「渋谷、楽勝でした」
渋谷の件の翌日、再びセーラー服を着た6人は寺子屋へ集った。
「ぱねえ」
「ぱねえ」
もはや、彼女らは正真正銘の女子高生であった。
紫も頷く。
「また外でも行くか」
一同は笑う。
「次はナンパされにな」
もはや、彼女達にとっては渋谷など敵ではないのだ。
すっかり、女子高生としての風格が備わった6人は、吉祥寺へと向かった。
渋谷は以前、騒動を起こしたため避けたのだ。
幽々子の提案で喫茶店に入り注文を終えると、学校帰りの高校生らしきカップルが入ってきた。
あろうことか、カップルは紫達の近くの席に座る。
永琳とてゐが嫌な顔をしたが、紫達は注文をした手前、どうにも動きづらい。
カップルはどちらも黒髪で、真っ黒に日焼けした男の方は坊主頭であった。二人とも制服を着崩すことなく着用している。
紫達は急に黙ってしまう。
「あの、先輩」
女の方が話し始めた。
「ああ、うん」
「今日は呼び出しちゃってごめんなさい」
「いいんだよ。それでどうしたの?」
二人の張り詰めた空気に、6人も固まる。
文が小声でブラックジョークを言ったが、誰も笑わなかった。
ウェイトレスが紅茶とレモンスカッシュとコーラを運んで来た。
「私、先輩のことがずっと好きでした」
幽々子ですら、飲み物に口を付けようとはしなかった。
紫達の心臓が、どく、どく、と震え、冷や汗が流れる。
「一年生の頃からずっと、それで私は野球部のマネージャーになって、ずっと先輩の試合を応援してきました」
てゐが窓の外の風景を楽しみ始める。
「私と付き合ってください」
神奈子が深く嘆息した。
紫は現実逃避を試みようとしたが、失敗してもどかしく身をよじる。
目の前で起きている事態が信じられない。女子高生の自分が否定され、砕け散った。
「ごめん」
長い沈黙が訪れる。
紫は女の横顔をちらりと見てまた俯いた。
女はろくに化粧もしていない様であったが、素朴で可愛らしい顔立ちをしていた。
「おれ、大学に行きたいんだ。今まで野球ばっかりで勉強してなかったから、これからは勉強に集中したい」
男は、「ごめん」と言うと立ち上がり、会計を済ませて出て行ってしまった。
女はしばらく固まっていたが、ハンカチを取り出して泣き出してしまった。青春とはかくも残酷なものである。
紫達は厚化粧した顔を見合わせた。
「紫」
「何」
「私達、何しに来たんだっけ」
「ナンパされに?」
そして、自分達の短いスカートを見て、また顔を見合わせた。
隣の席からはかすかに、しゃくりあげる声が響いて来る。
「何か言いたいことは」
紫が聞くと、皆一斉に顔を上げて呟いた。
「死にたい」
店のベルが鳴り、新たに清潔感溢れる高校生カップルが入って来た。
「出ましょう、すぐに」
6人は立ち上がった。
ここは、自分達がいていい場所ではないのだ。
寺子屋に戻ってきた6人はいつもの装いに着替えた。
メイクを落とし、細くなった眉毛をさすりながら無言でたき火を囲む。
そして、手に持ったセーラー服を静かにその中へ放り込んでいった。
もはや、誰も「ぱねえ」などとは口にしない。
「これから、どうするよ」
「私はあのハクタクの治療が」
永琳はいささか面倒臭そうに、燃えていくセーラー服を突っついた。
幽々子はあくびをした。
「とりあえず帰る」
「私達は」
紫が声を大きくした。
「私達はちゃんと女子高生だったわよ。ただ、何て言うか、卒業したのよ」
幽々子達も頷いた。
自分達は間違いなく女子高生だったのだ。ただ、卒業しただけだ。それだけのことなのだ。
永琳が書斎で書き物をしていると、優曇華が入って来た。
「あら、お帰りなさい。あのハクタクの調子はどうだった?」
「薬が効いて大分良くなったみたいですね。それと、これ」
優曇華は小包を差し出した。
「八雲 紫様からです。直接渡すように言われたのですが、そんなに大事な物でしたか」
小包を開けると、立派な額に入った卒業証書が入っていた。
永琳は首を振る。
「酷い嫌がらせだった」
幻想郷はすっかり静けさを取り戻した。
渋谷の件の翌日、再びセーラー服を着た6人は寺子屋へ集った。
「ぱねえ」
「ぱねえ」
もはや、彼女らは正真正銘の女子高生であった。
紫も頷く。
「また外でも行くか」
一同は笑う。
「次はナンパされにな」
もはや、彼女達にとっては渋谷など敵ではないのだ。
すっかり、女子高生としての風格が備わった6人は、吉祥寺へと向かった。
渋谷は以前、騒動を起こしたため避けたのだ。
幽々子の提案で喫茶店に入り注文を終えると、学校帰りの高校生らしきカップルが入ってきた。
