『第一回妖怪の山主催小説大賞 応募者募集中
優秀作品は新聞に連載形式で発表予定
〆切○月×日』
見せつけられたチラシには、達筆な文字が踊っていた。神奈子は眉をひそめながら、これがどうした、と指を突きつける。
早苗は胸を張り、答えた。
「どうした、じゃありませんよ八坂様。これはチャンスです! ここで我々が優秀作品を投稿することにより、新たな信者を獲得できるかもしれないんですよ!」
さも名案とばかりに早苗は目を輝かせるが、神奈子の表情は冴えない。
そも、どうやったら大賞と信仰が結びつくのかから分からないのだ。
「いいですか、大賞をとる。多くの人が見る。信仰が増える。ここまでは良いですね?」
「いや、そこからが分からない。何で多くの人が見るだけで信仰が増えるのさ。それなら、里に下りて一時間歩いた方がよっぽど信仰が得られるじゃないか」
わかってないですね、とばかりに指をふる早苗。ちょっと腹立つ。
「優れた小説には、自然と信者がつくものです。大賞をとるほどの小説なら、きっと信者の数も増えるでしょう」
それはそうかもしれないが、その信者と神社の信者を同列に扱ってよいものか。神奈子は悩むが、早苗はもう決めてしまったようだ。
チラシの応募要項に目を通し、箪笥から原稿用紙と筆を取り出す。
「じゃあ執筆作業に入るんで、神奈子様はどっか行っててください」
「待て。あんたが書くのかい!?」
「ええ、そうですが?」
真顔で答える早苗。
「私の信仰を増やすんだろ。なんで、あんたが書くのさ」
「だって、神奈子様作文も苦手じゃないですか」
思い出される夏のあの日。夏休みの宿題を溜めていた早苗に泣きつかれ、渋々手伝う神二柱。
こんなことの為に誕生したわけじゃないのに、と愚痴りながら何とか九月までに宿題を終わらせた。
しかし、神奈子の書いた酷評と駄目だしオンリーの読書感想文だけは再提出を要求されたという。
「あれはほら、単なる感想文じゃないか。小説とは違うよ」
「作文も満足に書けない人が、小説を書けるとは思えません。いいから、神奈子様は黙って見ててください」
そう言うや否や、早苗は原稿用紙に筆を走らせた。
迷いはない。最初から何を書くか決めていたのだろう。
神奈子は出ていこうとも考えたが、少しだけ内容が気になり後ろから覗き込んだ。
『トンネルを抜けるとそこは幻想郷だった』
容赦なく早苗の後ろ頭を叩く。
「何するんですか!」
「古典文学を幻想郷入りさせてんじゃないわよ! そんなので賞をとれるわけないだろ!」
「大丈夫ですよ、川端康成とか幻想郷で知ってる人はいないですから」
「そういう問題じゃないっての。とにかく、もっとオリジナルティのある作品を書きなさい」
母親に叱られた子供のように、口を尖らせる早苗。拗ねたって、意見を曲げるつもりはない。
神奈子の意志の強さを知ったか、渋々早苗は書いていた原稿を丸めて捨てた。
「わかりました。もっとオリジナル性のある文書なら良いんですね」
新しい原稿に筆を走らせる。
『───アタシの名前はカナコ。心に傷を負った神様。
モテカワバシラで神聖体質の愛されゴッド♪
アタシがつるんでる友達は河童のニトリ、上司にナイショで神社で働いてるモミジ。訳あって守矢グループの一員になってるスワコ。
友達がいてもやっぱり神社はタイクツ。
今日もスワコとちょっとしたことで口喧嘩になった。
神様同士だとこんなこともあるから信仰が溜まるよね☆
そんな時アタシは一人で紅魔館を歩くことにしている。
がんばった自分への挑戦状ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」・・。
そんなことをつぶやきながらしつこい吸血鬼を軽くあしらう。
「カノジョー、ちょっと血吸わせてくれない?」
どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
