昔のお話である
『ベルト』 『ベルトのその後』のお話が少しだけ入っていますが
気にしないでも構いません
後、大天狗天魔様のイメージがかなり崩れます
注意しましたよ?ではどうぞ…
わう…椛です…今、天狗の山の中で
大事な会合が行なわれています
本来なら、私のような下っ端の哨戒天狗には参加はおろか
この場所にいる事もおこがましい事です
「…文様、準備ができました」
「分かりました、後はタイミングですね」
ですが、私と文様に大天狗の天魔様直々に極秘の命令が下ったんです
わう…今ちょっと、身が震えてきました
「…椛、椛…」
わう?文様が呼んでいます
「文様、なんでしょうか?」
「よいしょ…っと」
(むぎゅっ)
「わ、わう!?」
わう!いきなり抱かれました!?
「やっぱり椛はもふもふするに限りますね」
「あ、あの!あ、文様?」
頭撫でられるのは…むふ~♪
「…落ち着きましたか?」
「わう?」
そういえば、身の震えが止まりました
「…大丈夫ですよ、たいした用事ではないんですから」
「で、ですが…大会合ですよ?」
天狗の山全体の事を決める、大事な会合です
その場に居るのは、上級天狗様だけのはず
「でしたら、私も一員ですよ?」
「…文様は『面倒だから出ません』って返したんじゃないですか」
…文様はこういう時は殆ど会合にでません
だから、周りから『変わり者』って呼ばれています
(わう…文様は凄いのに…)
「おっと、椛…出番みたいですよ?」
わう!いけない、天魔様のお抱えの大鴉が現れました!
それと同時に、文様と私が作戦を開始する合図です
「椛!荷物は?」
「わう!キッチリと持ちました!」
極秘裏に頼まれていた物を両手にもつ
「文様、手筈は?」
「あややや、任せて置いてください」
そう言うと、文様が私を掴んで
「行きますよ!椛!」
「わう!」
幻想郷で最速とされているスピードで
「作戦開始!」
「わう~!」
会合の会場の入り口を高速で進んでいく
そして、会合をしている部屋の襖を開ける
いきなり開いた襖に、中に居た上級天狗様達が
何事かと視線を文様と私に向ける
だが、その上級天狗達の視線を無視して
「大天狗天魔様!大変申し訳ありませんが
速やかに対応せねばいけない事が起こりました!」
部屋の一番奥に座っている大天狗の天魔様に
文様が大急ぎで報告を加えた
「なんと!射命丸文それはまことか!?」
会合の中がざわめく中、大天狗である天魔が立ち上がる
それを見届けてから射命丸文が頷くと
「つきましては人が居ない所で…」
そう伝える、その言葉に天魔も仰々しく頷き
「あいわかった、皆ワシは今しばらくこの場より席を外す!
皆、しばらくの間、話し合いを続けるように!」
天魔が辺りを見渡してそう声をかけると
「犬走椛、緊急の用事のため、ワシと文の護衛をいたせ!」
「はっ!畏まりました!」
私は急いで表に出た文様と大天狗天魔様の背後についていく
二人について行って、たどり着いたのは天魔様の仮眠室…
そこはたとえ誰であれ、勝手に中に入る事は許されない場所
その中に、天魔様と文様…そして私が入ってから部屋の鍵をかけると
「「「ふぅ~~~」」」
一気に緊張が崩れた
そして、真面目な顔をしていた天魔様が優しい顔に戻る
「いや~…すまんのう、文、椛」
「わう…命が縮みました…」
「…はぁ…無茶な事させないでくださいよ、天魔じいちゃん」
…これが、大天狗天魔様直々に頼まれた命令
「わう…天狗の頭領自身が『会合が面倒だから乱入してくれ』
なんて命令出したの天狗の歴史でも絶対始めてですよ」
「なるほど、天狗の山歴史に残る記事になりそうですね!」
「…文、もし新聞にするのなら、ワシは遠慮しないでお主を切るぞ?」
…わう、あながち冗談に聞こえないのが怖い
「あやややや!?じょ、冗談ですよ!」
「まあ、ワシに非があるのは確か何じゃがの…」
天魔様はそう言うと私の方を見て
「…所で、頼んでおいた物は?」
「わう!どうぞこれを…」
わう…天魔様に頼まれて、大急ぎで手に入れてきた代物です
何とか、手に入りました…
「人の里の方で人気の御菓子『練乳蜂蜜入りワッフル』」
「おお、これが…」
わう…手に入りましたけど…
「…あの、天魔様…」
「ん?なんじゃ?」
「…これ、食べれるんですか?」
