注意:ヴワル魔法図書館には本が沢山ある。
沢山本があるんだから、中にはおかしな本もある。
書架から飛び出して、うろついている奴だっているくらいだ。
だから、ここにはどんな本があっても誰も驚かない。
■ おもしろい本 ■
魔理沙が本を読んでいて、気が付くと後ろに何かいる。
見れば、一冊の魔道書が肩越しに彼女の手元を覗き込んでいた。
魔理沙が何してるんだと聞くと、その本を読んでいたのだと答える。
「本が本なんて読むのか?」
「たまに、気が向いたときとか」
「意味あるのか?」
「自分のためになる」
「どういう風に?」
「本を読むと、自分の中身が豊かになるんだ」
「中身が豊かになるったって、お前の中身だってもうぎっしだろう?」
「そんな事ないよ。 自己完結している他の本とちがって、僕はまだまだ余裕があるから」
どうれ、と魔理沙はその本の最後のページを捲ってみた。
彼が初版である事と、もう空いてるページは無い事が解った。
その事を教えてやると、その本は酷くしょぼくれて書架に引っ込んでしまった。
なんだか泣いている様にも思えたから、ちょっと悪い事したかなと魔理沙は思った。
しかし、しばらくもするとさっきの本がまた後ろに来ていた。
「諦めたんじゃなかったのか?」
「だって面白いんだもん」
まあそれくらいで良いだろう。
魔理沙は美味しいお茶を飲んだ。
■ おもしろい本 ■
「ぎゃははははははははっ!!」
「ぎゃっははははははははははははっ!!」
「ぎゃーーーっはっはっははははははっ!!」
「ぎゃはっぎゃはっぎゃはっぎゃはっ!」
魔理沙はおもいっきり下品に笑っていた。
魔理沙が笑うと、読まれている魔道書もせいぜい下品に笑う。
きっとそういう本なのだろう。 背表紙にはアメリカンジョークと書かれていた。
『図書館では静かに』と書かれている洋皮紙が、遠くで煤けているのが物悲しい。
「うるさいわね、何がそんなに面白いのよ」
「見てみろよ、こいつこんなにマヌケなんだぜ?」
「それ、あなたの事よ」
「ぎゃっはっはははははははははははははははははははっ!!」
うるさい奴が半分になったので、パチュリーは少し満足した。
■ おもしろい本 ■
「へえ・・・・・・」
食べられる本と書いてある。
ばくりっ!!!!!!
危うく手首が無くなる所だった。
■ おもしろい本 ■
世界一悲しい本は中身が白紙だった。
「作者が背表紙だけ作って三日で諦めたんだ」
「確かに悲しいが、良くある話だから世界一には程遠いな」
「僕は悲しいよ」
「まあ頑張れ」
魔理沙は本を書架に戻した。
その隣に世界一おもしろい本と書かれた本があった。
作者が同じだった。
「グッド。 パチュリー、賭けをしよう」
魔理沙はその日から三日間モルモットにされた。
世界一じゃなかったから無効だと主張してみたが、聞いて貰えなかった。
パチュリーが少し冷たかった。
■ おもしろい本 ■
パチュリーが、足の指で耳の後ろの辺りをボリボリと掻いている。
猫のように体をまるめてぱたぱた掻いていれば、少しは可愛いく見えたのだろうが、関節を無視したなまなましい白い脚が背中からにょきりと飛び出して、それがまるで蛸のようにゆっくりと動いているものだから、見ていて酷く気持ちが悪い。
「何で手を使わないんだよ」
「―――私の手は忙しいの」
返事はとても曖昧だった。
パチュリーは、わき目も振らずに本を読んでいる。
怠け者の手は、本をしっかりと抱えていた。
魔理沙が後ろに回ると、小悪魔がパチュリーの背中に垂直に座って本を読んでいた。
脚は彼女のものだった。
「いくら主人が横着だからって、少し酷いだろう」
「いいんですよ。 どうせ何やったって気付かないんですから」
ケタケタと笑う小悪魔は、世界で三番目におもしろい本を読んでいた。
それでも、あまりおもしろそうにはしていなかったが――。
魔理沙がテーブルを挟んでパチュリーの前に座りなおした時、脚は彼女の口元にピーナッツを運んでいた。
酷い事にそのピーナッツは鼻の穴に放り込まれたのだが、それでも彼女は気が付いた様子も無い。
そんなに熱中できるくらい面白い本なのかと、魔理沙はパチュリーの読んでいる本がとても気になり始めたが、本がテーブルの上に開いて置かれているので、まず題名も解らない。
なんとか覗き見しようと魔理沙がやっきになっていると、さすがにパチュリーがくしゃみをした。
えぶしょん、と言う微妙な奴。
魔理沙が飛んできたピーナッツをかわしたその拍子に、倒されていた本がくっと持ち上がったので、ようやく背表紙を見る事が出来た。
『この世でもっとも恐ろしい復讐の仕方』
これは後が楽しみだ。
魔理沙はサディスティックな笑みを浮かべていたが、流石にその矛先が自分に向いている事までは予測できなかった。
■ おもしろい本 ■
「役に立つ本ないか?」
「ん」
「やくにたつほん」と平仮名で殴り書いてあった。
ペラペラに薄い本だったが、読むとアグニシャイン初歩が使えるようになった。
「玉葱いれないで。 あまり熱くしないで」
「猫かお前は」
その日はカレーを作って、二人で食べた。
本はそこそこ役に立った。
沢山本があるんだから、中にはおかしな本もある。
