Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

恋愛小説 子供用

2008/07/28 00:49:38
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1
『いい? この区間には絶対に近づいてはだめよ』
あなたは親が子に間違いを諭すように言った。
『何故ですか、パチュリー様』
『ここにある蔵書は全て魔女に対抗するために書かれたものだからよ』
遠い昔の愚かな人々は魔女を殺すのに必死だったのよ、と付け足した。
『魔力に反応して魔女の存在を消してしまうものだってある。勿論、封印はかけてあるけれど、普段はここに近づかないようにね』
念を押すように慎重に、私は言われた。

それは、私がまだ封印の解呪も出来なかった頃のこと。





『よぉ、パチュリー』
いつも通り、遠慮なく彼女はやって来た。
『あら、魔理沙。いらっしゃい』
あなたもいつも通り笑って出迎えた。
笑って。
そのときのあなたの笑顔がとても綺麗でいつもいつまでも見ていたかった。
けれど、叶わなかった。

彼女が、魔理沙さんが、来たときでないと見られなかったから。
少しだけ視界が滲んだ。

それは、私がまだ美味しい紅茶を淹れられなかった頃のこと。





『ごきげんよう、パチュリー』
いつも通り、静かに彼女はやって来た。
『こんにちは、アリス』
あなたもいつも通り紅茶の入ったカップを置いて出迎えた。
紅茶は役目を終えた。
アリスさんとの語らいに忙しいあなたは、今日の紅茶にはもう手を出さない。それはいつも通りのことだった。
カップを片付ける手はあなたの制止の声をずっと待っていた。
勿論、仕事は順調に終わってしまった。

少しだけ顔を伏せた。
私にはせめて紅茶を美味しく淹れることしかできないから。

それは、私の髪がまだ肩まで届いていなかった頃のこと。





「パチュリー様、紅茶をお持ちしました」
本のページをめくる手を止め、パチュリー様はテーブルに置かれたカップをすぐ手に取った。一口分、琥珀色の液体がカップからなくなった。
「いつも通り、美味しいわ」
「ありがとうございます。パチュリー様」
あの頃のような笑顔が私に向けられる。
あの頃のように紅茶は私に向けられない。
「今日はクッキーも作ってみました」
持ってきた皿の上の星型の塊はバターの香りを漂わせる。
パチュリー様はクッキーを手にとって、角度を変えながら眺めた。
「綺麗な星型ね」
「そうですかっ、ありがとうございます。自分でも結構上手く出来たと思ったんですよ。ほら、この星なんて魔理沙さんの弾幕みたいに……っあ」
「……」
「すみません……」
「……いいのよ。魔理沙もアリスも、あの区間の蔵書に、私に何も言わず勝手に手を出しただけ。自業自得よ」

「……」
「……」
「……」
「……」

「でも、パチュリー様。あれからは外出もされず、滅多に人にも会わずに……」
「あなたがいるわ」
「そう、ですね」
「そうよ」
「はい。私、パチュリー様のことが大好きです」
「ふふ、そう。私もあなたのことが好きよ」
「……じゃあ、パチュリー様のなかで私は何番目なのでしょうか?」
「さて、ね。順番なんてないからわからないわ」
「それは奇遇ですね。私もありません。パチュリー様しかいないので」
「あら、それは奇遇ね。私もよ」
「ああ、よかったです」










二人をあの区間にご案内したかいがありました
恋愛というより純愛。
このお話を一言でまとめると、嘘つきは恋泥棒の始まりということです。



*7月30日追記*
>恋愛感情はともかく、親友たるレミィは?
所謂、likeとloveの違いです。
まあ、そもそも好意をざっくりフォルダ分けしたり順位付けするなんて馬鹿らしいものですね。

>子供用
子供らしくしました。子供なら一度は誰でも考えると思います。相手の排除。
純粋って褒め言葉じゃないですよね。
智弘
コメント



1.りんご削除
最後の一行で戦慄した。
2.名前が無い程度の能力削除
子供用と言うよりは悪魔用なんだぜ…
大人で良かった、おかげで楽しく読めたからな。
3.名前が無い程度の能力削除
(((((((( ;゚Д゚)))))))
4.名前が無い程度の能力削除
恋愛感情はともかく、親友たるレミィは?
5.名前が無い程度の能力削除
((((((゚Д°)))))アー、アー、キコエナイ

女の恋愛って恐ろしいんですね
6.名前が無い程度の能力削除
是非、大人用も。
7.名前が無い程度の能力削除
コンマ数秒思考停止

……ィアアアアアア!

短いながらビクッとさせられたよ…
8.時空や空間を翔る程度の能力削除
ちょっ・・・ちょっとまって・・・(汗・・・
9.名前が無い程度の能力削除
魔女を殺すための本とは・・・
それを作った人も魔女だと思うのだが、これは素晴らしいトラップだな
魔女なら本を見ずにはおれまいて
10.Tsutta削除
>あの頃のように紅茶は私に向けられない。

なにかこの一節にセンスを感じました。
11.卯月由羽削除
なんつーか、センスある文章だ……ラストがすげい。
12.名前が無い程度の能力削除
こ、子供用じゃねええええ!?
小悪魔ってれべるでもねえ!?
13.名前が無い程度の能力削除
ああ、それで子供用……
最後の一言にだけ句読点がないのがヒヤリ。
女の情念は恐ろしい……大人用も見てみたいですね。
14.名前が無い程度の能力削除
嗚呼……確かに純愛だわ(震えながら)
15.名前が無い程度の能力削除
ラストで小悪魔と言えど魔の眷属だったと思いしらせれました。
深い・・・。
16.名前が無い程度の能力削除
おや、どうやら目の調子が悪いようだ。
ブッラクな小悪魔が見えてしまうなんて!ちょっとめがね買ってくる。
GJでしたー
17.名前が無い程度の能力削除
やんでれやぁ!!!
18.名前が無い程度の能力削除
最後の一文のひらがなが妙に目について、そのやわらかい感じと内容の怖さの
落差が心臓にスピアザグングニルした。
19.絶望を司る程度の能力削除
恋愛小説?アポカリプスの間違いじゃ……あ?こんな時間に誰かきたようだ。