わう、文様も顔が引きつってます
…一応他のワッフルも買ってきてますけど
この、『練乳蜂蜜入りワッフル』だけは…
「なんでじゃ?こんなにうまそうなのに」
「わう…ですが、ただでさえ甘いワッフルに
蜂蜜と練乳をこれでもかっていうぐらいに…」
わう~…言葉にするだけで口の中が甘ったるくなってきました
「おお~まるで夢のような話じゃな!」
…そういえば、前に文様から聞いた事がある
(…天魔様が大の甘党って言うのは、本当でしたか…)
「天魔じいちゃん、私の分も食べる?」
「わう、天魔様、どうぞ私の分も…」
「いいのか!?」
天魔様が喜ぶのを確認すると同時に
(…椛…生き残れましたね)
(わう…助かりました)
文様と私は、天魔様に見えないようにアイコンタクトを取った
そして、渋いお茶とワッフルでお茶の時間になる
「うむ、程よい甘さじゃのう」
天魔様の発言に、文様と私の口元が引きつる
「(お、恐るべし…天魔様)わ、わう…」
「(…椛、私は恐怖しています!)あ、あややや…」
会話が途切れそうになったが、ふと疑問に思った事を聞いてみる
「あの…天魔様」
「ん、どうした椛?」
「…あの、今日会合って一体…」
わう、私のような下っ端天狗では
『会合がある!』っていわれるだけなので
実際にはどのような事が話し合われているのか
一切知る事はないのですけど
「ふむ…つまらん話し合いじゃよ…」
天魔様がそう言って、目を瞑る
「…秋の慰労祭の出し物は何にするかなんてのぅ…」
「わう?秋の慰労祭っていえば…」
天狗の山の中で行なわれる慰労の為の出し物ですけど…
わう…殆どが幹部の偉い天狗様達の自慢話大会になっていて
私たちのような下っ端天狗達は逆に疲れるんですけど…
「何時もの面白くない上級天狗の自慢話の酒飲み大会ですか?」
「あ、文様!?言い過ぎです!」
ですけど、文様言い過ぎです!流石に天魔様も…
「そうじゃよ、毎年毎年つまらない自慢話ばかりで嫌になるわい」
わう!?天魔様も頷いている!?
「もうそろそろ、何か別の事した方がいいんじゃないですか?」
「ワシもそう思っておるんじゃが、ワシの周りの年寄り連中が
やれ『我々の経験を若い者話す』とやら
『伝統を壊すのは駄目』とやら、面倒な事ばかり言ってのう…」
わう…天狗社会は上の命令には絶対ですし
年を経た天狗の方達の言う事は無視できませんし…
「…せめて、別の良い出し物の案でも考えられたらのう…」
天魔様はそう言うと、困った顔で腕を組みました
「…そういえば文、なにか良い写真手に入ったか!?」
…かと思いましたが、いきなり声の質が変わりました
「はい!いいのが入ってますよ!」
「あ、文様!?」
驚く私を無視して、文様が写真を広げていく
(わう!?こ、これは…)
これは、博麗神社の巫女さんの寝顔
わう、これは白黒の魔女が居眠りしている姿
全部盗撮じゃないですか!
「ふむ…こんな物か?」
しかも天魔様はレベルの高いそれを一蹴!?
(わう、流石は天魔様…)
「あやや、天魔じいちゃんには取っておきのがありますよ」
(わう!?あ、あれ以上の物が!?)
驚く私の前に文様が取り出したのは…
「隙間妖怪八雲紫の寝顔と、永遠亭の薬師
八意永琳さんのあくびの写真ですよ」
「あ、文様、それは!」
さ、流石にそれは天魔様が怒りになると…
「おお!いいのがあるではないか!」
わう~!?大ヒット!?
「他にもこんなのとか…」
「ぜひ譲ってくれ!」
(……今度から天魔様を、普通に見る事ができそうにありません)
疲れた私を他所に、天魔様と文様は写真を交換しています
(わう?)
そんな時、天魔様の持っている写真の中に私の知っている人が…
「…わう?風見幽香さんと…」
「うむ?椛よこの人達の事がわかるのか?」
わう…確か…
「あれ?なんで天魔じいちゃんが風見幽香と…えーと…」
もう一人の緑の髪の…わう、名前が思い出せない…
「…魅魔じゃよ…」
「「そうそう!」」
わう、思い出しました!魅魔さんです
魔理沙さんが酔っ払っていた時に聞いた事がありました
「わう、でも何で天魔様がそのお二人の写真を…」
私と文様が、同時に頷くと
天魔様が嬉しそうに微笑んだ
「…この魅魔と幽香…そして神綺はワシの青春じゃった」
わう!?意外な展開です
もしかして、何か恋みたいな物でしょうか!?
