Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

隙間からの誘惑

2008/08/05 08:43:31
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 外の世界からも幻想郷からも少し離れた所であるマヨヒガ

 そのマヨヒガに住んでいる

 妖怪賢者とされる隙間妖怪…八雲紫

 普段は眠っている事が多い

 何をするか分からない妖怪でもある

「藍、ちょっと遊びに行って来るわね~晩御飯までには戻るから」

「周りの人に迷惑をかけないでくださいよ?」

「紫様、いってらっしゃい!」

 何時ものように、どこかに遊びに行くと隙間の中に入っていく

 藍も橙も何時ものように相手をしていた



 だが、その日から八雲紫の姿は姿を消した

 その日の晩御飯を作った紫の式である八雲藍は少し怒ったが

 日頃の行いが悪かったために気にされなかった
 
 そして一週間後…




「……ふむ…」
 魔法の森のあるお店である香霖堂、その店主である森近霖之助は
 誰も来ないお店の中で一人、外の世界から来た本を香霖は読んでいた

「…怪談話か…」
 外の世界では恐ろしい話なのだが
 何しろ幻想郷の中では、話にでてくる妖怪や鬼等は極々普通に闊歩している
(…まあ、暇つぶしにはなるかな?)
 香霖が本のページを見開く

「…なになに?…暗闇から聞こえる泣き声の話か…」

 話の内容は極々普通の怪談話であった

 人の入る事ない開かずの間に面白半分で入る事になった二人の男達
 中に入ってから何処からか、何者かのすすり泣く声が聞こえてきて
 一人は怖いから戻り、もう一人は気にせずにさらに奥に進んだ
 
 奥に向かった男は次の日、片手だけの姿で見つかった…

「……ふむ…」
 そこまで読み終えると香霖は本を閉じた
「…霊夢と魔理沙が同時に来た時の方が怖いな」
 せっかくの怪談も、この男にとって意味は無かった
 読み終えた本を本棚に戻すとお店の奥に向かって動き始める
「さて、そろそろ倉庫の片づけを始めるとするか…」
 久しぶりにお店の奥にある倉庫を片付ける為に…
  

 
 お店の奥にある倉庫…香霖自身も滅多にやってこない部屋である
 
「やれやれ…久しぶりに来て見たが…」
 香霖が久しぶりに倉庫を覗いてため息をついた
「…こんなに広かったかな?」
 前に見た時よりも倉庫が広く感じた…
 多少のため息をついてから片付ける為に足を踏み入れた

 どれだけかに一度倉庫を片付けておかないと
 何処に何をおいたか分からなくなることがある
 そういう事を避けるために、香霖はたまにこうやって
 倉庫を片付けに来るのだ
「まずは入り口からだな…」
 香霖がそう呟いて、倉庫の入り口付近にある商品を手にした時…
     
「……ぅぅ……ぅぅぅ…」
「!?」

 倉庫の奥から誰かがすすり泣く声が聞こえて来た
(ば、馬鹿な…ここは入り口が一つしかない倉庫だぞ?)
 誰かがこっそりと入れるような所ではない
 驚いている香霖の頭の中に先ほど呼んだ本の内容が思い出された

 誰も入る事ができない場所…そこに入った者に
 何者かのすすり泣く声が聞こえてくる…
 まさに、今のような状況であった
 
「……」
 聞き間違いだろうと香霖が、改めて耳をすませると
「ぅぅ…誰か…ひっぐ…助けてぇ……」
 今度はさらにはっきりとした声が聞こえて来た

 そこまで聞いてから香霖が出した結論は…
「…とりあえず、正体を暴くとするか」
 声の主を探す事であった
 無論、襲われた時の事も考えて
 博麗神社御用達のお札(ツケの代わり)を懐に忍ばせて

 倉庫の奥に向かう為に明かりを手にして
 香霖は、泣き声が聞こえてくる倉庫の奥を目指して歩きだした
「………誰か……ひっぐ…」
「……」
 奥に進むにつれて、声がはっきりと聞こえて来た
「……誰か…ひっぐ…一人は嫌……」
「……」
 そして、香霖が声が聞こえる所にたどり着くと
 香霖が思わず体を後ろに引いた

