かんかんに日の照った空を霊夢と魔理沙が飛んでいる。
二人とも暑そうだが、魔理沙は特に辛そうだ。黒い部分が熱を吸収して、霊夢よりも暑さが辛いのだろう。
向かう先にあるのは山。目的地は守矢神社だ。
家屋に面する庭に降りた二人は、玄関を通らず直接縁側から居間へとあがる。
そこにあった扇風機のスイッチをいれると、涼しそうな顔で座り込んだ。
堂々と不法侵入をやらかしてるが、二人が気にした様子はない。
「また来てるのかい」
人の気配に気付いた神奈子が居間に現れた。
「邪魔してるぜ」
「毎度縁側から入って、たまには玄関から入ってきたらどうだい?」
勝手に入ったきたことは特に責める気はないらしい。
「ねえ、エアコンつけてくれない?」
「扇風機で十分だろ」
「いつもそう言ってつけてくれないじゃない」
「これくらいの暑さで情けないね。
早苗がよく冷えた麦茶持ってくるからそれで我慢しな」
恨めしそうにエアコンを見た霊夢は、すぐに諦めて風に当たることに集中する。
二人がここに来たのは冷房機具目当てだ。
十日前、あまりに暑そうな二人を早苗が誘った。うちに来れば、もう少し涼むことができますよと。
二人にとって涼しむ道具といえば団扇だった。そこに扇風機とエアコンという未知の道具が現れて、簡単に涼むことができたので、その魅力にとりつかれたのだ。
人間一度楽を覚えれば、それまでのことに我慢できなくなるもので、涼しむために毎日入り浸るようになった。
魔理沙が、借りるという名目で扇風機を持っていこうとしたこともある。だがそれ単体では動かない、ただのゴミだと言われて諦めた。
そばでそれを聞いていた霊夢が舌打ちしていた。霊夢も狙っていたらしい。
手動の発電機のことを知ったら、それごと持っていくのは間違いなさそうだ。
「いらっしゃいませ」
お盆に四人分のコップを乗せた早苗が居間に入ってきた。
テーブルに置いたお盆から、霊夢と魔理沙がコップをとりいっきに飲む。
「ぷはっ生き返るー!」
「ほんとにね」
「いい飲みっぷりだ」
「冷たいものをいっきに飲むと体に障るのでは?」
すぐになくなった麦茶を継ぎ足しに早苗が台所へと向かう。
ついでに汗をかいたであろう二人に濡れタオルを渡そうと、冷やしてあるタオルを冷蔵庫から出す。
「そういや蛙の神様はどこにいったんだ?」
「諏訪子かい? お供え物にあった西瓜を朝から川で冷やしてたんだ。それをとりにいってる。
川で冷やすってのも風情があっていいだろ」
「風情より食い気のほうが大事よ」
「わかってないねぇ」
「おかわりですよ」
持ってきた麦茶とタオルを二人の前に置く。
今度は少し飲むだけですませた。
冷えたタオルで幸せそうに顔や腕などをふいていく。
「二人ともほんとに暑そうですね」
「私としてはあんたたちが暑そうにしていないのが不思議なんだけど」
「あれか? 守矢神社には暑さに耐性がつくっていう加護でもあるのか?」
「あら? それはいい加護ね。入信しちゃおうかしら」
「そんなのありませんよ。
ただ外の世界はここよりも暑かったというだけです。
あっちは当たり前のように三十五℃とかいってましたからね」
「酷いときは四十℃近くまでいったからね。
それ比べたら、こっちは暑いっていっても三十℃ほどだろ?
過ごしやすいうちにはいるさ」
「うへぇ~今よりも暑かったのかよ」
「毎日エアコンつけてましたよ」
話を聞いただけで体感温度が上がったのか机にだれる。霊夢も顔をしかめている。
「そんな暑いところからきたんだから、なにかいい暑さ対策知らないの?」
「暑さ対策ですか?
簡単なものだと団扇で扇ぐ?」
「その動作すらしたくないぜ」
「冷たいものを食べる?」
「定期的に手に入らないわ」
「水浴び?」
「それはいいかもしれないけど、一時しのぎね」
「えーっとあとは……夏野菜を食べるなんてどうですか?」
「何か暑さに対する効果があるのか?」
「夏野菜は体内の熱を散らす効果があったはずだよ」
「へー知らなかったわ」
帰ったら試してみようと、このことを霊夢と魔理沙は覚えておくことにした。
「でも結局は、ここにくるのが一番の暑さ対策なんだよな」
「そうね」
「毎日来てますけど、家の用事とかは大丈夫なんですか?」
「暑くない朝のうちに終らせてるわ」
「私もだ」
「でもそれぞれの家に客がくることもあるんじゃ」
特に博麗神社はそうだろう。
「いいのよ。来たら騒いで余計に暑くなるんだから。
この暑さで相手する気力は湧かないわ。
それにここにくれば、涼むほかにおやつもでるのよ?