「…この三人の繰り広げる昔のプロレスから勇気をもらったからのう…」
「「って、プロレスですか!?」」
思わず、文様と突っ込みを入れる
「そうじゃ、今の飛んだり跳ねたりする派手さは無いが
地味にすばらしい技の数々に
昔の天狗達はこぞって号外をだしたものじゃ…」
わう、いけない…このままだと、天魔様の昔話が始まっちゃう
(も、椛、天魔じいちゃんの話をそらしてください)
(あ、文様もなにか良い案…あっ!)
わう!良い案が浮かびました
「て、天魔様、でしたら今回の慰労祭でプロレスやればいいじゃないですか」
私の言葉を聞いて、天魔様が一瞬動きを止めると
「そ、それじゃ!椛!でかした!(良い案がでた意味で)」
「椛、よくやりました!(話を反らす事に成功した意味で)」
わう!とっさに出た言葉ですけどうまく行きました
「よし!ワシはこれから会合の中で説得してくる!」
「あやややや…できるんですか?」
文様の問いかけに天魔様は笑みを浮かべて微笑む
「うむ!言ったはずだぞ『昔の天狗は皆号外を出した』とな!」
「「あっ!」」
た、確かに懐かしい物なら、古参の天狗様達は余計にやりたがります
「そうじゃ、ついでに山の神にもこの話を…文、この手紙を山の神に」
「私がですか?」
「お前以外に適任はおらん」
天魔様がそう言うと、大急ぎで手紙をしたためて文様に手渡す
「ふはははっ!久しぶりに面白くなってきおったわい!」
こうして、とんとん拍子で山の慰労祭の出し物が決まった
「…椛、まさか貴方の提案だなんて、誰も想像しなかったでしょうね」
「わう…それは言わないでください…」
文様と私はあの後すぐに山の神である守矢神社の神に手紙を渡すと
『面白いじゃないか、よし!許可!私の名前でよければ署名するよ』
といって、オンバシラで判子を押してくれた
次の日には、今回の慰労祭の出し物が何時もの違うという事で
文様も含めて、号外が天狗の山の中に響いた
「やりましたよ椛!今回は私の新聞がトップです!」
わう、流石に妖怪の山のトップシークレットを
その場で聞いた事が大きかったみたいですね
…でも、皆が見てる中で頭を撫でられるのは…わぅ~♪
こんな感じで、慰労祭の準備が進む中
私と文様に天魔様が直に伝えたい事があると連絡がありました
「文様、なにかしましたか?」
「……な、なにもしてませんよ?」
「…今の一瞬の間はなんですか…」
わう…一体どんな話をされるんでしょうか…
とりあえず、呼び出された天魔様の仮眠室の中にはいる
「遅れました天魔様」
「遅れました…それで伝えたい事とは?」
文様と私が部屋の中にいる天魔様に頭を下げると
「二人とも気楽にせい、今お茶を用意するから」
「「はあ…」」
天魔様はそう言って私達の前にお茶を用意して
「…実は慰労祭の事なんじゃが…」
わう…もしかして何か問題でも?
