコーと呼吸をしながら咲夜がはいってきた。顔にはガスマスク。
「咲夜、その顔、どうしたのかしら」
「咲夜ではありません。姉妹の味方、ガスマスク仮面です(シューコー)」
「ガスマスク仮面って、意味かぶり起きてるわよ。それで、実際のところは?」
「妹様に、危険だからこれをつけていけと言われました。なんでも、空気感染の恐れがあるとかで(シューコー)」
私はついに病原菌扱いか。
それにしても、首から上だけ病原菌対策しても、首から下がミニスカメイドだと、なんかシュールを通り越すシュールね。
「どうして私はこういう仕打ちを受けるのかしら」
「お嬢様が1番存じていると思うのですが(シューコー)」
「あと、そのシューコー、どうにかならないの?うるさいんだけど」
「(シューコー、シューコー、シューコー)」
「やめなさい、その地味な嫌がらせ。過呼吸で倒れても知らないわよ」
もうこれは冷戦だ。一昔前なら、フランが私の書斎にシューコーを送り込んでくることなど考えられなかったもの。
「それで、用って何なの?」
「はい。実は、私としてもお嬢様と妹様の喧嘩は見るに耐えなく、仲直りしてほしいのです(シューコー)」
「それは分かってるわよ。私だって、できることならしたいわ」
「そこで、私がちょっとばかり、手を打っておきました(シューコー)」
「手?」
「世間一般でよく使われる、『嫌なことは呑んで酔って忘れよう作戦』ですわ(シューコー)」
「でかしたわ、さすがは私の従者ね」
「食事の際に、妹様の飲む紅茶にアルコールを盛りました。それはもう大量に(シューコー)」
「じゃあ、今は酔いつぶれてふにゃふにゃね!よし、行くわ!行ってくるわ!ありがとう、咲夜!」
「いいえ、私は姉妹の味方、ガスマスク仮面です(シューコー)」
私は部屋を飛び出した。今日からガスマスクと友達になれそうだ。
気合いの入りようは、廊下をあえて連続デーモンロードウォークで進むところを見れば分かると思う。
何人もメイドを轢いた。轢かれたメイドは宙に舞う。それがどうした、いや、たいしたことではない。
待っていろ、フランドール、いや、ふにゃんどーる!
「おねえたまぁ」
うん、ここまで酔っているとは思わなかったわ。咲夜、あなたどれだけ盛ったのよ。
さようなら、フランドール。こんにちは、酒乱ドール。
「ふ、フラン、そんないきなり抱きつかないで!ものごとには順番があって、それにまだ私、心の準備が……」
「うにゃ?」
部屋に着いた途端、中に引きずり込まれて、いきなりベッドに投げ出される私の身にもなってよ。
「いつもおねえたまがやること、今日は私がやるんだぁ」
「ま、待ちなさい、フラン!あなたはいい子、すっごおくいい子、だからもっと自重ってものを……」
「おねえたまぁ、うるさいよぉ」
フランが私の口をキスで塞いだ。あぁ、今なら死んでも何の悔いもないわ。
「じゃあ、次はこっちね」
フランは私の服の襟をもって、一気に縦に引き裂いた。
「フラン、ちょっと、それは乱暴ってものよ!」
「うわぁ、赤くなっちゃって、おねえたまかわいい」
「よーし、怒ったわよ!私は怒ったわ!罰として、あなたに正しい襲い方を教えてあげるわ!」
形成逆転、今度は私がフランの服を破いた。
「やったな、おねえたま」
「本番はこれからよ、フラン。長く熱い夜になりそうね」
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(にゃんにゃん)
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「おねえたま、もうらめぇぇ」
「何言ってるの、ここからが本番よ」
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あれから少しばかり記憶が飛んでるの。なぜかしら。
ただ、目を覚ましたら、私がフランと同じベッドで寝てて、両方、ほぼ裸だったわ。
ベッドも乱れまくりだし、何があったんだかまるでさっぱり。
ただ、これでフランと仲直りはできた気はする。いい雰囲気だったもの。
「ん」
声がした。フランも目を覚ましたみたいだ。
「あ、お姉さま」
「おはよう、フラン」
私が声をかけると、まずフランは自分の周りを見て、自分があられもない格好になっているのを見て、私にこう言ったわ。
「お姉さま、これどういうこと?半径50mに近づくなって言っておいて、これ?」
「わ、忘れたの?あなたが私を部屋に連れ込んだんじゃない!」
「嘘ついちゃ駄目だよ、お姉さま。とりあえず歯をくいしばれ」
とりあえず、酔いがさめたら仲直りも愛の育みも全てリセットらしい。このレミリア、人生最大の誤算でした。
「ふ、フラン?」
「いいから歯をくいしばれッ!あと正座ッ!」
「ひゃ、ひゃいッ!」
「さて、お姉さま、何して遊ぼうか」
さようなら、酒乱ドール。こんにちは、修羅ンドール。
それから、私は首輪と犬耳と犬グローブと犬テールを装着させられたの。それと下着以外の着衣は認められなかったわ。
「さあ、行くよ」
「ふ、フラン、本当にこんな格好で外を歩くの?」
「犬が“ワン”以外の言葉をしゃべっていいんだっけ?それとも、また遊んでもらいたい?」
「わ、わんッ!」
「じゃあ、散歩に行くよ」
私はレミリア・スカーレット。元、紅魔館主。今、ペット。
隣にいるのはフランドール・スカーレット。元、妹。今、紅魔館主 兼 私の飼い主。
「じゃあ、最初は博麗神社に行こうか」
「わ、わお─────────んッ!!」
殺 す な ら 殺 せ
『姉妹SSを読んでいると思ったらダースベ○ダーが混じっていた』
先生! 言われた通りにやっただけなのになんだかエロい言葉になりました!
もっと言いたいことはあるが
シューコーを名詞にしたあんたのセンスに乾杯
レミフラはいいものだGJ
判りすぎるほど判った。
せっかくの作品にこんな事言うのは失礼とは存じ上げますが、もうこのようなSSは書かないで頂きたい!!
今だって鼻血が止まらないんです。これ以上は失血死してしまいます!!
これのせいでシューコーが途中から「修好」に漢字変換された