幻想郷のとある飲み屋…
そこは、夜雀の屋台とは違い普段接点がない人が
こっそりとお酒を飲む飲み屋であった
ボス同盟とか、御母さん同盟とか…
そんな隠れた名店の中に、珍しい人が一人…
緑の髪をした女の子は、お店の中に無言のまま入ると
「……お酒…お願いします」
頼みなれていないのか、ただそれだけ答えた。
店主は無口な方であるが、相手の心を読む事がうまい
「……」
目の前の女の子に、何も言わないでお酒を用意する
口当たりの良い、甘いお酒
「…(ぐいっ)……」
だが、いかに甘いお酒であれ、一気に飲めば
「うぐっ?…けほっ!けほっ!」
思っていた以上に腹に来る
吐き出さなかったのは幸いであった
店長はしぐさで『やめておくかい?』と合図するが
「…いえ、もっと持ってきてください」
目の前の女の子はなにやら沈んだ表情でさらにお酒を追加してきた。
そんな女の子に対して店長が取ったのは
(かたっ)「…ありがとうございます」
何も言わないでお酒を前に置く事だけだった…
「………(ぐいっ)…御代わり…」
ただし、酔わないように水をかなり含ませたのだが
その分、貰うお金は削る
お店の店長はそんな人であった
しばらくの間、その女の子がお酒(水8酒2)を無言で飲んでいたら
「…隣良いですか?」
その女性の隣に、常連の紅い髪の女性が声をかけてきた
「……どうぞ」
女の子が紅い髪の女性をちらりと見ると
自分の隣に座る事を許可した
「マスター…特製のあれ…一つお願いします」
紅い髪の女性がそう伝えると
マスターが軽く頷いて棚からお酒を取り出す
そして、指で『二杯だね?』と合図を送ると、紅い髪の女性が頷く
店長が、そのお酒を二人の女性の前にグラスに入れて軽く置いた。
「…?」
「プレゼントです…かなりキツイですけど」
緑の髪の女の子が、その言葉を聞いて少しだけ微笑むと
「…ありがたく頂戴します」
そう伝えて…
「(ぐいっ)……!?wdkmgj!?」
「だ、だからかなりきついって!」
一気に飲み干したせいで、緑の髪女の子が暴れそうになる
しばらく、きつそうだったが、緊張は少しだけほぐれたみたいだった。
「…大丈夫でしたか?東風谷早苗さん…」
「は、はい…えっと…美鈴さん…でしたっけ?」
お互いの名前を確認する
そして、間違いが無い事を確認してから
「こんな無茶な飲み方したら、倒れますよ?」
紅い髪の女性…紅美鈴が目の前の女の子
「…良いんです…むしろ倒れたいですから」
緑の髪の女の子…東風谷早苗が自傷するように呟いた
「…なにか…辛い事があったんですね?」
美鈴が優しくそう呟きかけると、早苗の肩が少しだけ震えた
「…話してくれますか?」
美鈴の言葉を聞いて、早苗はポツリポツリと話を始めた
風神録の五ボスとして登場してみたのは良いものの
四面のボス射命丸文の方が強いと言われ…
幻想郷の人からも、『霊夢の2Pキャラ』と呼ばれ
名前も読んでもらえず挙句の果てに……
「霊夢さんや、魔理沙さんは主人公だからって言うのは分かります!…でも…でも!」
早苗が堪えていた涙が目からあふれてくる
「なんで!三面のボスのにとりさんや!四面のボスの文さんが出て!私が!」
顔をボロボロにしながら、早苗が叫ぶ
「主人公になれるって言うジンクスを背負った五ボスの私が!出番がないんですか!?」
五ボスとは…いろんな場面で、主人公になることができるはずのポジション
それは、妖々夢での咲夜…永夜沙での妖夢…花映塚でのうどんげ…
その誰もが、一度とはいえ主人公になっている
だから、五ボスには可能性が秘められているのだ
故に、新作が出るときには、次は早苗の番だと
神社の二神が喜ばしげに自分に言ってくれたのだが
「…なんで……こんな…」
新作に置いて早苗は完全に忘れ去られた
今頃、霊夢と魔理沙…そしてそのアシスタントは
地面に潜っているだろう
「…神奈子様と諏訪子様の傍に…今は居づらいんです」
自分が次に出れるようにと、神奈子と諏訪子が
早苗の新しい巫女服を用意してくれただが
それを着る機会がなくなってしまった…
「…お二人とも御優しいですから…余計に」
優しい二人の神様は、落ち込んでいる早苗に声をかけることができなかったのである
「…緋想天にだって…ひっぐ…せめてどちらかには出れるだろうって…思ってたのに…」
早苗が泣きながらそう答えようとしたら
「…もうそれ以上言わなくてもいいです…」
美鈴が早苗を優しく抱きしめた
「…分かりますから…出れなかった苦しみと悲しさは…」
美鈴もその気持ちは良くわかっていた…
萃夢想には、美鈴が出れたのだ…
だから、その続編に当たる緋想天には必ず出れる
そう思って、美鈴は技を磨いていたのだが
前作のキャラクターが総出のなか、まさか自分だけ出番なし
弾幕でない、格闘戦だからこそ自分の出番だと思っていたのに
自分でも一つの作品に出れなかったことが悔しかったのだ
目の前の、五ボスである早苗はそれ以上に悔しかったであろう
「…泣いてください…私以上に…貴方の方が悔しかったのは分かりますから」
美鈴のその言葉は
「う…うぁ…」
早苗の心の防波堤を砕くのには十分過ぎたのだ
「うあぁぁああぁぁ!」
「…泣いてください…人に貸せるぐらいの胸ならまだ余ってます」
「出たかったです!ひっぐ…地霊殿にも…緋想天にも!
