Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

無限の“超”高速飛行物体

2005/11/30 06:00:06
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 ※異次元空間・未知との遭遇に注意。











 ―――世の中には、しなくてもいい体験というものがある。








 Guy力「無限の“超”高速飛行物体」- Hard -










 Feast Day 16:55 博麗神社


「お、来たぜ」
「そうね。次はやっぱりあんたか、咲夜」
 夕陽の赤に染まる博麗神社境内。
 十六夜咲夜が長い石段を飛び越えてそこに降り立つなり早々、拝殿の縁側でのんきにお茶をしばいていた二人―――博麗霊夢と霧雨魔理沙に声を掛けられる。
「あら? 事前にアポを取ったつもりは無いけれど……まあそれなら話が早いわ。八雲紫がどこに居るか知らない?」
 霊夢に向かい単刀直入に尋ねる咲夜。
 ここ最近の宴会続きに不信感を抱いていた彼女は、一昨日から何か裏が有りそうな人物の元へ当たっていたのだが……どれもこれも見当外れ。異変の原因になりそうなのは残すところ、居所の掴めない八雲紫のみとなった。
「境界」上に棲んでいる得体の知れないもの同士、霊夢なら彼女についてなんらかの手がかりを持っているのではないか……そう見当をつけてやってきた次第である。
「さあ知らないわよそんなの……と、本来なら言うところなんだけど」
 意味深長な霊夢の言葉に、隣の魔理沙が続ける。
「実はその件についてひとつ、お前に頼みたいことがあるんだが」
「……で、結局居所は知っているわけね? その上でのことなら聞かなくも無いけど」
 話の流れを汲んで、念のため確認する。このあたりの連中の話は脱線してばかりいる故、余計な回り道が多い。特に彼女の目の前に居る魔理沙とはそれで昨日一悶着有ったばかりだ。
「もちろん。おっと、時間が無いから手短に話すぜ?」
 時刻はそろそろ午後5:00を迎える。ちょうど昼と夜の境、逢魔が時の頃合だ。
「実は最近、三日にいっぺんは紫に喧嘩売るヤツが居るのよ。それもとっかえひっかえ……まあ、あんたが初めてじゃないってわけ」
「それは初耳……だけどそうか」
 最近紅魔館に難癖付けてくる不逞の輩が多いのは、何のことは無い……彼女らは今の自分と同じ行動を取っただけに過ぎないのだと、そう思い至る咲夜。
「でな、私も前に紫と戦ったんだが……どうしても抜けられないスペルが有るんだよ。悔しいが、それをお前に譲るぜ」
「へえ、珍しい。負けず嫌いな貴女がどういう風の吹き回し?」
「喰らってみりゃ判るさ、と言いたいとこだが。……速過ぎて見えないんだよ。グレイズ効かないどころかガードも出来ないスペルだ」
 腕組みうーむ、と唸る魔理沙に、今度は霊夢が言葉を繋げる。
「私はまだ見たこと無いんだけど、それが本当ならかなり反則くさいわよね。突破口が見つからないスペルは一応、御法度だし……まああいつに良心が有るのなら、だけど」
「問題は速過ぎて、それがどんな攻撃なのかも分からないことなんだ。そこでお前に頼む、と」
 結局なんだかんだで説明が回りくどいな、と咲夜は嘆息して、
「ええとつまり、時を止めてその正体を暴けってことね?」
「私はさっきからそう言ってるだろ? まあ宜しく頼む」
 さらにもうひとつ溜息。
「それより。まだ肝心な事が抜けているでしょう? 八雲紫はどこに居」
「ここに居ますけど」
 不意に耳元で囁かれる声。思わず咲夜は飛び退ってソレから距離を取った。
「悪趣味ね。今の話、聞き耳立ててたわけ?」
「いいえ、呼ばれたから出てきただけです。……予定より5分早いんだものね」
「? ……まあいいわ、いろいろと以下略ってことで。貴女が犯人ねいざ尋常に勝負勝負」
 言って咲夜は白銀のナイフを取り出しその切っ先を目前の対象―――八雲紫へと向ける。
 紫はそれを「またか」と呆れたように見遣ってから、手にした扇をパチンと閉じた。






