※ この話は起承転結の承がとてつもなく漫才です。そういうのが無理な方はお逃げ下さい。しかもチルノが途中からおかしいです。
「あははは!!喰らえ魔理沙ー!!」
「ますた~ふぁ~あ」
「マイナスぴゃあああ!!!」
説明しよう。チルノが全力の『マイナスK』を放ったのだが、魔理沙の欠伸雑じりのマスタースパークにより盛大に吹っ飛ばされたのだ。
「またつまらぬ物を吹き飛ばしてしまった。さあ図書館図書館♪」
どこぞの侍のようにそんな事言ってのける魔理沙。そんな彼女は今、意気揚々と図書館に向かおうとしていた。
「なんだ、また居たな門番」
「またとは何だ!言いたい事ははっきりと言え!」
居なくても同じなのに、そう魔理沙は言いたかった。若干呆れ気味に言ってみたのだがやはりそれだけでは真意は伝わらず、美鈴は戦闘モードになった。
「この紅美鈴、今日こそお前を止めてみ」
「ますぱ~く~」
気だるそうに放たれたマスタースパークは見事に門番を消し飛ばした。美鈴は思っただろう、略すなと。
「さてと、そろそろだよな。」
ここまで来るのにマスタースパークを二発も放ってしまった。無駄でしか無い。
「パチュリーはノンディレクショナルレーザーで良いか」
パクッたスペルでパクられた本人を攻撃するのだ。正に外道である。
「おじゃましマスタースパーク!」
「え!?何ごふ!!」
図書館の大扉をマスタースパークでこじ開け、ついでに小悪魔をぶっ飛ばした。一石射命丸&ミスチーだ。意味が判らない人はお母さんに聞いてみよう。普段見られない表情が見れるはずだ。
「持ってくぜーー!」
「持ってかないで~!」
「のれ~ざ~」
「何それぼ!!」
ノンディレクショナルレーザーだったのだが調子に乗りすぎたようだ。略しすぎてパチュリーには魔理沙の考えが伝わらなかった様である。まあ撃退できたから良いのだが。
「それじゃ~な~」
門の外に近づくと美鈴が昼食を嬉しそうに食べていた。美味しそうにジャム無しコッペパンを食べている。
「美味しいな~♡」
ここまで美味しそうに食べられたらコッペパンも幸せであろう。
「ご馳走さマスパ~ク」
「危ないコッペp」
なんとなく放ってみた。美鈴はコッペパンを死守しようと試みた。結果腕以外が消炭になった。
「じゃ~な~」
「大丈夫だった?コッペパン」
3秒足らずでリザレクションした美鈴、まあこれぐらい出来なければ門番にはなれまい。
「美鈴さん、御免なさい私の所為でこんな事に」
「いや、気にしないで良いよ。そういえばさ、最近咲夜さんが自分のパッドを」
美鈴は突如現われたコッペパンの精と何気なく会話をしているが、まあこれは関係ない事である。一方此処は図書館。
「くっ、また持って行かれたわ!のれーざーって何よ!」
パチュリー理性ライフポイント
65/100
パチュリーが悔しそう言っている。小悪魔は扉の前で灰になっていた。そんな異常事態にあの喧しいのがやって来た。
「失礼しまーす!パチュリー!あんたにお願いがあるんd」
「失礼だと思っているなら帰って」
イライラしている時に何でこんな奴が、と思ったパチュリーは軽く追い返そうと試みる。
「とりあえずアポを取ってからにして欲しいですね。とりあえず今は忙しいので帰って下さい」
小悪魔やや遅れてリザレクション。これが俗に言うギャグキャラクオリティだ。もう妹紅の能力はこの紅魔館では無いに等しい。しいて言うなら『コメディーの特権を自由に使う事が出来る程度の能力』だ。
「あなたに用なんて無いわよ!邪魔だからどっか行ってて!」
「ええ!?」
小悪魔はまた灰になってしまった。まさか氷精ごときにそこまで言われるとは思わなかったのだろう。
「どっか行くのはあなたよ、と言うか帰れ。そろそろあなたを燃やすわよ?」
パチュリー理性ライフゲージ
30/100
落ち着いた素振りを見せるが内心ではとても苛立っている。だがそれに気付かないチルノはパチュリーの理性に更なる攻撃を仕掛ける。
「じゃあ私の用件を聞いてくれるまで帰らないから!」
そう言うとチルノはどっかりと座り込んでしまう。
パチュリー理性ライフポイント
0/100 DANGER!!DANGER!!
