Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

天から石を

2008/07/30 23:05:02
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注:唐突に緋想天から始まります。











前回のあらすじ

萃香はホラーハウスと化した紅魔館の地下へ到達した。
彼女を待ち受けていたのは、パチュリーがプロデュースする謎の計画。
その企画を聞いて、無い胸を躍らせる萃香。



一方その頃、咲夜は限界を超えた。







山の上より更に上。
雲の上より更に上。
上のまた上にある天界で。

両腕は天を掴むが如く。
両脚は地を穿つが如く。
両眼は人を射るが如く。




「毎日毎日、もう退屈にも程があるわっ!どうして今日も平和なのよ!!」


天人にあるまじき暴言を、仁王立ちして叫んでいる比那名居天子が居た。
ちなみに近くには誰も居ないのだが、偶然では無い事を彼女は知らない。
今彼女の頭の中では、少し前に立てた計画が再度シミュレーションされていた。
それ即ち、

手順1:地上に異変を起こす。
 手順2:異変を解決しに巫女が来る。
  手順3:異変が解決した後、宴会で巫女や魔法使いや妖怪らその他と交流。
   手順4:その後、それなりに退屈しない程度に私に誰かが会いに来る。
結果:退屈しなくて私が嬉しい。

と言う、あらゆる不都合を除外した、夢見がちもここまで来ると才能だと呆れるしか無いプランである。
だが、そんな事は知った事じゃないし自分が悪い訳でもないと断言するであろう彼女は、今こう考える。

「私が直接動いて異変を起こして!要石どころか緋想の剣までも使って!わざわざ地上のスペルカードとやらを真似してあげて!そして異変が解決できるように最後は手加減もしてあげたって言うのに!何で誰も来ないのよ、おかしいじゃない!」

どう考えたって、先の計画が上手くいくわけが無い。
しかも「手順3.5:神社にちょっと細工する」なんて余計以外の何でもない事を仕出かしているのだ。
『天人は⑨』なんて噂(しかも発信源は霊夢)が地上で常識になりつつある現実を、彼女は知らない。
ただ彼女は文句を言うだけである。
「誰かこの退屈を何とかしなさーい!」




「と、総領娘様が叫び出しそうな気がしたのですが、気の所為ですよね?」
そんな事を笑顔で爽やかに口にするのは、竜宮の使いたる永江衣玖。

本来なら、天界に入り浸る様な事は絶対にしない、自分の務めに忠実な彼女だが、最近は違う。
何せ、彼女に背中を見せて吼えかけている天子が大問題なのだ。
その身から手離す気が無いらしい緋想の剣が、その大問題に膨大な危険性を付加しているのも怖い。
万が一、剣が癇癪ついでに振り回されてしまっては、恐らく幻想郷は当然ながら、外の世界も太陽に焼き尽くされる未来が完璧に保障され、世界はまさに永遠にして真の世紀末になってしまう。そこには覇王も病人も無い。

そんな異変は誰も望まないので、自分の仕事に『世界崩壊を防ぐ』事を追加した。
彼女が天界によく顔を出すことになったのは、そんな背景からである。



「…………当然よ。私がそんなはしたない事を口にするなんて、天地がひっくり返っても有り得ないわね。」
実際に叫ぶ寸前で、しかも実際に天地をひっくり返せる相手に言われても、説得力なんて欠片すら無い。
だが、空気の読める彼女はそんな事は一切顔に見せず、懐から小さな封筒を取り出した。
「紅魔館と言う、吸血鬼や魔法使い等が住むところから、お届け物を預かっておりまして。」
衣玖の脳裏に浮かんだ言葉を読み取ったのか、それとも単に封筒に注意が向いただけなのか。
どちらかは分からないが、天子は封筒を早業で受取り、迷う事無く開封した。

開封したら起動する罠だったりしなくて良かった、と安心しながら、その様子を見守る衣玖。
傍から見れば『封筒の中身に期待膨らむ少女と、静かに様子を見守る友人』に見えるかもしれない。
実際には、『封筒の中身が退屈しのぎにならなければ一体どうなる事かと心配しているのを押し隠している先生と、そんなことはお構い無しの問題児』なのだが。

さて、その問題児は封筒の中身である小さな紙切れを穴が開くほど真剣に見つめている。
むしろ睨みつけている。こんなに真剣な表情をした天子を、衣玖は見たことが無い。
その様子は例えるならば、魔法使いが秘伝の魔導書を前に、核心へ至る暗号の鍵を必死に探しているかの様である。

「総領娘様?」
普通なら決して見せないような没頭ぶりに、流石に心配になって来た衣玖が声をかける。
だが、それも聞こえていないらしく、天子は手の中の紙切れに見入っている。
まさか天人ともあろう者が、何か魅了の類の術にでも引っかかったのだろうか?
それともまさか、字が読めないなんて珍事では無いだろうか?


