むかしむかし、あるところに、医者と山伏と軽業師がおりました。
永琳「医者です。」
妹紅「山伏です。」
輝夜「軽業師です。」
こんな三人です。
輝夜「って、何で私が軽業師なのかしら。」
妹紅「あはは~。ぴったりじゃないの。何か芸でもしてみなさいな、ほれ。」
輝夜「………。」
妹紅「ど~したのかしら、軽業師さん?芸の一つすら出来ないとでも?」
輝夜「……ふっ。私の芸を見て、腰を抜かすといいわ。」
妹紅「むっ、いいわ。やってみなさいよ。」
山伏に挑発されるように、軽業師は芸の準備をしました。
そして、
輝夜「ど~も~、HGで~す!不死体フゥーーー!!」
妹紅「わ~~~!」
軽業師は腰を振りながら、山伏に近づきました。
腰の動きは軽快です。
妹紅「そりゃ『ゲイ』でしょうが!気持ち悪いことするな!」
永琳「違うわ。」
妹紅「何が?」
永琳「Hは『藤原妹紅』、Gは『ギックリ腰で再起不能』の頭文字よ。」
輝夜「もこたんフゥーーー!」
妹紅「ひい!腰振りながら近づくなぁ!」
輝夜「(グキッ!)ぐふっ!こ、腰が………!」
妹紅「何なのよ、一体……。」
三人は、ふとしたことで出会ったのですが、すぐに仲良しになったのです。
このまま楽しい時間が過ぎれば良かったのですが、残念ながら、そうはいきませんでした。
四季「静粛に。これより、裁判を始めます。」
三人の目の前には、地獄の閻魔様が居ました。
そう、色々あって三人は、現世で死んでしまったのです。
そして今は、閻魔様の裁きを受けるところなのです。
四季「言っておきますけど。これが私の本職なのです。」
閻魔様はまず、医者に向かって言いました。
四季「医者。貴方は生前、人々に座薬を撃ち込み過ぎた。よって地獄逝きです。」
永琳「意義有り。」
四季「認めません。」
永琳「座薬を散々撃ち込んだのは、不肖の弟子です。」
四季「弟子の不始末は師の責任でもあります。教育の不行きを反省しなさい。」
次に閻魔様は、軽業師に向かって言いました。
四季「軽業師。よりによって、ここであんなネタをするなど……。ここを何処だと心得ているのです。」
輝夜「創想話フゥー!」
四季「地獄逝き。」
最後に閻魔様は、山伏に向かって言いました。
四季「山伏。」
妹紅「はい。私には、ここで言われるような罪は犯してないと思います。」
四季「貴方は、相方の監督を怠った。よって、地獄逝きです。」
妹紅「………はい?」
四季「相方です。」
妹紅「ええと……まさかとは思うけど、その相方って言うのは……。」
輝夜「HGですよ~。」
妹紅「いや~!何でこんなのが相方なのよ~!」
輝夜「もっこすフゥーーー!!」
妹紅「気持ち悪い!近づくなぁ!」
四季「地獄逝き、と。」
閻魔様の裁きは終わりました。
三人は揃って、地獄逝きです。
四季「これにて、裁判を終わります。では、この三人を地獄に連れて行きなさい。」
小町「ははっ。ほら、こっち来い。」
三人は鬼に連れて行かれました。
小町「まずお前達には、風呂に入ってもらおうか。」
輝夜「サービスシーン?」
永琳「あらあら。良い子も見ていると言うのに。」
妹紅「……恥ずかしいなぁ。」
小町「違う!」
鬼の足が止まりました。
小町「お前達が受ける罰は、釜茹で地獄だ!」
鬼が叫ぶと、三人の目の前に、大きな釜が現れました。
中ではお湯がグツグツと煮立っています。
小町「この釜に入って、地獄の苦しみを味わうのだ!はっはっはっはっは!」
永琳「立派な釜ね。」
輝夜「む。私の御鉢の方がレアだと思うわよ。」
妹紅「そんなんに対抗心燃やさなくてもいいじゃない。」
小町「……あたい、ひょっとして空回りした?」
グツグツと煮立っている釜で三人を煮て、とことん苦しめると言うのです。
