Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

250年の嘘

2008/09/11 18:24:52
最終更新
サイズ
6.94KB
ページ数
1

※この作品にはオリジナル設定、およびオリジナルキャラクターが出ます。
オリが嫌いな方はお戻りください。



























「何方のお墓なんですか??」

私の隣で佇んでいた咲夜が突如そう聞いてきた。
そういえば、咲夜には話していないような気がする。
教えるついでに話しておいてもいいだろう。

「このお墓はね―――――












250年前 ヨーロッパ、ルーマニア。トランシルヴァニア地方。
妖精の森と言われる森の奥深くにその屋敷は存在していた。
『白夜館』
高貴な白で染め上げられたその館には、吸血鬼の家族が住んでいたの。

偉大なる吸血鬼、ヴラド・ツェペシュの血族、バーム・スカーレット。
その妻、リリスの血を引く魔性の女、クーヘン・スカーレット。
そして、私、レミリアとフラン。
フランが生まれた時は皆で喜んだものよ。
可愛い、可愛いって皆で可愛がってね。
でも、ある日突然皆変ってしまったわ。



「何故、何故なのお父様っ」
「レミリア、これは必要な処置なのだ」
「納得できないわ、どうしてフランを地下室に閉じ込める必要があるのっ」
「家族やメイド達を守る為だ」
「嘘、お父様の嘘つき」

激しく雨の降る廊下で私はお父様と言い合ったわ。
理由はフランの能力の目覚め。
『全てを破壊する程度の能力』
お父様はその力を制御できないフランを恐れ、地下に幽閉する事にしたの。
私は到底納得できなかったわ。
愛するフランを暗くて狭い地下室に閉じ込めるなんて正気の沙汰じゃなかったもの。

「レミリア、いい加減にしないか。これは決定した事なのだ」
「いやよ、納得できる筈がないじゃない」
「子供の駄々にはこれ以上付き合えん」

そう言ったお父様の目は何所までもどす黒かったわ。
私はこのままじゃ終わる筈がないと確信した。
だから私は自分の能力を使って地震による崩壊の運命を作り出した。
……さすがに疲れたのを今でも覚えてる。

「レミリア、今後一切私の邪魔をする事を禁じる」
「………………」

当然お父様には全てお見通しだった。
その間にフランは更に地下深くに幽閉されてしまった。
已む無く私は一部のメイドを説得して週に何回か入れるようにしたの。
フランも嬉しそうだったわ。それだけで苦労した甲斐が有ったのよね。
でも運悪くお父様に見つかったの。
それ以来私の傍には常にお父様直属のメイド達が付いてたわ。

「ねぇ、フランに会いたいのだけれど」
「バーム伯爵より、決して会わすなと言われております」
「其処をなんとか」
「なりません、レミリア様のためです」

そんなやり取りを毎日したわ。
皆が咲夜のようなメイドなら話は早かったのにね。
何照れてるのよ、本当の事でしょう??
で、続けるわね。
一週間位かしら??私が一向に訪ねて来なくなった事を怪しんだフランは実力行使に出たの。
被害は甚大。
私の部屋まで一直線に『白夜館』に道が出来たわ。
でね、私に会うなりフランはこう言ったの。

「お姉様、私の事嫌いになったの??」

ってね、そんな訳ないじゃない。
確かに壁を突き破ってフランが来た時はビックリしたわ。
でも、怖くは無かった。
だから抱きしめて頭を撫でてあげたの。

「嫌いになんてなる筈がないでしょう??ちょっとお父様に閉じ込められてただけよ」
「本当??」

涙目で見られたときにきっと惚れたのね。
なんとしてもこの子を守ってあげたいって思ったのよ。
まぁ、私もお母様の子だからね。禁断って言葉に弱いのよ。

でも私がフランと会っていた事がメイドを伝ってお父様に伝わってしまった。
そこでお父様はフランを知り会いの(口に出すのもおぞましい罵詈雑言)なヤツにフランを売ろうとしたの。
咲夜も許せないでしょう??
え、フランは抵抗しなかったのかって??
フランは既に疲れていたのよ。
お父様に幽閉され、お母様には会えない。あ、後で知ったんだけどお母様は別館に移されてたらしいわ。
そして私にさえ会えなくなったフランの心はすっかり擦り切れていた。

