Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

雲が夜空を覆う縁側にて。

2008/08/15 01:24:53
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 ――でね、お使いの帰り道に寄ったミスティアの屋台で、『風流ね』って咲夜さんに奢ってもらったのよ。





 あ、それ、その牌、ぽ、じゃなくてチー!
 この三本竹がいらなくて……へっへー、これであと二つ揃えばリーチでき――へ、何?
 ……ろん?って、またぁ!?

 といといさんあんこーどらどら?
 そんな役もあるのね。なんか呪文みたい。

 私、一回も勝ててないんだけどぉ……。
 うぅ、あんた、ずるっこしてるんじゃないでしょうね。

 わ、笑ったわね!今の笑いは『れーせんなんかにズルはしませんよー』って感じだった!
 見てなさいよぉ、次こそはどかーんっておっきな役で勝つんだから!

 うん、まぁ。
 おっきな役じゃないと点数差ひっくり返せないんだけど。

 『役満積もっても同点』?
 ぅぐ、いいもん、これだけ勝てないんだから、役満の一つや二つ、次で引き寄せてやるわ!





 やたい……あー、うん、赤提燈が揺れててさ、いい匂いがしたし、知り合いの声も聞こえたからふらふらーと。
 入る間際に風見幽香が出てきてさ、ちらっとこっち見て何か呟いてたからちょっと怖かったけど、
あっちは帰る所だったみたい。
 そんで暖簾をくぐったら、いきなり隅っこにいた咲夜さんが『風流ね』って呟いて、『今日は奢るわ』って。
 ……今思えば、幽香もそう言ってたのかも。
 
 うん、そうだね。私も、今のあんたみたいに『何が風流なんだろう』ってきょとんってした。
 それは、横にいた――あ、咲夜さんの、ね――文も同じだったみたいで、『何がです?』って尋ねてたわ。
 そしたら、咲夜さんは『咲くのは何?』だって。





 あ、いいな、それ。そうやって牌を一遍に積むの。私がやると、どうしても真ん中から折れちゃうのよね。
 握力の問題なのかなぁ、それとも器用さ?うーん。
 って、あ、ごめん。言ってる間に三列も積ませちゃったね。こっちも是で完成、と。
 ほらほら、早くサイコロ振って!





 え?――うぅん、咲くのは血じゃないみたい。咲かせそうだけど。――文がそう答えて、苦笑されてたし。
 でも、その謎々で、ミスティアはわかったみたい。
 『なるほど、確かに風流だねぇ。私からも一皿サービスするよ』って笑ってたもん。
 『無理やりかしら?』『最適な奴はもう帰っちゃったし、いいんじゃない?』『じゃ、代役だけどサービスは宜しく』。
 宜しくって言われても、私達はさっぱりわかんなかったけど。





 わ、わ、わ、凄い良い最初の牌!あがるまでふた……。
 なんでもないわ、うーん、どーしよーかなー、どれでも切れちゃうな―。
 ほら、笑ってないで早く切りなさいってば!ハリーハリー!
 あー!それ、そのみなみ、ホン!じゃなくて、ポン!

 うるさい焦ってない、だって、其処の竹に留ったのがホーホって鳴いてるから、つい……!

 ぅーともかく、是で後一つ……♪

 ……なんで、また笑うのよ。





 えっと、それで、咲夜さんとミスティアはクスクス笑ってたんだけど……。
 私達は置いてけぼりだったから、三人で顔を見合せて、首を捻ってたの。
 
 あ、そうだよ。三人。文の隣で、私の前にきた人だから、屋台の三人目のお客さんかな。うん。
 あんたも知ってる人よ。ほら、この前、此処にも来たじゃない。神社の――





 ――ぅわ、吹いてきたね、ひゅーひゅーってこの時期にしては少し涼し過ぎるかな。
 中に戻ろっか?私はともかく、あんたはそういうの気にするでしょう?
 上着とかはおってなくてワンピーっしゃぁぁぁぁ、きたっ、きたっ!あがり!ツモよ!
 しかもしかも、宣言通り、役満よ、役満!やったぁ!

 つーいーそー?なにそれ、違うよ。
 私が知ってる役満って、強そうなこくしむそうと簡単そうなすーあんこーだけだもん。
 ほらほら、見なさいよ、一丸三つに五丸三つ、一竹三つで南三つ。後二つは白。ね、すーあんこでしょっ。

 ふふん、笑えよ、てゐ。
 って、笑えとは言ったけど、なんでそんな半笑いなのよ……?