しかし、三人は割りと平然としていました。
鬼はちょっとヘコみました。
小町「ふん、まぁいいさ。その余裕も、長くは持つまい。」
鬼は立ち直ると、三人の方を向きました。
小町「さて、誰から行くかね………って、こらぁ!何やってるんだ!」
鬼はつい、怒鳴ってしまいました。
と、言うのも……。
妹紅「ふい~、極楽極楽。」
輝夜「あ゛~、年寄り臭いわねぇ。」
妹紅「あんたが言えるかね、それ。」
永琳「どうですか、私特製の入浴剤は。」
輝夜「いいわ~。地獄の釜も温泉に変わる。流石ね、永琳。」
妹紅「ほんとは山伏の仕事なんだけど。ま、気持ち良いからいいか。」
三人は、まるで温泉にでも入っているかのように、のんびりしていました。
どうやら医者が、特製の入浴剤を入れて、釜のお湯を温泉にしてしまったようです。
三人バスタオルを巻いた艶姿になり、中でぬくぬくしています。
輝夜「それにしても永琳、スタイルが良いわよねえ。ちょっと羨ましいわ。」
妹紅「ほんとねぇ。やっぱり、もうちょっと育ってから薬飲んだ方がよかったのかなぁ。」
永琳「いえいえ。お二人はお二人で、私に無い良いところがあるのですよ。需要もあるし。」
小町「おいこら!何、美人OL三人組温泉旅行殺人事件のサービスカット的なことやってるんだ!」
輝夜「殺人事件。第一の犠牲者、閻魔様。そして次々と殺される鬼達……!」
妹紅「犯人は輝夜。」
輝夜「ポロリもあるよ。腕が。」
小町「……人を無視しないでくれます?」
女子高生の修学旅行か、はたまたOLの温泉旅行か。
そんな気分になった三人でした。
鬼は蚊帳の外です。
・
・
・
四季「さて、仕事も落ち着いたし、あの三人の様子でも見に行こうかしら。」
閻魔様は気分転換も兼ねて、三人の所へ行くことにしました。
四季「それなりに反省していればいいのですけどね。」
向かうは、地獄の釜が有る部屋です。
閻魔様がその部屋に着くと、そこでは……。
輝夜「ふ~、お酒が美味しい。」
妹紅「地獄で酒って言うのも、風流ねぇ。」
永琳「ささ、姫、もう一杯。」
輝夜「ん。苦しゅうないぞ。」
妹紅「ほら、折角だから、あんたも飲みなさいな。」
小町「おお、これはすまんねぇ。」
四季「……………。」
閻魔様は、愕然としました。
三人は釜の中で気持ちよさそうに、お酒を飲んでいたのです。
おまけに鬼まで、温泉でぬくぬくしていたり、酒を飲んだりしていたのです。
四季「こら!貴方たち!」
小町「あら、四季さま。ご一緒にどうですか?」
永琳「ささ、もう一杯。」
小町「あ、こりゃどうも。………く~っ!仕事サボって飲む酒は格別だねぇ!」
四季「サボるんじゃない!」
小町「うわっ!四季さま、せめて服は脱ぐべきがぼがぼがぼ………。」
閻魔様は釜に飛び込んで、鬼を沈めてしまいました。
四季「…貴方たちは、もう少し痛い目を見なければいけないようね。」
閻魔様は、三人に向かって言いました。
どうやら、別の場所に連れて行くようです。
四季「小町、何時まで寝ているの?さっさと次の部屋に案内しなさい。」
小町「……………。」
四季「小町。風呂場で寝ると、風邪をひくわよ。」
永琳「水噴いてますよ、閻魔様。」
鬼が目覚めるのは、十分後だったそうな……。
・
・
・
小町「あ~、酷い目に遭った。」
輝夜「自業自得ね。」
小町「まぁ、温泉は気持ちよかったけどさ。」
復活した鬼は、三人を別の部屋に連れて行っています。
小町「こほん。さて、次はここ、針山地獄だ!」
三人が連れて行かれた場所は、針山地獄でした。
文字通り、全てが針で出来た山だったのです。
小町「地獄に来た者は死ぬことが無い。この針に刺さったまま、未来永劫痛みに苦しむのだ!」