「フラン、行くぞ」
「はい、お父様」
「ちょーと待ちなさい、フランを何所に連れて行くつもり??」
「おまえには関係の無い話だ、レミリア。部屋に戻れ」
「でも断るわ。このレミリア・スカーレットの好きな事はね、妹を何処かへ連れ去ろうとするお父様を止める事よ」
「ふざけるのも大概にしろ、怒るぞレミリア」
「怒っているのは私よ、お父様」
「お姉様………」
「フラン、アナタは此処に居てもいいのよ??」
「ほん、とう??」
「ええ」

私はそのまま玄関でお父様と本気で戦ったわ。
さすがに強くてね、もう少しでやられそうって時にお母様が現れたの。

「アナタ、私が初めてお腹を痛めて生んだ子を売ろうとするなんてね」
「く、クーヘン」

別館に閉じ込められていたお母様は実力で外に出てきてお父様を一撃で倒してしまったの。
……今更だけど、フランが始めてお腹を痛めたわけないわよね、私が居るし。
あ、でもお父様は金髪で、お母様は銀髪、私は蒼銀で、フランは金。あれ??

「アナタには失望したわ、変わってしまったわねバームさん」
「クーヘン、何をするつもりだ」
「さようなら、ここで別れましょう」
「ま、まて、クーヘンっ」
「レミリア、フラン、また会いましょう」

お母様に逃げられたお父様はショックの余りに毎日自室に閉じこもってしまったの。
その三日後よ、私がメイド達の頼みで様子を見に行ったのは。





「お父様??」

キーコ、キーコ

「お父様ぁ!?」

キーコ、キーコ






死後三日。
そう言われたわ。

「お姉様」
「いいのよフラン、それよりも問題は山積みよ」

お父様はどうやら悪い女に捕まっていたらしく、山のように借金をこさえていたのよ。
それがお父様の豹変の理由だとフランに教え、只管に借金返済の方法を考えたの。
そして思いついたわ。
メイドの一人を私服に着替えさせ、賭博場に行かせるの。
大もうけの運命がある以上、負けの二文字は存在しなかったわ。
そして、パチェとであったの。
町でメイドが路頭に迷っている所を拾ったらしいわ。
ノーレッジ家といえば外界ではそれなりに名の知れた魔法の名門。
そこのご令嬢が辺境の町に居るなんて驚いたわ。
……何咲夜まで驚いてるのよ。
え、お嬢様だっただなんて驚き??
あのねぇ、パチェの紅茶の詳しさや、教養の深さを考えれば解るじゃない。

「ここはアナタの家だと思ってくれて構わないわよ??」
「そう、それじゃあ遠慮なく」

無愛想のクセにやたらと図々しかったのを覚えてるわ。
ま、パチェに出会えた事は幸運だった。
当時外界では異端狩りが行われ始めたの。
当然吸血鬼の私や魔女のパチェも狙われたわ。
その時よ、パチェが画期的な魔法を生み出したの。

「これで遥か東の地に逃げましょう」
「でもこの白夜館を置いていけないわ、ここは私とフランの思い出の場所なのよ??」
「問題ないわ、私はパチュリー・ノーレッジよ。ノーレッジの者に魔法の失敗は無いわ」
「どういう事??」
「この屋敷ごと東方の地に行くの」
「そんな事!!」
「出来るわ、既に転移魔法陣の設置は終わってる」
「…………」

パチェの魔法の才能は誰もが認めていたわ。
だから私もかける事にしたの。
勿論保険はかけておいたわ、運命という名の。

「レミィ、少しは信用しなさい」
「バレたか」
「バレバレよ、それじゃあ行くわよ」

異端狩りの手が来る数日前に白夜館は幻想郷に移動したわ。
そして、私は主の居なくなった白夜館の色を塗り替え、紅魔館と名乗った。
図書館は昔のお母様の別館だったものよ。
今でこそ一階から地下室までぶち抜かれて本棚で一杯だけどね。