あろうことか、カップルは紫達の近くの席に座る。
永琳とてゐが嫌な顔をしたが、紫達は注文をした手前、どうにも動きづらい。
カップルはどちらも黒髪で、真っ黒に日焼けした男の方は坊主頭であった。二人とも制服を着崩すことなく着用している。
紫達は急に黙ってしまう。
「あの、先輩」
女の方が話し始めた。
「ああ、うん」
「今日は呼び出しちゃってごめんなさい」
「いいんだよ。それでどうしたの?」
二人の張り詰めた空気に、6人も固まる。
文が小声でブラックジョークを言ったが、誰も笑わなかった。
ウェイトレスが紅茶とレモンスカッシュとコーラを運んで来た。
「私、先輩のことがずっと好きでした」
幽々子ですら、飲み物に口を付けようとはしなかった。
紫達の心臓が、どく、どく、と震え、冷や汗が流れる。
「一年生の頃からずっと、それで私は野球部のマネージャーになって、ずっと先輩の試合を応援してきました」
てゐが窓の外の風景を楽しみ始める。
「私と付き合ってください」
神奈子が深く嘆息した。
紫は現実逃避を試みようとしたが、失敗してもどかしく身をよじる。
目の前で起きている事態が信じられない。女子高生の自分が否定され、砕け散った。
「ごめん」
長い沈黙が訪れる。
紫は女の横顔をちらりと見てまた俯いた。
女はろくに化粧もしていない様であったが、素朴で可愛らしい顔立ちをしていた。
「おれ、大学に行きたいんだ。今まで野球ばっかりで勉強してなかったから、これからは勉強に集中したい」
男は、「ごめん」と言うと立ち上がり、会計を済ませて出て行ってしまった。
女はしばらく固まっていたが、ハンカチを取り出して泣き出してしまった。青春とはかくも残酷なものである。
紫達は厚化粧した顔を見合わせた。
「紫」
「何」
「私達、何しに来たんだっけ」
「ナンパされに?」
そして、自分達の短いスカートを見て、また顔を見合わせた。
隣の席からはかすかに、しゃくりあげる声が響いて来る。
「何か言いたいことは」
紫が聞くと、皆一斉に顔を上げて呟いた。
「死にたい」
店のベルが鳴り、新たに清潔感溢れる高校生カップルが入って来た。
「出ましょう、すぐに」
6人は立ち上がった。
ここは、自分達がいていい場所ではないのだ。
寺子屋に戻ってきた6人はいつもの装いに着替えた。
メイクを落とし、細くなった眉毛をさすりながら無言でたき火を囲む。
そして、手に持ったセーラー服を静かにその中へ放り込んでいった。
もはや、誰も「ぱねえ」などとは口にしない。
「これから、どうするよ」
「私はあのハクタクの治療が」
永琳はいささか面倒臭そうに、燃えていくセーラー服を突っついた。
幽々子はあくびをした。
「とりあえず帰る」
「私達は」
紫が声を大きくした。
「私達はちゃんと女子高生だったわよ。ただ、何て言うか、卒業したのよ」
幽々子達も頷いた。
自分達は間違いなく女子高生だったのだ。ただ、卒業しただけだ。それだけのことなのだ。
永琳が書斎で書き物をしていると、優曇華が入って来た。
「あら、お帰りなさい。あのハクタクの調子はどうだった?」
「薬が効いて大分良くなったみたいですね。それと、これ」
優曇華は小包を差し出した。
「八雲 紫様からです。直接渡すように言われたのですが、そんなに大事な物でしたか」
小包を開けると、立派な額に入った卒業証書が入っていた。
永琳は首を振る。
「酷い嫌がらせだった」
幻想郷はすっかり静けさを取り戻した。
最後早足で纏めすぎた印章があります
次回作お待ちしてますよ
なにはともあれ、日本は無事だったんですね。よかったです。
女子高生という時代は、一度過ぎ去れば二度とは
ということですね。
そして次は女子高生の格好をしていた自分を思い出して布団の上でのたうちまわって恥ずかしがるというピリオドに突入するのか、と思いきや・・・
なんつうか、6人とも本当に女子高生やりたかったんだね・・・ウッ
「女子高生でいられなかった弱い化け物は・・・女子高生に討ち倒されなければいけないんだ。」
って吸血鬼も言ってた。
女子高生のイメージと、その理想がかけ離れてただけなんだよね。
とりあえず卒業おめwwwww乙wwwwwまじぱねぇwwwww
まあ何にせよ卒業おめでとう、次は女子大生だ!
でも俺も死にたくなりました
淡泊に締めくくることでかえって余韻をもたせる、短編小説での切り上げ方のパターンのひとつに似てますし。
意外とまだ清純派っているんですよね。初恋っていう言葉が似合うような…。
次はレミリア、妖夢、萃香、諏訪子などの所謂「見た目は幼女中身は年増」な連中の女子高生が見てみたいな