「おーいパチュリー。いるかー?」
「居るかも何も、此処は私の図書館よ。居るのは当たり前でしょ。」
「連れないぜ。それに本じゃなく私を見て言ってくれないのがなお悲しいな」
「ふぅ…。で、何のようかしら魔理沙。本ならまず今までのを返してから借りなさい」
パタンとパチュリーが本を閉じ、やっとこっちを向いてくれた。
「いや、本じゃないんだ」
「じゃあ、何?」
「遊ぼうぜ」
「は……?」
パチュリーは豆鉄砲を食らった鳩のような、ポカンとした顔をした。
まあ確かに私がパチュリーを遊びに誘うことなんてあまり無いし、無理もないか。せいぜい一緒に読書かお茶会くらいなもんだからな。
「遊ぶって…何で?」
「そうだな。弾幕ごっこ。っと言いたいところだが、今日はいい物持ってきたんだよ」
え~っと、何処にしまったっけな。お、あったあった。
「ほれ、コイツだ」
「…定規とペン?」
机の上に、同じ長さの二本の定規と二本のペンを置く
「お、知ってたか」
「そりゃあ、これ位誰でも知ってるわよ。ただこれで何をするのかが分からないの」
「ああ、なるほど」
そうか、パチュリーは知らないのか。ならば、コイツの楽しさを骨の髄まで教えてやるしかないな。
「コイツを使ってやる遊び。その名も『定戦』だぜ」
「じょうせん…?」
「机と定規、後ペンがあればいつでも何処でも遊べるゲームだ。まあ、とりあえずペンを一本持ってくれ」
そして定規を横で向かい合わせてっ…と。
「簡単に言えばペンで弾いて、相手の定規を落とせば勝ちってゲームなんだ」
「弾くって…、こうやって?」
そう言ってパチュリーはペンを振って定規を叩く。叩かれた定規は私が使うはずの定規を見事場外まで吹っ飛ばした。
「だあ、違う違う。こうやってやるんだよ」
落ちた定規を拾い、さっきと同じ位置からやり直す。そして、ペンを定規の角に押し付けるようにして…
「よっ」
べチン
私が弾いた定規がパチュリーの定規にあたる。流石に一発じゃあ落とせなかったか。
「まあ、こんな感じだ。さっきみたいにやると直ぐ勝負が決まるからな。こうやってくれ」
「成る程。こうかしら」
えいっと、定規を弾くパチュリー。
スス…
「あ、あれ?」
ああ、やっぱり最初は難しいよな。
「パチュリー。力入れすぎだぜ、もっと弱くだ」
「う、うん…、とぉっ」
ススー
「お、やるじゃないか」
二回目でかなり進んだショットを打てるとは。
「練習が必要ね、これは」
確かにこれは定規の性能云々あるが、一番は使い手で決まるゲームだしな。
「さて、後はちょっとしたルール説明だな」
「ルール?相手を落とすと勝ち、だけじゃないの?」
「いや、他にもあるんだよ。例えばこうなった場合とかさ」
パチュリーの定規の上に私の定規を重ねる。
「こうなったら三回連続で打ち、脱出出来なければ負けなんだ。あと、相手の定規に触れるのも無しだ」
「なるほど」
「んで、お次はこれだ」
今度は机から定規半分ほど出た状態にする。
「それで?」
「この机からはみ出た所は、下からペンで弾いて打って良いんだよ」
試しに打ってみせる。パシンと上に打ち上げるように弾き、一回転して私の定規は真ん中あたりに着地した。
「へえ。ねえ魔理沙、上に乗られた状態で下から弾く事が出来る場合は、やってもいいの?」
「お、なかなか鋭いな。もちろんOKだ。」
思案顔のパチュリー。もしかしたらパチュリーは手強い敵になるかもしれない。ワクワクしてきたぜ。
「んじゃ、早速やってみようぜ。」
「あ、うん」
お互いに机の向かい側に付く。
「よし、私からいくぜ。定戦はパワーだ!」
パチン
スルっ
「な、何がパワーよ!いきなり乗せてくるなんて…」
「ふっ、そんなんで喚く様なら花曇の魔女と呼ばれたパチュリーの名が泣くぜ?」
「っ…、見てなさいよ…。」
ぺチン
一回目でいきなり半分程脱出するパチュリー。やはり上手い、これが霊夢あたりならムキになって全然進まずに終わる。ってとこだろうな。
ぺチン
パチュリーは、わずか二回で脱出してみせた。
「すごいな、まさかこんな簡単に抜けるとは」
「ふふ、定戦はパワーじゃなくて、ブレインなのよ」
「むむ」
「先のだって上に乗った定規の重さを考えれば、簡単だったわ。少し外に出して、端にのみ重さを残して円を描くように打つ。そうすれば遠心力がくわわり…」
「だー!わかったわかった。それよりパチュリーの番なんだから早く打ってくれ」
ここらで話のきりを付けないと喋りすぎて切が無いぜ。パチュリー、不服そうな顔で見ないでくれ。
「って、私からなの?」
「ああ、私が連続で打って、また乗っかったら永久的に続いちゃうしな」
「ん、わかった。えいっ」
カツーン
「うお!」
いきなり端っこまで飛ばされてしまった。むむむ…マズイぜ。初心者に負けたら霧雨魔理沙、一生の恥だ。
「一気に巻き返す!」
スス…
「し、しまった!」
力み過ぎて全然進まなかった!
それを見たパチュリーは、どこぞの詐欺ウサギ顔負けの嫌な笑顔をする。
「勝負あったわね。覚悟しなさい魔理沙」
「っく…」
こうなったら…。
「いくわよ。さようなら魔理沙!」
「させるか!見ろ、パチュリー!」
パチュリーが打とうとした瞬間に声をかけ、注意を引かせる。そしてトビっきりの変な顔を見せる。
これぞ奥義、『大事な場面で笑わせる』作戦。
「ぷっ、あはははははははは!」
これでショットもミスったはず!
スススー
カシャン
「よし!」
笑ったせいで強く打ちすぎたパチュリーの定規は、私の定規と一緒に床に落ちてしまった。
「く…、あははは…、げほげほ…。ひ、卑怯よ魔理沙!」
「何言ってるんだ?これも作戦のうちの一つだぜ」
「むぅ…、ならばもう一度勝負よ。今度こそぼろ負けにしてあげるわ」
「ほぅ、こっちこそ熟練者の技を見せてやるぜ」
こうして、その日一日はパチュリーと定戦をして終わってしまった。
それ以来紅魔館で定線が流行り、熱い戦いが毎日繰り広げられたそうだぜ。
「くくく、私の定規を倒せるかしら?咲夜」
「お嬢様、1メートル定規は反則です」
もう幻想郷入りしちゃったのかなあ、これ。面白いんですけどねぇ……。
スペルカードルールの次は定戦ルールですね、わかります
おぜうさま何しとんですかwwwww
小学生の頃よくやりました。でもそんな細かいルールあったなんて知らなかった……
それはやりすぎですお嬢様wwwwwww
あー、自分とこのルールとまったく同じですね。
給食のおかずを賭けてたナァ。
俺の使ってた定規、四隅が斜めになっててペンで飛ばすとジャンプしたんだよな
力加減を誤ると場外になるがうまくやれば相手の上に簡単に乗せられるという素晴らしき定規だった
いやぁなつかしいなつかしい
今の小学生は昼休みにはないちもんめとかかごめかごめとかやらんのかしら