ある日、守屋神社に、紅魔組が乗り込んだ。
(訂正:守矢神社)
レミリアは言う。
「レイサナとか言われて調子こいているようだけど、そろそろ自重しないと本気で殺すわよ」
早苗は言う。
「いえいえ、時代の流れは既にレイサナです。空気読めないと人気落ちますよ」
女の嫉妬は恐ろしい。
「自重しろって言ったら自重しろ、このル○ージめ」
「自重するのはそっちでしょ。自分をマ○オだと思っていたら間違い、あなたは所詮赤ノコ○コです」
「よし、本気で殺す」
「やれるものならどうぞ」
そして弾幕ごっこ。
「この自信過剰っ娘が!『レッドマジック』!」
「いえ、私、通常弾幕だけで十分ですから」
2分後。
レミリアは地面に膝を着いた。負けた。全ボム使って、通常弾幕に負けた。
早苗はいつの間にか、使い魔を使うようになっていた。レミリア、運命の計算外。
しかも咲夜なんて全然手伝ってくれなかったし。
「さ、作戦ターイム!」
「認める」
早苗から許可をとり、神社の片隅でしゃがみこんで会議を始める紅魔の二人。
(咲夜、どうして手伝ってくれなかったの?永夜システムだと私では使い魔撃破できないのよ)
(だって、いつだかお嬢様、永夜で弱体化しすぎたから、妖々夢の咲夜で来いと言ったじゃないですか)
(ええ。言ったわ。言ってあなたは成し遂げた。ならどうして手伝ってくれなかったの?)
(妖々夢のさっきゅんは、クールな単独行動破壊工作員なのです。ペアなどいらないのです)
(えーい役立たず。十六夜 咲夜に切腹を言い渡す)
(西洋の大妖怪に切腹申し付けられても、なんかしゃっきり来ないんですけど)
(しゃっきり?しっくり、じゃなくて?)
(どうでもいいじゃないですか。それより今は作戦タイム中では)
(そうね。悔しいけど、あのルイ○ジが永夜かぶれて使い魔を使う限り弾幕は無理よ)
(お嬢様、前回と○の位置がずれています。隠す意味がありません)
(どうでもいいじゃない。とりあえず、弾幕以外で、私があのルイージ○に勝つ方法を編み出しなさい)
(お嬢様、その○には何が入るのですか?)
(ええい、わずらわしい!いいからとりあえず考えろ)
(では、ババ抜きで)
(あなた、やればできるじゃない)
「って訳で、ババ抜きで勝負よ。これで霊夢の所有権がどちらにあるか決めるわ」
「どういう流れかは知らないけど、これで決めてよろしいのですね」
神社の中で、茶菓子をつまみながら戦いを再開したレミリアと早苗。
「泣くなよ、小娘」
「そちらこそ、年増」
激しく火花を散らすレミリアと早苗。咲夜がトランプをよくきって、2人に配る。
最初にジョーカー(チルノデザイン)が渡ったのは、早苗側だった。
言わずとも知れずこの勝負、実は運の問題ではない。
『奇跡を起こす程度の能力』VS『運命を操る程度の能力』。能力の強さの勝負なのだ。
無論、両者一歩も譲らない。試合は順調に進み、そうしてカードは残り3枚になった。
レミリアがスペードのQ(魔理沙デザイン)、早苗がハートのQ(霊夢デザイン)とジョーカー。
そのとき、レミリアは気づいた。
(う、運命が見えない!)
---レミリア脳内ビジョン--------------------------------------------------------------
嘘、嘘よ、運命が見えないなんて。
分かったわ!向こうが『私が運命が見えなくなる』という奇跡を起こしたのね!?
落ち着け、私は霊夢のカードをとれば勝ちなんだ。
向こうのカードは霊夢か、チルノ。
右か左。勝率は50:50。運命の力を使わなくても、2回に1回の確率で勝てる。
だが、どっち?どっちなの?教えて霊夢、あなたはどっちにいるの?
普段の霊夢なら、右と左、どっちを選ぶ?私は霊夢と同じほうについていくわ。
霊夢は、確か、霊夢は靴下を右足から穿くわ。ってことは、右!?
いや、あのLイージも、それを知って、あえて左にしているかもしれない。
いやいや、そうひねって来ると思って、逆に右にしているかもしれない。
待った!あいつはLイージ、Lってことは、レフト!頭文字レフト!
ならば自分のサイドに霊夢を持ってくるはず!つまり霊夢のカードは左側!
いや、冷静になれ、私。失敗すればチルノカードなのよ。レミ×チル。レミリアチルドレン。
なんかどうでもいい響きをゲットしたわ。でも、今は霊夢よ!
右か左、二者択一。右か左、上か下、表か裏、カレーかグラタン。私だったらグラタンを選びたい。
って、どうでもいいじゃないそんなこと。お子様ランチ頼めばカレーもグラタンも食べられるわ!
そうよ、お子様ランチよ!困ったときにどっちも取れるのが幼女特権!紅魔法典第3条にも書かれているわ!
突き進め、私!どっちもとればどっちかは霊夢!恋にルールなんて関係ない!
壁があったら壊せばいい!距離が届かなかったら飛べばいい!先駆者がいたらグングニル!
よし、それで行こう!恋の迷路なんてそうと分かれば簡単なものよ!