「!?」
 棚の上に、女性の上半身だけの姿が…
「…藍~…橙~……」
 だが、その言葉を聞いて香霖の緊張が一気にほぐれた
「ふう…」
 香霖はその女性の正体に気がついてため息をついた

「だ、誰!誰かいるの!?」
 上半身だけの紫が、香霖の声に紫が反応する
「…それはこちらの台詞だ…」
 香霖が紫に見える位置に姿を現した
 そして、勝手に倉庫の中に入った事を怒ろうとしたら

「ひっぐ…うわぁーん!」
 香霖の目の前で紫が泣き出した
 突然の事に香霖も慌てる
 八雲紫という妖怪は、胡散臭く油断のならない人物である
 それは香霖自身とても良く知っている

「よかった…えぐっ…見つけてもらえた…」
「…ええと…な、なにがあったんだい?」
 だから余計に今の紫の対応に困った
 何時ものように返事を返してくれれば
 無視をして放っておく事もできるが
「えっぐ…ひぐっ…ぐすっ…」  
(こ、困ったな…) 
 目の前でいきなり泣き出されるのは
 迷惑事に慣れている香霖にとっても想定外であった 


 このままでは埒があかないと判断した香霖は
「よしよし…(ポフン)」
「…スン…スン…」
 泣き止まない紫を落ち着かせる為にその頭を撫でた
 しばらく頭を撫でていると、ようやく紫も
 話ができる程に落ち着きを取り戻した
「…何があったんだい?」
 そろそろ話をしても大丈夫だと判断した香霖が話しかけると
 幼児退行起している紫が首を縦に振り、少しずつ話し始める
「…暇だったから…幻想郷を隙間めぐりしていて…」
 紫がなぜこうなったのかを香霖に話していく
 

「この倉庫の中に…外の世界の物が見えたから…」
「中に入った…というわけか?」
 香霖の言葉に紫が頷くと、話を続けた
「一通り見て暇が潰せたから…隙間に入ろうとしたのよ…」
「…ならなんで…」
 香霖が紫にそう疑問を投げかけると
 紫は、泣きそうな顔で答えた

「隙間に体半分入れた瞬間に何かに足を挟まれたのよ」
 隙間に入ろうとした瞬間、倉庫の何かを踏みつけてそれに足を取られたのだ
「いや、でも君ならそれぐらい破壊するなり何なりできるはずだろう?」
 魔理沙や霊夢等の人間ならいざ知らず
 妖怪ならば、足枷ぐらい簡単に壊せるはず
 それが、大妖怪である八雲紫ならなおさらの事
「ぐすん…できないよ…」
 なぜその大妖怪がこんな所で半ベソかいているのか
 
「…隙間が…うまく開かないの…」
「はい?」
 目に涙を浮かべて紫が話を続ける
「足枷に…どうやら妖怪を封印する力があるみたいなのよ」
 その言葉を聞いて、香霖も納得した
 つまり、隙間に入る瞬間に妖怪を封印する物に引っかかってしまい
 そのせいで、半端な隙間に体を完全に固められてしまったのだ
 
「…くすん…この倉庫暗いし、光は入ってこないし…
 この体勢辛いし…それに、誰もやってこないし…」
「…それはそれは…」
 勝手に倉庫の中に入られたとはいえ
 流石に香霖も紫に同情を隠せなかった
 いかに長い時を過ごしている大妖怪とはいえ
 こんな暗い部屋の中で一人で居る事になったら心細くもなるだろう 
 特に、最近の幻想郷は騒動には事欠かない
 騒がしい事が多い時ほど
 一人になった時の孤独は計り知れない
(…孤独か…)
 香霖が昔の自分を思い浮かべて苦笑した
 
「変な体勢だから熟睡できないし…ひっぐ…お腹も減ったし…」
「はいはい…泣かない泣かない…」
 紫が再び泣きそうになるのを、香霖がなだめる  
「…罠にかかったのはこの倉庫の中なんだね?」
「…うん…そうだけど…」
「そうか…」
 香霖の言葉に紫が答えると、香霖が立ち上がった
「どうしたの?」
 紫が心配そうに香霖に話しかけると
 香霖がやれやれといった顔で答えた