――――さて、長々と話たわね。戻ってお茶にしましょう」
「はい、お嬢様」
「ああ、そうそう、あのお墓はね、お父様の物よ」
「…………そうではないかと思っておりました」
「はぁ、シリアスは疲れるわねぇ」

私がそう言って目配せをすると、咲夜は軽くお辞儀をして消えた。
大方時を止めてお茶の準備に入ったのだろう。


「………結局、咲夜にも話せなかったわね。フランがお父様の『心』を壊したなんて」


この一世一代の大嘘がフランに知られたらきっとフランは耐えられないだろう。
この事を知っているのは私だけで十分。
さて、咲夜のお茶を飲みましょうかね??

「おねーさまー、用意できたよー」

テラスから愛しの妹の声が響く。
咲夜ったら張り切りすぎね。



「今行くわよ、フラン」
シリアスに挑戦したくなった紅魔です。
初めてのシリアスなのでよく解りませんなぁ。
次回はまたしてもギャグに戻ろうと思います。


尚、作品を批判されるとやる気が著しく下がり、書く気がなくなります。
なるべくその手の感想は勘弁してください。
紅魔レヴォリューション
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
誤字:消して会わすなと→決して
    始めてお腹を痛めて生んだ子を→初めて
この作品自体はシリアスなのに、どうしても以前の作品を思い出し、
「これがエスカレートしてああなったのか」と思ってしまいます。
そのことも含めて面白かったです。ところでパチュリーがカッコイイのですが。
2.名前が無い程度の能力削除
ちくしょう。両親の名前でギャグだと思ったのに普通にいい話だったよ
次回の話も楽しみに待っています
3.亜虎削除
他の作品だと、フラン出産の時に母親が死亡……というのが多い中、
夫に愛想をつかせて出て行くのは斬新だなぁ、と。
何時の時代も同じ事が起きるモンですねぇ、しみじみ。
4.名前が無い程度の能力削除
ちょ……この話読んだら今までのお嬢様のおふざけが急に深くなりますって!!

でもパチェは自力でマッチョ開眼……なんだこの差は。
5.名前が無い程度の能力削除
250年前とあるけどパチュリーって確か100歳くらいじゃなかったっけ?
6.紅魔レヴォリューション削除
レス返しです。
1>
修正しました、感謝。
パチュリーがカッコイイのは仕様です、自分、パチュリー好きですから。
2>
二人続けるとバームクーヘンに………
3>
今でも現役(何が??)で生きています。
4>
レミリアの見方がかわりました??
5>
マヂで??え、ちょ、マヂで??
7.時空や空間を翔る程度の能力削除
たしかにパチュリーは「100歳」ですな・・・

シリアスも良きかな
8.地球人撲滅組合削除
また1つ貴公に感動させられた。今回は純粋に。
9.喚く狂人削除
カリスマ溢れてるなあ……
その名家のお嬢様は二百五十年経ってから大暴走してますが。筋肉方向に。
10.名前が無い程度の能力削除
最初に注意書きあるんだから年齢について細かくつっこまなくたっていいじゃない
作者も意図して無かったみたいだけどww
>この事を知っているのは私だけで十分。
しかし、パチェは知ってそうだw
11.名前が無い程度の能力削除
パッチェの矛盾もそうだが
ヴワル図書館というのは曲名なだけで、パチェの図書館に名前は無いそうな
神主が言ってたから間違いない
12.名前が無い程度の能力削除
レミフラ姉妹最高だ
13.紅魔レヴォリューション削除
レス返しです。
7>
なんてことだ………まぁ、今更修正できないので今回はお見逃しください。
8>
嬉しいこと言ってくれますね、その言葉が励みです。
9>
レミリアはカリスマが出し易いですねぇ。
10>
すみません、ホントに知りませんでした。
11>
ヴアルまで違うの!!また一つ学習しました。
12>
レミフラがジャスティス
14.名前が無い程度の能力削除
いい話をありがとう。