どっちを選ぶかって言われたらねぇ?」
「ただいまー」
玄関から諏訪子の声が聞こえてきた。
瞬間、霊夢と魔理沙の意識は冷えた西瓜に向けられて、これまでの会話は頭の隅に追いやられた。
その様子に神奈子と早苗は苦笑するしかなかった。
二人とも暑そうだが、魔理沙は特に辛そうだ。黒い部分が熱を吸収して、霊夢よりも暑さが辛いのだろう。
向かう先にあるのは山。目的地は守矢神社だ。
家屋に面する庭に降りた二人は、玄関を通らず直接縁側から居間へとあがる。
そこにあった扇風機のスイッチをいれると、涼しそうな顔で座り込んだ。
堂々と不法侵入をやらかしてるが、二人が気にした様子はない。
「また来てるのかい」
人の気配に気付いた神奈子が居間に現れた。
「邪魔してるぜ」
「毎度縁側から入って、たまには玄関から入ってきたらどうだい?」
勝手に入ったきたことは特に責める気はないらしい。
「ねえ、エアコンつけてくれない?」
「扇風機で十分だろ」
「いつもそう言ってつけてくれないじゃない」
「これくらいの暑さで情けないね。
早苗がよく冷えた麦茶持ってくるからそれで我慢しな」
恨めしそうにエアコンを見た霊夢は、すぐに諦めて風に当たることに集中する。
二人がここに来たのは冷房機具目当てだ。
十日前、あまりに暑そうな二人を早苗が誘った。うちに来れば、もう少し涼むことができますよと。
二人にとって涼しむ道具といえば団扇だった。そこに扇風機とエアコンという未知の道具が現れて、簡単に涼むことができたので、その魅力にとりつかれたのだ。
人間一度楽を覚えれば、それまでのことに我慢できなくなるもので、涼しむために毎日入り浸るようになった。
魔理沙が、借りるという名目で扇風機を持っていこうとしたこともある。だがそれ単体では動かない、ただのゴミだと言われて諦めた。
そばでそれを聞いていた霊夢が舌打ちしていた。霊夢も狙っていたらしい。
手動の発電機のことを知ったら、それごと持っていくのは間違いなさそうだ。
「いらっしゃいませ」
お盆に四人分のコップを乗せた早苗が居間に入ってきた。
テーブルに置いたお盆から、霊夢と魔理沙がコップをとりいっきに飲む。
「ぷはっ生き返るー!」
「ほんとにね」
「いい飲みっぷりだ」
「冷たいものをいっきに飲むと体に障るのでは?」
すぐになくなった麦茶を継ぎ足しに早苗が台所へと向かう。
ついでに汗をかいたであろう二人に濡れタオルを渡そうと、冷やしてあるタオルを冷蔵庫から出す。
「そういや蛙の神様はどこにいったんだ?」
「諏訪子かい? お供え物にあった西瓜を朝から川で冷やしてたんだ。それをとりにいってる。
川で冷やすってのも風情があっていいだろ」
「風情より食い気のほうが大事よ」
「わかってないねぇ」
「おかわりですよ」
持ってきた麦茶とタオルを二人の前に置く。
今度は少し飲むだけですませた。
冷えたタオルで幸せそうに顔や腕などをふいていく。
「二人ともほんとに暑そうですね」
「私としてはあんたたちが暑そうにしていないのが不思議なんだけど」
「あれか? 守矢神社には暑さに耐性がつくっていう加護でもあるのか?」
「あら? それはいい加護ね。入信しちゃおうかしら」
「そんなのありませんよ。
ただ外の世界はここよりも暑かったというだけです。
あっちは当たり前のように三十五℃とかいってましたからね」
「酷いときは四十℃近くまでいったからね。
それ比べたら、こっちは暑いっていっても三十℃ほどだろ?
過ごしやすいうちにはいるさ」
「うへぇ~今よりも暑かったのかよ」
「毎日エアコンつけてましたよ」
話を聞いただけで体感温度が上がったのか机にだれる。霊夢も顔をしかめている。
「そんな暑いところからきたんだから、なにかいい暑さ対策知らないの?」
「暑さ対策ですか?
簡単なものだと団扇で扇ぐ?」
「その動作すらしたくないぜ」
「冷たいものを食べる?」
「定期的に手に入らないわ」
「水浴び?」
「それはいいかもしれないけど、一時しのぎね」
「えーっとあとは……夏野菜を食べるなんてどうですか?」
「何か暑さに対する効果があるのか?」
「夏野菜は体内の熱を散らす効果があったはずだよ」
「へー知らなかったわ」
帰ったら試してみようと、このことを霊夢と魔理沙は覚えておくことにした。
「でも結局は、ここにくるのが一番の暑さ対策なんだよな」
「そうね」
「毎日来てますけど、家の用事とかは大丈夫なんですか?」
「暑くない朝のうちに終らせてるわ」
「私もだ」
「でもそれぞれの家に客がくることもあるんじゃ」
特に博麗神社はそうだろう。
「いいのよ。来たら騒いで余計に暑くなるんだから。
この暑さで相手する気力は湧かないわ。
それにここにくれば、涼むほかにおやつもでるのよ?
どっちを選ぶかって言われたらねぇ?」
「ただいまー」
玄関から諏訪子の声が聞こえてきた。
瞬間、霊夢と魔理沙の意識は冷えた西瓜に向けられて、これまでの会話は頭の隅に追いやられた。
その様子に神奈子と早苗は苦笑するしかなかった。
幻想郷って外の世界の人からしたら、夏涼しくて冬寒いんでしょうね。
夏といえば、今現在24時前だというのに蝉の声が煩いんですがどうしましょう。寝れない。
意味的に「涼しむ」よりは「涼む」のほうが合っているような気がします。