5つほど下にある「また森の中で」のノリのままで行きます。
※ ※ ※
「ハァッ……、ハァッ……」
……ああ、体の節々が痛いわ……
まったく、とんだ災難だったわ。
数日前、森の中で「厄よ集まれ!」と言ったら、何を勘違いしたのか? ウシ科の「ヤク」が集まってしまい、
突進を喰らって気絶していたら、そのヤクに連れられて見知らぬ場所に連れて行かれたのよ!
どこだと思う?
妖怪の山より高い山の山肌の崖の所よ!!
空気が薄いのよ! 寒いのよ!! 危険なのよ! デンジャラスなのよぉ!
目が覚めた時に、あまりのショックでもう一度気絶しようかと思ったくらいよ。
ま、まあその後で食べたヤクの乳で作ったチーズはおいしかったけどね。
そんな事を思いながら、やっとの事でいつもいる森に帰って来れたわ。
良かったわ、空を飛べなかったら、まだずっとあそこに居たかもしれないわ。
私は疲れた体に鞭を打ちながら、なんとか家の近くの池の所まで来たの。
ああ、やっぱり落ち着くわ。
それに、ずっとヤクの背中に乗っていたから、服や体が獣臭いのよ。
だから、早く手と顔だけでも洗いたかったの。
私は池のほとりに座り、水面に手を伸ばし、水をすくう。
冷たい感触が手を通じて心地よい感覚となり全身に広がる。
「フゥ……」
手と顔を洗い終わったんだけど、もう疲れて動けないわ。
家までもう少しだけど、ちょっと休ませて……
そう思い、私は池のほとりにある岩に背中をつけて、目を瞑りゆっくりと夢の世界に落ちていったの。
※ ※ ※
どの位の時間が経ったのかしら?
森の中はいつも薄暗いから、見た目では今が朝なのか夕方なのか分からないわ。
けど、ちょっと寝たおかげで体力もかなり回復したわ。
でもあと少しだけ休ませて。
そう思って休んでいる間に、この前の事を考えてみたの。
そう!
「厄よ集まれ!」の事よ。
厄とヤク違いとはいえ、私の呼びかけにヤクは集まったのよね。
ただ、漠然と「厄」と思っただけでは、私がいつも集めている厄とは違う物が来てしまう可能性があるのよね?
だったら、呼びかけをする時に、キチンと私が集めたい物を思い浮かべながら呼びかけをしたらどうかしら?
動物のヤクは来たんだから、やり方さえ上手くすればもしかしたら出来るかもしれないわ。
うん、そうよ! やってみましょう!!
少し休んだから、もう普通に動けるわ。
それに、数日も厄を集めていないっていう焦りもあったのも事実。
少しでも! 少しでも厄を集めておかないとぉ!!!
私は、池のほとりの広くなっている所で、この前の様に足を肩幅に広げて背筋を伸ばし大きく深呼吸をひとつ。
目を瞑り、私が今一番集めたい厄を頭の中に思い浮かべる。
『……不幸……不憫……不吉……』
おおよその悪い事が起こると思える要因になる物を頭の中に思い浮かべ、ゆっくりと両腕を真上に伸ばす。
腕が伸びきった所で、両手を大きく広げ、目を開けて上に広げた両手を見つめる。
『よし! 行ける!!』
何か自信があった私は、この前の様な恥ずかしさを捨てて叫んだわ。
「厄よ! 集まれ~!!」
……シーン……
静寂が襲ってきたけどいいのよ。
前回の事で学んだわ。
この技には「タイムラグ」があるのよ。
さ~て、今回はちゃんと厄を集められるかしら?
私は、そう思いながら池のほとりで何か変化が起こるのを待ったの。
【幻想郷の某所上空】
「あややっ、何かネタはないかしら?」
愛用のカメラを片手に「文々。新聞」用のネタを捜していた射命丸 文は、上空で何か面白い事がないかを探していた。
「まあ、最近は平和ですねぇ」
上空から、いつもネタにしている博麗神社を見ても、紅魔館をみても、いつもと何も変わらない。
まあ、時折紅魔館の方で、閃光が見える事があるけど、あれは霧雨 魔理沙のマスタースパークである事は、
もうみんな知っているから、記事にしても面白くもなんともない訳で……
「まあ、最終手段としては『捏造』とか、『過去の記事の掘り起こし』って手も……」
そんな事を思っていた時だった。
文がいる少し先の方に、何かが飛んでいるのが見えた。
とても速い速度で、一直線にどこかに向かっている。
「あややっ! 何かネタかスクープの匂いが!!」
スピードにおいては、幻想郷で1番の実力を持つ文からしてみれば、
こういう追跡の様な物はお手の物なのかもしれない。
「では早速追跡開始!!」
文はカメラを構えながら、その謎の飛行物体に近づいていった。
※ ※ ※
「あややっ!! この私が追いつけないなんて!!」
謎の飛行物体のすぐ後ろを飛んでいた文が珍しく弱音を吐いていた。
カメラを構えようとしても、あまりの高速状態にファインダーがぶれてしまって、鮮明に写真が撮れていない。
何枚かは撮ったけど、ピンボケがいい所で使い物にはならないでしょうね……
その謎の飛行物体の後ろで悔しい表情を浮かべていた文だが、ネタやスクープの方より、
自分がスピードで負けているという事が悔しいと思い始めていた。
「ま、負けませんよぉ!!!」
本気で飛ぶ為にカメラをしまう。
いつになく真剣な表情で、その謎の飛行物体に追いつこうとする文。
時折、その飛行物体から金切り声の様な音が聞こえるけど、
ぼんやりと見えるその飛行物体は、何か高速で回転している様で、色々な色が混じった様な汚い色の
丸い玉の様な物が見えるだけだった。
それが高速回転をしながら、私よりも速い速度で飛んでいる!!