鬼が三人を脅すような事を言いました。
しかし、次の瞬間、鬼の目に入ってきた光景は…。
輝夜「う゛~、きく~。」
妹紅「いたたっ!もっと優しくやってよ。」
永琳「あら、私の半分は優しさで出来ているのよ?」
妹紅「後の半分は何なのよ……あ~、効いてきた効いてきた。」
輝夜「M。」
妹紅「何か言った?」
輝夜「別に。」
医者が軽業師と山伏に、針治療をしていました。
小町「………おい、こら。」
永琳「あら、貴方もいかがかしら?」
小町「この部屋の針は、そんなことに使うもんじゃあないんですけど?」
永琳「肩こり腰痛冷え性、何でもござれ。」
小町「いや、だから…。」
永琳「今ならサービスしておくわよ?」
小町「ぐ……!」
針治療は、健康に良いのです。
鬼が篭絡されるのは、時間の問題でした。
・
・
・
四季「さて、食事も済みましたし、あの三人の様子でも見に行きましょうか。」
閻魔様は再び、三人の様子を見に行くことにしました。
しかし、針山の部屋に入った瞬間、またも閻魔様は愕然としました。
小町「う゛~、う~。」
永琳「凝ってるわねぇ。そんなに忙しいのかしら?」
小町「いやいや、適度に息抜きしてるから。それよりも、ほら……。」
永琳「ああ、なるほど。付いてるモノは西瓜かメロンか。」
輝夜「まな板。」
妹紅「鉄板。」
輝夜「む……!」
妹紅「ぐぅ……!」
針治療している医者と、されている鬼が居ました。
軽業師と山伏は、微妙に惨めな言い合いをしていました。
四季「……貴方たち。」
怒りを抑えたような声で、閻魔様は一同に声をかけました。
小町「う~ん、すっきりした~。やっぱ大きいと、肩が凝るもんだ。」
四季「ふんっ!」
小町「ぐぅ!」
閻魔様は鬼に針をブッ刺して、黙らせました。
小町「針!痛い!脳!死ぬ!壊れる!」
四季「貴方の頭は、一度くらい壊れたほうが良い!」
鬼は、痛みに悶絶しています。
憤慨しつつ閻魔様は、三人に話しかけます。
永琳「あら、閻魔様。」
四季「貴方たちは、ここを何処だと心得ているのです……?」
輝夜「極楽?」
妹紅「健康ランド?」
四季「………。」
永琳「ここで開業するのも、面白いかしら。」
誰も地獄とは言ってくれません。
小町「痛い痛い!針治療は危険ですから良い子は真似しちゃ駄目だゾ?痛い!誰か抜いてぇ~!」
四季「お黙りなさい!」
小町「はぅあ~!」
閻魔様はもう一本、鬼の頭に針を刺しました。
頭に二本の突起物なその姿は、まさに鬼です。
永琳「ッ!いけない!」
輝夜「永琳?」
唐突に、医者が叫びました。
永琳「閻魔様!今すぐ針を抜いてください!」
四季「どうしたの?」
永琳「その針の組み合わせは、禁断のツボ。巨大化のツボなのです!」
四季「……何ですって!」
何と閻魔様は、意識せずに巨大化のツボを刺激してしまったのです。
急いで鬼の頭から針を抜こうとしましたが、手遅れでした。
小町「あんぎゃーーーー!!」
鬼が巨大化してしまいました。
四季「………何と言うこと………。」
小町「あんぎゃーーーー!!」
鬼は理性を失っている模様で、大暴れしています。
針の山を台無しにし、地獄の釜をひっくり返し……。
地獄が地獄絵図です。
輝夜「派手に暴れてるわね。このままでは、壊滅するわ。」
四季「半分は、私のミスです……。」
妹紅「半分かい。」
閻魔様が嘆いている間にも、地獄は壊滅へ向かっています。
妹紅「おや、あれは……。」
輝夜「出口ね。」
永琳「出口ですね。」
暴れる鬼によって、地獄から脱出するための出口が、開いたようです。
永琳「ちょうど良いです。とっととズラかりましょう。」
輝夜「そうね。」
