この物語は、八雲紫、八意永琳、因幡てゐ、射命丸文、西行寺幽々子、八坂神奈子。以上6名、謙虚な女子高生の提供でお送りする。
油断していた。
月島 ×が中学生であったことも計算外ではあったが、それ以上に、目に飛び込んでくる衝撃的な発言や行動が彼女らのアイデンティティを崩壊させていった。
<天沢 ×司、どんな人なんだろう。素敵な人かしら>
紫の手からリモコンが落ち、音を立てた。
あまりのことに画面から目を離せず、口を利くことすら出来ない。
<おーい、×ー>
<ヤッホー、頑張ってねっ>
恐らく後列の仲間達も自分と同じ目に遭っているのだろう。
紫は、いやに静かな背後に薄ら寒さを覚えた。
<コンクリートロード、どこまでも続いてるー、白い道ー>
<違うのっ、こらあ>
まるで一言一言が敵意を持っているようだ。
いや、持っているのだ。全て自分へのあてつけなのだ。
<お前な、よくそういう恥ずかしいこと平気で言えるよな>
それでは、まさか、自分は女子高生ではなかったのか。
<×司君と同じ高校に行けたらいいなって>
そんな訳はない。私は女子高生だ。女子高生に違いない。だってあんなに努力したじゃないか。こんな青二才に翻弄されてどうする。橙より年下じゃないか。
<進路が決まってないと恋も出来ない訳?>
それじゃ、やっぱり私は。
紫の目の前が霞み、自我が失われようとした瞬間、教室のドアが開き妹紅が現れた。
「なんだ、ここは。湿布臭い」
「う」
途端、正気に戻った紫は太平洋へと隙間を開き、プロジェクターを引っ掴みその中へ勢いよく放り込んだ。
水しぶきを顔に受けた永琳や神奈子達も徐々に生気を取り戻す。
「どうしたの、もこたん。インしちゃったの?」
けらけらと笑う永琳達を前に、妹紅は唇を噛んだ。
一同は映画の記憶をすっかり彼方へと押しやってしまったものの、どことなく虚ろな目をしている。
「慧音をやったのか」
「あやややや、知りません」
永琳が妹紅の髪に触った。
「妹紅、あなたは女子高生になりたくないの?」
妹紅は手を払いのけ、後ずさる。
「あなたはこっち側だと思ったんだけどねえ」
口の端をつり上げた神奈子は挑発的に椅子を揺らした。
幽々子も頷く。
「わ、私は興味無い、それよりも慧音の」
「嘘だね」
紫と永琳が詰め寄った。てゐ達は三人の様子を興味深そうに見守っている。
「私達のように女子高生になりたくないの? 女子高生はいいわよ」
「ぱねえくらい」
紫はスカートを翻してポーズを作った。
「スカートなんて履いたことないのかしら」
「私は、その」
紫は振り返って、幽々子達に呼びかけた。
「体育の時間よ。外に行きましょう」
「まぢで?」
「ぱねえ」
妹紅が慌てた。
「体育の時間だと」
「そう、体育の時間。女子高生なら当たり前でしょ。あなたもやりたいのかしら」
「私は」
妹紅が反駁し終わらぬ内に紫は隙間を開いた。
「ま、来なくてもいいわよ」
「待て」
紫達が次々と隙間の中へ消えていく中、てゐがふと妹紅を振り返った。
「さようなら、高校3年生」
一人、教室に取り残された妹紅は魂が抜けたかのように椅子にもたれかかった。
目から自然に涙があふれ出てくる。
慧音のことが悔しかったのではない。「スカート」の話しが出た時に、体を突き抜けた感覚が涙を誘うのだ。
彼女らがいなくなると急に疎外感に襲われてしまった。
「くそっ」
妹紅は机を一つ灰にして、また泣いた。
「これは、流石に」
差し出された衣装を前にして、文は湖のほとりに這いつくばった。
「どうしたの? まさか、着れないのかしら」
自らの名前がマジックで書かれたスクール水着を着用した紫達は、彼女に鋭い視線を投げかけた。
この面子において若さの目立つ文が羞恥を感じるのも分からぬではないが、事態は一刻を争うのだ。
「女子高生はみんな着てるの。着なさい」
胸部の「3-1 神奈子」の文字を歪ませた神奈子が、文の肩を叩く。
「分かった、着る」
文は「3-3 射命丸 文」のスクール水着を手に涙をにじませた。
彼女が木陰で着替え終わると、紫は頷いた。
「うわっ、まぢ冷てぇ」
準備運動もせず、湖に飛び込んだ幽々子とてゐが悲鳴を上げた。
紫は浮き輪の代わりに幽々子の胴にしがみついた。