吸血鬼はカッコイイけどなんか陰気くさくてキライだ。もっと御柱抜きのアタシを見て欲しい。
「ねえ・・。」
・・・またか、とレトロなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、 チラっと吸血鬼の顔を見た。
「・・!!」
・・・チガウ・・・今までの吸血鬼とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルホーリーな感覚がアタシのカラダを 駆け巡った・・。
「・・(何という力・・!!・・これって運命・・?)」
吸血鬼はフランだった。連れていかれて弾幕ごっこされた。
「キャーやめて!」
信仰がカンストした。 「ガッシ!ボカッ!」神は死んだ。ニーチェ(笑)
超低空で滑空した神奈子のフライングチョップは、見事に早苗の首筋に決まった。悶えながら、畳の上で泡を吹く早苗。
「どんなオリジナリティだ、ええ!」
怒鳴りつける神奈子だが、早苗はそれどころではないらしい。
余程、綺麗に決まったのか。やがて動かなくなった。
「もういい、応募作は私が書く!」
そう言って、神奈子は筆をとった。
『昨日は、早苗と諏訪子と一緒に人間の里へ行きました。
そこで色んな物を買いました。諏訪子は蛙の人形が欲しいと言ったけど、買って貰えませんでした。
ざまあみろと思いました。でも、とても楽しかったです。
また行きたいな、と思いました』
優秀作品は新聞に連載形式で発表予定
〆切○月×日』
見せつけられたチラシには、達筆な文字が踊っていた。神奈子は眉をひそめながら、これがどうした、と指を突きつける。
早苗は胸を張り、答えた。
「どうした、じゃありませんよ八坂様。これはチャンスです! ここで我々が優秀作品を投稿することにより、新たな信者を獲得できるかもしれないんですよ!」
さも名案とばかりに早苗は目を輝かせるが、神奈子の表情は冴えない。
そも、どうやったら大賞と信仰が結びつくのかから分からないのだ。
「いいですか、大賞をとる。多くの人が見る。信仰が増える。ここまでは良いですね?」
「いや、そこからが分からない。何で多くの人が見るだけで信仰が増えるのさ。それなら、里に下りて一時間歩いた方がよっぽど信仰が得られるじゃないか」
わかってないですね、とばかりに指をふる早苗。ちょっと腹立つ。
「優れた小説には、自然と信者がつくものです。大賞をとるほどの小説なら、きっと信者の数も増えるでしょう」
それはそうかもしれないが、その信者と神社の信者を同列に扱ってよいものか。神奈子は悩むが、早苗はもう決めてしまったようだ。
チラシの応募要項に目を通し、箪笥から原稿用紙と筆を取り出す。
「じゃあ執筆作業に入るんで、神奈子様はどっか行っててください」
「待て。あんたが書くのかい!?」
「ええ、そうですが?」
真顔で答える早苗。
「私の信仰を増やすんだろ。なんで、あんたが書くのさ」
「だって、神奈子様作文も苦手じゃないですか」
思い出される夏のあの日。夏休みの宿題を溜めていた早苗に泣きつかれ、渋々手伝う神二柱。
こんなことの為に誕生したわけじゃないのに、と愚痴りながら何とか九月までに宿題を終わらせた。
しかし、神奈子の書いた酷評と駄目だしオンリーの読書感想文だけは再提出を要求されたという。
「あれはほら、単なる感想文じゃないか。小説とは違うよ」
「作文も満足に書けない人が、小説を書けるとは思えません。いいから、神奈子様は黙って見ててください」
そう言うや否や、早苗は原稿用紙に筆を走らせた。
迷いはない。最初から何を書くか決めていたのだろう。
神奈子は出ていこうとも考えたが、少しだけ内容が気になり後ろから覗き込んだ。
『トンネルを抜けるとそこは幻想郷だった』
容赦なく早苗の後ろ頭を叩く。
「何するんですか!」
「古典文学を幻想郷入りさせてんじゃないわよ! そんなので賞をとれるわけないだろ!」
「大丈夫ですよ、川端康成とか幻想郷で知ってる人はいないですから」
