悪魔って言ったらやっぱアレだろ？　ゲーム脳的に考えて

※書いてる人間が古い為、ネタ元もアレですが、なんとかなると思いたい。








「真に申し訳ありませんがお嬢様は外出中です。事前に連絡頂くか日を改めてお越し下さい。――ところで御一緒にぶぶ漬けでもいかがすか？」


　ネタを求めて古い洋館を訪ねると、返ってきたのはやけに流暢な日本語でした。

「あやややや。でしたらまた明日この時間に出直しますよ」
「生憎ですがお嬢様は夏休みの長期御旅行に出かけていて、少なくとも１週間は戻られないそうです。――夏休みが許されるのは小学生（受験とか就活的な意味で）までですよ。まったく、良いご身分ですよねぇ？」
「……」

　いくら身内だからって――いや、身内だからこそ、そのずけずけとした物言いに流石の私も開いた口が塞がりません。緋色の髪に蝙蝠の翼が２対、淡い色のブラウスに手っ甲を巻き付けて、シックなスカートでビシッときめた事務職チックな出で立ちは、確か図書館の……。

「えーっと、司書の方がなんで門番やってるんです？」
「ウチの本の虫、もとい館長も一緒に出かけたので、虫干しでもと思い立ちましてね。ただ、こうして待っている間が手持ち無沙汰だったので門番の真似事をしてみたんですよ」

　言われてみると確かに。紅魔館の開口部という開口部が総て開け放たれ、妖精メイド達が風通しの良さそうな木陰に机や椅子や本棚なんかを並べています。

「あれ？　そういえば美鈴さんはどちらに？」
「門番長は今朝方怒鳴り込んできた紅白巫女と神社へ出かけていきましたよ」

　うーむ、なんたる不用心。黒白に知られたら大変なことになるんじゃないでしょうか？
　それにしても永遠亭に引き続いて紅魔館でも空振りとはなんたる不運。とはいえ、ここで黙って帰ったら今度の新聞が出せなくなってしまいます。ここはひとつ、司書さんにネタを提供して貰うしかありませんね。

「ところで、えーっと――」
「小悪魔で構いませんよ」
「それじゃ小悪魔さん。現在文々。新聞では幻想郷の東西交流を探るといった特集を組んでまして、今回は代表的な西洋スポットである紅魔館を記事にしたいんです。よろしければ取材させていただけませんか？」
「物理的にも立ち入った取材はお断りですが、私が話せる範囲でよろしければお受けしますよ。暇ですし」
「や、ありがとうございます」

　そう言えば以前にこちらを伺ったときも小悪魔さんはノーマークでしたねぇ。あの時できなかった分も含めて、根掘り葉掘り聞かせていただくとしましょうか……。












『幻想郷の東西交流②　～紅魔の図書館に悪魔を見た！～』

　皆様ごきげんよう。幻想郷の東西交流を訪ねて、第２回目は【悪魔が棲まう】でお馴染みの紅魔館に突撃取材を敢行した。幻想郷で最も西洋的な雰囲気に溢れる屋敷には、果たしてなにが待ち受けているのだろうか？

　ご存知の通り、紅魔館は紅い悪魔こと吸血鬼レミリア・スカーレット嬢（50?歳）を筆頭に、同じくフランドール・スカーレット嬢（49?歳）、魔女のパチュリー・ノーレッジ氏（11?歳）、メイド長の十六夜咲夜氏（1?歳）、門番隊長の紅美鈴氏（4???歳）、その他妖精メイド多数（?～???歳）など、多少のイレギュラーはあるものの、そうそうたる西洋妖怪達が住んでいる。
　また、建物自体も広大な庭園と煉瓦造りの堅牢な本館に時計塔や地下室を備えた本格的な西洋様式で、窓が極端に少ないなどの威容も相成って、見学に訪れる業者やマニアが少なくないと言われる。

　先ほども触れたが紅魔館には広大な地下空間が広がっており、一部は本来の意味でダンジョンとして使われているが、残りの大半は巨大な『図書館』として整備されている。余り馴染みのない言葉だが、図書館は文字通り多くの図書を収め、それらを閲覧できる施設のことで、その起源や発展もやはり西洋である。
　この図書館には古今東西のあらゆる幻想書物（そうでないものも含む）が集まり、管理者は「無いものは無い」とどちらとも取れる微妙な表現で豪語する。但し、在ってはならない本（いわゆる焚書された禁書の類や乱丁落丁で流通から弾かれた欠陥本等）まで揃ってしまうため、その運営には細心の注意を必要とする。