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「私は、恋の迷路を、抜けたぁぁぁぁ!」
レミリアは勢いよく、早苗の手持ちカード二枚を両方引いた。
まず、右のカードを開く。チルノだった。やっぱり右がチルノだった。
そして、左のカードを、固唾を飲んで、ゆっくりめくった。
「やっぱり、あなたはこっちにいたのね」
そこには、ハートのQ、愛の女王、霊夢が描かれていた。
「勝った!私は、レミリア・スカーレットは、苦しい戦いを制し、今、勝利を手にしたぁ!」
グッと、右手を握り締め、勝利に酔いしれるレミリアに、早苗は言った。
「でも、今のであなたがチルノ持って行ったから、あなたが負けですよね」
レミリアは吐血し、そのまま卒倒した。
「さ、咲夜、お願い、わ、私の、仇を、とって………」
「分かりました。この十六夜 咲夜、全身全霊かけて勝利をつかみます」
それを聞いて、レミリアは何も憂いのなさそうな笑顔で、やすらかな眠りについた。
「さあ、風祝さん。これからが決勝戦よ」
「ひ、卑怯ですよ、2人がかりなんて」
「それが永夜システムよ。お嬢様に勝って終わりだと思ったら大間違い」
「クッ、分かりました。奇跡を起こせば、あなたにも簡単に勝てます!」
「奇跡など所詮は運。偶然が必然に勝てないこと、あなたに教えてあげる」
咲夜がカードをきって渡す。謀ったか謀らずか、一気に殆どのカードがペアを組んで消えていく。
2人の手元に残ったカードは、3枚。咲夜がジョーカー(チルノ)とハートのQ(霊夢)。早苗がスペードのQ(魔理沙)。
「さあ、あなたが私のカードを引く番ですよ」
咲夜は勝ち誇りの笑顔で早苗に言った。
---早苗脳内ビジョン------------------------------------------------------------------
これさっきの状況と何も変わらないよね!何にも変わってない!
このメイド、主人と同じ肝を私に舐めさせようとしているんだわ!十六夜 咲夜、恐ろしい子!
大体、私、こういう場面に弱いのよ!幻想郷に来る前もずっとそうだったわ!
高校時代、○×問題100問全部はずして学年の伝説になったこともある!
あれ以来、『奇跡の早苗さん』ってあだ名は『幸薄早苗さん』になったのよ。ええそうだったわ。
あの屈辱的なあだ名がきっかけで幻想入りしたくなった、なんてうちの神様2人に知れたら、ゲフンゲフン。
問題は、今目の前の2枚のカードよ。どっちが霊夢カードか当てればいいのよ。
とは言っても、相手はあの時止め奇術師。私が引いたカードを時を止めて交換、なんて簡単だわ。
これ読んでる人もそういうオチを期待しているんだ!絶対そうよ!
私はこういうときは空気読まないわよ!空気読めない風祝とは私のこと!
『空気・読めない』⇒『K・Y』⇒『神奈子・八坂』
つまり神が空気読まないのなら巫女も空気を読む必要なし。私は空気を読まなくていい。証明完了。
そうと決まれば、人生最大の奇跡を起こしてでも、霊夢が吸血鬼と結婚フラグだけは回避してみせる!
そもそも、同種族同業者が結ばれたほうが絶対いいじゃない。絶対いいじゃない。もう1回言うけど、絶対いいじゃない。
行くわよ私!引くカードは常に左!だって霊夢はドロワを左足から穿くもの。
起きろ奇跡!ここでミラクらないでいつミラクれと言うの!
神奈子様、私は一生あなたを信仰し続けます。ですので、今一度、最大の奇跡を我に与えたまえ!
諏訪子様、この前、私の3時のおやつあげたでしょ。ですので、今一度、最大の奇跡を我に与えたまえ!
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「霊夢を吸血鬼なんかに渡してたまるものですかぁ!起きろ、奇跡ぃぃぃぃぃぃぃ!」
早苗は、左のカードを咲夜の手からもぎ取った。
そして、自分のカードと見比べる。右手に持つは、魔理沙のカード。そして、左手に今持ってきたのは
「か…神は何しておられるのだ………」
チルノだった。咲夜は放心状態の早苗から、魔理沙カード(スペードのQ)を引いて、あっさり勝利した。
(ちなみに、今、神は封筒貼りの内職をしている)
「どうして?私は、霊夢と吸血鬼が結ばれるオチを、全信仰心を使って回避した、なのに、どうして………」
「だから言ったでしょ。奇跡など所詮運、偶然は必然に敵わないって」
咲夜はトランプを箱にしまい始めた。
「さあ、お嬢様、帰りますよ。明日は結婚式です」
「そうか!よくやった、咲夜!ほめてつかわすぞい!」
あまりの喜びの余り、誰てめえ口調になっているレミリアの手をひいて、咲夜は神社をあとにする。
「ついに明日なのね。私が霊夢と結ばれるという、長年の夢が叶う日は!」
「お嬢様、何をおっしゃるのですか?」
咲夜は天衣無縫の笑みで言った。
「ババ抜きを制したのは私です。霊夢と結ばれるのも私です」
(そういうオチかよ)
早苗はちゃぶ台を叩き割った。
翌日、『絶対にひもじい思いをさせない』という交換条約のもと、霊夢と咲夜が挙式した。
華やかに行われた挙式の中、神社の木の陰から、緑色の目を爛々と輝かせるレミリアと早苗がいたという。
守屋ではなく守矢ではなかったですか?