 少女戦闘中……いろいろと略。



「御自慢の式も退場願いましたし……さてお次は何かしら?」
 八雲藍の飛び入り支援をも打ち破り、未だ余裕の色を見せる咲夜。
 対する紫もその貌に、浮かべた微笑は微塵も揺らぐこと無く―――次のスペルカードを懐より取り出し浪々と宣言する。
『外力「無限の超高速飛行物体」』
(やっと本命が来たわね……まずは様子見、と?)
 瞬間。
「ぐっ…………!?」
 咲夜の身体は足元を掬われ宙に舞う。
(今、何をした!?)
 空中で反転し着地の態勢を整えつつ、目の前の事象の分析を試みる。
 が、それも束の間、
「…………!!」
 身体の両脇を鋭い衝撃が奔る。
「く!」
 咄嗟に紫の方を見遣るも、彼女自身には特別な動作も何も見受けられず、ただ優雅に佇んでいるだけだ。
 直後、
 ……はらり。
 彼女の頭上を「何か」が通り抜け、純白のプリムを真っ二つに切り裂いていた。
(なるほど、こういう事)
 確かに魔理沙の言うとおり、正体不明不可視の超高速攻撃だ……動体視力に自信は有るが、まさかこれほどとは。
 魔理沙の話だから、と楽観視していた事を咲夜は恥じた。
(先程のアレからすると、少なくても二つ以上は有る!)
 状況を打開するべく、咲夜は迷わずスペルカードを発動させる。

『時よッ!!』

 プライベートスクウェア……発動までに少々時間が掛かるが、運良く間に合った。
 魔力によって場の時間が停止、いや遅延される。術成立までの速度を優先した形だ。
(これなら!)
 これなら見えるはずだ。そう彼女は思った、が。
「っ! う、そ」
 確かに見えた。何物かが迫り来るのが視認出来た、はっきりと。しかし―――身体がその速度についていかない。
「ぐ」(ひとつ、)
 足元に一撃。
「あっ、」(ふたつ、)
 腹部に一撃、
 たまらず吹き飛ばされ高く上がったところに、
「あ!?」
(……みっつ!!)
 身体中に奔る痛みに苛まれつつも、それぞれの軌跡を辛うじて知ることが出来た。
 だがその代償は安くは無いようである。受身も取れず地面に落ちる咲夜。
 同時に術も途切れた。
「あらあら。大口叩いた割にはあっけないのねえ」
 閉じられていた扇を再び開き、口元を覆って嘲笑する紫。
「さ、早く立ちなさいな。ぴよぴよしてるトコに一撃必殺仕掛けるほど、私は鬼じゃあありません……あらいけない」
「鬼」という単語を漏らして、慌てて口を押さえる紫。完全にお遊び気分である。
「…………」
 咲夜の目の色が変わる。文字通り、蒼から深紅へと。
 無言で立ち上がると射抜く視線で紫を見据えた。
「休憩時間は終わりね? じゃあ再開、と」
 紫が笑みを強くする。
 次の瞬間、咲夜は強く地を蹴った。
(この高さね!)
 そして何事も起こらず、咲夜は再び地面に降りる。
「あら」
 少し驚いた声を紫は上げる。
「じゃあもう一度……」
 その声に合わせ、再び飛翔する咲夜。
 しかし高度は先程よりも低く、地上五尺程度に抑えられていた。
 また、新しい傷を創ること無く咲夜は着地する。
「まぐれじゃないみたいね……見切られたかしら? 少しペースを上げましょうか……ほら!」
 咲夜は三度精神を研ぎ澄ます。すると、
(見える!)
 三本の青白い軌跡。それらはただ真っ直ぐに、相変わらず信じられない速度で飛翔しようとしている。
 瞬間、咲夜は地に身を伏せる。
 頭上をアレが通り抜ける感覚……その後にはやはり青い軌跡。
 別に飛行物体自体が発光している訳ではない。彼女が見ているのは、それそのものが持つ「気配」。
 殺気のような闘気のような、あるいは高密度の魔力のような……とにかくそのエネルギーの行こうとする先を感じ取っているのだ。
 それを元に物体そのものの軌跡を予測し、ソレが来ない場所に移動している訳である。
 とにかくソレらはその凄まじいスピード故、途中で曲がることは出来ないようだ。射出角さえ判れば回避は容易い……。
 紫の言の通りサイクルは上がるが、咲夜を捕らえるには至らない。彼女にとっては既に縄跳び同然であった。
(……いい加減疲れてきたわね)
 とはいえ紫本人に攻撃出来なければジリ貧である。
 そろそろ決めるか……そう新たに取り出したカードは。

