私の名前はレティ。レティ・ホワイトロック。
寒気を操る程度の能力を持つ妖怪。
冬の間の私の力は無限の可能性を秘めている。
けれどもそれ以外の季節、特に春の訪れから秋まで私のこの力は意味をなさない。
冬の終わりに私は涼しいところに隠れて、次の冬まで眠っている。
そして冬が訪れれば、矮小な人間や動物たちに冬の恐ろしさを教える。
他の事を考えなくてもいい。
そんな生活で十分だと思っていた。
「ねーレティ」
「なあに?チルノ」
「最近、なんだかあったかいよ。寒くしてよ」
「そう・・・でもそれは無理ね。だってもうすぐ春よ」
「春かー。かえるがいっぱい見つかるといいなあ」
「そうね・・・」
「んー・・・。レティに凍らせたかえるを見せてない気がする」
「そうね、私はあなたが凍らせたカエルは見たこと無いわ」
「なんで見せてないんだろう」
「私は冬以外は涼しいところで寝ているのよ。誰にも邪魔されずにね」
「いっぱい寝るんだね」
「いっぱい寝るのよ」
「ねーレティ」
「なあに?チルノ」
「私も一緒に寝t」
「ダメよ」
「い・・・い?」
「あなたは妖精で私は妖怪。冷気と寒気は似ているようでまったく違うわ」
「でも!・・・・・・寂しいんだもん。」
「大ちゃんがいるでしょ?あなたはあの子と仲がいいじゃないの」
「でも・・・大ちゃんには他にも妖精の友達がいるよ・・・」
「あなたも友達になればいいじゃないの」
「みんな、私のことを馬鹿にするんだ。『妖精が人間や妖怪にかなうはずがない』って」
「そうね、みんなあなたの事を馬鹿にするわね。」
「『そんな奴と遊んでいると馬鹿になるよ』って大ちゃんに言うの。大ちゃんは気にしてないって言うけど」
「あの子は周りの子とは違うわ。もちろんあなたもね」
「私が馬鹿にされているから、一緒にいる大ちゃんも馬鹿にされる。そんなの私は嫌だ」
「その言葉を聞くだけで、大ちゃんはすごく喜びそうね」
「ねーレティ。本当にダメなの?」
「・・・ダメよ」
「あなたは毎日、いろいろな事をしなさい。たくさん遊びなさい。色々な場所に行きなさい。あなたなら何でも出来るわ」
「そんなこと言われても何すればいいかわからないよ」
「何でもいいの。あなたがさっき言った、カエルを凍らす事。嫌われている妖精と喧嘩をしてもいいわ。でも仲良くなってもいいの」
「どれが一番良いの?」
「良いか悪いかなんて関係ないわ。自分の思ったとおりにするの」
「よくわかんないよ・・・」
「分からなくていいの、今のあなたはね。でもその積み重ねが、いつかあなたを「さいきょう」にするわよ」
「さいきょう・・・、さいきょうだ!」
「頑張るのよチルノ。私はもう行くわね」
「もう寝るの?まだ起きてようよ。もっと話そうよ」
「そうはいかないのが、私という妖怪なのよ」
「また会えるよね」
「次の冬に、必ず会えるわ」
「ねーレティ、指きりしようよ!」
「!・・・ええ、しましょう」
「指きりげんまん♪ウソついたらアイシクルフォール千本飲~ます♪指きった!」
「った。・・・じゃあ行くわね」
「うん、またね」
「また・・・次の冬に・・・」
「春ですよー♪」
「むむっ、来たなリリーホワイト!同じ妖精として負けたくない。そんな気持ちで一年鍛えた、私のアイシクルフォールを食らえ!」
――――氷符「アイシクルフォール」――――
「(あなたの正面が)春ですよー♪」
「何で当たらないのよー!」
・・・・・・・・・
あの子はまだ未完の大器。
馬鹿なのは妖精だから。ただそれだけ。
あの子は、いつか私の能力をも使えるようになるかもしれない。
あの子の成長を見るのが今の楽しみ。
彼女は、本当の意味での「さいきょう」になれるかもしれない。
そうしたら、私は彼女を育てた「くろまく」ね。
いつになるのかはわからないわ。
でもそう遠くない。
人間にとっては長くても、きっと私たちには一瞬の時間のはず。
それまで楽しみに待っているわよ・・・。
・・・あの子は少しずつ成長している・・・
「以前は・・・覚えていなかった一年前の出来事を・・・指きりを覚えて・・・」
「きっと・・・そうよね・・・チルノ・・・zzz」
冬の終わり
春の始まり
チルノ、そんな気持ちで一年鍛えてもeasyのままか・・・
これならいつの日か本当にさいきょうになれますね
いいお話でした