「これだわ!」
そんな衣玖の疑問を消し飛ばすかのように、天子が声を張り上げた。
一体何が『これ』なのだろうか、と言う次なる疑問も流して、天子は次から次へと言葉を連ねる。
「さあ、早速紅魔館へ行くわよ!最高に楽しい招待状じゃない、これに乗らない手は無いわ!ペア招待らしいから、衣玖も来なさい!拒否しないでね、引っ張ってくの面倒だから!」
ああ無情。道理が通れど無茶が踏み潰す。
激流の如き悲しさを噛み締めながら、羽衣を握りしめられ引きずられる衣玖であった。
尚、わざわざ引きずられているのは、低空飛行でついて行くと天子が駄々をこねるからである。
空気の読める女は無駄な抵抗をしないものだ。




下界、紅魔館の地下にある、大図書館。

「で、私を呼んだんだから、さぞかし面白い事を準備しているんでしょうね?」
「いいえ、全く。どうしてそんな愉快な解釈が出て来るのかしらね。」

目が合って最初に出てきた言葉が完全否定。

この大図書館の主から付きつけられた台詞。
その現実を、天子は五秒経ってから認識し、十秒かけて解釈し、たっぷり一分の後に。




「ぉぉ押し潰してくれるわこの引き籠もりがあああ!!!」
「総領娘様おやめ下さい!」
あっさり実力行使。


衣玖が羽衣で縛り付け、萃香が怪力で緋想の剣を奪い取り、天子を辛うじて拘束することに成功したのは、それからきっちり一時間経ってからの事である。
その一時間の間に、単行本で二冊分くらいの死闘が展開されたのだが省略。

後ろの方で羽衣の中身がもごもご言っている。だがそんなものは華麗にスルー。
衣玖と萃香は素直に、パチュリーの話を大人しく聞くことにした。


結論から言えば、パチュリーが萃香と衣玖を経由して天子に届けた封筒の中身には、ただこう書かれていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
幻想郷に新しい風を吹かせる、『ぷち人形』。
あなたにも、みんなにも、あの子にも。
お祭りのお供に、プレゼントにどうぞ。
            お問い合わせは紅魔館まで
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ひっくり返すと、裏面には走り書きが。

『天子へ とても面白い事の準備があるから、二人で早く来るように』


「要するに、緋想の剣で得た気質を萃めて、このゴーレムに封じれば、とても面白い事になる。その『とても面白い事』の準備があるから、早く来るようにと言う意味だったのですね。」
衣玖がパチュリーの話を簡潔にまとめると、萃香もパチュリーもうんと頷いた。
羽衣の中身がごろんごろんとのたうっているが優雅にスルー。
「そして、私が一緒に呼ばれていた理由は、総領娘様をああするため、と。」
俯きながら、酒の入ったグラスを差し出す萃香。
どうも彼女はそこまでは知らなかったらしいが、結果的に嘘をついてしまった事が後ろめたいらしい。

羽衣の中身がどたんばたんと暴れているが、徹底無視。
仕方無しに、パチュリーが指示する通りに緋想の剣を振り、ゴーレム作りを手伝う事にした衣玖であった。
この段階に来て作業を断るなんて、どう足掻いたって不可能だった。


衣玖もまた、普段の気苦労の所為で、どこかおかしくなっていたのかも知れない。
ゴーレム達のつぶらな瞳に毒されたのだろうかなんて思いながら、全ての抵抗を諦めた衣玖であった。
空気の読める女は、無駄な抵抗はしないものである。







おまけ

門番隊は、決して忘れないだろう。
伝説の二人の医者を。



「咲夜さんと妹様を診て下さって、本当にありがとうございます。」
「いえいえ、医者は治すのが仕事です。それに、咲夜さんの治療は私がやったのではありませんよ。」

282cm55kgの紙袋と、もう一人を。


死の灰を浴びたと言う、奇跡の男を。
     北斗有情破顔拳
   \   テーレッテー     /
    \  ∧_∧   /
     |∩( ・ω・)∩|   
    / 丶    |/  \
  /   ( ⌒つ´)    \


咲夜さんは助かった様ですが書き手が末期です。
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
やっぱり
いくさんは
くうきがよめるな
2.名前が無い程度の能力削除
そんな伝説の名医が二人もいないと治せなかったのか、咲夜さんはw
3.名前が無い程度の能力削除
最後がわからないのが悔しい。
空気が読める女は苦労人。
4.名前が無い程度の能力削除
>最後
ボルドヘッドさん?
5.名乗ることができない程度の能力削除
最後>○ルティ○アのDr.ファウスト(=ボルドヘッドさん)ですなwww
しかしえーりんでも治せなかったのか……;;;
あとタイトルはもしや「天から○塩」のパr(ry

ぱちゅこん?っぽい展開になりそうで楽しみです。