Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

八の神と八の意の矢 

2008/08/27 22:14:43
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「これに…これを…っと」

 永遠亭の薬師である、八意永琳
 彼女は研究室の中で新薬を作っていた
 
 研究中の永琳は滅多な事が無い限り表に出ることは無い
 その日も、一日研究室に篭るはずだったのだが…

「あの…師匠」
「あら、どうしたの優曇華?」

 弟子である鈴仙が研究所までやってきた

「ある程度の患者なら、貴方でも十分対処できるでしょ?」

 幻想郷の中では永琳だけが医者として思われているが
 それは、永琳が超一流な天才と言うだけで
 鈴仙自身も、すでに立派な医者と言う位まで達しているのは
 永琳自身が一番良く知っていた
 だが、今日は違うようだった

「い、いえ…そうじゃなくて…お客さんです」
「私に?」


 患者でなく、永琳自身にお客が来ることは殆ど考えられなかった
 しかも、礼儀正しく玄関で待っているらしい
(これで、霊夢や魔理沙の線は消えたわね)
 
「…わかったすぐに表にむかうわ」
「すいません師匠」

 興味を持った永琳は研究をストップしてそのお客を見に行く事にする
 表に居る人物を見て永琳は驚いた

「…申し訳ないね、わざわざでて来てもらって」

 そこに居たのは、人間でも妖怪でもなかった
 永琳の前でその人物は丁寧に頭を下げる

「えっと…妖怪の山に越してきた…」
 永琳が驚きながらも、その人物の名前を思い出そうとしたら
「八坂神奈子だ…一つお願いがあって今日はやってきたんだよ」
「…聞かせてもらおうかしら?」

 神自らが永遠亭にやってくる理由…
 その理由を聞いて、永琳は喜んで自分の研究室の奥に神奈子を招いた


「…いいのかい?『関係者以外の立ち入り禁止』って書いてあったけど」
「いいのよ、それよりも同じ趣味の人が居てくれた事が重要なんだから」
 永琳が笑顔で神奈子を自分のプライベートルームに招く
 そして、目的の場所に二人がたどり着き

「…立派なものだね…」
「ふふっ…そう言ってもらえると私も嬉しいわね」
 その場所を褒められて、永琳が嬉しそうに笑う
「着替えは右の部屋でできるから、それと、何かあったら言って頂戴」
「ありがとう」

 神奈子が永琳に頭を下げてから
 着替える為の部屋に入ってから準備をする
   
「…随分と久しぶりだからね…」
 
 着替えを終えて出て来た神奈子は袴に胴着をつけて出て来た

「…あら?それでも、私が今まで見てきた人達の中では一番だと思うわよ?」
「…撃っても無いのに分かるのかい?」
 
 その手には弓と矢を持って 

「ええ、歩き方で随分分かるのよ」
「ははっ、幻想郷で一番の弓矢の達人に言われると嬉しいもんだね」

 神奈子がそう言ってから、弓矢を構えると
 その顔から一切の雑念が一瞬にして消えた
 そしてその次の瞬間、神奈子が居る位置から離れた的のど真ん中に
 一本の矢が綺麗に突き刺さって刺さった
 


 神奈子と永琳が居る場所は
 永遠亭の地下にある研究所の更に奥にある
 永琳のプライベートルームであった
 
「でも、弓道場があるなんて良くわかったわね」
 的に綺麗に刺さった矢を見て永琳が呟く
 その呟きに対して、神奈子が次の一矢を構えて
「…なに、弓矢がうまい天才と酔っ払った魔女から聞いていたからね…」
 そう告げてから、矢羽根から神奈子が手を放すと
 二本目は先ほど放った矢の少し隣に刺さった
「…そういう人物は、鍛錬を好むものさ」
「お見事…」 

 しばらくの間、神奈子は無言のままで弓矢をつがえては
 はるか遠方にある小さな的に向かって矢を射続けた

 
 神奈子がある程度弓を射ていると
 永琳がいつの間にか神奈子と同じ衣服を纏って隣に立った
「…一つ、勝負をして貰ってもいいかしら?」
 手にはごく普通の弓と矢を持って
 だが、その顔は嬉しそうに笑っていた
「おっと、幻想郷の一番の弓矢の名手に相手をしてもらえるなんてね」
 神奈子もそれを見て嬉しそうに微笑んだ
「目の前で、これほどの弓の腕を見せてもらったんですもの…」
 永琳がそう言うと、神奈子の傍で弓をつがえて…
「久しぶりに、熱くなってきたのよ」
 
 神奈子が撃っていた的のど真ん中を矢で射抜いた
「…ウォーミングアップもいらないみたいだね」
「当然…どんな時にでも、私は天才よ?」
 永琳と神奈子がお互い笑いあってから

