ご注意……自己解釈、自己設定が出てきます。
そういったものが平気な方はそのままお読み下さい。
そうでない方はお戻りになることをお勧め致します。
紅魔館の時計塔、その屋根の縁にレミリアは座っていた。
特に何をするでもなくただ月を、紅く輝く月を見つめていた。
どの位そうしていただろうか、心地良い香りが鼻腔をくすぐった。
香りの元を辿りそちらを見る、するとレミリアと屋根の中間に柔らかな湯気を立てるティーセットを持つ紅い髪の女性、紅美鈴が浮かんでいた。
視線が合うと美鈴は笑顔でレミリアの元まで飛んで行き、隣に腰を下ろしてカップとソーサーを差し出した。
「ありがとう、丁度喉が乾いていたところよ。」
「どういたしまして、ところで…何をなさってたんですか?」
カップを受け取り、一口飲む、芳醇な香りが口の中で溢れ、ささやかな甘さが口の中をくすぐりつつ喉を滑り落ちていく、咲夜の入れていた紅茶とはまた違う味わいがそこにはあった。
「んー別に、ただ月を観ていただけよ。」
自分も紅茶を飲もうと屋根の縁にトレーを置き、カップを手に取った美鈴は一瞬その手を止めたが、すぐに悪戯っぽく微笑む。
「相変わらず嘘が下手ですね、[ウソです]って顔に描いてありますよ。」
そういってころころと笑う美鈴を頬を擦りながら半目で睨む…だがそれはすぐに苦笑に変わる。
「敵わないわね、貴女には。」
「これでもお二人にはおしめの取れぬ内…たまに私の事を母上君とお呼びになられていた時からお仕えしていますから、分からない事は御座いません。」
カップを置き、その場に浮かびながら恭しく礼をする。
「貴女のそういう所は慇懃だけど…どこか無礼なのよね…それに褒めてないわよ。」
「ですから皮肉返しを礼という形で致しました。何でしたら皮肉の一つでも言わせて頂き…」
「あ~あ~わかった!私の負けよ!」
笑いながら慇懃無礼な美鈴を制すレミリア、対する美鈴も朗らかな笑顔で返す、
「何を考えていたか知りたい?」
「お嬢様が話したいのでしたら。」
「…あくまで意地悪を通すの? 明日から休み無しにしようかしら?」
「そ、そんなぁ」
怒気を少しだけ言葉に載せる、途端に美鈴の顔が歪む、そんな様子を無視してレミリアは語り出した。
「思い出に浸ってたのよ。」
「思い出…ですか…」
レミリアの横顔を見ながら美鈴はぽつりと漏らす。
「ええ、思い出よ、もう昔話といって良い位のね。」
ああ、と美鈴は納得する、お嬢様はあの頃の-幻想郷が、紅魔館が…いや、レミリアが最も輝いていたあの頃を思い出しているのだ。
「楽しかったわね、あの頃は、私がいて、パチェがいて、咲夜がいて、魔理沙も霊夢もいたわ。」
「私は大変でしたよ~魔理沙が毎回突っ込んで来るんですもん。」
美鈴は大袈裟に肩を竦めながら溜息を漏らす。
「そうね…咲夜にいつもお灸を据えられていたものね。」
「そうですよ…痛かったなぁ~」
「まぁお仕置の理由は突破された事だけじゃないんでしょうけどね。」
クスクスと笑いながらレミリアが言うと、美鈴が頬を膨らませていた。
「お嬢様…わかってていってますよね?」
「あらあら?なんの事?私には分からないから教えて頂戴。」
「ひょっとしてさっきの仕返しですか?」
「正解よ、私がやられっぱなしで引き下がると思ったの?」
「やっぱりお嬢様には敵いませんねぇ~」
頭を掻きながら美鈴が言うと、レミリアはどうだとばかりに胸を張ってみせた。
二人でひとしきり笑い合う、二人とも実に楽しそうだ。
「に、しても…まさか魔理沙がああなるとは思いませんでしたよ…」
ふいに美鈴が話を切り出す、それに答えながらレミリアは再び月に目を移す。
「まさか外の世界に行ってしまうなんてね…」
「捨虫の魔法で魔女になったのにも驚いたんですけどね…」
魔理沙は捨虫の魔法により、完全なる種としての魔女となった。
だがそれだけに飽きたらずに今度は外の世界に行くと言い出したのだ。
「新たなキノコが!魔法が!魔導書が!私を呼んでいるんだぜ!」などといって周りが止めるのも聞かずに行ってしまった。
だが、話はそれだけでは終わらない。
「魔理沙の話もそうだけどね…私が驚いたのはパチェと小悪魔よ。」
レミリアがそう言いながら溜息を漏らす。
魔理沙が外の世界に行くと言い出した時、なんとレミリアの親友であるパチュリーまで魔理沙に付いて行くと言い出したのだ。