「丁度これから、この倉庫の中を片付けようとしていた所だ
 もし、偶然罠を見つけたら君を助ける事にしよう」
 香霖の言葉に、紫の顔が輝く
「だけど、報酬ももらうよ?」
「…ふぅ…背に腹は変えられないわ…何がいいかしら?」
 紫が仕方が無いわね、と言った感じでため息を着くと
 香霖が目を瞑って考えこみ、目を見開くと笑いながら伝えた
「そうだな…この倉庫の片づけを君に手伝ってもらおうか」
「えっ?」
 意外な回答に紫が香霖の方を向いたが
 すでに香霖は紫が見える範囲の外に移動していた
(…面白い答えだったわね…)
 先ほどまで泣いていた紫は笑っていた


 しばらくしてから香霖が再び紫の前に現れた 
「お待たせ」
「倉庫の掃除をしていたんじゃなかったの?」
 紫がそう言うと、香霖が何かを紫に手渡した 
「ありあわせの物ですまないが…」
 紫は香霖に手渡された物を見て呟いた
「焼きおにぎり…」
(ぐぅ~~~)
 紫がそう呟くと同時に、長い間
 食料を食べていない紫の体が反応を起した
「あっ…(真っ赤)」 
 人前でお腹が鳴った事で、思わず紫の顔が赤く染まる
「…大丈夫みたいだな」
 そんな紫の心情など、香霖には関係ないみたいで
 紫の手の近くに焼きおにぎりが乗ったお皿を置くと
「僕はこの辺を片付けて居るから、何かあったら言うと良い」
 そう言って、紫の傍からまた居なくなった

「……迂闊だったわ…」
 まだ顔が少し赤い状態で紫は焼きおにぎりを口に運んだ
「…(モギュモギュ)…おいひい…」
 お腹が減っている上に、香ばしい醤油の匂いもあいまって
 お皿の上に置いてあったおにぎりを存分に堪能した

「大妖怪の口にあったかな?」
 食事を終えて、一息ついた紫の前に香霖が荷物を運びながらやってきた
「ええ、このお店辞めるつもりならマヨヒガで雇わせてもらうわ」
 香霖の言葉に紫が何時ものような返事を返してきて
 香霖が苦笑を交えて答える
「それは残念だったな、このお店をやめる予定は無い」
「あら残念…」
 香霖の返事に、心底残念そうに答える紫
 そして、香霖が荷物を整理する為に再び紫の視界から消えようとする
「ね、ねえ?」
 その瞬間に思わず紫が香霖を呼び止めた
「ん?どうしたんだい」
 呼び止められた香霖が、何事かと紫の方に振り返る
「…なにか私にも手伝える事はないかしら?」
 突然の話に香霖も少し驚く
「どうしてまた…」
 香霖の言葉に紫が少し言い辛そうにする
「…暇なのよ…」
「なるほど…」
 理由がわかったので香霖も少し考えると紫に告げた
「…その状態で何ができる?」
「…なにもできないわね…」
 少しだけシュンとなる紫に対して、香霖が苦笑と共に仕事を告げた
「そうだな、僕の話し相手になってくれ…無言で片付けは気が滅入る」
 香霖のその言葉に紫は嬉しそうに頷いた

  


 
 こうして、香霖と紫はその日一日談笑を交えて倉庫の中にいる事になった

 床を箒で掃いている時も…
「…そうだな…いっそのこと霊夢や魔理沙にも手伝ってもらうか?」
「だ、駄目よ!」
「なんでだい?」
「……笑いものにされるじゃない」
「…なるほど」


 荷物を運んでいる時も…
「あら?外の世界の道具ね」
「ああ、使い方は知らないがね」
「簡単よ?手元にあるスイッチを押せば…って壊れているわね」
「そうか、だから動かないのか…」 
 

 晩御飯を食べている時も
「そういえば、君は料理を作れるのかい?」
「愚問ね、藍に料理を教えたのは私よ…ってなに?その意外そうな顔は」
「…いや、本当かどうか信用できなくて」
「あらあら酷いわね…いいわ、今度作れるって証明しに来てあげる」
「ふむ、大妖怪自らの料理か…希少価値がありそうだな」


