※まずはじめに。
これは咲夜×魔理沙のSSです。
咲夜、魔理沙に対してそれぞれ別のキャラとのジャスティスをお持ちの方はご注意ください。
一、出会い
あらすじ――紅霧の異変解決のため、紅魔舘に攻め入り、門番を倒し、図書館を制圧した魔理沙は元凶を探していた――
「全く、一体ここはどれだけ広いというんだ」
そう魔理沙が愚痴を言いながら飛んでいると目の前にメイド姿の少女が現れた。
「あーお掃除が進まない!お嬢様に怒られるじゃない!!」
奇術「幻惑ミスディレクション」
――少女弾幕中――
「やれやれ、危ないな。一体なんだったんだ?」
妖精メイドの弾幕を潜り抜け、そのまま奥まで進むと先ほどのメイドが現れた。
「また掃除の邪魔をする~・・・」
「いやはやメイドとは・・・」
以下、本作での会話により割愛。
というわけで弾幕勝負開始。ここで咲夜さんの頭の中を覗いてみよう。
「(・・・何この可愛らしいちびっ子はっ!?私のナイフを一生懸命避けてるわ・・・)」
ピチューン
「(あ、被弾した)」
「うぅ・・・覚えてろよー!!」
魔理沙は瞳に涙を浮かべ負け惜しみを言って帰っていった。
「・・・久しぶりに胸にキュンときたわ・・・」
と、いうわけでファーストコンタクトで魔理沙に一目惚れしてしまった咲夜さん。果たして彼女達の明日はどっちだ!?
ちなみに元凶のお嬢様は巫女がさっさと倒してしまって異変は無事に解決しました。
二、告白
春に雪が降ったり、宴会の回数が増えたり、夜が終わらなかったり、季節の花が咲き乱れ霊があふれ出したり、
様々な異変が起こり、その度に魔理沙はその異変解決に乗り出した・・・が、毎回一番最初に元凶にたどり着くもののことごとく敗れ、すっかり落ち込んでしまっていた。
「魔理沙、居るわね。入るわよ」
「・・・居ないぜ」
力の無い声が部屋に微かに響く。そこに居た魔理沙はベッドの上で膝を抱えていた。ずっと泣いていたのであろう少し目元が赤く腫れてるような気がする。
「最近、まともにご飯も食べてないんでしょう?作って持ってきたわ」
「・・・いらない」
魔理沙は咲夜と顔をあわせないようにそっぽを向いてそう言った。
「そんなこと言わないで、少しでいいから食べなさい。あなたの好きなものを選んで作ってきたのよ」
咲夜はそう言って魔理沙に料理の入っている器を渡そうとした・・・が、
「いらないって言ってるだろ!!」
ガッ!!
咲夜の手を振りほどこうとしたが、勢いあまって器をはたいて落としてしまった。
「あっ・・・」
魔理沙は思わずそう声を漏らした。もちろん料理をダメにしてしまったことに対してでもあるが、それ以上に咲夜が悲しそうな顔で魔理沙を見つめていたからだ。
「魔理沙・・・」
咲夜が手を振り上げた。叩かれる・・・そう思って魔理沙はギュッと目を強く瞑った。
「・・・えっ?」
咲夜は優しく魔理沙の頭を撫でた。
「まったく、折角作ったのに台無しじゃない。少し待ってなさいね、これ片付けたら何か作るから」
「・・・なんで・・・なんでだよ!どうしてそう私に優しくするんだよっ!今、私はお前に酷いことしたんだぞ!?」
今回ばかりではない、普段から咲夜は何かと魔理沙に甘いところがあった。
(※詳しくは各シリーズの咲夜と魔理沙の会話及びEDを参照してください)
「そんなの決まっているじゃない?あなたの事が好きだからよ」
恥ずかしがることなど一切せず、瀟洒にキッパリと言い放った。言われた魔理沙の方が思い切り動揺している。
「な、なんで、咲夜が私を・・・」
「フフッ、お嬢様の言葉を借りると、全部運命よ・・・ってことかしらね?始めてあなたに会ったときから私はあなたに惹かれたわ」
そう言うと、咲夜はそっと魔理沙を抱きしめた。
「あなたが影ですごく努力していることも知っているわ。負けず嫌いで中々人に甘えたり弱音を吐いたりしないところもね」
でも、と咲夜は優しい笑みを浮かべ魔理沙に言い聞かせるように言葉を続ける。
「たまにでいいから、私の前だけでも甘えてほしい。全部自分で背負い込んでつぶれてしまうあなたを見たくないのよ」
魔理沙は大粒の涙をこぼし、咲夜の腕の中で泣いた。彼女の包み込んでくれるような愛情を感じたからだ。
そして、このとき魔理沙も咲夜のことが好きだと気づいた。
その好きという感情はまだ恋人に言えるそれではなく、子が母親に対して思う好きという感情に似ていた。
だが、それでも二人の仲を深めるには十分すぎる『きっかけ』であった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
その日からずいぶんと経ったある日、魔理沙は紅魔舘を訪れた。
誰よりも自分のことを気にかけ、心配してくれた人に、どうしても最初に報告したいことがあったからだ。
「咲夜っ!」