ブチ!
「じゃあ帰らなくてもいいわ。馬鹿な氷精風情が私に逆らうとどうなるかと言う事を頭に刷り込んであげるわ!」
パチュリーはスペルカードを取り出しそれに魔力を送り込む。するとスペルカードが真っ赤な炎を帯びる。パチュリーはチルノを睨みつける。チルノは少し焦ったのか、負けじとスペルカードを取り出す。
「火符 『アグニシャイン』!!」
「雪符 『ダイアモンドブリザード』!!」
「本符 『Stop both foolish』!!」(止めろ馬鹿共!!)
ゴス!!
「うきゃあ!!」
ゴス!!
「痛い!」
今正に二人の弾幕がぶつかり合おうとした瞬間、辞書ほどの大きさの二冊の本の角が小悪魔のやたら発音の良い叫びと共に二人の頭に直撃した。そして二人とも静止した。
「お二人共、今ここで戦ったらここの本がどうなってしまうか判らない訳ではないでしょう!」
本が小悪魔が放ったものだった。
「私にとってはどうでも良いけど。しょうがないわね、今日は此処までにしといてあげるわ。次あったら覚悟しときなさい!紫もやし!」
「私とした事がつい取り乱してしまったわ、大人気無い。まあとりあえず、さっきの非礼を詫び、土下座し、自分の額に犬と書けばあなたの用件を聞いてあげても良いわよ?馬鹿氷精」
「はあ、二人とも子供ですね。まあとりあえず、用件とはなんですか?」
このままでは永遠に口喧嘩が終わりそうに無いので小悪魔が仲裁に入る。二人は今にもガルルルッ!とか言い出しそうな雰囲気だ。
「ああ、その事なんだけどね。私を魔理沙に勝てる位強くしt」
「諦めなさい、あなたじゃ無理よ」
「パチュリー様、黙っていてください」
小悪魔がそう言うとパチュリーは本を読み出してしまった。パチュリーの発言にチルノはむっとした顔になるが今はそんな事より対策を考えねばならない。
「そうですね~~」
小悪魔は必死に考える。だがしかしどんな手を考えても結局チルノが吹き飛ぶ結末にしかならない。此処はやはり知識人に頼るしかないのだろうか。駄目元でパチュリーに頼んでみる事にした。
「パチュリー様~、何か良いアイディアはありm」
「黙ってろって言ったのはあなたじゃない」
「ね~、何か思いつかないの~?」
「あなたも静かにしてて下さい」
パチュリーは完全に拗ねてしまった。もはや子供でしか無い。これならすぐに期限を直したチルノの方が大人なのではないか、と小悪魔は考えてしまう。
「ね~、何か思いつかないの~?」
「黙れこのば・・・っと、いけないいけない、すーーはーー!・・・ピカッ!!」
いらない説明だが、チルノが同じ事をなんども聞いてくる事も有り小悪魔にまで徐々にストレスが溜まり始める。だがここは大人の対応をせねば、と思い小悪魔は深呼吸をする。すると脳に酸素が送り込まれ名案が浮んだ。そして小悪魔はパチュリーに囁く。
「パチュリー様、彼女は紅魔湖に住んで居ます。もしチルノが強くなってくれればあの憎き白黒も門番に辿り着く前に帰って行ってくれるかも・・・」
その言葉がパチュリーを変えた。正に悪魔の囁きと言う訳だ。小悪魔は心の中でガッツポーズを決めていた。
「そうね、そこの氷精。今から私を師匠と呼ぶなら教えてあげるわ」
ああ、まったくもう。小悪魔はそう考えていた。この魔女は変な所で強情なのだ。
「良いわよ!」
「いいんですかい!!」
小悪魔はつい突っ込みを入れてしまった。左手をビシー!と横に出して。
「その代わりそこの黒いの!」
「小悪魔です。なんですか?」
ビシ!と小悪魔に向かい指を指す。名前を忘れられて堪るか、そう思った小悪魔は一応指摘しておいた。まあ『小悪魔』自体名前ではないのだが。小悪魔がチルノに指を指した理由を聞いた瞬間、チルノがとんでもない事を言い出した。
「私を神と崇め称えなさい!」
「何でですか!!」
小悪魔は二度目の突っ込みを入れた。
「良いわよ」
「なんでパチュリー様が答えるんですか!!」
勝手に了承された小悪魔は必死だ。無理もない、なにが面白くて氷精などを崇めなければいけないのだろうか。結局、交渉は小悪魔抜きで成立してしまった。
「そうと決まればもうピッタリの符はできているわ」
流石は知識人だ、と改めて関心する小悪魔。だがなぜ案が出ていたのなら言ってくれなかったのか。
「んじゃあ、その符ってなに?師匠、早く教えなさいよ!さあ、さあ!さあ!!」
チルノは興奮していた。まあそれはパチュリーと小悪魔を苛立たせているだけなのだが。
「神様落ち着いて下さい、落ち着いて話を聞きましょう」
二人は切り替えが早い。そこが取り柄な訳だが、悪魔が神を崇めて良いのだろうか?
