Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ごった煮

2008/08/17 11:57:21
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私の縄張りで人が大の字になって寝てゐる!


思わず梶井基次郎調になってしまった風見幽香さん。
「……」
「Zzz…」
幾らかは木陰になっているとは言え、このおっそろしく暑い中でよく寝られるもんだと感心する。
ジージー シュワシュワ ミンミンミン と、セミの声がやかましい。
傘の先で相手の頭をつついてみる。
ツンツン
「…ん、んぁ?」
ツンツンツン
「起きなさい」
「い、痛っ!何をしてるんだよ!」
がばっと体を起こす。
「それはこっちのセリフ!貴女こそ人の縄張りで何をしてのよ!?」
「何してるって…昼寝」
「それは見たら分かる」
ぱんぱんと、体についた草を払う人。
「大体貴女は誰なのよ?」
「藤原妹紅、お前さんは?」
「…幽香、風見幽香よ」
「ゆーか?ゆーかってどんな字を書くんだ?」
「幽霊の幽にかおり(香)よ」
「ふーん、幽霊臭なのか」
「変な解釈しないでよ!それじゃあ貴女の名前はどう書くのよ!」
「いもうと(妹)にくれない(紅)」
「なるほどね、それで『もこう』…って読めないわ!」
「まぁ誤差の内だ」
「いや、意味分かんないし…」
「ところでさ、縄張りって何?」
「どうも何もないわ、そのままの意味よ」
「あー、犬とかみたいにマーキングして…」
「しないわ!」
木陰で寝ていたのは藤原妹紅でした。
セミは相変わらずやかましい。
「何なんだよ、昼寝してたら駄目なのか?」
「ここに居られると邪魔なのよ」
「別に誰に迷惑するもないじゃないか」
「少なくとも私が迷惑してるのよ」
「さっきまで居なかった癖に?」
「うるさい、はっきり言うわ、目障りだから消えてくれない?」
「結局出てけって事か…」
「そーいうこと、痛い目に遭いたくなければさっさと出て行きなさい」
「まぁ誰でも草むらでマーキングしてるトコなんか人に見られたくないわな、分かったよ」
「だからしないって…」
「となると…そっか大きい方」
どかっ!
「がぁ!?か、傘は痛い…」
「下品な事言わないでよ!」
「じゃあ何だよ、食事か?」
「……」
こいつ、鬱陶しい。
幽香は真剣にそう思った。
「…その通りよ」
「何食べるの?」
「…貴女よ」
ざしゅっ!
「うわぁっ!」
傘は妹紅の体を貫いた。
「…ぐっ、がはっ!」
ずるっ、どさっ!
傘を抜かれ、地面に叩きつけられる妹紅。
「調子にのった罰よ、その身を持って償いなさい」
「…うぅ……」
「次生まれてくるときは覚えとくことね、妖怪の縄張りを荒らすとどうなるか…」
傘をふるって血を払う幽香。
ぶんっ びしゃっ…
草むらにつく血の跡。
「愚かなものね…相手の実りょ…」
「リーーザレーーーーーーークショーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」
「って、ええぇぇ!!?」
大復活。
「はぁはぁ…いきなり何すんだよ!?」
「びびびびっくりした!い、いきなり起きるから!!」
幽香さんは、心底びっくりしています。
「貴女こそ、何で何のことわりも無しに生き返ってるのよ!?」
「私は不老不死だ!私を殺した責任、ちゃんととってもらうからな!」
「それは吸血鬼のセリフ!しかも余所の!!」




