今日はなんだか妙な一日だった。
「今日はこれを着てやってもらうわ」
と言って、四季様から渡されたのは、一枚の黒いコート。
「なんでこんなのを着て仕事しなきゃいけないんですか?」
とあたいが聞くと、四季様は
「今日はちょっと知り合いの死神が倒れましてね。代わりに貴方にその仕事をやってもらいます。今日は忙しくなると思いますが、頑張って下さい」
との事。
きっと着なかったら、お説教が待っているに違いない。そう思ったあたいは大人しくこのスーツを着て仕事をこなしていったのだが・・・。
今日は実に死人の多い一日だった。
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・1人目
性別は男。年は恐らく20台だろう。この三途の川のシステムを軽く説明し、手持ちの渡し賃を貰う。受け取った額は20文、特に隠している様子も無かったので、そのまま船に乗せる。
船に乗っている間、その男の話を聞いていたが、可哀想な男だと思った。
なんでも『魔王』を倒す為に、その魔王の居城――なんちゃら・げいと?聞き慣れない名前でよく聞き取れなかった――に乗り込んだはいいが、入ってすぐに罠にかかって、落とし穴へ真っ逆さま、そのまま死んでしまったという。
そのお客さんに同情しながら、対岸に到着。このお客さんなら多分天国に行けるだろう。
ただ船に乗っている途中、しきりに
「私こそ真の勇者だ!」
と叫ぶのは辞めて欲しかった。
・2人目
また男。年も同じくらいだろう。説明をし、渡し賃を貰う。また20文か、まぁ隠してる様子も無かったので、そのまま船に乗せる。
このお客さんはなんでも、炎の竜の吐いた炎に焼かれてしまったらしい。なんとも勇敢な死に方だ。このお客さんもすぐに対岸に着いた。きっと天国へいけるはずだ。
・3人目
先ほどと同じ感じの男。さっきから同じような客を乗せている気がする。
このお客さんはサメに喰われたらしい。可愛そうに。きっとこのお客さんの肉体が胃袋に入りきる頃には、辺りは血の池の様になっているだろう。
うおぅ、想像しただけでも寒気がする。
・4人目
先ほどと同じ感じの男・・・。実はさっきから同じ客が乗っているんじゃないかと疑いたくなる。
このお客さんは、はしごから足を踏み外したそうだ。あたいが間抜けだな、と笑うと、お客さんは怒って
「はしごを降りていったら途中からはしごが無かったんだ!仕方が無いだろう!」
と言った。まぁ、暗闇に落下して死ぬのは、多分お前さんの運命だったんだろうよ。諦めな。
・5人目
さっきと同じ感じの客。もう一々追求するのはよそうと思う。
このお客さんは自殺らしい。しかも持っていた斧で左胸をザクリと・・・。
おお、いやだねぇ、最近は自殺するお客さんが多くてイヤだよ。
でもこのお客さんならきっと天国へいけるはずだ、安心して説教を受けてきな。
・6人目
このお客さんも自殺・・・だそうだが、話を聞くと事故死かも知れない。
飲む薬を間違えて、毒薬を飲んでしまったらしい。バカだねぇ。ちゃんと薬を飲むときは名前を確認しなきゃ。
・7人目
このお客さんも自殺だそうな。なんだか連続して自殺者を乗せているな・・・
崖から崖へ上手く飛び移れなかったとか、時間切れになってしまったとかで……。
後悔も反省も次回に生かされてないあたりが「影門」的ですばらしいですな。・・・ざんねん!
そりゃ、あんだけ忙しけりゃ、倒れもするでしょう、死神さん。
でも、彼の場合、死神さんには「こわくてちかよれない」可能性も。