Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

なるほど?ザ・幻想郷

2008/08/03 11:26:39
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1
注:作品集28『良い旅毛玉気分』から続いていますが、突っ込んだら負けと言う事でひとつ。








前回のあらすじ
真っ赤な忠誠心が鼻から出る咲夜。
永琳すら匙を投げた彼女を救う代償に、異変とも言えそうな異常事態が発生。
一方その頃、霊夢は何もしていなかった。










東風谷早苗は、突然の来客にも慌てなかった。
「おじゃまするぜ。」
やって来た客の名は、霧雨魔理沙。
山の妖怪も里の人間も知っている、幻想郷の中でもかなりの有名人である彼女。
亡霊も閻魔も不死者も神も知っている、幻想郷の中でもかなりの実力者である彼女。
今日も白黒の服に身を包み、帽子の下には不敵な笑み。
何故また山の上までやって来たのかと問えば、彼女はこう答えた。
「いやさ、霊夢の方の神社から追い出されたんだ。それでちょうど良い機会だし、幻想郷を改めて一通り案内しようと思って来た。」
早苗とて、今や立派な幻想郷の住人。
しかし、確かに年季としても知識量としても、魔理沙に勝るものは何も無い。
それに、早苗が有している幻想郷の知識は、端的に言えば「山寄り」の物である。
もしかしたら、妖怪の山では常識として通用している事でも、山以外では非常識なんてことも有り得るのだ。
実際に、幻想郷に来て間もない頃は、酒の味も電気の無い日常も、早苗にとって「非常識」だった。
ここでもう一度、幻想郷で生きる上で必要な知識を再度学ぶ事は、無駄とは決して言えないはずだ。

「分かりました、ちょっと待っていて下さい。」
「おう、ちょっと位ならここで待つぜ。」
心持ち急いで、神社の奥へ戻って行く早苗。
ぱたぱたと足音を立てて去る彼女の姿を見て、今日のプランを再確認しつつ笑みを浮かべる魔理沙であった。



「ふうん、面白い事を言い出すじゃないか。行ってみるのかい?」
神奈子の意見は、あっさりとした肯定。
最近決まったお祭りの準備が一段落したのだろう、額に汗が浮いている。
何をやっていたのだか分からないが、まあ追及しなくても真面目な準備である事に違いは無いだろう。
「はい。ですから、今日は少し帰りが遅くなると思うので……。」
その瞬間。


「早苗、今すぐ考え直して!って言うか行っちゃ駄目!」

諏訪子からの即答。完全拒否。
「諏訪子様、どうして駄目なんですか?」
答えは予想出来ているが、念のために聞いておく。
「だって、今日のお昼は早苗が作ってくれる約束じゃない!」
ごはんごはんさなえのごはんーと駄々をこねる諏訪子。神の威厳なんてどこへやら。
困り顔の早苗を見かねて、どうにかしておくから行っておいでと目で語る神奈子。

よく考えればこの現状、「人間相手にあーうーと縋りついて今日のご飯を要求する神様」と言う奇妙な光景である。
少なくとも、外の世界ではまず無いであろう現象だ。
この辺も、やはり幻想郷と外の世界では事情が異なるなんて有りそうだ。
けっこう日常的な光景を再認識しつつ、早苗は魔理沙が待つ鳥居へぱたぱたと急いだ。




「まずは人間の里だ。此処の事は結構よく知ってるんじゃないか?」
魔理沙の言葉を聞きながら、空をふわふわ飛ぶ早苗。
「そうですね。慧音さんには本当によくお世話になりましたし、里には買い物や分社の事でもよく行きますから。」
早苗の脳裏に浮かぶのは、豆腐屋や八百屋の店主の笑顔。
寺子屋の子供達が、分社を見て首を傾げたり質問をしたりする姿。
慧音の姿を見て手を振る畑仕事中の人達に、それを遠くから眺める妹紅の表情。
そして、彼女目掛けてダイビングパンチを叩き込む輝夜の笑顔……。
「あの、魔理沙さん?」
「何だ?」
「幻想郷では、出会い頭に喧嘩を始めるのって、比較的常識なんですか?」
「安心して良いぜ、そんな非常識な事をするのは数限り無く少ない。」
ほ、と息をつく早苗。
ああ良かった、と竹林の方へ眼を凝らすと。


「そもそも、あれは喧嘩じゃなくて、挨拶代わりと言うんだ。」
両手にふわふわもこもこの特製グローブをはめて、ぽこんぽふんと微笑ましい挨拶(一方通行)をしている輝夜が見えた。
己の知識から『挨拶』と言う単語の意味を引っぱり出し、自分が何か間違っていたのか再確認し始める早苗であった。