 香霖は紫と話を続けながら倉庫の中を片付けた
 だが、その日一日片付けても
 紫の足を挟んだ罠は見つからなかった
「…これ以上は明日になるな…」
「仕方ないわね…」
 これ以上探しても、効率が悪くなるだけと二人が判断する
「それじゃあ、また明日だな」
「…ええ、お休みなさい」
 香霖が倉庫から出て行き、倉庫の中に再び静寂が訪れた

(…静かね…)
 どれだけ倉庫の中に居るのかわからないが
 随分寂しく感じられる
 先ほどまで、あんなに楽しかったのに…
「…私も情けない妖怪ね…」
 思わず口から自嘲が漏れ出す、最強とされる隙間妖怪が
 数日間誰とも会わないで居るだけでこのざまだ 
「…やっぱり…一人は嫌ね…」
 紫がそうため息を着く…
「そうだな、一人は辛いな」
「!?」   
 誰もいないものと思っていたら、いきなり背後から誰かが現れた
「やあ、少し失礼するよ」
「な、なんで?」
 先ほど倉庫から出て行った人物が、再び自分の前に現れた
「どうせ明日もこの倉庫の片付けをするのなら
 この場で眠った方が良いと判断しただけさ」
 思いっきり嘘と分かる台詞を伝えてから 
 香霖は紫の目の前で毛布に包まった
「それではお休み」 
 香霖はそう言うと目を瞑る
「…ええ、お休み」 
 紫がそう答えてしばらくすると、香霖の寝息が聞こえ始めた
「…半人半妖は大嘘つきね…こんな所で寝るより
 きちんとした布団の上の方が良いに決まってるじゃない…」
 紫は香霖の寝顔を優しく見つめると
 香霖の手をそっと握り
「…お休みなさい…霖之助さん」
 眠りに着く事にした
(今日は…久しぶりに…安心して眠れそう…ね…)





「…手が…」
 次の日の朝、香霖が起きると片方の腕が動かなかった
 どうしたのかと思って、動かない腕を見て見ると
「……ZZZ」
 片腕が紫に抱きかかえられていた 
「!?」
 驚いて一気に目が覚める
 声をあげなかったのはせめてもの救いだった
(いかんいかん…急いでこの手を抜かないと)
 香霖が頭を振りながら、抱きかかえられた腕を引き抜くために頑張った

 引き抜く最中に『隙間』とか『柔らかさ』とか言う敵から必死に抵抗して
 何とか香霖は腕を引き抜く事に成功した
「…朝から一仕事だったな…」
 少し疲れた香霖だったが倉庫の片づけを開始した



 倉庫の片づけをしている最中に、香霖にふと考えがよぎった
「…彼女クラスの大妖怪の力を封印するほどの代物…
 その辺に落ちているはずがないよな…」
 幻想郷で最強とされている大妖怪…
 その辺にある封印の道具など、効き目はほとんど無い
 それを力を封印する事ができる程の物を作る事ができる者と言えば…
「そうか!」
 香霖が一つの考えに至る
 その人物が作った物が置いてある場所の周辺を探索する事にした 




 八雲紫が目を覚ました
 隣に、嘘つきな半人半妖の人物が居ると思っていたら
 すでにその姿は無く、周りからどたばたと言う音が聞こえていた
「…仕事熱心ね…」
 少し寂しく思ったが、数日前とは違う寂しさだった
(…今日は、どんな話をしようかしら?)
 口元を少し緩ませながら紫がそう思っていたら

「見つけたぞ!」
「えっ?」
 近くから香霖の声が響いてきた
 紫が思わず声がする方を向くと
「これだな…」
 何とか紫の居る所から見える範囲に
 トラバサミに捕らえられている何者かの足の姿が見えた
 その足に香霖が触れると、紫の足に感覚が来た
「間違いないわね…外せそう?」
 やっとこの場から抜け出せると思った紫が
 嬉しそうに香霖に話かける
「…ちょっと待ってくれ…」
 香霖がそのトラバサミを確認すると
 なにか、お札が貼ってあった