　さて、そんな広大無辺な図書館で司書を務めているのが通称小悪魔氏（???歳）である。紅魔メンバーの中ではいまいちマイナー感を拭えない彼女であるが、血を吸ったり妖しい術を使う妖怪や女中や中華なパイパイは我が国でも見受けられるが、人間が自ら進んで堕落するように誑かす存在は他に例を見出すことが出来ない。

　つまり、一見目立たない彼女こそが、西洋スポットとして名高い紅魔館を支える屋台骨だったのです。

　今回、未だ謎多き小悪魔氏に当社特派員がインタビューを試みたところ、驚くべき秘密の一端を独自のユーモア（？）たっぷりに語ってくれた。以下にその一部を掲載する。


文：「それではよろしくお願いします」
小：「はい、こちらこそ」
文：「まずはお名前についてですが、小悪魔は通称または愛称であって本名は別にあるんですよね？」
小：「もちろんです。ですが名が体を表すと言いますので、一定の契約者以外に真の名を明かすことはしません。尤も、ここは名前や本人よりもハンコ１本の信頼が高い国ですから、私の名前なんかいちいち気にする方なんていやしないでしょうけどね」
文：「では次に小悪魔さんはたった独りでこの規模の図書館を管理していると伺いましたが、何か秘訣でも？」
小：「独りでというのは語弊がありますね。常勤としてはその通りですが、当番の妖精メイドさんも居ますから」
文：「なるほど。しかし、妖精メイドでは司書として役に立たないのでは？」
小：「ええ、司書としては落第ですね。でも、危険地区の踏査とか対黒白戦の露払いとして大活躍してくれます。なんとかとハサミは使いようってやつですか」
文：「ええっと、それでは図書館業務そのものは小悪魔さんお独りで行ってるんですね」
小：「当然秘訣はありますよ。足りないなら増やせばいいんです。私も緋色の小（Lesser）悪魔ですから、こうやって喚び出せるんです。こぁ～♪」「コぁ～♪」「こァ～♪」
文：「おおぅッ！？　小悪魔さんが２人、……いや３人に！！」
小：「悪魔って異次元の存在ですからね、この世界の身体は仮の入れ物にすぎないんです。入れ物は余力さえあれば幾らでも用意できるので、手数の不足はこうやって補えます。私みたいなマイナーはともかく、メジャーさんになると一度に複数のサモナーさんに喚ばれたりするんで、これは必須の技能らしいですよ。まぁ、喚ばれて行った先で自分同士の殴り合いに荷担する、な～んて笑えない話しもありますけどね」
文：「つまり、複数居ても根っこの部分で同じ小悪魔さんってことですか？」
小：「ややこしいけどそう言うことですね」

　また、この分身を応用し、業務の内容ごとに適した身体を用意することもできるという。


小：「例えば透明で中身の見える業務運営を執り行うときは『クリスタルこぁ』。透明ってもシースルーって訳じゃありませんのであしからず。その代わり利用者にリラックスしていただけるよう、心を込めて歌を唄わせていただきますよ。『大都会』とか『愛をとりもどせ！！』とか」
文：「何気に大迷惑ですね」
小：「オリジナルブックカバーの制作から装着、本の整頓や修繕なんかする場合は『カバードこぁ』ですかね。手前味噌になりますが、その技術は館長も舌を巻くほどですよ。まぁ、春画大全に医学書のカバー被せたり、読みかけの栞を別ページに移したり、犯人の名前をメモって推理小説の冒頭に加えたりとかはデフォですけど」
文：「ずいぶんと古典的ですね」
小：「あと体力の要る仕事、例えば書架の入替とか弾幕には『ビッグこぁ』。メイド長が嫉妬するくらいに色々と大きいんですよ。こちらはMkⅡやMkⅢがありまして、利用者さん相手に書架の陰で体をひらいｔ――」
文：「そこまでですっ！！」

　危うく有害図書指定コースへと道を踏み外しかけたため、インタビューはここまでとした。

　この様に紅魔館は図書館１つを取り上げてもなかなかに奥深く、実にエキゾチックな雰囲気を味わえる。１年に何度かはレミリア嬢主催の舞踏会（鹿鳴館ごっこ）や、見学ツアー（残念ながら地下施設はコースに含まれない）などが行われているので、機会があったら参加してみるのも一興だろう。
　ところで全く関係ないが河豚の卵巣をぬか漬けにしておくと、毒気が抜けて食べられるようになるといわれる。せっかく広大な地下空間があるのだから、紅魔館でもぬか漬けを始めてみては如何だろうか？


次回、「幻想郷の東西交流③」は森に佇む人形の家。『アリス・マーガトロイド邸』をお送りいたします。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～文々。新聞より抜粋～

フグの子ぶぶ漬けは大変美味しゅうございました。