かりすまのレミリア作者: 鳥頭

　レミリアは「かりすま」が気に入っている。
　パチュリーが、吸血鬼というのは夜の王で
　カリスマ的な地位をしているものだと教えてくれたからだ。
　きょうレミリアは「かりすまちっく」になろうと思った。
　カリスマというのは手の動きから工夫した方がよいと思われるので、
　腕を交差させて、手を胸の上に置いてばってんをつくった。
　子犬を抱きしめるような優しさできゅっとする。
　次に、手のひらをくっつけた。
　肘を上げすぎると、肩もいっしょに上がってしまうので、だめだ。
　いただきます、と咲夜の料理を食べる前みたいに、しわとしわをあわせるのだ。
　最後に、手の甲を正面に向けて、手をきゅっと丸めて、指をぴんと伸ばした。
　このとき、肘を真下に向けて、手の位置はまた胸の上にするとよい。
　ペルシャ猫の口ように笑ってやるのも忘れてはいけない。
　首をちょっと左下に傾けて、上目づかいをしてやると完璧だ。
　この姿が鏡に映らないのが残念だった。
　窓の外で咲夜が鼻血を出して倒れていた。
（だれか来てくれるといいな。「なにしてるの？」と聞いたら
　「かりすましてるの」って答えるんだ）
　レミリアは、横目で、
　だれか来るのを見張りながらポーズを繰り返したがだれもこなかった。
　日が暮れた。レミリアは肩がこってお腹がすいた。
（かりすまは肩がこるな。お腹がすくと、かりすまはだめだな）
　きょうは「かりすま」はおわりにして、
　パチュリーのところへ行こうと思った。
「やあ、パチェ。私はきょう、かりすまだった」
「あら、レミィ。それはよかった。で、どんなだった？」
「うん、こんなだった」
　レミリアは、かりすまをやった時の様子をしてみせた。
　さっきと同じように手を動かして。最後に斜め上を見ると
　そこにはビデオカメラを構えた小悪魔がいた。
「……『れみ　りあ　う～☆』って言いながらやってごらんなさい」
「わかった、やってみる」
　レミリアはもう一度かりすまをしてみせた。
「れみ」
　手を交差させる。
「りあ」
　手を合わせる。
「う～☆」
　決めのポーズを取って、ペルシャ猫のように笑った。
　すると、パチュリーは鼻を押さえて上を向いた。
「ああ、なんていいのでしょう。
　レミィ、あんたのカリスマは、とても美しくてとても立派」
「そう？……とても……何だって？もういちど云ってくれない？」
「うん、とても美しくて、とても立派」
「そう、私のかりすまは、とても美しくてとても立派なの？
　ありがとうパチェ」
　レミリアは肩こりもお腹すきもわすれて、
　すごくかりすまになっていた。