「ああ、やっぱり…」
「どうしたの?」
 香霖のため息に紫が問いかける
 すると、香霖がお札を指差して
「……君の力を封じていたのは、妖怪退治の達人のお札だ」
「私の力を封じれるぐらいの?」
 その言葉を聞いた香霖が首を縦に振ると

「霊夢が御茶代として置いて行った、
 一番効果があるらしい博麗神社の退魔の護符だ」
 その言葉に紫が頭を押さえる
 そんな霊験あらたかな代物を、御茶代として置いて行く霊夢と
 キッチリと効果があると言う事を身をもって体験した事に

「ちょっと待っていてくれ…今外すから」
 香霖がお札を引き剥がそうとする
 比較的簡単な力でその護符が剥がされる
「これでどうだい?」
「ふふっ…これで…あら?」
 紫が笑みを浮かべて力を入れようとする
 だが、力がはいらない…
「どうした?」
 香霖が心配そうにすると
 紫が困った顔で答えた
「…力が戻る間で少し時間がかかるみたい」 

 幸い、数時間程度で力は戻るみたいだったが
「…せっかくこの体勢から抜け出せると思っていたのに…」
 紫が少し残念そうにそう呟いた
 香霖はその言葉を聞いてから、少し考えると
「ちょっと待っててくれ、今トラバサミを外すから」
 そう伝えて、足元のトラバサミを外し始めた
「でも、あと数時間で…」
「トラバサミが抜けたら…引っ張り出す事ができるだろう?」
 香霖の言葉で、紫が手を叩いた
 今なら、少しだけ隙間を広げる事もできる
 数時間この体勢で居るよりも早く抜け出せた方がはるかに良い 
「…ここのネジを…よし、これで外れた」
 香霖がトラバサミを解体すると
 紫が力を籠めて足元から隙間を抜けようとする

「えい…えい…あら?」
「…抜けないか?」
 それでも、紫の身体は隙間から抜けなかった
 抜けない原因は…
「胸が突っかかって抜けないわね…」
 霊夢や魔理沙が聞いたら、全力で怒りそうな理由だった

「頭からならどうだい?」
「やってみるわ」
 足元からが駄目なら、今度は頭から
 今度は胸が引っかからないから大丈夫だと思っていたら
「ん~!ん~~!」
 それでもなかなか抜けない
 もう少しで抜けそうな感じなのだが
 少し力が足りない、そこで紫は香霖に助けを頼んだ
「ちょっと引っ張ってくれない?」
「やれやれ…」
 仕方ないなと、香霖が紫の両手を掴むと
「「せ~の!」」
 二人は同時に力を入れた

(スポン!)
 こうして、何とか紫は隙間から逃れる事に成功した…
(がらがらがっしゃ~ん!)
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
 ただし二人は反動で後ろの棚にぶつかり
 上から荷物が落ちてきたが…



「…ふぅ…どうやら無事みたいね」
 紫が自分の無事を確認すると、今の状況を確認する
「え~と…無事に隙間から抜け出せて…上から荷物が降ってきて…」
 そこまで確認してから、今の自分の状況を改めて確認した
「…霖之助さんに抱きかかえられて…!?」
 倒れた際に、偶然自分を抱きかかえた形になったのだろう
 気絶しているようだが、命に別状はないと判断した紫は
(…い、今は力が出せないから…)
 もう少しだけこの体勢を維持する事にした
 



「……むっ?」
 香霖が目を覚ますと、そこは倉庫ではなく
 自分の部屋のベッドの上だった
「…え~と…」
 必死に何があったのかを思いだして
 最後に紫を引っ張り出した事をを思い出す
 そして、棚の上から荷物が落ちてきた事も
「…はあ…また片づけをしないといけないな…」
 少しだけ暗い雰囲気になるが、ため息ばかりも着いていられない
 香霖は重い足取りで倉庫の方へ向かって歩き出した


「ふむ…そこまで荒れてはいないみたいだな」
 幸い、ぶつかった棚以外はそんなに被害はないようだった
(…もう少しだし、今から片付けるか)
 香霖は、再び倉庫の中を片付け始めた