『―――動くな』

 彼女の呪言が世界を凍てつかせる。
 停止した時の世界は彼女の世界。
 しかしその最中、信じられない事象が起こる。
 八雲紫の周りから、空間の裂け目が現れていた。そこまではいい、術の発動時以来それ自体に動きは無い。
 問題はその中身。それを通して何かがゆっくりと飛び出てくる。
(まさかそんな、時間は止まっている筈なのに―――!?)
 そう、
 それは、
 幻想狂想穴から少しずつ姿を現して。
 いや、これはチャンスである。魔理沙からの依頼―――超高速飛行物体の、その謎に包まれた正体を見定める為の。
 咲夜自身苦汁を舐めさせられた訳だし、それを抜きにしても興味がある。ひとまず落ち着いて、ソレの挙動を凝視する……。



 最初は、磨きこまれた曲面。なんらかの紋様がある。―――棒、だろうか?
 次に、その径が太く歪になった。―――どうやら回転しているようで、まだ形は判らない。
 何となく白色―――いやフレッシュカラー、だろうか? に見える。
 やがてソレはスキマと繋がる穴から完全に抜け出して。なにやら形を変えた。
 ここらへんで、そろそろ咲夜の思考が停滞し始めた。これ以上見てはいけない、これに気づいたら正気を保ってはいられない……
 そう心のどこかで警鐘が鳴らされるも、この世界に動くものは彼女自身とソレらだけ。
 逃れる術など既に無く。結果的には自ら退路を断つ羽目に陥った、憐れな子狗に救いの手を差し伸べる主人もここには存在しない。
 ソレらは都合三つ存在しており、おのおの思うがままに形を……いや姿勢を……否、正しくはポォジングを変更した。





 咲夜は、気づいた。










「いやぁぁぁぁぁ、超ア○キぃぃぃぃぃぃぃ~~~っ!?!?」








 そいつらはダンディな微笑を浮かべ、しきりに己が肉体を誇示している。
 健康的に日焼けした肌。潤いを通り越してツヤとハリで黒光りするそれは脂肪などという堕落の化身の存在を許さず。
 存分に伸縮し力を解き放つ瞬間を、いまかいまかとワクテカしながら待ち侘びる筋繊維の束、その集合体。
 かと言って力士のようにボディラインを変形させることも無く、磨きぬかれた究極のスタイルを貫く。

 肉体美。

 彼らは今なお自らの姿に満ち足ること無く驕ること無く、己を最も強く美しく魅せるポォズの研鑽に
 余念が無いのだ、飽くることも無く。
 そう、彼らは理想の「男」を目指して日夜己と戦い続ける不屈の戦士なのである。


 そんな極限状態の中、咲夜の冷たく鋭くしかし脆さも併せ持つ、乙女心が気絶した。
 集中が途切れ術が解除される。
 途端、
 三人のナイスガイはしかるべき速度で咲夜に迫り、
『ダレニモ』
「ぐはっ」
『ヤサシク』
「がふぅっ」
『アイニイキルヒト』
「あがーっ」
 放心状態の彼女を容赦無く弾き飛ばしていった。