残暑とはいえ、初秋の湖は冷たい。一同は早く体を慣らすべくばたばたと泳いだ。
いやしくも胸を誇る紫としては、神奈子に負けるのは仕方ないとして永琳や幽々子の着やせぶりに驚いていた。あんなものを隠していたなんて。
紫は、どうせなら輝夜も誘っておけば良かったかとぼんやり考えた。
なにせ、女子高生とはこんなにも素晴らしいものなのだ。
その時、上空から頭の悪そうな鼻歌が聞こえてきた。
6人は顔を見合わせる。
「どうするよ」
「まあ、女子高生らしく」
陽気な声が次第に近づいてくる。
そして、ついに6人と相対した。
「あっ、ここで何やってるの」
「こんにちは、チルノちゃん」
「ひっ」
紫が笑うとチルノの声が寸詰まった。
他のメンバーも笑いかけるが、チルノは笑わない。
「お姉さん達と遊んでいかない?」
神奈子が手招きすると、チルノは一目散に逃げ出してしまった。
「ぱねえ」
「つまらない」
「ロリは気楽だよな」
幽々子が再び腹を上にして泳ぎ始めた。
「みんな、お腹空かない?」
水面に立った紫が呼びかけると一同は頷いた。
「食べにいっちゃう系?」
「まぢでぇ」
「隠れ家的お店ってやつ?」
紫はちっ、ちっ、と舌を鳴らして指を振った。
「マック」
「ぱねえ」
「紫、本当はんぱねえ」
幽々子が目を輝かせた。恐らく憧れだったのだ。
「外行っていいわけ?」
紫は大きく頷いた。
「渋谷」
油断していた。
月島 ×が中学生であったことも計算外ではあったが、それ以上に、目に飛び込んでくる衝撃的な発言や行動が彼女らのアイデンティティを崩壊させていった。
<天沢 ×司、どんな人なんだろう。素敵な人かしら>
紫の手からリモコンが落ち、音を立てた。
あまりのことに画面から目を離せず、口を利くことすら出来ない。
<おーい、×ー>
<ヤッホー、頑張ってねっ>
恐らく後列の仲間達も自分と同じ目に遭っているのだろう。
紫は、いやに静かな背後に薄ら寒さを覚えた。
<コンクリートロード、どこまでも続いてるー、白い道ー>
<違うのっ、こらあ>
まるで一言一言が敵意を持っているようだ。
いや、持っているのだ。全て自分へのあてつけなのだ。
<お前な、よくそういう恥ずかしいこと平気で言えるよな>
それでは、まさか、自分は女子高生ではなかったのか。
<×司君と同じ高校に行けたらいいなって>
そんな訳はない。私は女子高生だ。女子高生に違いない。だってあんなに努力したじゃないか。こんな青二才に翻弄されてどうする。橙より年下じゃないか。
<進路が決まってないと恋も出来ない訳?>
それじゃ、やっぱり私は。
紫の目の前が霞み、自我が失われようとした瞬間、教室のドアが開き妹紅が現れた。
「なんだ、ここは。湿布臭い」
「う」
途端、正気に戻った紫は太平洋へと隙間を開き、プロジェクターを引っ掴みその中へ勢いよく放り込んだ。
水しぶきを顔に受けた永琳や神奈子達も徐々に生気を取り戻す。
「どうしたの、もこたん。インしちゃったの?」
けらけらと笑う永琳達を前に、妹紅は唇を噛んだ。
一同は映画の記憶をすっかり彼方へと押しやってしまったものの、どことなく虚ろな目をしている。
「慧音をやったのか」
「あやややや、知りません」
永琳が妹紅の髪に触った。
「妹紅、あなたは女子高生になりたくないの?」
妹紅は手を払いのけ、後ずさる。
「あなたはこっち側だと思ったんだけどねえ」
口の端をつり上げた神奈子は挑発的に椅子を揺らした。
幽々子も頷く。
「わ、私は興味無い、それよりも慧音の」
「嘘だね」
紫と永琳が詰め寄った。てゐ達は三人の様子を興味深そうに見守っている。
「私達のように女子高生になりたくないの? 女子高生はいいわよ」
「ぱねえくらい」
紫はスカートを翻してポーズを作った。
「スカートなんて履いたことないのかしら」
「私は、その」
紫は振り返って、幽々子達に呼びかけた。
「体育の時間よ。外に行きましょう」
「まぢで?」
「ぱねえ」
妹紅が慌てた。
「体育の時間だと」
「そう、体育の時間。女子高生なら当たり前でしょ。あなたもやりたいのかしら」
「私は」
妹紅が反駁し終わらぬ内に紫は隙間を開いた。
「ま、来なくてもいいわよ」