「八坂神奈子…八意永琳に勝負を申し込む」
「八意永琳…喜んでその申し出受け取る」
 お互いに礼をしてからその手に弓と矢をつがえた



「…私から先に射させてもらうわ」
 永琳がそう言うと、先ほどとは別の的に向かって弓矢を構える
「……」
 そのまま無言で矢を放つ
 そして、その弓矢は力強く飛んで行き
(カツン!)
 的の端のギリギリの所に突き刺さる

 それをみた神奈子が、口をにやけさせる
「…やるじゃないか…あんなギリギリの所を狙うなんて」

 的の中心を狙う事は、弓矢の上級者ならできる
 だが、永琳が意図的に撃ったのはギリギリ端
 うまく当たらなければ、外にはずれ
 内側過ぎると矢の先端が弾かれる所であった

「…ええ、的の中心を射ていたら、お互いに勝負は終らないわ」
 永琳が笑みを零しながらそう伝えると
 今度は、神奈子が弓矢を番える
「…次はこちらが攻める番だな」
 矢を番えて、しばらく動きを止めてから
「…ッ!」
 呼吸と共に矢を放つ、そしてその矢は
 吸い込まれるように的の端を飛んで行き
(カツン!) 
「…さすがね」
 違える事無く的の端のほうに突き刺さる

「しかも、私と逆の位置に撃つなんて」
「このぐらいしないと、失礼だと思ったからね」
 しかも、先ほど永琳が放った場所の対角線上に矢が刺さっていた

「…面白いわ」
「…ははっ…それはこちらの台詞だと思うがね」

 二人は思いがけないところで良い好敵手に出会えて喜んだ

 お互いが交互に矢を放っていく
「…それで、何のためにこんな事を?」
 永琳がそう言って、矢を的に向けて放つ
(カツン!)
「…なんでって?」
 今度は神奈子が矢を的に放つ
(カツン!)

「…何で隠れて矢を射ろうとしてるのかしら?」
(カツン!)
「ああ、訳有でね…」
(カツン!)
 
 お互い、集中力が途切れたらお終いの勝負をしているのに
 一言一言相手に尋ねながら矢を射って行く

「…訳有?」
(カツン!)
「ああ…早苗がね…」
(カツン!)
「貴方に仕える風祝?」
(カツン!)
「ああ…久しぶりに八坂流棒術の稽古をつけようとしたんだがね」
(カツン!)
「あらあら…娘が鈍っていたのかしら?」
(カツン!)
「逆だよ…」

 神奈子がそう言うと、少しだけ撃つのを止めて的を見据えた
「…私の方が少しだけ不覚を取ってしまった」
 そう言うと、神奈子が嬉しそうに笑って矢を放った
(カツン!)
 それが綺麗に的のど真ん中に突き刺さった

「…しまった…私の負けだな」
 神奈子がそう言うと、額の汗を拭った
「危なかったわ…此処まで追い込まれたのは初めてよ」
 その様子を見て永琳が再び的を見据える

 そこにある的は、真ん中以外にびっしりと矢が突き刺さっていた

「…ありがとう、久しぶりに集中力を高めれた」
 負けたはずの神奈子が晴れ晴れとした笑顔で永琳に頭を下げた
「いえいえ…またお相手してほしいわ」
 勝ったはずの永琳が、深々と神奈子に頭を下げる

 

  
 
 神奈子が永琳にお礼を言って永遠亭の玄関から表に出て行った 
 永琳は神奈子が帰った後、神奈子と一緒に撃った的を正座して見つめていた
「……」
 無言のまま永琳が座っていると
「師匠…御飯できますよ?」
 鈴仙が永琳の傍にやってきた 
「あら?ごめんなさいもうすぐ行くわ」
 そう言ったまま永琳はその的から視線を外さなかった
「…師匠?」
 不思議に思った鈴仙は、永琳の傍に近寄る
「…優曇華…」
「は、はい!」
 いきなり永琳から声をかけられて、鈴船が驚く
「…隣に座りなさい」
「…はい」

 鈴仙には、こんな時の永琳は何か大切な話をする事を知っていた
 鈴仙が永琳の傍に座ると、永琳が静かに答えた
「…この勝負、私の負けだったわ」
「えっ!?」
 
 鈴仙は驚いた弓矢の勝負で師匠が負けを認める事に

「…優曇華…良く見て」
「は、はい!」
 言われたとおりに、鈴仙が的を良く見る 
 そして、その隣で永琳が矢を構えると同時に的に放つ

 そして、その矢が神奈子が最後に放った矢の隣に刺さると

(パキッ!)
「あっ!?」
 的はその一撃に耐えれず、真っ二つに割れてしまった


「し、師匠…これは?」
 鈴仙が驚いていると、永琳が頷いて答えた
「…次の一矢で的が壊れるのを、わかって八坂神奈子は
 撃ったのよ…ギリギリ壊れないように」
 そう伝える、永琳は実に嬉しそうだった
「…試合にはかったけど…内容で完敗ね」
 永琳はそう呟くと、壊れた的を集めて弓道場の壁に備え付けた