「もしもし、生きてる?」
 ボロキレのように変わり果てた咲夜を紫は見下ろし声を掛ける。
「そろそろ宴会始まるわよ。いつまでも現実逃避してないで帰ってきなさいな」
 よっ、とうつ伏せになっていた咲夜をひっくり返す。
 すると、
「あああ、いいいい、ううううっ……うええええええんっ」
 雨に打たれた子狗のようにガクガクブルブル頭を抱えだす咲夜。
「可哀相に。よほどショックだったのねえ……でも現実って非情なものよ」
「あああ」
「ん?」
「ああれは一体何なのぉっ!?」
 力の限り、不条理に抵抗せんと声を張り上げる咲夜。
「聞きたい?」
 言ってにこりと微笑む紫に、しかし咲夜は
「やっぱいい。聞かない、聞きたくないぃぃっ」
 全力で拒否した。
「そうね。彼らを視認できた貴女のその絶技に敬意を表して特別に教えてあげるわ……」
「やめてぇぇぇ。いやあー」
 遠い目をして語りだす紫。
「彼らは自らの肉体を極めるために命を掛ける熱き求道者。その鍛え抜かれた鋼の肉体は、宇宙空間の真空どころかありとあらゆる弾幕さえ寄せ付けない。そして熱き想いのたけを力に換えて必殺「男のビーム」を放つ……。まさに攻防一体、外の世界で私の知りうる最強のオプションよ」
「そんな外の世界はいやぁっ!?」
「ちなみに彼らの名前は確か……馬乱、阿鈍、寒村だったかしら? まあなんにせよ、一つの事に熱中する男性って可愛いじゃない……何かを極めるということは、他の全ての可能性を捨てること。それを余すこと無く体現していて素敵」
「助けてお嬢様!」
 そろそろ咲夜がなにがしかうわ言を呟くようになってきたので、紫は愛用の「今にも刺さりそうな傘」をスキマから取り出すと、
「まあいいわ。楽しめたし、そろそろ嫌な事は忘れていいわよ」
 ごん、と彼女の頭部を一閃した。











Feast Day 19:30 博麗神社



 今宵も恒例、博麗神社境内におけるドンチャン騒ぎの只中で、やたら盛り上がってない連中がいた。
 その中心である咲夜の側には、紫が何故か持たせてくれた「幻の大吟醸」が既に空き瓶となって転がっていた。
「な……なあ、幾らなんでもペース速過ぎだろ咲夜」
 その八割を一人で空けてしまったのは他ならぬ咲夜で、それを魔理沙は宥めている。
「えーと、何があったのか知らないけど。話してくれなきゃ、あんたの不機嫌のわけも分からないでしょ」
 同席していた霊夢が苦言を呈する。
 酒の席が始まり、どこからか帰ってきた咲夜に成果を尋ねた二人であったが、咲夜は「話したくない」の一点張り。
 そのうち酒を煽って「これが空いてから!」と言い出すもんだから、こうして付き合っているわけだ。
「ま、言われなくても結果が芳しくないのは判るけどな……」
「それも有るけど、でもそれだけじゃないわよ」
 魔理沙が苦笑交じりに言った台詞に反応し、咲夜がようやく重い口を開いた。


「私はあのスペルの本質をほんのちょっぴりだけど体験した気がするわ。
 い……いえ……体験したというよりはまったく理解を超えていたのかも知れないけど……。
 あ……ありのままさっき起こった事を話すわ!

『私は紫の前で時を止めたと思ったらいつの間にか倒れていた』

 な……何を言っているのか解らないと思うけど、私も何をされたのか判らなかった。
 頭がどうにかなりそうだった……現に何故か、仔細は思い出せないし……。
 超スピードだけど催眠術だとか幻惑だとか、そんなチャチなものじゃ断じて無い。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……ううう」


 湧き上がるおぞけに身を震わせて、終いには泣きべそかきながら語る咲夜。
 その有様から尋常ならざる何かを感じ取った魔理沙と霊夢、そしてたまたま近くに居たルーミアは、
「ふ、ふーん……」
「へぇ……」
「そーなのかー」
 と、それ以上の追求はしなかったという。



 めでたしめでたくなし。

こちらでは初めまして、k.と申します。
萃夢想咲夜シナリオの対紫戦……なんですが、前から「あの謎の飛行物体って何?」と疑問を持っていた所、
天啓のように閃いたのがアレでございます。
我ながらイヤ過ぎです。ですが、それを自分の胸の内に収めておくのがもったいなく感染拡大を図った所存に
御座いますれば。
漫画向けのネタかな、と思いましたが冷静になって考えて、「誰が描いてくれるんだこんなの」と思い直し結局自分で具現化。
あー、なんていうかその、咲夜さんごめんなさいっ! 可愛い娘はいじめたくなるんです!
普段はシリアスなのも書いてるんです、シンジテ!


……お目汚し失礼致しました。(ぺこり
k.
コメント



1.774削除
アドンw
2.ぎゃあ削除
せぇ~くしぃ~…ダイナマイッ!
3.名前が無い程度の能力もない削除
想像したとたんゆかりんに勝てなくなったw
4.名前が無い程度の能力削除
というか、外力「無限の超高速飛行体」じゃなかったっけ?