書架から飛び出して、うろついている奴だっているくらいだ。
だから、ここにはどんな本があっても誰も驚かない。
■ おもしろい本 ■
魔理沙が本を読んでいて、気が付くと後ろに何かいる。
見れば、一冊の魔道書が肩越しに彼女の手元を覗き込んでいた。
魔理沙が何してるんだと聞くと、その本を読んでいたのだと答える。
「本が本なんて読むのか?」
「たまに、気が向いたときとか」
「意味あるのか?」
「自分のためになる」
「どういう風に?」
「本を読むと、自分の中身が豊かになるんだ」
「中身が豊かになるったって、お前の中身だってもうぎっしだろう?」
「そんな事ないよ。 自己完結している他の本とちがって、僕はまだまだ余裕があるから」
どうれ、と魔理沙はその本の最後のページを捲ってみた。
彼が初版である事と、もう空いてるページは無い事が解った。
その事を教えてやると、その本は酷くしょぼくれて書架に引っ込んでしまった。
なんだか泣いている様にも思えたから、ちょっと悪い事したかなと魔理沙は思った。
しかし、しばらくもするとさっきの本がまた後ろに来ていた。
「諦めたんじゃなかったのか?」
「だって面白いんだもん」
まあそれくらいで良いだろう。
魔理沙は美味しいお茶を飲んだ。
■ おもしろい本 ■
「ぎゃははははははははっ!!」
「ぎゃっははははははははははははっ!!」
「ぎゃーーーっはっはっははははははっ!!」
「ぎゃはっぎゃはっぎゃはっぎゃはっ!」
魔理沙はおもいっきり下品に笑っていた。
魔理沙が笑うと、読まれている魔道書もせいぜい下品に笑う。
きっとそういう本なのだろう。 背表紙にはアメリカンジョークと書かれていた。
『図書館では静かに』と書かれている洋皮紙が、遠くで煤けているのが物悲しい。
「うるさいわね、何がそんなに面白いのよ」
「見てみろよ、こいつこんなにマヌケなんだぜ?」
「それ、あなたの事よ」
「ぎゃっはっはははははははははははははははははははっ!!」
うるさい奴が半分になったので、パチュリーは少し満足した。
■ おもしろい本 ■
「へえ・・・・・・」
食べられる本と書いてある。
ばくりっ!!!!!!
危うく手首が無くなる所だった。
■ おもしろい本 ■
世界一悲しい本は中身が白紙だった。
「作者が背表紙だけ作って三日で諦めたんだ」
「確かに悲しいが、良くある話だから世界一には程遠いな」
「僕は悲しいよ」
「まあ頑張れ」
魔理沙は本を書架に戻した。
その隣に世界一おもしろい本と書かれた本があった。
作者が同じだった。
「グッド。 パチュリー、賭けをしよう」
魔理沙はその日から三日間モルモットにされた。
世界一じゃなかったから無効だと主張してみたが、聞いて貰えなかった。
パチュリーが少し冷たかった。
■ おもしろい本 ■
パチュリーが、足の指で耳の後ろの辺りをボリボリと掻いている。
猫のように体をまるめてぱたぱた掻いていれば、少しは可愛いく見えたのだろうが、関節を無視したなまなましい白い脚が背中からにょきりと飛び出して、それがまるで蛸のようにゆっくりと動いているものだから、見ていて酷く気持ちが悪い。
「何で手を使わないんだよ」
「―――私の手は忙しいの」
返事はとても曖昧だった。
パチュリーは、わき目も振らずに本を読んでいる。
怠け者の手は、本をしっかりと抱えていた。
魔理沙が後ろに回ると、小悪魔がパチュリーの背中に垂直に座って本を読んでいた。
脚は彼女のものだった。
「いくら主人が横着だからって、少し酷いだろう」
「いいんですよ。 どうせ何やったって気付かないんですから」
ケタケタと笑う小悪魔は、世界で三番目におもしろい本を読んでいた。
それでも、あまりおもしろそうにはしていなかったが――。
魔理沙がテーブルを挟んでパチュリーの前に座りなおした時、脚は彼女の口元にピーナッツを運んでいた。
酷い事にそのピーナッツは鼻の穴に放り込まれたのだが、それでも彼女は気が付いた様子も無い。
そんなに熱中できるくらい面白い本なのかと、魔理沙はパチュリーの読んでいる本がとても気になり始めたが、本がテーブルの上に開いて置かれているので、まず題名も解らない。
なんとか覗き見しようと魔理沙がやっきになっていると、さすがにパチュリーがくしゃみをした。
えぶしょん、と言う微妙な奴。
魔理沙が飛んできたピーナッツをかわしたその拍子に、倒されていた本がくっと持ち上がったので、ようやく背表紙を見る事が出来た。
『この世でもっとも恐ろしい復讐の仕方』
これは後が楽しみだ。
魔理沙はサディスティックな笑みを浮かべていたが、流石にその矛先が自分に向いている事までは予測できなかった。
■ おもしろい本 ■
「役に立つ本ないか?」
「ん」
「やくにたつほん」と平仮名で殴り書いてあった。
ペラペラに薄い本だったが、読むとアグニシャイン初歩が使えるようになった。
「玉葱いれないで。 あまり熱くしないで」
「猫かお前は」
その日はカレーを作って、二人で食べた。
本はそこそこ役に立った。
それにしても七死氏の作品はうまいですね。読んで字のごとく「美味い」。
往年の星新一さんとかを思い出します。
もしくは引き込まれたい……。