出番が…出番が欲しかったです!…うぁぁぁああああ!」
主役になれるはずのポジションである五ボスが…
次回作で主役はおろか、出番すらもらえない
これほど辛く、そして悲しい事はない…
美鈴は、何も言わないでただ早苗の頭を撫でるだけだった
「…ありがとうございます…」
「あははっ…気にしないでいいですよ」
しばらくの間、泣き続けたおかげで早苗は少しだけすっきりした様子だった
「で、ですが…その…胸をお借りして…」
「そのぐらい構いませんよ」
早苗は人の胸を借りて泣いた事が恥ずかしかったようだが
美鈴はそんなこと、気にしなかった
「ですが、なにかお礼しないと…」
早苗がそう言うと、美鈴が腕をポンと叩き
「あ、でしたら時間まだ良いですか?」
「えっ…はあ…まだ大丈夫ですけど?」
早苗がそう答えると同時に
「めーりん!(どふっ!)」
「ぐえっ!?」
何者かが美鈴の横から飛び掛ってきて
美鈴が椅子ごと吹っ飛ばされた
そして、壁に当たらないで空中で椅子ごと一回転してから
飛び込んできた人物を抱きとめて
「い、妹様…いきなり抱きついてきたら危ないって言ったじゃないですか…」
「あはは、ごめんなさい♪」
抱きとめた人物に注意を加えた
「あ、あの!?美鈴さん大丈夫ですか!」
驚いた早苗が美鈴に問いかけると、美鈴は頷いてから
「あ、早苗さんに紹介しますね、紅魔館のレミリアお嬢様の妹様のフランドール様です」
「フランだよ?」
抱きついてきたフランドールを紹介した
少し驚いた様子の早苗だが、気を取り直して挨拶をする
「東風谷早苗です…よ、よろしく…」
「うん!よろしく」
元気なフランを見ていると、早苗は思わず笑みがこぼれた
「ねえねえ?もしかしてお姉ちゃんも緋想天に出れなかったの?」
「うっ!」
思わずまた泣きそうになってしまいそうになるが
「だったら、私とめーりんと一緒だね♪」
「あっ…」
目の前の女の子が、出れない悲しさなぞないような笑顔でそう答えてくれた
その言葉をきいて、早苗は自分だけが悲しいのではないという事に気がついた
「もし、時間があるのでしたら、私達と一緒に少し飲みませんか?」
「うん、めーりんも私も早苗お姉ちゃんも、一緒に緋想天に出れるように一緒に考えよう?」
二人の言葉を断る理由など早苗にはなかった
「はい!喜んで御一緒させてもらいます!」
こっそりと開かれている、隠れ飲み屋…
今日のお店から聞こえてくるのは
三人分のカンパイの声だけ…
フランなんか紅魔郷EXでしか出番ないから、限られた人しか会えないっていう厳しさがある分
早苗さんは、まだ幸せなんじゃないかと・・・
まぁ、いいや。誤字報告ですな。
華映塚>花・・・でしょ?
余慶>余計
僕はそう信じています。
>地霊伝
地霊“殿”ですよ
一言で表すと、いいお話でした。
そういえば、
×地霊伝○地霊殿
かと思いますので、一応報告を……。
戦いにはあまり出せないのかな。
その分、エンディングや書籍での活躍を願っております。
きっと早苗さんは地霊殿(製品版)には出てくれますよ!
(おとなもこどももおねーさんもってやつ)
早苗さんが出られなくて泣いた人間がここにまた一人居りますが…
製品版(&修正パッチ)では出てくれるさ!
そう信じている!
ところで誤字報告
>永夜沙
永夜抄かな
(空気読まなくてゴメンナサイ)
でも考えてみると確かに、東方キャラの中では妹様が一番幸薄いのかも…
上の二人は他のコミックで登場しているけど、妹様はうどんげっしょーでシルエットでしか登場しませんでしたし…
3人とも緋想天で追加で出して欲しいですね
(今度は二次的なおまけではなく、神主様の設定付きで!)
うどんげっしょーなら、何とかしてくれる…っ
ゲームバランス崩れるから?
でもそんなのかんk(ry
読み返して見ると・・・また別の意味で面白いです。
それはともかく
早苗さん、自機昇格おめでとう!
それと…妖夢が5ボスなのは妖々夢で…うどんげが5ボスなのが永夜抄では…?
妹様を除けば凄い予知だったのでは…?
黄昏での自機昇格おめでとう!!!