四季「待ちなさい!貴方たちはこの惨状を見て、何か思うところはないのですか!」
妹紅「面白いと思うけどなぁ。」
輝夜「真の創造は、完全な破壊の後に成されるものなのです。」
四季「創造など望んではいません!この場で善行を積む気は無いので……っ!?」
説教の途中ですが、閻魔様が鬼に捕まってしまいました。
小町「あんぎゃーーー!」
四季「小町!いい加減にしなさい!」
輝夜「よし、野郎ども、ズラかれ。」
永琳「へい、お頭。」
妹紅「いえっさ。」
四季「ああ!待ちなさい!」
閻魔様は動けません。
三人はこの隙に、地獄から抜け出しました。
四季「ああもう、今日は厄日だわ……。小町!いつもよりキツいお仕置きをしてあげるわ!」
小町「あきゃん!」
・
・
・
小町「あぅぅ………。」
四季「さて、どうしたものかしら。色々と……。」
巨大化した鬼は元に戻りました。
しかし、荒れた地獄は、元に戻ることはありませんでした。
逃がした三人も、戻ってはきません。
閻魔様は、困ってしまいました。
永琳「あらあら。これはまた、派手に壊れましたね。」
輝夜「ここまでやると、清々するわね。」
妹紅「私でも、ここまでは焼き払えないかな~。」
医者、軽業師、山伏の三人が現れました。
地獄を脱出したはずなのですが…。
四季「貴方たちは…戻ってきたのね。」
永琳「ええ。戻ってきましたとも。」
四季「罪は償うもの。自ら罰を受けようと言うのは、見上げた心がけです。」
永琳「いえ、今日は罰を受けに来たのではなくて。」
どうやら三人は、何かを企んで、ここに戻ってきたようです。
四季「では、何をしに来たのです?」
永琳「ええ、実はここに、レジャー施設を創ろうと思いまして。」
四季「は?」
永琳「釜風呂、針山での針治療。健康マニアな身内が大絶賛でして。」
妹紅「それで、こいつがヘンな経営戦略持ち出して、ここに温泉施設を創ろうってさ。」
輝夜「ヘンとは失礼ね。絶対成功するのよ、絶対。」
軽業師は、自身満々です。
四季「ま、待ちなさい!ここは地獄。楽しむところでは無い!」
輝夜「楽しみも無い人生なんて、何のための人生なのかしら。」
四季「ここに来た地点で、既に人生は終わっています。」
妹紅「死後もそれなりに楽しめってことよ。」
四季「だから、ここは地獄です!」
永琳「ウドンゲ、それはそっちね。」
鈴仙「何だか私知らないうちに死んで地獄に居ますけどどう言う事なんですか師匠~~~!!」
四季「勝手に亡者を増やさない!」
鈴仙「亡者じゃありませんってば~!」
閻魔様が何を言っても、三人は聞く耳持ちません。
あれよあれよと言ううちに、荒れた地獄が綺麗になったり、
釜地獄の釜や、針山地獄の針が直って行きます。
四季「嗚呼……何故、こうなってしまったのかしら……。」
地獄は三人の、主に医者の手によって、極楽も真っ青の温泉レジャー施設となってしまいました。
閻魔様は、三人への罰として、この施設を運営させることで、渋々納得したのですが、
後日、上司に散々怒られたそうな……。
おしまい
キャスト
医者 ・・・ 八意 永琳
軽業師 ・・・ 蓬莱山 輝夜
山伏 ・・・ 藤原 妹紅
閻魔様 ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
鬼 ・・・ 小野塚 小町
亡者 ・・・ 鈴仙・U・イナバ
永琳「医者です。」
妹紅「山伏です。」
輝夜「軽業師です。」
こんな三人です。
輝夜「って、何で私が軽業師なのかしら。」
妹紅「あはは~。ぴったりじゃないの。何か芸でもしてみなさいな、ほれ。」
輝夜「………。」
妹紅「ど~したのかしら、軽業師さん?芸の一つすら出来ないとでも?」
輝夜「……ふっ。私の芸を見て、腰を抜かすといいわ。」