 一人で黙々と倉庫の片づけを始める
「……」
 無言のまま、何も言わず一人で
「……」
 何時もと同じような倉庫の片付け
「……一人はつまらないな」
 思わず口に出た、ほんの二日間程度の邂逅だったが
 紫が居た二日間は、なんだかんだで楽しいものだった
 だからだろう、一人で倉庫の掃除をするのは何か物足りない気がするのは 
(…ふぅ、僕も彼女の事を言えないな…)
 
 香霖がダンボールに腰を落として休憩した時だった
「こんにちは」
 誰かが香霖の背後から抱きついてきた
「…こんな倉庫に来たら、また力を封印されるよ?」
「その時はまた泣いて、頭を撫でてもらう事にするわ」
「…残念だけど、頭を撫でるのは気分次第なんだ」
 香霖は先ほど片付けをしているときとは違って、笑みを浮かべる
「なんでここに?もう自由なのに」
「愚問ね、霖之助さんが一人で寂しい思いをしないように来て上げたのよ」
「そうか…まるで君みたいだな」
「ええ、今の貴方みたい…」

 香霖と紫は笑いながら、倉庫の掃除を二人でする事になった
 この日以来、香霖堂の倉庫の掃除に隙間妖怪が
 手伝いに来るようになったという 
 
 


 終劇
 
 ども、脇役です…
 『香霖堂…もう一つの特権』が感想40越えした記念に
 拙いながらも感謝の意を込めて、今度はゆかりんのお話です
 
 しかし…家の香霖、一体何人落としたら気がすむのだろう?
 今度は魅魔様かな?…私の気力がなくならないのならだけど



 
 おまけ

 ×月○日

 ある日の朝、僕が起きると
「あら?おはよう」
「…なんで君が僕の布団の中にいるんだい?」
 隙間妖怪が布団の中にもぐりこんでいた
 理由を聞いたら
「布団に隙間があったからよ」
「…なるほど、なら仕方が無いか…」
 納得したから、そのまま昼間で一緒に寝ることにする

 ○月×日

 朝起きて、台所に向かったら
「おはよう、御飯で来てるわよ?」
「そうか、ありがとう」
 隙間妖怪が(はだ…隙間)エプロンつけて朝ご飯を作ってくれていた
 理由を聞いたら 
「前に言ったじゃない、『藍に料理を教えたのは私』って」
 なるほど、あれは嘘じゃなかったのか
 …うむ、美味しい…

 ◇月△日

 朝起きたら、紫がお腹の上で丸まって眠っていた
「…何時もの事か…」
 気にしないで寝た…
 
 ○月◎日

 気がついたらお店の看板の隣に置いてある表札に
 森近 霖之助 
     紫   
 と書いてあった…まあいいか、あんまり変わりないし…
脇役
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
「こーりんの焼きおにぎり食べてぇ」
…………これしか頭に浮かんでこなかった…………。
それはそうとゆかりんが少女臭全開で何だ、その、悶える。
2.名前が無い程度の能力削除
ふぅ…こーりん殺す
3.メガネとパーマ削除
ちょっ! ゆかりん!w
なんだこのニヤニヤSSw

あなたはいつもいつもニヤニヤしてしまうようなSSを書いてからに・・・w
4.名前が無い程度の能力削除
なるほど、次は魅魔さまか!
だめだ、わくわくが止まらない(
5.名前が無い程度の能力削除
魅魔さまのも書いてくれ!
あなたの書くこーりんは何人落とす気なんだw
6.てるる削除
本当に描かれただと・・・
ざわ・・・ざわ・・・・・・・

もうニヤニヤしか浮かべられねぇ・・・w
だめだ、悶え死ぬ・・・
これもまた甘すぎ注意に対する看板が必要では?