その人の名前を呼び、笑顔で話しはじめた。
妖怪の山に登り、神を懲らしめ、初めて一人で異変を解決したことを・・・
咲夜はまるで自分のことのように嬉しそうに魔理沙の話を聞いた、そして全て聞き終えると、
「よく頑張ったわね」
と、魔理沙の頭を優しく撫でてあげた。魔理沙は少し恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべ、咲夜にすり寄って甘えた。
三、本心
窓から月の光が入り、薄暗い部屋を照らす。
その部屋で紅魔舘の主、レミリアが紅茶を嗜んでいた。
「咲夜」
「はい、何でしょうか?」
レミリアが呼びつけると咲夜が傍に現れた。
「いつもより少し来るのが遅れたわね。それに紅茶の葉の分量が少し多すぎる・・・最近の貴女はどこか様子がおかしいわ」
「申し訳ございません。気をつけます・・・」
レミリアは少し不機嫌そうに咲夜を見つめた。すると、ふと咲夜の様子がいつもと違うことに気づき、問い詰めた。
「・・・咲夜、顔色が悪いわね。きちんと休めてないのかしら?」
「いえ、そんなことは・・・それでは失礼します・・・」
そう言って咲夜が姿を消した・・・と、その直後、廊下で物音がした。
気になってレミリアが廊下に出てみると。そこには床に倒れて動かない咲夜の姿があった。
「咲夜!?」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
翌日。日課とばかりに魔理沙が図書館へとやってきた。
「何だ、今日はパチュリーいないのか?まぁおかげで本を借り放題だからいいけどな」
そう言って本棚を物色している魔理沙に、子悪魔が話しかけてきた。
「パチュりー様なら咲夜さんの看病をしていますよ?」
子悪魔の言葉に魔理沙の表情が一変する。
「咲夜の看病って・・・あいつに何かあったのか!?」
そう声を荒げると、魔理沙は急いで咲夜の部屋に向かった。
ドアを開けるとベッドに寝ている咲夜と、その脇の椅子に腰掛けて本を読んでいるパチュリーの姿があった。
「おいっ!咲夜は一体どうしたんだよ!」
「病人がいるのよ、静かにしなさい。まぁ病人といってもただ過労で倒れただけなんだけどね。」
大したことがないと知り、魔理沙は安心した。だが、咲夜が倒れたという事実に納得がいかなかった。
「過労って・・・どうせレミリアが我侭でも言って咲夜がこうなるまで働かせたんだろ・・・?」
皮肉を混ぜてそう言う魔理沙。すると、バンッ!!とドアが強く開かれレミリアが部屋に入ってきた。
魔理沙の言葉を聞いたのだろう。誰が見ても不機嫌に見える。
「フンッ、ふざけた事を言うんじゃないわよ。咲夜が倒れたのは・・・魔理沙、あんたのせいよ!」
レミリアの言葉に魔理沙が驚いた。
「私の・・・せい・・・?」
「私は咲夜に十分に休みは与えているわ。確かにその時間は他のメイド達に比べれば少ないけれど、時を操る能力を使えば十分休みを取れる時間を与えていた」
レミリアが魔理沙を睨みつけ、そのまま言葉を続けた。
「あんたが頻繁に会いに来るから、咲夜は自分の休む時間を削ってあんたの相手をしてたのよ。一人なら時間を操ればいくらでも休める、だけどあんたと一緒だとそんなことできないからね」
「そんな・・・」
レミリアの言葉に魔理沙は愕然とした。まさか自分のせいで咲夜が倒れたと知り、ショックを受けた。
「・・・レミィ」
パチュリーが不意に口を開いた。
「魔理沙が来たのだから、私は図書館に戻るわ」
「えぇ、私もまた寝るわ、今起きてると夜の散歩に出られなくなるわ」
「それじゃ魔理沙、悪いけど咲夜のこと頼むわね」
そう言って二人は部屋を出て行き、魔理沙と咲夜の二人だけが残った。
「・・・魔理沙」
まるで見計らったかのように咲夜は目を覚まし魔理沙に声をかけた。
「咲夜・・・起きたのか」
「えぇ、本当は魔理沙が来たところからずっと起きていたんだけどね・・・あんな話になってて起きるに起きれなかったわ」
そう言って上体を起こした。やはり、普段の彼女より少しやつれて見える。
「私のせい・・・だよな。ゴメン・・・私、自分勝手で・・・」
「違う・・・そうじゃないわ。全部私が悪いのよ」
咲夜はそうとだけ言うと黙って俯いてしまった。
「どういう意味だ・・・?」
魔理沙が尋ねると咲夜は俯いたままゆっくりと話始めた。
「私は以前あなたに言ったわよね。あなたが好きって・・・」
「・・・うん。あの時、咲夜にそう言われて、私は咲夜に悩みを打ち明けたり弱いところを見せたりすることができて・・・よく甘えたりするようになった」
「えぇ、私も魔理沙が心を開いてくれてすごく嬉しかった。だけど、こうして魔理沙と一緒にいることで・・・私はそれ以上の事をあなたに求めるようになってしまった」