妹紅「むっ、いいわ。やってみなさいよ。」
山伏に挑発されるように、軽業師は芸の準備をしました。
そして、
輝夜「ど~も~、HGで~す!不死体フゥーーー!!」
妹紅「わ~~~!」
軽業師は腰を振りながら、山伏に近づきました。
腰の動きは軽快です。
妹紅「そりゃ『ゲイ』でしょうが!気持ち悪いことするな!」
永琳「違うわ。」
妹紅「何が?」
永琳「Hは『藤原妹紅』、Gは『ギックリ腰で再起不能』の頭文字よ。」
輝夜「もこたんフゥーーー!」
妹紅「ひい!腰振りながら近づくなぁ!」
輝夜「(グキッ!)ぐふっ!こ、腰が………!」
妹紅「何なのよ、一体……。」
三人は、ふとしたことで出会ったのですが、すぐに仲良しになったのです。
このまま楽しい時間が過ぎれば良かったのですが、残念ながら、そうはいきませんでした。
四季「静粛に。これより、裁判を始めます。」
三人の目の前には、地獄の閻魔様が居ました。
そう、色々あって三人は、現世で死んでしまったのです。
そして今は、閻魔様の裁きを受けるところなのです。
四季「言っておきますけど。これが私の本職なのです。」
閻魔様はまず、医者に向かって言いました。
四季「医者。貴方は生前、人々に座薬を撃ち込み過ぎた。よって地獄逝きです。」
永琳「意義有り。」
四季「認めません。」
永琳「座薬を散々撃ち込んだのは、不肖の弟子です。」
四季「弟子の不始末は師の責任でもあります。教育の不行きを反省しなさい。」
次に閻魔様は、軽業師に向かって言いました。
四季「軽業師。よりによって、ここであんなネタをするなど……。ここを何処だと心得ているのです。」
輝夜「創想話フゥー!」
四季「地獄逝き。」
最後に閻魔様は、山伏に向かって言いました。
四季「山伏。」
妹紅「はい。私には、ここで言われるような罪は犯してないと思います。」
四季「貴方は、相方の監督を怠った。よって、地獄逝きです。」
妹紅「………はい?」
四季「相方です。」
妹紅「ええと……まさかとは思うけど、その相方って言うのは……。」
輝夜「HGですよ~。」
妹紅「いや~!何でこんなのが相方なのよ~!」
輝夜「もっこすフゥーーー!!」
妹紅「気持ち悪い!近づくなぁ!」
四季「地獄逝き、と。」
閻魔様の裁きは終わりました。
三人は揃って、地獄逝きです。
四季「これにて、裁判を終わります。では、この三人を地獄に連れて行きなさい。」
小町「ははっ。ほら、こっち来い。」
三人は鬼に連れて行かれました。
小町「まずお前達には、風呂に入ってもらおうか。」
輝夜「サービスシーン?」
永琳「あらあら。良い子も見ていると言うのに。」
妹紅「……恥ずかしいなぁ。」
小町「違う!」
鬼の足が止まりました。
小町「お前達が受ける罰は、釜茹で地獄だ!」
鬼が叫ぶと、三人の目の前に、大きな釜が現れました。
中ではお湯がグツグツと煮立っています。
小町「この釜に入って、地獄の苦しみを味わうのだ!はっはっはっはっは!」
永琳「立派な釜ね。」
輝夜「む。私の御鉢の方がレアだと思うわよ。」
妹紅「そんなんに対抗心燃やさなくてもいいじゃない。」
小町「……あたい、ひょっとして空回りした?」
グツグツと煮立っている釜で三人を煮て、とことん苦しめると言うのです。
しかし、三人は割りと平然としていました。
鬼はちょっとヘコみました。
小町「ふん、まぁいいさ。その余裕も、長くは持つまい。」
鬼は立ち直ると、三人の方を向きました。
小町「さて、誰から行くかね………って、こらぁ!何やってるんだ!」
鬼はつい、怒鳴ってしまいました。
と、言うのも……。
妹紅「ふい~、極楽極楽。」
輝夜「あ゛~、年寄り臭いわねぇ。」
