Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

毛玉色の砂時計

2008/07/07 22:18:11
最終更新
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4.27KB
ページ数
1
注:羨ましさにザルを被っても背は縮みません。






前回のあらすじ

川毛玉はレミングのように一致団結する。
遊びも仕事も撤退も絶望するにも一致団結。





さて、同じ失敗を繰り返すつもりは毛頭無いゆかりんは、飛び方を変える事にした。
今までは自分を両腕で抱えて、スキマで業務日誌を運び、日傘は片手に吊り下げていた。
だが、これでは緊急時に両手が使えない上に、ついうっかりと胸元の自分を窒息死させてしまう。

なので、業務日誌はスキマの中のまま、日傘はいつもの様に片手でさす、普段と変わらない飛び方にした。



その上で、自分が新たな定位置としたのは、ゆかりんの頭と帽子の間である。


ここならば、上から落石でも降って来ない限りは危険は無いし、強風も日傘で防がれて安心である。
そればかりか、視点が高くなったために眺めも良くなると利点ばかりなのだ。
帽子を借りる事になった事に関しては、ゆかりんも「一緒に同じ帽子を被っているみたいで愉しいじゃない」と実に満足気であった。
その笑顔で残機も増えそうである。




人間の里から離れるように飛んで行くと、眼下に白い花畑が見えた。
『無名の丘』と呼ばれるその場所は、鈴蘭の花が作り上げる、雪とはまた違った趣の幻想的な白の世界が広がっている。
常人だけで無く、妖怪さえも蝕む鈴蘭の毒を、己を動かす糸の血とする人形が居ると有名な場所だ。
紅魔館でも、鈴蘭畑のメディスンの可愛らしさを拳を握って語るメイドが居るくらいに有名である。


「コンパロ、コンパロ、毒よ集まれ~。」
この地の主、メディスンの声に合わせて。



『は~い。』
体から毒を溢れさせながら、紫がかった色の毛玉があちこちから湧いて出た。


「あら、あなたは毒も平気な妖怪なの?」
初めて見るらしいゆかりんに、メディスンは小首を傾げながら問いかけた。
「私は平気だけれど、頭の上にいる子が大変なのよ。だから、毒を離して下さらない?」
自己紹介ついでに、メディスンを知っていることや今やっている事を説明するゆかりん。

その傍らで、『メディいいなー頭撫でてもらってるー』とか『いい絵だねえ』とか『メディに友達増えるかな』とか色々と喋っている毛玉達。
確かに、ゆかりんが頭に毛玉を乗せていなければ、額に入れても違和感の無い光景だっただろう。
自分の所為ではあるが残念だった。

ここに住む、毒毛玉を名乗る毛玉達は、他の毛玉達と大きく変わる点はないそうだ。
だが、自慢の毛の間に毒を抱えて飛ぶ事で、毒が切れると動けないメディスンを助けるのだと言う。
体の毒が少なくなると、毒毛玉が抱えている毒をメディスンが受け取り、減った毒を補う。
言わばメディスン専用の空飛ぶ栄養源であり、同時に彼女を時には守り、時には指導し、誤った道に進んでいかないようにするための我々なのだ。そう毒毛玉達は主張する。

毛玉と自律人形では、その力には大きな格差が有る。
それでも『自分がやりたいことをやりたいようにやる』のが毛玉であり、妖怪だ。
一片の迷いも無く言いきった毒毛玉の姿を、自分は忘れないだろう。


数日後に遠出の予定が有るらしく、体一杯に毒を蓄える準備を始めたメディスンと毒毛玉。
暗色系の微笑ましい不思議な妖怪達に別れを告げ、ゆかりんと自分は次の場所に向かった。



妖怪の山へと向かう途中、人間の里方面から飛んで来た毛玉達を発見したゆかりん。
早速すぐそばの木陰に隠れて、二人で聞き耳を立てることにした。

「あー今日も大変だったなあ。」
「人間ってのは冬眠しないんだから、儂らを見習って冬にも仕事をしてもらわんとな。」
そうだー人間働けー。と口々に賛成の意見を述べる毛玉達。
どうも、人間の里で何やら一仕事終えて来たらしい。

「今日の『毛玉で畑に種を撒こう作戦』は、人間達の誤解が多すぎだ。」
「いくらなんでも毛玉は土とか食わないっての。人間はその辺りが分かってねえのな。」
食べないのか、意外と体力がついて美味しいのにとは思ったが、口には出さないでおいた。

「まあ、繰り返すうちに理解するさ。それより次の作戦よ。」
「冬場は静葉様も穣子様もアテにならねえ、落ち込んでるしな。どうするよ?」
もふもふと群れて巨大な毛玉に変身しつつ、どうしようかと相談する毛玉達。

「氷の妖精が冬にも夏にも笑うんだから、秋の神でも冬に楽しい事が有っても良いじゃない。やっぱりお二方を無理にでも引っ張り出す?」
「俺が昨日それやって肥料にされかけたんじゃん。やだよ、それ。」
毛玉のくせになまいきだ、とか言われているのかしらね?とはゆかりんの意見。

「やはりまずは基本。人間に、毛玉にも無害なのと有害なのがあることを理解して貰おうかの。」
「んじゃ、明日は『蹴鞠ならぬ蹴毛玉で人間と触れ合おう作戦』だな。」

よーし、やるぞー。と楽しそうな毛玉達。
そのまま、巨大なふわふわの塊と化して妖怪の山の麓へと飛び去ろうとする。





自然とも人間とも妖怪とも、あまつさえ神とも共存する。
毛玉に不可能は有るのだろうか。





ふわふわの大毛玉が、風に吹かれて妖怪の山へと飛んで行く。



唐突に、統制を失って墜落した。

ピチュった。


やはり毛玉は死ぬ程弱かった。
番外編書くとしょんぼり。
イージーシューターがEXTRAに挑戦しちゃいけないんですか。
どうなんですかと紅魔館を目指したら美鈴さんに蹴落とされました。つよいよめーりん。
コメント



1.名乗ることができない程度の能力削除
これからも楽しみに。

めーりん強いよねwww
2.名前が無い程度の能力削除
めーりんは強い、いや剛い。
でもその前に大ちゃんに撃沈したりする。妖精強いよ。
次回も必ず見に来ます。
3.名前が無い程度の能力削除
各地の毛玉がやっぱり面白い。
>蹴鞠ならぬ蹴毛玉
え?そんなことして大丈夫なの?人間も毛玉も。