人情みすちー屋台　深夜枠

レ「ふ、幼女でカリスマ、おまけに勝ち組なレミリアよ」
フ「大きいお兄ちゃんたちのアイドル、フランだよ」
レ「さて、今回も私カリスマよ」
フ「お姉様嬉しそうだね」
レ「そりゃあそうよ、だって久しぶりのマトモな出番よ??」
フ「私が無いのにね」
レ「それじゃあ始まり始まり～♪」
フ「………………ぐすん」













一般のお客さんの殆どが帰ってしまう丑三つ時。
そんな時間に現れる団体さんが居た。
それは………





「私は年増じゃなーーーいっ」

八雲紫。

「誰よ私に腹ペコ設定付けたのはっ」

西行寺幽々子。

「………ＰＡＤじゃないもん」

十六夜咲夜。

「また今日も慧音を負ぶって帰るのか」

藤原妹紅。

この四人である。
彼女達は、大抵従者が眠ってしまった頃合を見計らって訪れる。
そして、自分達の愚痴も言って行くのだ。
まあ、違うのはほろ酔い状態で愚痴って帰る事だろうか??
私としては店で眠ってしまった常連さんを連れ帰ってもらえて嬉しい。

「しっかしあれよ、私別に外見誤魔化してる訳でもないのになんで年増扱いなの??」
「そりゃ、あれよ紫。アナタの年齢が六桁行ってるからじゃ」
「私ゃ何歳よ」
「恐竜とお友達??」
「ちょっとお話しましょ、幽々子」

さすがに六桁は無いと思うよ幽々子さん。
それに紫さん結構殺る気だよ??

「誰なのよ、私にＰＡＤ疑惑を付けたのは……」
「え、えーと神様??」
「そんな腐った神様なら要らないわよ」

うわっ、今日は相当酔ってますよ咲夜さん。
瞬間的に私切って捨てられましたよ。
だからと言って美鈴さんのおっぱい揉んで良い理由にはなりませんよ、咲夜さん。

「やーらかいわねー、私もコレくらいあったらなー」

……確かに咲夜さんの胸は後半メンバーの中じゃダントツで小さいですから。
妹紅さん??あの人照れ屋さんですからさらし巻いて誤魔化してます。
ブラは付け難くてイヤだそうですよ。

「はぁ、みすちー焼酎おかわり」
「あれ、もう終わったんですか??」
「幽霊に攻撃なんて効かないわよ」

それもそうですね、さてさて注文の品をっと。

「どうぞ」
「そういえばね、私つい数日前に妖怪の山に釣りに行ったの」
「なんでまた」
「橙が魚が食べたいって言ってね、それで其処でぶっ倒れてる藍が行くって言い出して」
「へぇー」
「でも二人とも水に落ちたら大変だから私も行くことにしたのよ」
「めんどくさがりの紫にしては珍しいわね」

ニュッと紫さんの背後から幽々子さんが顔を出した。
ちょ、ちょっとビックリしたよ。ちん。

「煩いわよ、まあめんどくさかったのは事実だけどね」
「ふぅーん、じゃあなんで??」
「最近あんまり構ってあげてなかったなぁ～って」
「優しいじゃない、ま、だからこそ一家なんて呼ばれてるのかしらね??」
「余計なお世話よ」

でも、お似合いだと思うなぁ。
優しいお母さんの紫さんに、しっかり者のお姉さんの藍さん、そしてやんちゃな妹の橙ちゃん。
うん、間違いなく八雲一家だよ。

「でね、釣りに行って魚は釣れたのよ。巨大なの」
「誰が釣ったの??」
「藍」

あー、そういえば一回だけ凄く疲れた表情で来てた日がありましたね。
今日は楽しかったって言ってたから詳しく聞きませんでしたけど。

「で、あんまりにも大きかったから霊夢の所で捌いたの」
「なんで呼ばないのよ」
「いや、さっき腹ペコキャラじゃないって言ったばっかりじゃない」
「何言ってるのよ、普通に美味しい物は好きよ」
「…………世の中は欺瞞に満ちてるわ」

あー、紫さんが投げた表情になっちゃった。
こっちはそっとして置こう。

「飲んでる妹紅さん??」
「ああ、でもこれから慧音を負ぶって人間の里に帰らなきゃいけないからなぁ」
「いざとなったら此処で寝てもいいよ??」
「店は??」
「朝まで開店かな??」

そう言うと妹紅さんは「さすがに悪いよ」と言ってしまった。
うーん、遠慮する人だなぁ。
普段から朝近くまで開店してるのに。

「ねぇねぇみすちー、アナタって胸どれ位あるの??」
「うわっ、咲夜さん酔いまくってるよね??ね??」

ひっく、とか言いながら聞いてきた咲夜さんの直近くのイスには凄く色っぽい美鈴さんが……
どれだけ揉んだんですかぁ。

「美鈴は私の良き理解者だったわ、でもその胸(浪漫)がいけないのよ」
「いえ、ただの八つ当たりじゃないですか」
「そうだぞ咲夜、情けない」
「情け、ない??情けないですってっ。アナタのような隠れ巨乳に貧乳の苦しみがわかるっていうの??恥を知れっ」
「いや、恥を知るのはアンタだ咲夜」