妹紅「あんたが言えるかね、それ。」
永琳「どうですか、私特製の入浴剤は。」
輝夜「いいわ~。地獄の釜も温泉に変わる。流石ね、永琳。」
妹紅「ほんとは山伏の仕事なんだけど。ま、気持ち良いからいいか。」
三人は、まるで温泉にでも入っているかのように、のんびりしていました。
どうやら医者が、特製の入浴剤を入れて、釜のお湯を温泉にしてしまったようです。
三人バスタオルを巻いた艶姿になり、中でぬくぬくしています。
輝夜「それにしても永琳、スタイルが良いわよねえ。ちょっと羨ましいわ。」
妹紅「ほんとねぇ。やっぱり、もうちょっと育ってから薬飲んだ方がよかったのかなぁ。」
永琳「いえいえ。お二人はお二人で、私に無い良いところがあるのですよ。需要もあるし。」
小町「おいこら!何、美人OL三人組温泉旅行殺人事件のサービスカット的なことやってるんだ!」
輝夜「殺人事件。第一の犠牲者、閻魔様。そして次々と殺される鬼達……!」
妹紅「犯人は輝夜。」
輝夜「ポロリもあるよ。腕が。」
小町「……人を無視しないでくれます?」
女子高生の修学旅行か、はたまたOLの温泉旅行か。
そんな気分になった三人でした。
鬼は蚊帳の外です。
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四季「さて、仕事も落ち着いたし、あの三人の様子でも見に行こうかしら。」
閻魔様は気分転換も兼ねて、三人の所へ行くことにしました。
四季「それなりに反省していればいいのですけどね。」
向かうは、地獄の釜が有る部屋です。
閻魔様がその部屋に着くと、そこでは……。
輝夜「ふ~、お酒が美味しい。」
妹紅「地獄で酒って言うのも、風流ねぇ。」
永琳「ささ、姫、もう一杯。」
輝夜「ん。苦しゅうないぞ。」
妹紅「ほら、折角だから、あんたも飲みなさいな。」
小町「おお、これはすまんねぇ。」
四季「……………。」
閻魔様は、愕然としました。
三人は釜の中で気持ちよさそうに、お酒を飲んでいたのです。
おまけに鬼まで、温泉でぬくぬくしていたり、酒を飲んだりしていたのです。
四季「こら!貴方たち!」
小町「あら、四季さま。ご一緒にどうですか?」
永琳「ささ、もう一杯。」
小町「あ、こりゃどうも。………く~っ!仕事サボって飲む酒は格別だねぇ!」
四季「サボるんじゃない!」
小町「うわっ!四季さま、せめて服は脱ぐべきがぼがぼがぼ………。」
閻魔様は釜に飛び込んで、鬼を沈めてしまいました。
四季「…貴方たちは、もう少し痛い目を見なければいけないようね。」
閻魔様は、三人に向かって言いました。
どうやら、別の場所に連れて行くようです。
四季「小町、何時まで寝ているの?さっさと次の部屋に案内しなさい。」
小町「……………。」
四季「小町。風呂場で寝ると、風邪をひくわよ。」
永琳「水噴いてますよ、閻魔様。」
鬼が目覚めるのは、十分後だったそうな……。
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小町「あ~、酷い目に遭った。」
輝夜「自業自得ね。」
小町「まぁ、温泉は気持ちよかったけどさ。」
復活した鬼は、三人を別の部屋に連れて行っています。
小町「こほん。さて、次はここ、針山地獄だ!」
三人が連れて行かれた場所は、針山地獄でした。
文字通り、全てが針で出来た山だったのです。
小町「地獄に来た者は死ぬことが無い。この針に刺さったまま、未来永劫痛みに苦しむのだ!」
鬼が三人を脅すような事を言いました。
しかし、次の瞬間、鬼の目に入ってきた光景は…。
輝夜「う゛~、きく~。」
妹紅「いたたっ!もっと優しくやってよ。」