文様も真剣な顔で天魔様を見据える
「…お主等、覆面かぶって出てみんか?」
「「はい?」」
「いや~…お主等の案を出すと、会合が一気に盛り上がってな
一日で可決されたのは良かったんじゃが
…やっぱりこういうのにはサプライズが必要じゃろ?」
し、真剣に話を聞いて損しました…
「できたらある程度の大物を呼びたいとは思ってはいるんじゃが
それだけではつまらんから…お主達も出てくれるとありがたいんじゃ」
「わ、わう…ですが、私達よりももっと強い方々が…」
文様だけならともかく、私のような下っ端天狗がそんな催しに出るなんて…
「…残念ですが、私も当日の事を新聞にするために色々と…」
わう、文様もやっぱり難色を示して…
「文よ、もし謎の覆面レスラーが出ることになれば
今からお前の新聞が一つできあがるぞ?」
「喜んで椛と覆面レスラーやらせていただきます!」
…文様の馬鹿~(涙)
こうして、私と文様は当日の謎の覆面レスラーとして出ることになった
わう~……名前と覆面は自分で好きに決めても良いと言われましたけど
「やりましたよ!椛!私の新聞が今月のトップです!」
あ、あの…文様…周りの哨戒天狗が見てる中で
耳をハムハムするのは…はぅ~♪
「椛、これが特注の覆面ですよ」
「わう?…口元は隠れないですね…」
そして、気がついたら覆面も名前も決まって
「わう…紅魔館門番隊の練習リング貸してください」
「いいですよ?どうぞどうぞ…」
門番隊の隊長である紅美鈴さんにこっそりと
理由を伝えて練習をさせてもらい
「わ~わ~わうわう~♪」
「あ~や~あややや~♪」
文様と一緒に妖怪の山の鍛錬法で体を鍛えて…
「わう…あっという間でしたね…文様」
「早いものですね…」
遂に、慰労祭の当日になってしまった…
文様と私が見つめる先は、守矢神社の境内に作られた特設リングの上
「…文、椛…そろそろ出番じゃ…頑張って来い」
わう、天魔様がこっそりと私達に応援を送ってくれた
「はいはい、では行きますよ椛」
「わう!」
試合の前に、相手の選手が挨拶をしに来てくれた
「今日はよろしくお願いします」
「わう…こちらこそ…」
わう!現幻想プロレスJヘビーチャンピオンの
ムシキングリグルさんが頭を下げてくれた
「よろしくお願いします…」
「あやややや!?こ、こちらこそ…」
それと、リグルさんのタッグパートナーである
厄神さまである雛さんが頭を下げてくれた
わう…とりあえず文様と私が取った行動は…
「「さ、サインください!」」
サインをねだる事だった
そんな事をやっているうちに前の試合である
『霊夢vs早苗』の一騎打ちが終ったらしい
開幕からお互いに一歩も引かずにエルボー合戦からはじまると
お互いが一進一退の攻防が繰り広げられたが
流石に早苗と霊夢では経験の量が違う
最終的には、霊夢の奥の手である
『エメラルド浮遊ジョン』を出して決着が着いた
早苗の健闘に、周りが盛大な拍手を送った
「さて、それではそろそろ…」
「そうですね…」
ムシキングリグルと雛さんが会場に向かっていった
「では、椛、私達も準備をしましょうか?」
「わう!分かりました」
先ほどの試合の興奮が冷め止まぬなか
会場の中のスポットが暗くなり
大天狗の天魔がマイクを持って現れた
「これより…特別試合タッグマッチ、時間無制限三本勝負を行なう」
その言葉に、会場が一瞬の沈黙に包まれる
「赤コーナ…ムシキングリグル&雛チームの入場です」
その言葉をきっかけに、会場が大きな歓声に包まれる
そして、ムシキングリグルと雛が現れて
リングの上に颯爽と上がる
「青コーナ……」
対する相手は…
(椛…行きますよ?)
(はい!)
私と文様が名前が出る前に、リングの上に高速で走りこむ
そして、会場の眩しい光を浴びながらリングの上に立つと
「謎の覆面レスラー!『ザ・グレート・あやや』そして
『スペル・ティグレ・モミジン』の入場です!」
会場が更に加熱した…
試合結果…
一本目は、ムシキングリグル氏の必殺技
『ヘラクレスカッター』で、モミジンが3カウントを取られた
二本目は、あややが初公開となる必殺技
場外に落ちた雛に向かってのロープを使って反動をつけ
側転からの場外にムーンサルトプレスする荒技
『あややスペシャルバージョン10.2魔理沙さんインスパイヤ禁止!』
で、一本を取り返した
三本目は、四人とも場外でタイムアウト負けとなった
こうして、秋の慰労祭は妖怪達の歓声と拍手の中で終わりを迎えた
そして、文様と私は…
「…わう…疲れました…」
「さすがに、疲れましたね…」
その次の日、部屋の中で倒れる事になった
「…でも、椛…」
「わう?なんですか?文様…」
「楽しかったですね…」
「…はい…」
こうして、妖怪の山の一日限りのプロレス大会は終わりを迎えた
次の日、再び天魔様に呼び出しを受けると…
「…椛、文…お前らの試合が見たいという意見が大量に送られたから
しばらくの間、フリーのレスラーとして試合をしてくれ」
「あやややや!?」
「わう~!?」
…わう…どうやら…しばらくは覆面をかぶることになりそうです
巫女ってなんなんだろうと深く考えさせられました。ありがとうございました。
やっぱダブルアームスープレックスとか原爆固めとかするんだろうかw
紙のスペース的に足りるのか、それともあのぶっとい柱の真ん中からちょこんと普通サイズのはんこが飛び出してるのか。