「…これは、どれだけかに一度の宝物だわ…」
「宝物ですか?」
 鈴仙が永琳の隣でそう呟くと頷いた
「ええ、それこそ『蓬莱の薬』に勝らぬとも劣らない…ね」

 永琳の宝物が一つ増えた  
 それを見ることができたのは永遠亭の中では鈴仙だけであった
 皆、この弓道場には足を運ばないからである
 故に、鈴仙は幸せであったのだろう

 















 妖怪の山に引っ越してきた神社…
 その境内で風祝である東風谷早苗は立っていた
「早苗!」
 その時、神社の中から誰かが声をかけた
「あ、神奈子様」
 早苗はその人物の方に振り向くと
「ほいっ」
「わっ?」
 いきなり何かを手渡された
 驚きながらも、早苗がそれを手にする
「…これは?」
 手に渡された物を見た、早苗の顔が真剣になる
「早苗も強くなったからね…」
 神奈子がそう伝えると、境内の方に飛び早苗の真正面で構えを取る

「…手加減は無し、本気でかかって来なさい早苗」
 その言葉を受けて、早苗は手渡された混を両手に持ち
「はい!」
 笑顔で神奈子の前に立った



(…幸せ者だよ…娘が一つ一つ強くなるのを見れるのは…)
 神奈子は一瞬だけ微笑むと
「…行くよ!早苗!」
「はい!神奈子様!」 
 久しぶり集中力を高めて、自分の娘に向かって向かっていった
「…ふふっ…」
 神社の上で神奈子は嬉しそうにお酒を飲んでいた
「…嬉しそうだね、神奈子」
 その隣にやってきたのは、神社のもう一人の神
「ああ、嬉しいよ諏訪子」
 神奈子はそう言うと、お酒を諏訪子にも渡した
「…何があったの?」
 そのお酒を諏訪子が飲むと、そう訪ねてきた
「ああ、早苗がね…」
 神奈子がそう言うと、自分の右の掌を諏訪子に見せる
「うわぁ…痛そう」
 そこには、痛々しい擦り傷の跡が
「…まさか、早苗があそこまで強くなってくれるなんてね…」
 神奈子の脳裏に、その一撃が思い出される
(混自身に、己の腕の力だけでなく、足、腰、肩…
 その全ての力を籠めつつ、捻りながら打ち抜く)

 それは、最早一つの奥義であった
「…捻りを籠めた、糸のように細く恐ろしい混の一撃…」
 神奈子は嬉しそうに、その技に名前を付けた
「捻糸棍(ねんしこん)…」
 


 どうも、脇役です
 実は、この作品を書いている途中で腰の激痛に倒れました
 原因は『結石』で命に別状はありませんが
 しばらくの間、治療を受ける為に、パソコンを打てなくなりそうです

 という事で、しばらくの間投稿を控える事になりそうです
 書こうと思っている作品はあるので、また帰ってきますが
 少しの間、脇役は消えます
 でも、脇役はこっそりと復活するので気にしないでください
 ではまたいつかノシ 

 
 …ついでだからおまけ

「…霊夢さん…良いな…出番があって」
 新作に出番が無かった早苗の一言に、霊夢の無情の一言
「早苗出番なかったの?…いいわね、面倒じゃなくて」
「それが…それが出番が無かったものに対する言葉ですか!」
 緋想天に出られなかった早苗が霊夢に勝負を挑む

「スリーパーホールド!」
 努力によって此処まで来た早苗だが
「かかりが甘いわね…アームロック!」
「そ、そんな!?」
 霊夢の天賦の才能に逆に関節を決められる
「…此処まで決まったアームロックは外せないわ…諦めなさい早苗」
「…っ!」
 霊夢の言葉に早苗が覚醒する

(ゴキン!)
「っ~~っ!」
「なっ!?早苗!自ら腕を!」

 自らの腕をへし折り、霊夢の束縛をとく早苗
 そして…早苗は守矢の禁忌の技の封印をとく
 己の体の、点穴をつき、相手の体の生命を奪いかねない技を
(…神奈子様…諏訪子様…私は…もう貴方達の下には戻れません)