「次は紅魔館だぜ。噂は聞いてると思うんだけれど、どうだ?」
次こそは、と気を取り直しつつ、魔理沙について行く早苗。
「ええと、吸血鬼のレミリアさんが住んでいて、その他にも咲夜さんやパチュリーさん、それと美鈴さんに、フランさん……でしたっけ?」
自分の頭脳がまだ生きている事を再確認。
先程の『幻想郷の挨拶代わり』のインパクトが強かったが、それでも何とか自我は保たれているようだ。
「正解だ。ちなみに、それ以外にも妖精がメインで編成されているメイド達に、妖精及び正体不明の皆さん方からなる門番隊が居る。」
池の方から「そーなのかー」と相槌。

妖精と言えば、幻想郷でも比較的分かりやすい『幻想的な』存在であり、その中でも力の弱い存在だと、早苗は聞いている。
強靭さと人当たりの良さに評判アリ、とは山でも有名な門番隊は、妖精以外にも色々な人材がいるから強靭なのだろうか。
そんな事を考えているうちに、魔理沙に声をかけられた。
前方に有るのは、真っ赤な大きなお屋敷と、これまた真っ赤な立派な門。
すでに紅魔館の正面に到着していた事に、早苗は気付けなかったらしい。

「それで、だ。ここに入るためには、この門を通らないといけないんだが、今日はその正しい方法を教えておこう。」
ふふんと不敵な笑みを浮かべ、ミニ八卦炉を構える魔理沙。
大体二十メートルくらいだろうか、その先に居る門番は、泣きそうな顔をして魔理沙を見つめている。
これから何が起こるのかを知らないのは早苗のみ。
門番隊の一人が早苗の袖を引き、避難する様に精一杯自己主張するが、早苗にはそれが分からない。
哀れ門番隊。哀れ美鈴。
マスタースパークが放つ極彩にして純白の光の向こうに、早苗が見たものは。


幾重にも重なったズバンと言う轟音が、魔砲を斬り裂いた奇跡だった。

「……やるじゃないか。」
魔理沙は少し意外そうな口振りで感想を言いながらも、その光景を受け入れていた。
早苗に見せたのは初めてのマスタースパークが不完全燃焼なのは、少し残念なところだったが。
「ええ、もちろん。あなたはあまり知らないでしょうけど、私たち門番隊は、かなり実績が有るんですよ。」
対する美鈴は、さっきまでの表情が嘘だったかの様に、凛々しい表情でそこに立っていた。
早苗には到底信じられない事に、門には傷一つ付いていない。
「今日は早苗さんも一緒だったんですね。ちょうど良いので、お二人に紹介します。」
日傘を差している美鈴の背後から、ひょっこりと飛び出しているのは、早苗は一度も見たことが無い、魔理沙には見慣れた、枝と宝石を組み合わせた様な不思議な翼。
「お嬢様の命により、本日付けで『紅魔館門番隊特別対策班班長』に御就任されました、フランドール・スカーレット様です。」



直後、即トンズラした魔理沙に置いて行かれた早苗がどうなったのかは、魔理沙の知らない事である。
天下無敵の魔砲少女も、流石に『見知らぬ人を連れて誇らしげにしている魔理沙』に対してちょっぴり嫉妬大爆発中のフランを相手に、強行突破してみる蛮勇は持ち合わせていなかったらしい。









「さっきのマスタースパークを打ち消したのって、フランちゃんなんですか?」
これまでの経緯を話した結果、美鈴への来客として扱われることになった早苗は、門番隊特製のドリンクで一服しながら聞いてみた。
「ううん、さっきのは美鈴が受け止めたの。」
ある伝説の医者により、狂気の制御がかなり上手になったフランは、早苗の疑問に誇らしげに答える。
どうやら彼女にとって、美鈴はかなりのお気に入りの相手らしい。
やはり同じ屋根の下で暮らしている者同士、家族の様な結束が有るのだろうか。
「でも、あの大火力をどうやったら受け止められるんですか?」
外の世界でも、あれ程までの破壊力をゼロにしてしまえる技術が有るかどうか。
そんな早苗の意見には、フランも詳しい仕組みは分からないらしく、うーと首を傾げている。
そこへタイミングよく詰所から戻って来た美鈴は、照れ隠しなのか帽子で顔を隠しながら、こう答えた。
「ちょっとした知り合いに、これを借りる事が出来たんですよ。そのおかげです。」
ごとんと重厚な音を立ててテーブルに置かれたのは、鈍く光る鉄仮面だった。
名称:鉄仮面
用途:被ることで、驚異的な防御力を持つ。
美鈴ならあの鉄壁の人(正体不明)の物でも借りられそうな気がするのは気のせいでしょうか。
最近ネタが偏っているのはご了承下さい。
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いけるでしょうね、美鈴ですから。
2.名前が無い程度の能力削除
おそらく、この美鈴に出来ない事は、数えるくらいしかないでしょうね。
3.名前が無い程度の能力削除
美鈴だもんね、出来て当然だね。
4.てるる削除
可能ですね。だって、美鈴だもん。
5.名前が無い程度の能力削除
美鈴ならそりゃできるよね、美鈴だもの。