「待て」
紫達が次々と隙間の中へ消えていく中、てゐがふと妹紅を振り返った。
「さようなら、高校3年生」
一人、教室に取り残された妹紅は魂が抜けたかのように椅子にもたれかかった。
目から自然に涙があふれ出てくる。
慧音のことが悔しかったのではない。「スカート」の話しが出た時に、体を突き抜けた感覚が涙を誘うのだ。
彼女らがいなくなると急に疎外感に襲われてしまった。
「くそっ」
妹紅は机を一つ灰にして、また泣いた。
「これは、流石に」
差し出された衣装を前にして、文は湖のほとりに這いつくばった。
「どうしたの? まさか、着れないのかしら」
自らの名前がマジックで書かれたスクール水着を着用した紫達は、彼女に鋭い視線を投げかけた。
この面子において若さの目立つ文が羞恥を感じるのも分からぬではないが、事態は一刻を争うのだ。
「女子高生はみんな着てるの。着なさい」
胸部の「3-1 神奈子」の文字を歪ませた神奈子が、文の肩を叩く。
「分かった、着る」
文は「3-3 射命丸 文」のスクール水着を手に涙をにじませた。
彼女が木陰で着替え終わると、紫は頷いた。
「うわっ、まぢ冷てぇ」
準備運動もせず、湖に飛び込んだ幽々子とてゐが悲鳴を上げた。
紫は浮き輪の代わりに幽々子の胴にしがみついた。
残暑とはいえ、初秋の湖は冷たい。一同は早く体を慣らすべくばたばたと泳いだ。
いやしくも胸を誇る紫としては、神奈子に負けるのは仕方ないとして永琳や幽々子の着やせぶりに驚いていた。あんなものを隠していたなんて。
紫は、どうせなら輝夜も誘っておけば良かったかとぼんやり考えた。
なにせ、女子高生とはこんなにも素晴らしいものなのだ。
その時、上空から頭の悪そうな鼻歌が聞こえてきた。
6人は顔を見合わせる。
「どうするよ」
「まあ、女子高生らしく」
陽気な声が次第に近づいてくる。
そして、ついに6人と相対した。
「あっ、ここで何やってるの」
「こんにちは、チルノちゃん」
「ひっ」
紫が笑うとチルノの声が寸詰まった。
他のメンバーも笑いかけるが、チルノは笑わない。
「お姉さん達と遊んでいかない?」
神奈子が手招きすると、チルノは一目散に逃げ出してしまった。
「ぱねえ」
「つまらない」
「ロリは気楽だよな」
幽々子が再び腹を上にして泳ぎ始めた。
「みんな、お腹空かない?」
水面に立った紫が呼びかけると一同は頷いた。
「食べにいっちゃう系?」
「まぢでぇ」
「隠れ家的お店ってやつ?」
紫はちっ、ちっ、と舌を鳴らして指を振った。
「マック」
「ぱねえ」
「紫、本当はんぱねえ」
幽々子が目を輝かせた。恐らく憧れだったのだ。
「外行っていいわけ?」
紫は大きく頷いた。
「渋谷」
さて、この六人どもは渋谷に行って元祖コギャルである本家女子高生にあって、
灰になるがよい。
……スーパーX2でゴジラを倒せなかった黒木特佐の気分って、こんな感じなんだろうなぁ……
まぁ体育の時間は予想してたさ。スク水もこの際だから覚悟決めてたさ。
でも渋谷て。外の世界て。
アンタ達ガメラとギャオスのガチの傷が癒えたばかりの街を今度こそ灰塵に帰すつもりですか。
渋谷が危険地帯にw
渋谷じゃなくて、夜の歌舞伎町ではダメですかね?
渋谷おわたwww
通勤の中継点ががががが
……嘘だ!!
スク水を着ている彼女らに痛みをおぼえました。
それはそうと文のスク水だけはセーフだと思うんだ。
人やら神やらが居るけど大丈夫なのかな?
しかし、途中までしか見ていないのに自我を失いかけるなんて、
あのラストを見たら間違いなく死ぬwww
つーかこのままだと渋谷が死ぬwww
ぱねぇ。
早朝にいたけど、大丈夫だったよ!w
Xデーはいつだ?w
こいつら、ついにこっち来るのか
誘ったら誘ったで、さらにダメージ受けると思うのはおれだけ?
姫には制服が似合うと思うよ!!
「隠れ家的お店」ではなく「マック」ってのは女子高生ぽいかな。
ラストにはどうか彼女らが報われますように、女子高生は無理でも何らかの実りが残りますように。
だって、いろいろ間違っているとはいえこんなにも頑張っているのだもの。
…え?他?ありえないでしょw
次回はゆゆに期待してます。
吹き出してしまったよ…