映姫様はお酒に弱いのがかわいいんだろJK という方は見ない方がいいかもしれません。
日が高く昇り、ポカポカとし始めた春のことである。
博霊の神社では毎週のように宴会が行われていた。
発案は巫女であれ白黒の魔法使いであれ、何あれとも楽しく回っていた。
しかし、今日の宴会は一部だけ妙に温度が低い個所がある。
それがつまり映姫の回り、というわけで。
本当ならば、小町がそばにいてワイワイとやっているはずなのだが、なぜか小町が近くにいない。
映姫が一つ溜息をつくと、ニヤニヤとしながら近づいてくる鬼の姿がある。
鬼いわく、「閻魔と一度飲み比べをしてみたかった」とのこと。
「・・・飲み比べ、というわけではありませんが、お酒を飲み合い何か話すということに意義があるということには同意します。ただし、私の飲みたいのなら、今日はちょっと愚痴につき合ってもらうことになりますけどね。」
「別にいいよー、それくらい。閻魔の愚痴ってのも面白いかもしれないしねぇ」
どうやら、閻魔の愚痴を聞く代わりにお酒には付き合ってくれるらしい。
無限に酒が湧き出るという瓢箪から、お酒を注ぎ合いながらの話となる。
「今日はね、小町がいないでしょう。それはですね。彼女が毎日毎日仕事をさぼるものですから、今日はちょっとした罰を与えてきたのですよ。罰といっても、書類の整理ですけどね。しかし、元はといえば、彼女が仕事をさぼらなければこうはならないのです。死神の仕事というのは、理由はどうあれ生を全うした方を私の元へと連れてくるというもの。これがなければ、死者は裁きを受けることができず、そのことを考えればかなり重要な仕事のはずなのですが、いささか小町にはその自覚が足りなさすぎる。いえ、毎日毎日、何十、何百という魂を連れて来いというわけではありません。数ヶ月に数日くらいは、魂の量が減る日があっても、それは仕方ないとは思います。しかしですよ。小町はまったく逆なのです。数ヶ月に数日くらいは、魂の量が増える日がある。このまま小町を雇い続けるというのは、本来閻魔の公明正大を傷つけることになりかねません。なので、解雇した方が良いとういう意見が寄せられることもあります。けれど、彼女はやればできるのです。それを私は知っている。つまり・・」
「長い・・・。たぶん皆さん読んでないよ?」
「いいから、聞きなさい。」
今までお酒を注いでいた器をふたまわりほど大きいものに変えると、映姫はそれにお酒を注いで飲み干した。
「もう。野暮なことなしで、飲み比べがしたいんだけど・・・」
「話が違いますね。いいから、聞きなさい。」
「いや、けど」
「聞きなさい。」
「はい・・・。」
卒塔婆を構えられて、閻魔にすごまれたら、これはもう、うなずくしかない。
広い幻想郷とはいえ、本来、閻魔に迫力を持たれて命令されたら断れるものはまずいない。―小町語録
愚痴のこぼし合い兼飲み比べが始まって数時間。
夜が更け、まだ宴会が続いているのもさすがと言える。
「あー・・・」
正直、これは参った。
まさか、ここまで閻魔が酒に強いとは思っていなかった。
(ぶっちゃけ、そろそろ限界・・・うぃ~ッ)
鬼が限界を感じ始めるが、閻魔の話は全くもって終了する気配を見せない。
と、言うよりも、最初は愚痴だったのだが、途中から何故かお説教に代わってしまった。
お酒を飲んでいると、気分が良くなり頭の働きが良くなってしまうのか、説教の時間が通常時に比べて平均1、64倍長くなる。―小町語録
これは閻魔も酔いつぶしてしまうしかないと、強いお酒を注いでみたり、器をさらに大きなものに変えたりとしてみたのだが。
ばたん。
ああ無情、先に倒れるのは鬼の方であった。
然し、楽園の最高裁判長曰く
「私はお酒を“飲み合い”ながら話すことに意義があると言いました。つまり、あなたにはまだお酒を飲んでいてもらわなければ困ります。」
「も、もう無理・・ほんとに・・・」
「飲みなさい。いいから。」
映姫は無理やり萃香の口にお酒を流し込む。若干、酔いが入っているような気がする。
「ごめ、ごめんなさい。もう許して・・・」
「いや、別に怒ってなんかないですよ。いいから、いいから。」
鬼は酔いつぶれた時は通常寝てしまうのだが、ここで寝てしまうと後が恐ろしい。
何とか気合で持ちこたえるしかない。
しかし、三大欲求の 食欲 睡眠 排泄欲に勝てるわけもなく、時機に寝入ってしまった。
と同時に、遠くから声がする。
「四季様!お仕事終わりましたぁ」
と、神社に小町が駆け込んできた。
そして、なぜか周りから安堵の声が聞こえる。
飲み合っていた場所が神社の中なのだから、映姫と萃香のその光景を見ていた者たちに「呼ばれたらどうしよう」という不安がたまっていたのかもしれない。
「って、うわっ、酒くさっ」
「お酒を飲んでいたのだから仕方ありません。そこの鬼と。」
「四季様と飲み比べなんて無茶したなぁ、この鬼も・・・」
「さて、帰りますよ。小町。一応、仕事をしっかりやったかはチェックする必要がありますからね。」
「ちゃんとやりましたって~」
そのあと、なんだかんだ言っても楽しく話しながら帰ってゆく二人の姿が見られたとか。
「ちょっと!えいき~いるんでしょ~?」
「またあなたですか・・・・。」
負けたことが悔しくてそのあと何回も飲み比べしにくる鬼がいるのが最近の悩みだとか。
日が高く昇り、ポカポカとし始めた春のことである。