 ないてる?え、え、顔で笑って心で泣いて?あ、違う?

 あ、そっちの『鳴く』ね。うん、私、南を鳴いてるよ。それがどうかしたの?

 ……えーっと、ちょっと待って。落ち着いて復唱するから。
 …………『四暗刻は鳴いちゃ駄目。四暗刻は泣いちゃ駄目』。
 ………………ないてないわよ、泣いてないもん、うわーん。





 ぐす……いいわよ、ちょっとだけ勝てるかもって期待してただけだから。
 月の兎は期待と共に沈んでいくもん……ぐすぐす。

 ……?私の前に屋台に来た人?だから、守矢神社の巫女さんだって。東風谷早苗さん。
 あ、巫女じゃなくて、風祝だったっけ。それがどうかしたの?



 『わかった』……。



 え、ちょっと待ちなさいよ、なんであんたまで『風流だねぇ』って顔してるのよ。
 ちょっと、てゐ、せつめ――

 ――や、『勝負は引き分け』って訳わかんない!
 なんで今の話からいきなりまーじゃんの話になって、しかも引き分けになるのよっ。
 説明をしなさい、説明を!

 あーもぅ、牌の場所を入れ替えてないで、私の話を聞けってば!聞いて!聞いて下さい!

 ぅー、これでどうしたのよ。
 五丸三つ、一竹三つ、南三つ、一丸三つ……白二つを離してるけど、意味あるの?

 やくまん?これが?でも、鳴いてるよ?
 それにこんな形、暗くて見難いけど、役一覧表にも載ってないよ?
 

 
 ……あ、雲が散ってきた。



 私、間違ってないよね?
 ほーほら、ってうるさい、梟!
 あーもぉ、ひゅーひゅーって強すぎてひらひらとんでっちゃいそうだけど、
 明かりが出てきたから見やすくなって……やっぱり載って――え?だから、月明かり。





 

 


 ――ぺしぺしと簡易の役一覧表を叩きながら鈴仙は、何処にも載っていない、と躍起になっている。
 そりゃまぁ、そうだろう。私だって思い出すのに切っ掛けがいるほど、使われなくなって久しい役なのだから。
 それにしても、と私は苦笑する。
 引き分けだと言っているのだから、素直に喜べばいいものを。
 ほんとに、もう――「鈴仙は駄目だなぁ」。

「なんだとぉ!?」

 耳をぴんと立てて卓に手をつき、彼女はむーむーと吠えた。
 『負け犬』?いや、違う。
 『負け兎』?それも、違う。
 だって、鈴仙・優曇華院・イナバは、宣言通り、最後の最後で役満を二つ呼び込み――私に、勝ったのだから。

「うどんげってさぁ」
「あんたまでうどんげって言うな!最後の砦なんだから!」
「そうじゃなくて。いや、そうなのかな。――花の名前なんだよね」

 私の唐突な独白に、鈴仙は目をぱちくりとさせて、怪訝そうな視線を寄こしてきた。
 


 私は、自然と笑みを浮かべ、呟く。
 


 去った花の妖怪と、その代役に咲いた人間に。
 鴉天狗に。
 風祝の現人神に。
 そして、月の兎に。



 此方をきょとんと見てくる花に。
 ほーほと鳴き声を響かせる鳥に。
 強目に吹きつけ肌を撫でる風に。
 そして、暖かい灯りを放つ月に。





「あぁ、風流、だねぇ」








                        <了>
花鳥風月(かちょうふうげつ)は、
「花」・・・五筒
「鳥」・・・一索
「風」・・・門風牌もしくは荘風牌
「月」・・・一筒
の各牌をすべて刻子にして和了したときに成立する古役。役満。四種類の牌は暗刻でも明刻でもよく、槓子になっていてもかまわない。
残り二牌(雀頭)の制限もない。中国から伝わった役とされるが、現在では知名度も低く採用されることは少ない。

花鳥風月(かちょうふうげつ)とは、美しい自然の景色や、それを重んじる風流を意味する四字熟語である。

(共にウィキペディアより引用)


二度目まして。
短く短くをモットーに書いてみました。
既存の作品と被ってなければいいのですが……。

あと。鈴仙は最後までわかってません(ヒデェ。
道標
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
へ~、そんな役があったんだ。
マージャンやってて初めて知りました。
勉強になりました。
2.名前が無い程度の能力削除
「花鳥風月」という言葉そのものは知ってましたが、麻雀の役だったとは知りもせず…
早速明日友達と打って狙って見ますw