何でも永久に返らない本の代償として、魔理沙に付きまとい嫌がらせをし続けてやると言っていたのだが、おそらく理由はもっと別の所にあるのだろう。
そして小悪魔も主が行くなら私も行くといって憚らなかったのが今でも鮮明に思い出される。
これには流石のレミリアも狼狽した、何とかパチュリーを思いとどまらせようと説得したが…彼女の意志は堅く、親友の言葉にさえも耳を貸さなかった、話合いはいつしか口喧嘩となり、段々とエスカレートしてあわや…となりそうになった時に間に入ったのは、美鈴と咲夜であった。
二人は主とその親友をなだめ、何とかその場は納まった…だが二人の間の溝は中々に深く、出発の日まで互いにくすぶり続けていたのだが…
出発の当日、咲夜と美鈴に無理矢理連れて行かれたレミリアはまたパチュリーと喧嘩になりそうになったが、一行を見送りに来ていた霊夢に仲良く鉄拳制裁を食らったのだった。
互いに寂しさから辛く当たっていたのはバレバレで、結局二人共抱きあって互いの健勝といつか再会する事を誓い合い、別れたのだった。
「お嬢様…」
「何?」
パチュリーの話も一段落したところで美鈴が紅茶のお代わりを差しだしつつ訪ねる。
「寂しくはないですか?」
「………」
レミリアは何も言わずにまた月を観ていた…いや、もう月は観ていないのだろう。
遠い目で、もう見ることが出来ない何かを探している、そんな目だと美鈴は感じていた。
しばしの沈黙の後、レミリアは目を伏せて言葉を放った。
「寂しいわ、とってもね…」
「…………」
今度は美鈴が押し黙る、本当に寂しいのだろう。
いつも傲慢で我が侭で、我が道を行く彼女が…今は何と小さく感じることか。
親友と、その使い魔、それに白黒の魔女はまたひょっこりと帰って来るかも知れない、何せ二人共気まぐれだ。
だが二人の人間
一人はこの幻想を守り続け、新たな博麗の巫女を育て上げて人として生を全うした巫女。
そしてもう一人は…
主に影の如く付き従い、永遠の別れの瞬間まで完全で瀟洒で在り続けた従者。
二人にはもう、二度と会うことは無い。
レミリアが大好きだった二人の顔を思いだし、自らも感傷に浸る美鈴。
「でもね、美鈴。」
ふと主が呟く…その声に顔を上げる美鈴、レミリアの表情はまたいつもの、
紅魔館の主の顔に戻っていた。
「私は今も幸せよ、去っていった者達もいるけれど、私にはフランも、貴女も、この館に住まう者達がいるわ、またこれからも新たな思い出が、運命が紡がれていく…寂しいなんていったらあの閻魔にまた説教をされてしまうわ。」
「たまに思い出には浸るけど、私は前に進み続けるわ、レミリア=スカーレットとして、紅魔館の主としてね。」
「ふふ…それでこそわが主ですわ、お嬢様。」
「あら…誰の真似かしら? 」
「それは秘密です。」
人差し指を立てて片目を瞑って見せる美鈴。
そんな美鈴に今宵何度目かの苦笑を漏らしながらレミリアはカップとソーサーを美鈴に手渡し、背を向けて浮かび上がる。
「おいしかったわ、本当に有り難う。」
「お出かけですか?」
美鈴の問いに振り返り答える。
「ええ、だって」
「「こんなにも月が
紅いから」」
二人の声が重なる、レミリアは肩を竦めて正面に向き直ると、その紅い月めがけて駆けていった。
「さーてと、お勤めに戻りますか。」
レミリアが見えなくなるまで見送った後、美鈴は伸びをしながら門の方へ向かって行った。
門には部下が立っている。
もっとも、部下と言うには強過ぎて、我が侭が過ぎる可愛らしい門番が…
「フラン様ー 異常はありませんかー?」
「異常なーし!平和で退屈だわー!お姉さまは出かけたんでしょ?だったら休憩にしましょうよ~」
「はいはい…全く…誰に似たんだか…」
「子は親を見て育つものよ、美鈴。」
不敵な笑顔で返すフランドールに今夜初めての苦笑を漏らす。
「お姉さまにソックリになってきましたよ、フラン様。」
フランドールは美鈴に師事を受け、今は門番となっている、社会勉強の一環と言うのは建前で、彼女は待っているのだ。
いつか帰ってくる、大好きな魔法遣いを。
「ちょっと! 私のどこがアイツに似てるのよ!? もう怒った! 美鈴! アンタ減給!」
「何処の世界に上司の給与を左右出来る部下がいるんですか!? フラン様こそ休み無しですっ!!」
咲夜さん…見ていますか?