博霊の神社では毎週のように宴会が行われていた。
発案は巫女であれ白黒の魔法使いであれ、何あれとも楽しく回っていた。
しかし、今日の宴会は一部だけ妙に温度が低い個所がある。
それがつまり映姫の回り、というわけで。
本当ならば、小町がそばにいてワイワイとやっているはずなのだが、なぜか小町が近くにいない。
映姫が一つ溜息をつくと、ニヤニヤとしながら近づいてくる鬼の姿がある。
鬼いわく、「閻魔と一度飲み比べをしてみたかった」とのこと。
「・・・飲み比べ、というわけではありませんが、お酒を飲み合い何か話すということに意義があるということには同意します。ただし、私の飲みたいのなら、今日はちょっと愚痴につき合ってもらうことになりますけどね。」
「別にいいよー、それくらい。閻魔の愚痴ってのも面白いかもしれないしねぇ」
どうやら、閻魔の愚痴を聞く代わりにお酒には付き合ってくれるらしい。
無限に酒が湧き出るという瓢箪から、お酒を注ぎ合いながらの話となる。
「今日はね、小町がいないでしょう。それはですね。彼女が毎日毎日仕事をさぼるものですから、今日はちょっとした罰を与えてきたのですよ。罰といっても、書類の整理ですけどね。しかし、元はといえば、彼女が仕事をさぼらなければこうはならないのです。死神の仕事というのは、理由はどうあれ生を全うした方を私の元へと連れてくるというもの。これがなければ、死者は裁きを受けることができず、そのことを考えればかなり重要な仕事のはずなのですが、いささか小町にはその自覚が足りなさすぎる。いえ、毎日毎日、何十、何百という魂を連れて来いというわけではありません。数ヶ月に数日くらいは、魂の量が減る日があっても、それは仕方ないとは思います。しかしですよ。小町はまったく逆なのです。数ヶ月に数日くらいは、魂の量が増える日がある。このまま小町を雇い続けるというのは、本来閻魔の公明正大を傷つけることになりかねません。なので、解雇した方が良いとういう意見が寄せられることもあります。けれど、彼女はやればできるのです。それを私は知っている。つまり・・」
「長い・・・。たぶん皆さん読んでないよ?」
「いいから、聞きなさい。」
今までお酒を注いでいた器をふたまわりほど大きいものに変えると、映姫はそれにお酒を注いで飲み干した。
「もう。野暮なことなしで、飲み比べがしたいんだけど・・・」
「話が違いますね。いいから、聞きなさい。」
「いや、けど」
「聞きなさい。」
「はい・・・。」
卒塔婆を構えられて、閻魔にすごまれたら、これはもう、うなずくしかない。
広い幻想郷とはいえ、本来、閻魔に迫力を持たれて命令されたら断れるものはまずいない。―小町語録
愚痴のこぼし合い兼飲み比べが始まって数時間。
夜が更け、まだ宴会が続いているのもさすがと言える。
「あー・・・」
正直、これは参った。
まさか、ここまで閻魔が酒に強いとは思っていなかった。
(ぶっちゃけ、そろそろ限界・・・うぃ~ッ)
鬼が限界を感じ始めるが、閻魔の話は全くもって終了する気配を見せない。
と、言うよりも、最初は愚痴だったのだが、途中から何故かお説教に代わってしまった。
お酒を飲んでいると、気分が良くなり頭の働きが良くなってしまうのか、説教の時間が通常時に比べて平均1、64倍長くなる。―小町語録
これは閻魔も酔いつぶしてしまうしかないと、強いお酒を注いでみたり、器をさらに大きなものに変えたりとしてみたのだが。
ばたん。
ああ無情、先に倒れるのは鬼の方であった。
然し、楽園の最高裁判長曰く
「私はお酒を“飲み合い”ながら話すことに意義があると言いました。つまり、あなたにはまだお酒を飲んでいてもらわなければ困ります。」
「も、もう無理・・ほんとに・・・」
「飲みなさい。いいから。」
映姫は無理やり萃香の口にお酒を流し込む。若干、酔いが入っているような気がする。
「ごめ、ごめんなさい。もう許して・・・」
「いや、別に怒ってなんかないですよ。いいから、いいから。」
鬼は酔いつぶれた時は通常寝てしまうのだが、ここで寝てしまうと後が恐ろしい。
何とか気合で持ちこたえるしかない。
しかし、三大欲求の 食欲 睡眠 排泄欲に勝てるわけもなく、時機に寝入ってしまった。
と同時に、遠くから声がする。
「四季様!お仕事終わりましたぁ」
と、神社に小町が駆け込んできた。
そして、なぜか周りから安堵の声が聞こえる。
飲み合っていた場所が神社の中なのだから、映姫と萃香のその光景を見ていた者たちに「呼ばれたらどうしよう」という不安がたまっていたのかもしれない。
「って、うわっ、酒くさっ」
「お酒を飲んでいたのだから仕方ありません。そこの鬼と。」
「四季様と飲み比べなんて無茶したなぁ、この鬼も・・・」
「さて、帰りますよ。小町。一応、仕事をしっかりやったかはチェックする必要がありますからね。」
「ちゃんとやりましたって~」
そのあと、なんだかんだ言っても楽しく話しながら帰ってゆく二人の姿が見られたとか。
「ちょっと!えいき~いるんでしょ~?」
「またあなたですか・・・・。」
負けたことが悔しくてそのあと何回も飲み比べしにくる鬼がいるのが最近の悩みだとか。
お酒に強い……ですか、そもそも閻魔様がお酒を飲むなど、考えたことがなかったので、新鮮な感じでした。
確かに弱いの設定もいいかもしれませんが、意外性があってこっちも面白いと思いますよー。
面白いお話でした。