今日は酔ってるなぁ、これはあの人が迎えに来るかな??
さてさて、もう片方は………

「幽々子ー、なんでアンタは年増やおばさんって言われないの??」
「私は死んでるからよ」
「でもさー、人間基準なら妖怪一同全員おばさんだよ??」
「その辺に人間はフィルターをかけるものよ」
「なんで私にはかからないのよ、贔屓だわ」
「全身から漂う加齢臭の所為よ、紫」
「あーあ、いっその事ゆかりに成ってしまいたい」
「なんで紫蘇ふりかけに成りたがるのかが解らないわ」

うん、私も解んないな。
でもそれが普通だと思うよ。

「ねえねえ、咲夜。アナタから見て私は何に見える??」
「巨乳」

わーお、まだ其処から離れれてなかったんですか。
で、なんで私の胸を見るのよ、チンチン。
そんなに大きくないよ、Ｄだし。

「そうじゃないわよ、人間のアナタからみて私はおばさん??少女??」
「見た目は少女、でも内面全部ひっくるめておばさん」
「やっぱりそうなのかなぁ」

ああ、紫さんがセンチになってしまった。
この状態になったら前後の感覚が無くなるまで飲むからなぁ。

「もっと持ってきなさいーーー」
「飲みすぎだよ紫さん」
「いいのよ、いいのよ。どうせ私はおばさんよー。うく」

ああ、だから言ったのに。
藍さんの尻尾に幸せそうに顔埋めて寝ちゃった。

「やれやれ、仕方ない紫。ふぅ、でも私も少し寝るわ」
「えー」
「朝になったら起こして頂戴」
「はぁー」

既にすやすや言っている幽々子さんを起こすのも悪いし、暫く寝させてあげよう。
すると、紫さんに多大なる精神ダメージを与えた咲夜さんは再び妹紅さんに話しかけた。

「ねぇ、妹紅。幸せって何かしらね??」
「そりゃ、ここで皆で馬鹿やって、笑ってられることだろ」
「私偶にに思うのよ、皆少しづつでも違ったらきっと、こんな風には笑えないわ」
「そうかな??」
「そうよ、お嬢様がシスコンじゃなかったら、小悪魔がエッチじゃなかったら、パチュリー様がマトモだったら」
「…………それは、私もかな??」

それは私も考えたことがあるよ。
本能のままに生きてたら、きっとこの幸せは掴めなかったと思う。
それは皆にも言えるかも。
きっと、皆少し壊れてるぐらいが幸せになれるんだよ。

「そこで眠ってる紫や幽々子、果ては従者軍団だってそう。
普通なら殺伐としていてこんな所で戯れることなんてないわ」
「こんな所とは酷いなぁ」
「……ごめんなさい、そんな意味じゃないわ」
「なら良いけど」
「でも、こんな現実なら良いかもね」
「だな、それじゃあ少し違った自分に乾杯でもするか??」
「いいわね、それじゃあ平行世界で殺伐としている自分に」
「乾杯」

私も混ぜてもらおうかな、乾杯。

「ここに居る間は安らげるわね、馬鹿な話も出来るし」
「そうだな、さてヤツメをもう少したのむ」
「はいはい」
「みすちー、これからもよろしくねー。
ここ楽しいからきっとこれからも毎日来るわ」

それは嬉しいな、チンチン。
本来の目的は忘れちゃったけど、こうやって多くの人に喜んで貰いたくて続けてるんだから。

「ふう、美鈴の胸を枕にして寝ましょ」
「え、館はいいの??」
「妖精メイドに役割を分担しておいたわ、朝までなら持つで……しょ………」

そういう事はバッチリなんだ、さすがだなぁ。

「さて、皆寝てしまったし私は慧音を連れて帰るとするよ」
「うーん、もふもふ」
「ほら帰るぞ」

寝ている慧音さんは最後の最後まで藍さんの尻尾を掴んでいた。
気に入ってるなぁ。

「もこー」
「寝言か??それじゃあな店主」
「気をつけてね」

妹紅さんの席に置かれていた二人分の勘定を回収して、私は見送った。
直に夜の闇に消えてしまったが、時々「もこーすきだー」なーんて声が聞こえてくる。
そして、その直後に「なっ、ななな」と、慌てた声が聞こえてくるのだ。