咲夜のその言葉を魔理沙はよくわからないといった様子で聞いていた。
「あなたを・・・愛してしまった。・・・最初はただ私に甘えてくれるあなたが可愛くて、それを見ているだけで十分だったのに・・・今の私はあなたを欲しいと思ってる」
咲夜の瞳から涙が溢れ、そのまま彼女の手の甲に落ちた。
「こんなことをあなたに伝えたら、あなたを困らせてしまう・・・うぅん、もしかすると今の関係も壊れてしまうかもしれない。そう思うと言い出せなかった」
「咲夜・・・」
魔理沙はただ、咲夜の言葉ひとつひとつを受け止めていた。
「でも・・・すごく辛いの・・・すごく苦しいのよ!言いたくて、伝えたくて・・・そのことばかり考えてたら・・・」
「休むことも忘れて、ずっと悩んでたってわけか・・・」
咲夜はただ、小さく頷いた。
「咲夜」
魔理沙はそっと咲夜の唇に自分の唇を重ねた。
「バカだな、私がそんなことでお前を嫌いになるとでも思ったのか?・・・私も咲夜と同じ気持ちだぜ」
そういうと、かつて咲夜が魔理沙にしたように、今度は魔理沙が咲夜を優しく抱きしめた。
「魔理沙・・・もう一度、キス・・・して・・・」
二度目のキス。一度目よりも長く深いそのキス・・・まさに今、二人は恋人と呼べる関係になった瞬間である。
終、運命
二人が恋仲となったその夜。レミリアはパチュリーを部屋に呼んだ。
「あら、咲夜はいないのね。」
部屋にはレミリアが一人、ワイングラスを片手に窓の前に立っていた。
「私は無粋な真似は嫌いなのよ。いらっしゃい、パチェ。あなたも飲むでしょ?ワイン」
「えぇ、頂くわ」
レミリアはワインを注ぐと、そのグラスをパチェに渡した。
「あら、随分と奮発したわね、大事にしていたワインを出してくるなんて」
「別に普通よ、まぁ今日が特別な日だというのは変わらないけどね」
そして空になった自分のグラスをクイッとパチュリーに向ける。今度はパチュリーがレミリアにワインを注いでやった。
「どうやら、上手くいったみたいね、あの二人」
「えぇ、おかげ様でね」
レミリアは少女のように無邪気に笑いそう答える。
「私は何もしていない・・・全部はあなたの思い通りでしょう?レミィ」
「さぁ、何のことかしら・・・ね?」
パチュリーはグラスのワインを一口飲むと、話を続けた。
「あなたが大げさに魔理沙と衝突してあの子達の仲を取り持ったこと・・・いいえ、もっと前かしらね。そう、あの紅霧の異変を起こした時からかしら?」
「なーんだ、気づいてたの?」
「気づいたのはつい最近だけどね、日の光を遮る・・・というのは表向きの理由。その裏であの子達を出会わせたのね」
そこでパチュリーは解せない、とレミリアに問いかけた。
「そこまではわかったんだけどね。何故レミィがそんなことをしたのかがわからないわ。あなたは咲夜をそのまま自分のモノにすると思っていたし」
「あら、あの子はもう私のモノじゃない?それともパチェが言ってるのはそういう意味かしら?」
「そういう意味で聞いたつもりよ」
するとレミリアは真面目な顔になり答えた。
「違う種族同士が結ばれることほど愚かなことはないわ」
「それなら・・・」
パチュリーが全て言いきる前にレミリアはその言葉を遮るように話し始めた。
「同族にしてしまえばいい、なんて言わないでよ?私は人間である咲夜が好きなの。吸血鬼になったあの子なんか興味ないわ。それに・・・」
今度はお返しとばかりに、パチュリーがレミリアの言葉を遮って話した。
「それに、私達のような思いをさせたくない・・・でしょう?」
パチュリーがそう言うとレミリアはクスッと笑ってみせた。
様々な種族が共存するこの幻想郷、その種族達はもちろんそれぞれ寿命というものも違っている。
それは何百年、何千年・・・あるいは不死などという者もいる。
寿命の短い人間は長寿だの不死だのというものに憧れを抱く。
しかし、実際にその身体を持つものから言わせてみれば度し難いことなのだ。
長く生きるということ、それは常に孤独と共に生きること・・・
どんなに好きでもどんなに大切に思ってもいずれ別れは必ず来る。
長く生きるということは、その別れを多く経験するということ・・・
「大事な家族に、そんな思いをさせるわけにはいかないでしょう?」
それに・・・とレミリアはまた子供のような無邪気な笑みを浮かべ・・・
「あの子達がこれからどうなっていくか、楽しみじゃない?」
と、答えた。
END
魔理沙はカップリングのバリエーションが多いのでメジャーなもの以外はどうしても少なく見えてしまうのです。
以下、本作での会話により割愛とか、詳しくは各シリーズの咲夜と魔理沙の会話及びEDを参照してください
とかが投げやりな感じがしてしまいます。
原作の会話をアレンジするなり、情景や心理を交えて描写するなりしたほうが良かったと思います。