私達は多分…
変わってません。
美鈴は向かってくるフランを受け止めながら、今は時の彼方へと旅を続ける親友に想いを馳せていた。
まあ普通の人間としてだが
にしても、やっぱり美鈴は紅魔館のお母さんなんだなぁww
>まあ普通の人間としてだが
もし差し支えなければ、その同人誌のタイトルを教えてくれませんか?
幻想郷で生を終え、外の世界に普通の人間として転生した同人とか、
魔法使いのまま、外の世界に飛び出した同人とか、
目が覚めたら外の世界で、母親が紫と瓜二つだった同人とかは知ってるんですが、
その手の同人誌は見た記憶が無いです><
万葉殿、貴方の思い浮かべる数ある未来の幻想卿の一つの物語、正直自分なこんな系統が好きなんで
まぁまぁだったと思います、どうか何時か、フランとレミリアに又素晴らしい出会いと笑顔があふれ出ます様に、
責めて美鈴が生きてる間に
ではお返事をさせて頂きます。
>>1様
同人ですか…最近は買っていませんね…話が逸れました、魔理沙は知識欲旺盛な子だと思っております、不死の法・外界への興味、彼女ならばすべてひっくるめてかっさらって行くでしょう。
>>2様
ご指摘有り難うございます。
慇懃無礼の意味を履き違えておりました…なんともお恥ずかしい限りです、今後とも忌憚なきご指摘をお願い致します。
美鈴は紅魔館のお母さんです!ちなみに私的には [メイ×コマカン]です。
>>3様
私としては貴方の言われている同人誌に興味が…むしろ私が教えて頂きたいです。
私は1様の言われた同人の事は分かりかねます、1様が再びこのコメントを見て下さる事を期待致しましょう。
>>4
いよう!帰ってきたぜぇ~!このタコ野郎!イヤッハーーーー!
いやぁインデペンデンス・デイはいつ見ても特攻親父に感動する
そして同人のことなんだが
題名は「ALFAandOMEGA」
製作所は「DEMOUR402」
どうやら続きも出てるらしい
あ、その本と続編入りの本持ってます^^;
>魔法使いのまま、外の世界に飛び出した同人
と私は解釈してたのですが、そんな解釈もありえますね
ちなみに、ALFAandOMEGAの続編では外世界で作った魔法体系で紫とガチで弾幕してます
ちなみにその続編PLUS ALPHA(総集編と書き下ろし分のみの2種類があります9に書き下ろしとして編入されてるので貴会がありましたら是非
>>万葉様
>幻想郷で生を終え、外の世界に普通の人間として転生した同人
Cube Sugar発行のTeinkle,twinkle,little starシリーズ全3話
ちなみに何故か幻想卿記憶を失くした状態で、普通の学校に通ってるアリスが主役の本です
何故、幻想卿の記憶を失くした状態で外の世界に来たのか?
その理由は、本を読めば解ります、そして最後に仕組まれた奇跡がおきます
現在、Teinkle,twinkle,little starシリーズ全3話を含めた総集編本が発行されており、
その書き下ろしにTeinkle,twinkle,little starのその後の話が掲載されております
>目が覚めたら外の世界で、母親が紫と瓜二つだった
パパンの小部屋発行の桃源郷です、現在中篇まで出てます
よろしかったら是非
>>5様・>>6様
再びコメントに目を通していただき有り難うございます。
同人の情報も併せて頂きました、機会があれば是非購入したいと考えております。
重ね重ねではありますが本当に有り難うございます。
またお会いできるのを楽しみにしています。
良き作品でござんした。
しかし魔理沙さん云々よりもフラ様と美鈴隊長のやりとりに心奪われ撃沈。
ごめんなさい……orz
>>謳魚様
いつもお読み頂き有り難うございます。
思えば美鈴さんとフランちゃんの睦まじさ(私の作品でですが…)はここから始まった……いつかまたこういったお話を書いてみたいと思います。
>>10様
確かに、鉄壁どころかプラチナ壁レベルですね。魔理沙さんが帰って来たら嬉しさのあまり門ごと(ぎゅっ