この物語は、八雲紫、八意永琳、因幡てゐ、射命丸文、西行寺幽々子、八坂神奈子。以上6名、謙虚な女子高生の提供でお送りする。
「どけ」
妹紅は人をかき分けて、慧音のもとへひた走った。案内役だったはずの男は遙か後方に置いて来てしまった。
診療所に飛び込み、更に人をかき分けるとようやく彼女の顔が見えた。
「あ、も、こ」
片角の折れた慧音はベッドに寝かせられていた。
彼女はうつろな目で妹紅を観察していたが、やがてその目も焦点が合わなくなってしまった。
「慧音っ、慧音は、慧音は」
「畦に倒れてたんだ、折れた角を握りしめてね」
医者が口を挟む。
妹紅は震える手で、角の痛々しい折れ目を撫でた。
「また、綺麗に折れちゃったなあ」
「妹紅、ぱねえ。ぱねえんだよ」
慧音は妹紅の手を握り、涙々に声を絞り出した。
「誰にやられたんだ、教えてくれ」
「ぱねえ、ぱねえよ。マジでぱねえんだよう」
ただひたすらに「ぱねえ」を繰り返す彼女はひどく怯えていた。
「慧音。ぱねえって何なんだ。答えてくれ」
「ぱねえ」
「一体、ぱねえって何なんだ。慧音。答えてくれよ」
慧音は再び押し黙ってしまった。
「さっきからずっとこの調子なんです」
医者が首を振って、妹紅は唇を噛み締めた。
「そうだ、永遠亭に行こう。あそこの医者なら何とか」
途端に慧音の体が跳ね上がる。
ベッドが今にもぶち壊れそうな勢いで軋んだ。
「うわあ。ぱねえ、ぱねえ、ぱねえよ、うわああ」
「どうした慧音、くそ、許さん。誰だ。見つけ次第ぶち殺してやる」
「まぢぱねえ」
文は慧音が残していった財布の中身を勘定しながら、呟いた。
「何か、慧音先生さあ、寺子屋ずっと貸してくれるみたいなこと言ってなかった?」
「言ってたわあ」
神奈子にてゐが頷いた。
紫は新たにビデオを取り出し、デッキに差し込んだ。
「タイトルは何かしら、高校一年生としか書いてないわね」
再生ボタンを押すと、砂嵐が切り替わってスクリーンに制服姿の早苗が映った。
ホームビデオの様であった。
ふと、全員が釘付けになる。
<早苗、こっち向いて>
父親らしき男の声が聞こえて、画面の中の早苗が振り返った。
途端に胸が痛くなる。
<早苗が高校に上がりました>
早苗は幾分迷惑そうに苦笑いする。
<××0×年、4月××日。早苗の入学記念>
<やめてよ。学校遅れちゃうよ>
鼻をすする音がして、横を見ると神奈子がぼろぼろ涙をこぼし始めていた。
「早苗は父子家庭なんだ。だから、私や諏訪子が面倒を見てやって。だけど、あの子はこの時しばらく病気してて、久しぶりに起き上がってきたんだ」
説明を始めた神奈子の涙が早苗の制服の上にぼたぼたと垂れる。
神奈子は拳を握ったまま、口を結んで嗚咽をこらえていた。
どうやら、かけてはいけないビデオを再生したらしい。
<お父さん、泣かないでよ、やだ>
<早苗、早苗>
ビデオの映像がぶれる。
後ろを見ると全員が泣いていた。
恐らく自分の従者やらを思い浮かべてしまったのだろう。女子高生として情けない限りだ。
「な、何泣いてるのよ。女子高生はこんな所で泣かないの」
言わなくてもいいのにそんな事を言うから、藍が子供だった頃の記憶が蘇る。
薄暗い部屋の中、膝の上で眠る藍の鼓動、砂利道で転んだ藍の泣き顔、尻尾が生え揃って、空を飛んで、最初は私が抱きかかえて、一回り大きなサイズの法衣を繕ってやって、やがてあの小さかった狐も大人になって橙が、それでも私は心配で隙間の中から、だってあの子ったら子育てなんかろくに。