魅魔さまのも砂糖風呂につかりながら待ってますね~
7.名前が無い程度の能力削除
これは良い紫霖!あなたが神か!
8.名前が無い程度の能力削除
ここまで少女臭溢れるゆかりんは久しぶりだw最高です


よっしゃ、今から全力でこーりんころがしてくる!!
9.ガナー削除
これはもう悶え死ぬしか無いじゃないですか。
10.名前が無い程度の能力削除
超GJ!
このシリーズを待ってました~っ!!!
前作の複線的に次は厄神様じゃないの?
「風神少女~恋するパパラッチ~」
「淋しいと死んじゃうの~幸せ月兎~」もお願いしたい!
11.削除
こーりんころがす前に貴方を転がすわ(w
12.名前が無い程度の能力削除
……………よし、殺るか
13.名前が無い程度の能力削除
ありがとう、そしてこーりんはそろそろ不幸になれwww
14.名前が無い程度の能力削除
こーりんくたばれ。

……でも紫とこーりんの大人カップルは嫌いじゃないww
mottomotto!!
15.名前が無い程度の能力削除
こうりんぶっころす
16.名前が無い程度の能力削除
さとううまー
17.名前が無い程度の能力削除
いやはやさとうにこまりませんね。
そろそろこーりんをころしますね。
18.名前が無い程度の能力削除
こーりん…貴様、神綺様では飽き足らずゆかりんまで手を出すとは許せん!!
19.名前が無い程度の能力削除
砂糖風呂に浸かりながら大量の砂糖水を一気飲みするくらい甘いですねwwwww
永琳×霖之助カップリングもいいと思います。
「傷心の医者と癒しの店主」というのはどうでしょう?
20.名前が無い程度の能力削除
甘すぎるwww
ちょっとゆかりんを未亡人にしてくる
21.名前が無い程度の能力削除
フラグ職人香霖、流石と言わざる終えないお話でしたねw
いつも間にかゆかりんに嫁入りされてるけど気づいてないところもステキデスネ~
さてバットはどこかな、と・・・
22.月樹削除
香霖と紫の子供を登場させてくれー
っと、それはそれとして、いい話だった。
まだまだ頑張ってくださいね。
23.名前が無い程度の能力削除
あまり参考になりませんがこういうカップリングというのはどうでしょう・・・
慧×霖「半人半妖同士の愛」というのは・・・
24.名前が無い程度の能力削除
八雲の性を簡単に放棄しちゃダメでしょうww
25.あさよ削除
一途な紫さんもいいですね。
不思議と香霖を殺す気にはなれませんでした。
それほどこのカップルがすばらしかったということでしょうか。
26.名前が無い程度の能力削除
魅魔様もみたいけどその前に…
香霖をちょっと殺ってきます
27.通りすがり削除
流石は脇役殿、大層なお手前で...大変美味しく頂けましたよ、ご馳走様
28.名前が無い程度の能力削除
あま!あますぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
さすが脇役さんです!
砂糖多すぎで糖尿病になってしまいます!
29.名前が無い程度の能力削除
誤字報告
力が戻る間で少し時間がかかるみたい→戻るまで

香霖が出てきたので、「香霖堂」の幼女臭に満ちた紫様を想像して、泣きべそに萌えた。
後書きの丸まって眠る紫様にさらに萌えた。(胸と幼女は両立すると信じている)
30.朽狗削除
…神綺様に続いて『アッチ』の方で、紫さんとの『甘い話』を書いて欲しいとです。
31.ノギノ削除
幻想板でもあったが、香霖はかなり絡ませやすいキャラなんだと確信した。
だが、フラグ職人とはまた違った魅力があるんだろうな。
32.名前が無い程度の能力削除
と、とまらん!ニヤニヤがとまらん!なんという能力だ!
33.名前が無い程度の能力削除
そろそろこーりん殺s(幻想入りしますた
34.時空や空間を翔る程度の能力削除
大人の魅力、大人の魅力!!!

えぇ~もん読ませて貰った。
35.名前が無い程度の能力削除
乙女ゆかりんですね。わかります。

さて……鉈はどこに仕舞ったかな?
36.名前が無い程度の能力削除
ふぅ~・・・・・・・・・・・・いい話だった・・・


さて・・・日本刀は何処にあったかな?
37.名前が無い程度の能力削除
・・・紫さんってこんなにも可愛かったっけ?
あと、霖之助さんはぜひとも長生きして、もっといい目にあってください。

・・・つーか、殺すとかいうコメントにはいい加減ウンザリするのだが。
38.名前が無い程度の能力削除
ちょっと倉庫にあるトラバサミにお札張ってくる