「そういう問題じゃないっての。とにかく、もっとオリジナルティのある作品を書きなさい」
母親に叱られた子供のように、口を尖らせる早苗。拗ねたって、意見を曲げるつもりはない。
神奈子の意志の強さを知ったか、渋々早苗は書いていた原稿を丸めて捨てた。
「わかりました。もっとオリジナル性のある文書なら良いんですね」
新しい原稿に筆を走らせる。
『───アタシの名前はカナコ。心に傷を負った神様。
モテカワバシラで神聖体質の愛されゴッド♪
アタシがつるんでる友達は河童のニトリ、上司にナイショで神社で働いてるモミジ。訳あって守矢グループの一員になってるスワコ。
友達がいてもやっぱり神社はタイクツ。
今日もスワコとちょっとしたことで口喧嘩になった。
神様同士だとこんなこともあるから信仰が溜まるよね☆
そんな時アタシは一人で紅魔館を歩くことにしている。
がんばった自分への挑戦状ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」・・。
そんなことをつぶやきながらしつこい吸血鬼を軽くあしらう。
「カノジョー、ちょっと血吸わせてくれない?」
どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
吸血鬼はカッコイイけどなんか陰気くさくてキライだ。もっと御柱抜きのアタシを見て欲しい。
「ねえ・・。」
・・・またか、とレトロなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、 チラっと吸血鬼の顔を見た。
「・・!!」
・・・チガウ・・・今までの吸血鬼とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルホーリーな感覚がアタシのカラダを 駆け巡った・・。
「・・(何という力・・!!・・これって運命・・?)」
吸血鬼はフランだった。連れていかれて弾幕ごっこされた。
「キャーやめて!」
信仰がカンストした。 「ガッシ!ボカッ!」神は死んだ。ニーチェ(笑)
超低空で滑空した神奈子のフライングチョップは、見事に早苗の首筋に決まった。悶えながら、畳の上で泡を吹く早苗。
「どんなオリジナリティだ、ええ!」
怒鳴りつける神奈子だが、早苗はそれどころではないらしい。
余程、綺麗に決まったのか。やがて動かなくなった。
「もういい、応募作は私が書く!」
そう言って、神奈子は筆をとった。
『昨日は、早苗と諏訪子と一緒に人間の里へ行きました。
そこで色んな物を買いました。諏訪子は蛙の人形が欲しいと言ったけど、買って貰えませんでした。
ざまあみろと思いました。でも、とても楽しかったです。
また行きたいな、と思いました』
そのセンスに脱帽です…
>神奈子の書いた酷評と駄目だしオンリーの読書感想文だけは再提出を要求されたという。
すんませんすんません
自分で一生懸命書いたのに、その後おかんが勝手に半分以上変更してそれを書かされて再提出を要求された事に比べればどってことないさ!
感想文書いた原稿用紙に直に変更文書きまくった上、おかん作版で清書するまで監視しやがって
どんな内容なのか気になるんだぜ・・・!
あと神奈子、それ小説やない!作文や!
>神奈子の書いた酷評と駄目だしオンリーの読書感想文だけは再提出を要求されたという
最初「融通聞かない教師だなあ、感想文なのに」と思ったが、再提出の原因が駄目出しオンリーな内容が
原因ではないことがよくわかった。
v3のドク○ルGですね、わかります。
>───アタシの名前はカナコ。心に傷を負った神様。
>ニーチェ(笑)
ここまでの流れに吹きましたw
それで終わりかと思ったのですが、神奈子さまの小説(?)と、あとがきという伏兵が残っているとはw
とにかく、お見事でした。
いいなあ、このセンス。ニーチェ(笑)
後書きがまた秀逸ですねw