「あー疲れた…」
「私も…」
弾幕ごっこ終了。
大妖怪も不老不死相手では非常に疲れるそうだ。
逆もまた然り。
二人とも木を背にしてぐったりしている。
「ところで、飯食べなくていいのか?」
「もう食べてきたわよ」
「そっか、私はまだなんだ、昼寝してから食べようと思っててな」
「…とりあえず、花さえ荒らさなきゃ何してもいいから、気が済んだら帰って」
幽香は諦めた。
「じゃあ頂くとしますか…」
妹紅は木陰において置いたカバンに手をつっこみ、ごそごそと中身を取り出す。
出てきたのはソフトボール大の握り飯数個。
「…大きいわね」
「へへ…まぁ全部は食べきれないんだけどね」
「じゃあ何でそんなの持ってきてるのよ」
「ふん?ほひほひふっへふほひゅふひ…」
「口の中一杯じゃない!食べるか喋るかどっちかにしてよ…って米粒飛んでる!!」
もきゅもきゅ…ごくん
「ああすまん、ときどき食ってる途中とか食後に襲撃される事があってな」
「襲撃って…どんな生活してんのよ、貴女」
「それで腹を貫かれたら中身がどばーって出てくることが…」
「止めて止めて止めて…!」
思わず話を止めてしまう幽香。
「想像したら気持ち悪くなった…」
「何で?人を喰う妖怪なんだから、そんなの平気じゃないの?」
「私ホルモン系苦手なのよ!」
「さっき人の体突き刺して無かった!?」
「そういうのとはまた違うのよ!」
違うらしい。
「基本的に私が食べるのは赤肉!白肉を好んで食べるのは下っ端か変わり者の妖怪よ!」
「いや、熱弁してるところ悪いけど、人の体を白肉赤肉で分けるのやめてくれない?飯が不味くなるから…」
「貴女が言い出したんでしょうが!!」
思わず突っ込みを入れる幽香。
日はまだ高い。
「…で、今日の昼はその赤肉を食べたって訳か」
「人じゃなくて鳥だけどね」
「鶏肉?」
「そう、焼き鳥」
「昼からオヤジ臭いなぁ」
「放っといてよ!ナマで鶏齧ってるよりいいでしょう?」
「まぁそうだけど、自分で捌いてるんだろ?」
「いや、面倒だからそんな事はしないわ、里で買ってきてるのよ」
「…里、行くんだ」
「な、なによぉ…?べ、別にいいじゃない里に行ったって…それに使い魔に行かせてる場合も多いし…淋しいって訳じゃ…」
ぶつぶつと呟く幽香。
「そ、それに不死鳥亭の焼き鳥(持ち帰り)って有名なのよ」
「不死鳥亭?」
「知らないの?不定期で屋台をやってる店でね、それの持ち帰り用が里で売られてるのよ、日に限定10箱程度で…」
「不死鳥亭もも肉セット…」
「…ってあら?」
「不死鳥亭とくせい不死鳥の火の粉…」
「何よ、知ってるんじゃないの」
「焼く時は必ず不死鳥の火の粉をお使い下さい」
「何で不死鳥亭ルールまで知ってるのよ!」
「……」
もきゅ…ごくん
「私が作ったんだ!!」
……
「…私、貴女にかなり世話になってんじゃないのよ!」
週に3回以上は食べてるらしい。
「よく考えたら、貴女に頭上がらないじゃない!」
「じゃあ、これだけは言っておく」
「何よ!」
「いつもありがとうございます!!」
「こちらこそー!」
勢いよく挨拶をする二人。
「ならついでに言わせて貰うわ!」
「何だよ」
「あの箱の表に描いてある、犬か猫かよく分からないあのイラストは何よ?イメージ悪いから止めなさいよ」
「あれは昔、慧音んトコの寺小屋に居た子に描いてもらったんだよ、だから変えられないんだ」
「じゃあその子に描き直してもらいなさいよ!」
「描き直して貰おうにも、その子死んじゃったから」
「っ……」
シュワシュワシュワ…
「あ、謝らないからね」
ジージージー…
「謝らないからね、私は…」
「謝ってもらっても帰ってこないさ」
ミンミンミン…
「…何か出来る事無いの?」
「は?」
「私に…私に何か出来る事は無いか?って聞いてるのよ!!」
「…今日これから墓参りに行こうと思ってたんだけど…一緒に来たら?」
「行ってやろうじゃないの、彼岸だろうが冥界だろうが着いてってあげるわ!」
「あ、でも花を忘れたなぁ」
「任せなさいよ!墓地を花博と見まがえる位満開にしてやるわ!!」
「そうか、じゃあ行くか…」
すくっと立ち上がる二人。
「あ、ヤバイ」
「何よ?」
「腹から米が…」
「ちゃんと塞がって無かったの!?」


(おしまい)
妹紅は、健康マニアの焼き鳥屋 だそうな。
のんべんだらりと。
(8/18)修正 途中からアメザリ、正解で~す。(不死鳥亭の下りから)
欠片の屑
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
>>「いつもありがとうございます!!」
>>「こちらこそー!」
しまった吹いたwwwww
2.名前が無い程度の能力削除
やばい、これはじわじわくる
3.名前が無い程度の能力削除
あ~、これはいい
妹紅じゃなかったら洒落にならんけど
4.苦有楽有削除
>「腹から米が…」

ご飯食べながら見てたら、吹いたw
5.名前が無い程度の能力削除
テンションたっけぇwwww
6.名前が無い程度の能力削除
久しぶりに腹の底から笑ったwww
7.名前が無い程度の能力削除
うむ、これはよい漫才だw
吹いた吹いた。
8.名前が無い程度の能力削除
蓬莱人って、その生き胆を食わない限りは捕食側も不老不死にはならんもんでしたっけか。
血ならなめても大丈夫なのかな?
ところどころグロがありつつほのぼのという新カテゴリーの話ですね。ほのグロwww
9.名前が無い程度の能力削除
これはおもしろいwww
10.名前が無い程度の能力削除
いい掌編だw
11.名前が無い程度の能力削除
なにこれいいテンションw
12.名前が無い程度の能力削除
後半からアメリカザリガニのネタじゃねぇかwwwwwwww
13.名前が無い程度の能力削除
そうか、週に三日以上人里に通ってるのか
14.名前が無い程度の能力削除
なんだろな? 
こうっ言いたいことは言い表せないんだけど、とても面白い話でした
15.時空や空間を翔る程度の能力削除
>「腹から米が…」
ここでおもきり吹いたwwwwwwww
16.名前が無い程度の能力削除
GJ。この組み合わせは珍しい。そしておおざっぱな妹紅がとてもいい。
17.名前が無い程度の能力削除
文字だからこそだよなwご馳走様でしたw
18.名前が無い程度の能力削除
独身OLみたいな食生活のゆうかりんと焼鳥屋さんの妹紅がテンション高くてほのぼの、なんて
どんなこと考えてたら思いつくんだ、こんな斬新な話。
楽しませていただきました。