「使いようによっては最高の符よ。あなたの今までの戦闘データを見た結果・・・・・・・・・・・」
~少女説明中~
「と言うわけで、この“今まであなたになかったタイプの”符を使えば勝てるわ。あとはあなたがどうやって魔理沙を欺くかが鍵よ。まあ、新しい符を作ってもいいかもね」
どうやら説明が終わった様である。説明が終わった後、チルノは頭から煙をだし、小悪魔は顔を引きつらせていた。
「・・・ん~?」ぷしゅ~~
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫のはずよ。でもまあ・・・」
~少女企み中~
「判った!」
「それじゃあ、作戦37-AZ5スタートよ」
「「はい!(37-AZ5?)」」
適当に作戦名を付け、それぞれが行動を開始した。
時は若干進んでここはマーガトロイド邸、玄関前には魔理沙が立っていた。いつもの様にマジックアイテムを永久に借りていく心算なのだろう。
「おーい!魔理沙様が来てやったぜー!」
乱暴にドアを叩くが一向に反応しない。痺れを切らした魔理沙は思い切りドアを蹴破った。
「とりゃー!・・・なんだ、居ないじゃないか。ん?」
せっかく家の中に入って見れば誰も居なかったのだ。魔理沙は少々残念そうに目的のブツを掻っ攫、もとい無断借用しようとしたのだが、何やら扉の奥から啜り泣く声が聞こえた。その事に気付いた魔理沙は早速その声の元へと歩を進める。するとアリスの部屋に辿り着いた魔理沙はベットの上に横たわる何かを見た。
「う・・・ぐす」
「お、おい、もしかしてアリスか?」
「魔理・・・沙?」
横たわっているのは紛れも無くアリスだった。カーテンを閉め切った暗い部屋だったのではっきりとは判らなかったが、声は正にアリスの物だった。
「うう、ま、魔理沙の馬鹿ーーー!!」
「はあ!?」
突然アリスが叫びだした。だがその言葉の意味が判らなかった魔理沙は間抜けな声を上げてしまう。
「な、なんでよりによって、あんな陰気なやつなんかに!うわーーーん!!」
とうとう本気で泣き出してしまった。干からびてしまうのではないかと思うくらい涙を流すアリスに魔理沙は混乱する。
「な、何を言いたいのか判らないぜ!」
「恍けるの!?ふざけんじゃ無いわよ!!魔理沙の癖に!!魔理沙の癖にーー!!」
アリスは暴走しかけていた。このままでは弾幕ごっこにまで発展してしまう恐れがあるので、なんとか宥めようとする。
「とりあえず落ち着け、まず何があったのかを話せ!」
「あなたって、ほんっっとに最低な人間ね!!良いわ、恍けるのなら、弾幕ごっこで!上海!蓬莱!」
人形を数体呼び寄せ弾幕ごっこの体勢に入る。このままでは殺られる!そう思った魔理沙は八卦炉を構える。暗くて良く見えないが今のアリスの顔は怒りに満ちているだろう。
「う!いたたたたっ」
「お、おいどうした?」
突然苦しそうに蹲るアリス。その様子に拍子抜けしてしまった魔理沙。
「まったく、今日のアリスはいつにも増しておかしいぜ」
「どう言う意味よ、いたた」
そのままの意味だ、と言いかけてしまったのだが今それを言うと・・・考えるのも恐ろしい、と考えた魔理沙は取り出しアリスをベットへと運ぶ。
「ほれ、運んでやるから。よいしょっと」
「え?じ、自分で行くから良いわよ!」
「なに言っているんだ。ほれ、病人は寝てろ」
何故ここまで拒絶するのか判らない。まあそんな事はどうでも良いと踏んだ魔理沙は問答無用に運び出す。こうして再びベットに運びこまれたアリスはおかしな事を口にする。
「わ、私の顔、見てないわよね」
「へ?み、見て居ないと言うか見えないけど。それがどうかしたのか?」
突然妙な事を言い出すアリス。その事に魔理沙はまたも間抜けな声を出してしまう。後ろの上海、蓬莱は事情を知っているのかほっ、と胸を撫で下ろしている。