永琳「あら、私の半分は優しさで出来ているのよ?」
妹紅「後の半分は何なのよ……あ~、効いてきた効いてきた。」
輝夜「M。」
妹紅「何か言った?」
輝夜「別に。」
医者が軽業師と山伏に、針治療をしていました。
小町「………おい、こら。」
永琳「あら、貴方もいかがかしら?」
小町「この部屋の針は、そんなことに使うもんじゃあないんですけど?」
永琳「肩こり腰痛冷え性、何でもござれ。」
小町「いや、だから…。」
永琳「今ならサービスしておくわよ?」
小町「ぐ……!」
針治療は、健康に良いのです。
鬼が篭絡されるのは、時間の問題でした。
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四季「さて、食事も済みましたし、あの三人の様子でも見に行きましょうか。」
閻魔様は再び、三人の様子を見に行くことにしました。
しかし、針山の部屋に入った瞬間、またも閻魔様は愕然としました。
小町「う゛~、う~。」
永琳「凝ってるわねぇ。そんなに忙しいのかしら?」
小町「いやいや、適度に息抜きしてるから。それよりも、ほら……。」
永琳「ああ、なるほど。付いてるモノは西瓜かメロンか。」
輝夜「まな板。」
妹紅「鉄板。」
輝夜「む……!」
妹紅「ぐぅ……!」
針治療している医者と、されている鬼が居ました。
軽業師と山伏は、微妙に惨めな言い合いをしていました。
四季「……貴方たち。」
怒りを抑えたような声で、閻魔様は一同に声をかけました。
小町「う~ん、すっきりした~。やっぱ大きいと、肩が凝るもんだ。」
四季「ふんっ!」
小町「ぐぅ!」
閻魔様は鬼に針をブッ刺して、黙らせました。
小町「針!痛い!脳!死ぬ!壊れる!」
四季「貴方の頭は、一度くらい壊れたほうが良い!」
鬼は、痛みに悶絶しています。
憤慨しつつ閻魔様は、三人に話しかけます。
永琳「あら、閻魔様。」
四季「貴方たちは、ここを何処だと心得ているのです……?」
輝夜「極楽?」
妹紅「健康ランド?」
四季「………。」
永琳「ここで開業するのも、面白いかしら。」
誰も地獄とは言ってくれません。
小町「痛い痛い!針治療は危険ですから良い子は真似しちゃ駄目だゾ?痛い!誰か抜いてぇ~!」
四季「お黙りなさい!」
小町「はぅあ~!」
閻魔様はもう一本、鬼の頭に針を刺しました。
頭に二本の突起物なその姿は、まさに鬼です。
永琳「ッ!いけない!」
輝夜「永琳?」
唐突に、医者が叫びました。
永琳「閻魔様!今すぐ針を抜いてください!」
四季「どうしたの?」
永琳「その針の組み合わせは、禁断のツボ。巨大化のツボなのです!」
四季「……何ですって!」
何と閻魔様は、意識せずに巨大化のツボを刺激してしまったのです。
急いで鬼の頭から針を抜こうとしましたが、手遅れでした。
小町「あんぎゃーーーー!!」
鬼が巨大化してしまいました。
四季「………何と言うこと………。」
小町「あんぎゃーーーー!!」
鬼は理性を失っている模様で、大暴れしています。
針の山を台無しにし、地獄の釜をひっくり返し……。
地獄が地獄絵図です。
輝夜「派手に暴れてるわね。このままでは、壊滅するわ。」
四季「半分は、私のミスです……。」
妹紅「半分かい。」
閻魔様が嘆いている間にも、地獄は壊滅へ向かっています。
妹紅「おや、あれは……。」
輝夜「出口ね。」
永琳「出口ですね。」
暴れる鬼によって、地獄から脱出するための出口が、開いたようです。
永琳「ちょうど良いです。とっととズラかりましょう。」
輝夜「そうね。」
四季「待ちなさい!貴方たちはこの惨状を見て、何か思うところはないのですか!」
妹紅「面白いと思うけどなぁ。」