どうしてよりによってこんなビデオを混ぜておくんだ。もう勘弁してください。
セーラー服の奥で胸が悲鳴を上げて、気付けば自分も泣いていた。
<早苗。弁当は>
足音。
<入学式はお弁当持ってかないのよ>
<あっ、こりゃ失敗したな>
くぐもった笑い声。
<ビデオ動かしてると電池切れちゃうよ>
<いいじゃないか、だって>
「もう、見られません」
紫は咄嗟に停止ボタンを押していた。
「ってかさあ、この女子高生の性格研究みたいのやる必要あんの? ウチらもう完璧女子高生なんですけど。何か新しいことねえの」
よほど、先ほどのビデオの衝撃が大きかったらしい。
女子高生らしく大股開きで椅子に腰掛けた永琳が不満を漏らすと、不穏な空気が流れる。
そこで、紫は黙って白墨を掴むと黒板に
「10以上100以下で、6を分母とする既約分数の和」
と書く。
手に付いた白墨の粉をはたき、永琳に向き直った。
「女子高生の問題よ、分かるでしょうね」
「初項10,公差6分の1、末項100の等差数列で、分子2と3と6の倍数の数列はじき出して、それぞれの数列と集合考えて暗算で9900。余裕だし」
永琳は手をぱんぱん叩いて爆笑しながら、答えた。
てゐと文は「やりやがった」と呟いた。
「あなた、何を学習してきたの?」
永琳の表情が曇り、手が止まる。
「そんなこと分かる女子高生がこの世にいると思ってるの? 女子高生になりたかったら脳味噌をピーナッツにしなさい。「分かんなぁい」でしょ」
女子高生は国・英・数・理・歴を語らず。
永琳は顔を真っ赤にして俯き、幽々子らは頷いた。
「まぢ分かんなぃし、その、ごめんなさい」
「分かればいいのよ。じゃあ気を取り直して次のビデオに行くわよ、明るそうなのを選びましょう」
「これ、よくね」
幽々子が一本のビデオを選んで紫に渡した。
「ん、タイトルはえっと「耳を×ませば」」
それはともかく、ゆゆ様そのビデオはあかん!
>女子高生らしく大股開きで
>女子高生らしく
違うよ
全然違うよ
謝れっ、全国の真面目な女子高生に謝れよぉっ!!
この6人は「耳を×ませば」ラストの聖蹟桜ヶ丘を照らす朝日に溶けてしまえばいいと思います。
てか永琳すげえwww
月の天才も女子高生の魔力には勝てないわけか…
それに比べてこいつらの輝きは……まるでドブ川のようだ!!
ほうそくが
みだれ
る
これは汚ギャル(死語)だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!www
って、汚ギャルを知ってる人たちは居るのかな・・・・。(´・ω・)
前作とのビデオの内容の差がw
>耳を×ませば
まて、それは破滅への罠だ。
その割に問題が難しいな・・・
解けなくはないが、暗算て・・・
そしてけーねが不憫すぎる・・・
早苗さん可愛いよ早苗さん。まじぱn・・・ヤバッ!移ってる!!
>耳を×ませば
それはらめぇぇぇぇ!!!
こいつらまじぱねぇw
STAGEが進むごとに幻想郷崩壊のカウントダウンが近づいてきやがる・・・
しかし・・・何時になったら「体育」の時間になるのだ??
ほら、運動の秋と言うしね・・・
幻想郷はどうなってしまうんだ…
ぱねぇ。
まじぱねぇよ。
女子高生に謝れ。
そしてなにより早苗に謝れ。
冥界と境界の管理者が含まれる、巨頭の一斉スキャンダルだなんて幻想郷に激震が走るぞ
ゴ、ゴクリ・・・。