「守矢流!裏禁忌神殺術『雷神』(タケミカズチ)」

 腕をへし折りながら放ったその技の前に、霊夢が倒れる
(…私は…人を殺してしまった…)
 二神に仕える証である二つの髪留めをその場に残して
 早苗は無表情のままでその場から消える


(これから…どうしよう…)
 途方にくれていた早苗の元にある四人が寄ってくる
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「ちんちん…泣いてるの?」
「…僕達でよかったら話聞くよ?」
「そうなのだ」

 少しおばかだけど、真っ直ぐによってくる四人に
 心が癒される早苗…
 だが、そんな彼らの前に天候が変わるという異変が起こる
 そして、早苗は悟る
(…本来なら…これは霊夢さんが片付けるはずだった異変
 …その霊夢さんを殺してしまった私が解決しなければいけない)
 自分を匿ってくれた、四人に手紙を残すと
 早苗は一人、緋想の雲を目指して最後の闘いを挑む

「捻糸棍!」
 竜宮の使いのドリルを早苗の混が貫く
「そ、そんな!?私のドリルが!?」
「…無駄です、私はこの異変を解決する為なら命を捨てる覚悟です」

 そして、早苗の前に最後の敵が現れる
「へえ…一番乗りが貴方?…意外」
「……いきます」

 力は天子の方が上…だが、早苗の方が圧倒的に強かった
「な、なんで…なんであんたは立ってこれるのよ!?」 
 ボロボロになっても、早苗は無言で立ち上がる
「…死ぬ覚悟を持った者を止めるには…」
「ひっ!?」
 早苗は…再び最後の奥義を決める為自分の体に鞭を打つ
「…殺すしかありません…」
 その表情をみた天子が恐怖を覚える
「う、うぁ…緋、緋想の!」
 大急ぎで天子が己の最高の技を唱える
「…守矢流…」
 それと同時に、早苗も最後の技を自分に施す
「緋想の剣!」
「裏禁忌神殺術『雷神』(タケミカズチ)」

 
 決着は、どうなるのか分からない

『異聞 悲壮天外伝 名も無き風祝』

「急ぐよ!諏訪子!早苗を人殺しになんて絶対にさせない!」
「わかった!あの技は両手が完全に使えて初めて完全になる技…
 処置がうまくいけば霊夢は助かるはず!」

 …あくまで構想のみ…誰か書いて?
脇役
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
結石って、痛いそうですね……
お早いお帰りをお待ちしておりますノシ
2.名前が無い程度の能力削除
あせらず治療に専念してください。
貴方の作品を楽しみに待ってます。
3.ミヤギ削除
弓道勝負がとても面白かったです。
昔やってましたが、端を連続で射抜くとは…。流石神様と天才w
貴方の作品は今までのすべて拝見させていただきました。どれも大変面白かったです。
貴方が完治して戻ってくるのを、首を長くして待ってますね。
4.名前が無い程度の能力削除
早苗さん、緋想天にパッチで参戦してくれないかなぁ
MUGENには神奈子様が出てきたわけだが…

めーりんが緋想天に出てないのはめーりんの能力が気に関係してるからですよね、そうですよね
決して忘れ去られたからじゃないですよね!?
5.名前が無い程度の能力削除
さあ、早く治療に専念するんだ!!
6.名前が無い程度の能力削除
石は洒落にならん程痛むと聞きます。
ゆっくり静養していってね!!!

見れるか分かりませんが、混と棍が混ざってましたよ、と報告しておきます。
7.シリアス大好き削除
脇役殿の素晴らしい作品を暫く拝めなくなるのは、真に残念ではありますが
どうか復帰後の作品で、我々を幻想卿へ誘って下さいませ
>…あくまで構想のみ…誰か書いて?
何をおっしゃいますか、こんな某少林寺漫画風炒めSSを完成させられるのは、
脇役殿以外に考えられませぬ
8.狂信者ギリメカラ削除
治療が終わって復活する日を楽しみに待ってます~
あ、あと誤字を見つけたのでご報告を。
一箇所だけ鈴仙が鈴船になっていましたよ。
9.名前が無い程度の能力削除
実にスカッとした、いい作品でした。
治療中でも作品はかけますよ!無理しない程度に気をつけてくださいな。

それはそうと後書きテラチンミ
10.名前が無い程度の能力削除
…久々に加奈子のカリスマを見た気が…

治療中にネタを貯めるんですね、分かります。
お早い復活を望んでます。

それはそうと
> 新作に出番が無かった早苗
出番あったよ、地霊殿Extraの中ボスに…
11.てるる削除
久々にまじめな作品でしたね~

復活する日を待ってますね~
12.名前が無い程度の能力削除
『異聞 悲壮天外伝 名も無き風祝』ではなく、この作品本編の続編を書いてみたくなりました。
なんかもうヤバいほど刺激されました。