輝夜「真の創造は、完全な破壊の後に成されるものなのです。」
四季「創造など望んではいません!この場で善行を積む気は無いので……っ!?」
説教の途中ですが、閻魔様が鬼に捕まってしまいました。
小町「あんぎゃーーー!」
四季「小町!いい加減にしなさい!」
輝夜「よし、野郎ども、ズラかれ。」
永琳「へい、お頭。」
妹紅「いえっさ。」
四季「ああ!待ちなさい!」
閻魔様は動けません。
三人はこの隙に、地獄から抜け出しました。
四季「ああもう、今日は厄日だわ……。小町!いつもよりキツいお仕置きをしてあげるわ!」
小町「あきゃん!」
・
・
・
小町「あぅぅ………。」
四季「さて、どうしたものかしら。色々と……。」
巨大化した鬼は元に戻りました。
しかし、荒れた地獄は、元に戻ることはありませんでした。
逃がした三人も、戻ってはきません。
閻魔様は、困ってしまいました。
永琳「あらあら。これはまた、派手に壊れましたね。」
輝夜「ここまでやると、清々するわね。」
妹紅「私でも、ここまでは焼き払えないかな~。」
医者、軽業師、山伏の三人が現れました。
地獄を脱出したはずなのですが…。
四季「貴方たちは…戻ってきたのね。」
永琳「ええ。戻ってきましたとも。」
四季「罪は償うもの。自ら罰を受けようと言うのは、見上げた心がけです。」
永琳「いえ、今日は罰を受けに来たのではなくて。」
どうやら三人は、何かを企んで、ここに戻ってきたようです。
四季「では、何をしに来たのです?」
永琳「ええ、実はここに、レジャー施設を創ろうと思いまして。」
四季「は?」
永琳「釜風呂、針山での針治療。健康マニアな身内が大絶賛でして。」
妹紅「それで、こいつがヘンな経営戦略持ち出して、ここに温泉施設を創ろうってさ。」
輝夜「ヘンとは失礼ね。絶対成功するのよ、絶対。」
軽業師は、自身満々です。
四季「ま、待ちなさい!ここは地獄。楽しむところでは無い!」
輝夜「楽しみも無い人生なんて、何のための人生なのかしら。」
四季「ここに来た地点で、既に人生は終わっています。」
妹紅「死後もそれなりに楽しめってことよ。」
四季「だから、ここは地獄です!」
永琳「ウドンゲ、それはそっちね。」
鈴仙「何だか私知らないうちに死んで地獄に居ますけどどう言う事なんですか師匠~~~!!」
四季「勝手に亡者を増やさない!」
鈴仙「亡者じゃありませんってば~!」
閻魔様が何を言っても、三人は聞く耳持ちません。
あれよあれよと言ううちに、荒れた地獄が綺麗になったり、
釜地獄の釜や、針山地獄の針が直って行きます。
四季「嗚呼……何故、こうなってしまったのかしら……。」
地獄は三人の、主に医者の手によって、極楽も真っ青の温泉レジャー施設となってしまいました。
閻魔様は、三人への罰として、この施設を運営させることで、渋々納得したのですが、
後日、上司に散々怒られたそうな……。
おしまい
キャスト
医者 ・・・ 八意 永琳
軽業師 ・・・ 蓬莱山 輝夜
山伏 ・・・ 藤原 妹紅
閻魔様 ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
鬼 ・・・ 小野塚 小町
亡者 ・・・ 鈴仙・U・イナバ
しかしマイナーなw 時折この三人を仲間にしておけば地獄へ逝っても助かると嘯く人も居ますが、普通通じませんてw
御大のネタ蔵の豊富さには舌を巻くばかりです。
まあよりにもよって、まず絶対に死後に縁の無い三人が地獄に逝った時点で崩壊する運命は決まってましたね。
ゆゆ様もそうですが、えーき様も蓬莱人が苦手そうだなぁ・・・・・・。
行きがかりで殺されたうどんげに、合掌(-人-)
元の話読んだことあるのに思いだせない~