「とりあえず電気点けるぞ、このままじゃろくに看病も出来ん」
「ま、まって!点けなくて良い!点けないで!!」
電気を点けるためスイッチに指を当てようとした瞬間、アリスが声を張り上げた。だがそんな事気にせずスイッチを押す。点けなくて良い云々以前に点けなくては看病が出来ないからだ。
「アリス、さあ看病をし・・・て・・・や」
「あ・・・う」
振り返った魔理沙は目を白黒させていた。一方アリスはこの世の終わりを見たかのような顔をして立ち尽くしている。そして魔理沙は堪え切れなかった何かを盛大に口に出す。
「ぷ・・・あーっはっはっはっは!!あ、アリス!お前そのおでこ!!あはははは!!」
「うう、だ、だから点けないでって言ったのに!」
見るとアリスの顔はやつれていた。いや、それだけなら普通に心配そうにするだけで済むのだが、さらに額に肉と書かれていた。しかも油性マジックで。
「ぷっ、くく、腹筋を破壊する程度の能力、あーはははは!!」
「うるさい!」
アリスは顔を真っ赤に染めていた。黒のマジックで書かれていた為先程は見えなかったが、ベットに運ばれて行くのを拒絶したのも見られるのを恐れていたのだろう。
「と、とにかく、くくくっ、な、何があったのか、ぷっ、き、聞かせ、あはははは!」
「笑うのを止めなさいよ!!」
そしてアリスはベットに横たわり、魔理沙は椅子に座り、プルプルと振るえながら、アリスに起こった一連の出来事の話を聞く事にした。
「今日この手紙が届いたんだけど・・・何も知らないならこれは読まない方が良いわね」
「なんだ?その紙は・・・いや、いい」
アリスがチラつかせた紙に少し興味を持ったが、何かとてつもなく嫌な予感がしたのですんでの所でその紙を見るのを止めた。
実は作戦実行直前に三人はこんな事を計画していた。
「ええ、大丈夫のはずよ。でもまあ一応実験は必要ね」
そう言うとパチュリーは紙とペンを取り出した。そしておもむろに何かを書き始めた。
「これをアリスに送りつけてやるわ」
「へえ、これ何ですか?」
小悪魔が見た紙にはこう書かれていた。
アリスへ
今日魔理沙が図書館にやって来たので思い切って告白したら、
なんとOKされました。ちなみに今は二人でベットの上に居ます。
私達は今とても愛し合っています。私が積極的になればざっと
こんなものです。それでは余生を独り寂しく生きて下さい。
パチュリーより
「よくもまあ、ここまでの嘘を平然と」
小悪魔は突っ込む気力も無いのだろう。ただただ、呆れるだけだった。この人はもう駄目だな、そんな考えと共に、それだけ言う。
「これでアリスを誘いだす。それをあなたが撃退。完璧よ」
「判った!」
「それじゃあ、作戦37-AZ5スタートよ」
と言う事があったのだ。そして、自分の瞳に目いっぱいの怒りを込め紅魔館に向かったアリスは“何故か”チルノにより撃退されてしまったのだ。その一切の内容を魔理沙には話して居ないが魔理沙に額のこと以外でどうにも解せない事があった。
「ところで、なんでやつれているんだ」
「どうだって良いじゃない」
魔理沙はアリスの顔を見ないまま質問をする。それに対しアリスは答えになって居ない返事をするのだ。痺れを切らした魔理沙はアリスに言う。
「あーっ!しょうがねえ!アリス、お前をそんなのにさせたの何処に居るんだ!私もそいつと戦ってくる!」
「え・・・・」
その言葉にアリスは驚いてしまう。そして何故か顔を赤らめる。
「さあ何処だ!言え!」
「あ、あっちの・・・」
「紅魔館の方か、よし!それじゃあ行ってくるぜ」
「うん・・・」
こうして魔理沙は目にも止まらぬ速度で飛んでいった。後に残るのはペタリと座り込むアリスだけだった。
アリスには先程の声がこう聞こえていた。
(アリス、お前に落書きをした奴は何処のどいつだ!私が変わりにぶっ飛ばして来てやる!)