「初々しいなぁ」
「むー、また寝ちゃいましたね」
「あ、妖夢さんお目覚めですか」
「すみません、っと」

ぎゅーとしていた尻尾を離して、妖夢さんは懐の財布からお金を取り出しカウンターに。
ひい、ふう、みい、と。

「はい、確かに」
「幽々子さま紫さまに抱きついてないで」
「ふみゅー」

ありゃま、随分と熱い抱擁だね。

「はぁ、今日は何時に無く強いですね」
「そうだね、少し時間を置いたら??」
「そうします」

うーん、何か話しは………
そうだ、咲夜さんの話でも。

「妖夢さん、少し違った自分ってどう思います??」
「……そうですね、きっともっと無愛想だと思いますよ。予想ですけど」
「案外当ってそうですよ」
「でも幽霊はダメでしょうね、絶対」
「それってギャグで言ってます??」

妖夢さんの主からして幽霊じゃないですか。
そして、妖夢さんの隣を浮いてるものだって。

「ただ、一つ言えるのは、ここでお酒なんかのんでいないという事でしょうね」
「私だって、もっと違った店を出してるかもしれないよ」
「うー、ゆかりーおなかじゃまー」
「だまれゆゆこー、すぴー」

その時、寝言とは思われない声が響いた。
紫さんは幽々子さんにおなかを蹴飛ばされ、幽々子さんは着衣を肌蹴させていた。少しイヤらしい。
その隙を逃さず妖夢さんは幽々子さんを背負いあげ、私に軽く頭を下げた。

「よいしょ、それではまた明日」
「はい、また明日」

あ、少し日が出て来たなぁ。
そろそろかな??

「おはよう」
「おはようございます」

咲夜さんと美鈴さんを引き取りにきたのは紅魔館のお嬢様。レミリアさん。
迎えに来た挙句に寝てしまう咲夜さんを苦笑いで引き取りにくるのだ。

「今日も眠ってるわね。それじゃあ代金は置いておくわ」

諭吉さんの束をドンッと置いて行くレミリアさん。
さすがは幻想郷のお金の中心。

「でもこんなに……」
「迷惑料よ、それに少しづつお客は増えてるんだからそれで設備でも増やしなさい」
「…………」
「それに、この私に出したお金を引っ込めろと??」
「いいえ」
「それでいいのよ、コレくらい出費に入らないわ」

うわ、それはそれで凄いなぁ。
一体どれだけ儲けてるんだろう。
そうだ、折角だからレミリアさんにも咲夜さんの言ってた事聞いてみよう。

「レミリアさん、もし自分が少しだけ違ってたらどうだと思います??」
「??また変なこと聞くわね」
「咲夜さんが言ってたんです、もし自分が少しだけ違ったらって」
「そうね、もし違うのなら私はきっと後悔してるわ」
「どうしてですか??」
「それはね、今の私じゃないのなら、きっとフランと笑いあうことなんて出来ないわ。
ずーと、後悔して、悔しくて、でもフランを恐れてる」
「……………」
「私はね、自分で見えた運命を自分で覆したの。
運命なんて紙のように軽い物、過去になって初めて意味を成す。
私はそれに気が付いた。そして、気が付かない私も居たんでしょうね」

私、難しいことはよく解らないや。
でも、なんとなく、言いたい事は分かる気がする。

「あの時の行動は間違ってなかったと思うわ、今も、これからも」
「レミリアさん………」
「それじゃ二人は持って帰るわ」
「はーい」

軽々と二人を持ち上げるとレミリアさんは帰っていった。
急がないと日が当っちゃうんだろう。

「おはようみすちー」
「橙ちゃんおはよう」

最後に来たのは橙ちゃん。
今日も早いなぁ。

「そういえば橙ちゃんは自分じゃない自分って考えた事はある??」
「えー、ないよー。だって藍様と紫様が居て、私が居たらそれで良いと思うから」
「今のままで良いって事か」
「うんっ、あれ??藍様も紫様もぐっすりねちゃってる」
「それじゃあよろしくね??」
「青鬼、赤鬼」

橙ちゃんが呼び出した二対の鬼が藍さんと紫さんを担いで行く。
なるべく起こさないように気を使っていたが。

「えーと、代金は……」
「既に紫さんから貰ってるよ」

最初からこうなる事を予想していたかのようにお金を最初に渡してくれる。
橙ちゃんが迎えに来てくれるって信用してるんだなぁ。

「あ、そうだ、差し入れ持って来たよ」
「何これ」
「紫様が外から持ってきたジュースだって」
「林檎ジュース??」

くれるって言うのなら貰っておこうかな。
おいしそうだし。

「じゃあねー」
「ばいばーい」

さて、常連さんも皆帰ったし、今日は店じまいだね。
長いすも数が増えたから片付けるのが大変だなぁ。
でも、それは繁盛の証だよね。


「さぁーて、橙ちゃんのジュースでも飲んでもう一頑張りと行きますか。
今日も幻想郷は事も無し、皆平和でしたっと」

誰もは一度も考えたことはある筈です。
基本的に中二位ですかね??

では、また会いましょう。