「ま、負けたくありません!!」
文が飛ぶ力にもっと気を込めた時だった。
その瞬間、文の周りで「ドーン」という爆発した様な大きな音がした。
しかし、その後はまったくの無音状態。
「あやや、何事!!」
文は、何かピリオドの向こう側に行ってしまった様な錯覚に襲われる。
まったくの無音状態。
前を行く謎の飛行物体からも、さっきまでの金切り声の様な音はしてこない。
しかし、そんな状態でありながらも、前を行く謎の飛行物体は除々に文を引き離していっていた。
「クッ、ここまでです」
もう、風圧で目もまともに開けていられない。
「む、無念です!!」
文は飛ぶ力を少しずつ弱めていった。
弱めていくと、除々に周りの音が聞こえ始めてきた。
文は完全に空中に静止して、その謎の飛行物体の行く先を見つめていた。
が、すでにその飛行物体はものすごく小さい点にしか見えなくなっていた。
スピードで負けた事の悔しさと、写真が撮れなかったという2つの悔しさに襲われていた文は、
「これ……、記事になんてするもんですか!!」
と、不貞腐れていた。
『今度会ったら……絶対に負けない!』と思いながら。
【妖怪の樹海の池のほとり】
「さ~て、何がくるのかしら?」
と、池のほとりの岩の上に座って、私は待っていたわ。
今回はちゃんと厄を思いながら呼んだんだもん!
きっとすばらしい厄が来るはずよ。
その時、何か遠くから轟音が聞こえてきたの。
地響きとは違う、上空から聞こえてくる轟音。
「もしかして……すばらしい厄の塊が飛んできているとか?」
私は轟音のする上空の方向を見ていたの。
森の木々が邪魔でよく見えないけど、間違いなくこっちに近づいているわ。
私は祈りワクワクしながら、待ったわ。
森の入り口付近の木々が、その轟音で揺れているのが分かるわ。
ああ、ここからでもその飛んできている物がとても厄いものって分かるわ。
轟音の音がさきほどよりも大きくなっていた。
何か身の危険を感じた私は、少しだけ退避したの。
池のほとりにある、私の体が隠れる位の大きな岩の後ろに身を隠して、その轟音を発する物が来るのを待ったの。
轟音がさらに大きくなる。
池の周りの木々も、それに反応して、大きく揺れている。
私の隠れている岩も、その音に共振して、ビリビリと震えているわ。
私は、岩をしっかりとつかみ、衝撃に備えたの。
もう、この近くに降り立つというのは、この音で分かるわね。
そして、岩の後ろで身構えた瞬間。
池に、その飛行物体はものすごい速度のまま着水した。
いや、着水なんていい言い方じゃないわね。
墜落よね、あれは……
その墜落の衝撃で、池の水が大量に空中に舞い、まるで大雨が振っているかの様な状態になったわ。
その大雨がまた池に戻り、池の水位が戻り始めていったの。
ああ、厄いわぁ。
岩の後ろに隠れている今でさえ、ビンビンと感じる厄の気配。
きっと池の中の物体は、高純度の厄とかに違いないわ!!
やったわ! 私はやったのよ!!
そう思いながら、岩の影から身を乗り出して、落ち着きを取り戻し始めた池のほとりに行ったの。
辺りは水でビシャビシャだけど、もう池の方はいつもと変わらない状態になっていたわね。
水面を見ると、その何かが落ちたと思われる所に、ブクブクと泡が立っていたわ。
一体、この厄の塊はなんなのかしら?
私は、池のほとりに立ち、池の中からの厄の気配を感じながら、その厄の品質を定めていたの。
さっきよりも近いから、よく分かるわ。
これぞ「厄」って品質よね。
私が今まで取ってきた厄のどれよりも高品質な厄なのよ。
ああ、まさに「厄」
「厄の中の厄」って言うのかしら?
それとも「厄の王」?
それとも、「ザ・厄」って呼ぼうかしら?
そんな事をつぶやいていたら、池に墜落した何かが池から上がってきたの。
そして、開口一番に私にこういう風に叫んだの。
「だから、座薬いうなぁ!!!!!!」
うどんげが不憫すぎてもうねwwwww
ヤクのチーズって美味しいんですか?
雛さんは自力でくるくるして、ヤクの乳に遠心分離をかけたのでしょうか?
幻想郷1厄塗れなのが「鈴仙」とは・・・
折角ですから厄払いして上げて下さいwww
厄を取ったら永琳が雛のものに!
…れいせん…
音速で着水しても無事なあたりがイジラレキャラの強靱さを表しているなと思いました。
あ、今のは別に狂人とかけt(<〇><〇>
ちなみに、ヤクのチーズですが、ちょっと獣臭いですが、意外といけますよ。
いいや、そんなことはない。今更読ませていただいたが俺は気づいたぜ!!
にしても鈴仙の厄さに泣いた