「魔理沙が・・・私の敵討ちを」
乙女の勘違いと飢えた巫女程恐ろしい物は無いのである。
魔理沙は紅魔湖周辺にいた。飛び出してきた時よりも今は割とゆっくりと飛んでいる。
「ここは紅魔湖か、まさかチルノがアリスを倒したって事は無いよな!」
ヘラヘラと笑いながら飛んでいると目の前に小さな誰かがやって来た。
「そのまさかよ!今日こそはあんたを」
「ますた~すp」
「甘いわよ!」
普段ならここでぴゃーー!とチルノが叫んでお終いなのだが今日のチルノはいつもと違った。
「なに!?」
チルノが魔理沙にも劣らない速度で目の前にやって来た。どうやら今回はやられる前にやってやれ、と言う事らしい。単純な作戦だが効果は十分にあったようだ。突然目の前に迫られた魔理沙は一瞬動きを止めてしまう。そこをチルノは見逃さなかった。
「氷符!!」
「アイシクルフォールか!」
我に戻った魔理沙は氷符と叫んだ時点で魔理沙はどんな攻撃が来るかを予測出来ていた。アイシクルフォールは目の前にいれば当たらない。だがチルノは自ら目の前にやって来た。先程の作戦はチルノにしては見事だったが自分から寄って来ては意味が無い。
「残念♪氷符 『フロストペイン』!!」
「な!?なんだそもが!!」
チルノが符と何故か皿を取り出すと、とことん細かく砕かれた氷が皿の上に盛られていく。さらに何やら血の様に真っ赤な液体をその氷の山の上に掛かっていく。それを思い切り魔理沙の口に放り込んだ。普段遠距離戦のチルノに突然何かで至近距離で攻撃してきた事にも驚き、意表を突かれた魔理沙はそれを喰らってしまう。
「ふ、ふざけるな!」
「ふざけてなんか無いわよ、フフン」
魔理沙がチルノに叫ぶ。しかしチルノは得意げに笑っている。それが何を表すのかはすぐに判る事になった。
「何を・・・うあっ!」
ズキーッ!と頭を握りつぶされる感覚に襲われる魔理沙。その赤い液体が毒だったのか判らないが魔理沙は頭を抱え苦しそうに悶える。これがパチュリーの考えた接近戦用スペルカードだ。
「ふふん!この程度終わると思わない事ね!!」
「な!?は、放せ!くあっ!」
チルノが後ろから羽交い絞めにする。その勢いで箒も落としてしまった。普段なら妖精の力などたかが知れているが頭が痛み力が出ない。そしてチルノは妖しく笑うとスペルカードを取り出し、呟いた。
「氷像 『ガール・オブ・フリージング』」
「冷た!!・・・え?」
突然刺すような冷たさに襲われた魔理沙は自分の体を見てみた。するとどんどん凍り始めているでは無いか。
「う、うわーー!!」
「ふふ、先にやって来た人形使いはお腹だけに留めてあげたけど、あんたは容赦しないから。あたいが今までどんな思いでマスタースパークを喰らってきたか、丸ごときっちり思い知らせてあげる」
もう下半身は完全に凍ってしまっていた。焦りがピークに達した魔理沙はひたすら暴れ続ける。今の姿を霊夢が見たら何て言うだろうか。だが今はそんな事関係ない、とにかく暴れるしか出来ないのだ。
「ふふ♪チェックメイト」
「や・・・めろ」
チルノは勝ちを確信した。頭を残し完全に凍ってしまった魔理沙は信じられないと言う表情でチルノを見つめる。
「ばいばい、魔理沙」
「あ・・・」
羽交い絞めしていた手を離す。すると魔理沙は凍りついた状態で湖へと落下してしまった。
「う・・・あ?」
魔理沙は気が付いた時には紅魔湖の近くにいた。誰かが救ってくれたのだろうか。そう思いつつも何気なく湖の底を覗き込むと、とんでもない物を見てしまった。
「な、なんだこりゃーーーー!!!!」
額に⑨と書かれていたのだ。アリスと同様に油性マジックで。慌てて洗い流そうとするが落ちない。
「くそーー、」
仕方なく魔理沙は湖に浮かんでいる帽子を隣に落ちていた箒で取りに行くと帽子をすごく深く被り飛び立った。これが後に妖精達の間で長く長~く伝わった『氷精の初勝利伝説』の正体である。この伝説は妖精達にとても大きな希望と勇気を与えたそうな。
Epilogue
シャクシャクと言う音が響き渡る紅魔館の門前。美鈴は門番隊の一人(以降門番)とある物を食べていた。
「冷たくて美味しいですね」
「そうね~、でも一気に食べると、うっ・・・来た!」
「ああ、辛いですよねそれ・・・ん?」
美鈴は頭を抑えている。すると空から一枚の紙が落ちてきた。何だろうと思った門番はそれを手の持った。その紙は文々。新聞の号外だった。
「何々?今日魔法の森に・・・」
門番がそれを読む。美鈴は復活したのかまたシャクシャクとかき氷を食べる。ちなみに紙面にはこう書かれていた。
『霧雨魔理沙の額の謎』
今日魔法の森に住む魔法使い、霧雨魔理沙が紅魔湖に浮かんでいるのを発見した。私はそれ救うべく魔理沙の元へ向かうと彼女の額に油性マジックで⑨と書かれているのを発見した。私はこれを“霧雨魔理沙は氷精のチルノに負けた”ものと推測する。そんな馬鹿な、と私も思ったのだが自分から書くとも思えないのでこの結論に辿り着いた。以後、何か他にも判り次第紙面にて報告しようと思う。
『魔法の森の店主の筋肉』
今日香霖堂の店主のバストが筋肉の量も手伝いCカップを・・・・・・・・
新聞には額に⑨と書かれた魔理沙の写真と筋肉隆々の霖之助の写真が貼ってあった。
「・・・・・・・」
「くあ!また来た!・・・ん?どうしたの?あなたも来たの?」
門番はプルプルと震えている。美鈴はその様子を不思議そうに見つめている。
「ぷっ、あははは!」
「え!?何なの!?」
此処は永遠亭。今日はどうにも忙しそうだ。
「師匠!患者が多すぎて処置が間に合いません!!」
「落ち着きなさいうどんげ!姫やてゐにも手伝って貰いなさい!」
「駄目です!二人とも行動不能です!!」
「何で!?」
永遠亭が腹筋の肉離れ患者で溢れかえったそうな。めでたしめでたし。
「あははは!!喰らえ魔理沙ー!!」
「ますた~ふぁ~あ」
「マイナスぴゃあああ!!!」
説明しよう。チルノが全力の『マイナスK』を放ったのだが、魔理沙の欠伸雑じりのマスタースパークにより盛大に吹っ飛ばされたのだ。
「またつまらぬ物を吹き飛ばしてしまった。さあ図書館図書館♪」
どこぞの侍のようにそんな事言ってのける魔理沙。そんな彼女は今、意気揚々と図書館に向かおうとしていた。
「なんだ、また居たな門番」
「またとは何だ!言いたい事ははっきりと言え!」
居なくても同じなのに、そう魔理沙は言いたかった。若干呆れ気味に言ってみたのだがやはりそれだけでは真意は伝わらず、美鈴は戦闘モードになった。
「この紅美鈴、今日こそお前を止めてみ」
「ますぱ~く~」
気だるそうに放たれたマスタースパークは見事に門番を消し飛ばした。美鈴は思っただろう、略すなと。
「さてと、そろそろだよな。」
ここまで来るのにマスタースパークを二発も放ってしまった。無駄でしか無い。
「パチュリーはノンディレクショナルレーザーで良いか」
パクッたスペルでパクられた本人を攻撃するのだ。正に外道である。
「おじゃましマスタースパーク!」
「え!?何ごふ!!」
図書館の大扉をマスタースパークでこじ開け、ついでに小悪魔をぶっ飛ばした。一石射命丸&ミスチーだ。意味が判らない人はお母さんに聞いてみよう。普段見られない表情が見れるはずだ。
「持ってくぜーー!」
「持ってかないで~!」
「のれ~ざ~」
「何それぼ!!」
ノンディレクショナルレーザーだったのだが調子に乗りすぎたようだ。略しすぎてパチュリーには魔理沙の考えが伝わらなかった様である。まあ撃退できたから良いのだが。
「それじゃ~な~」
門の外に近づくと美鈴が昼食を嬉しそうに食べていた。美味しそうにジャム無しコッペパンを食べている。
「美味しいな~♡」
ここまで美味しそうに食べられたらコッペパンも幸せであろう。
「ご馳走さマスパ~ク」
「危ないコッペp」
なんとなく放ってみた。美鈴はコッペパンを死守しようと試みた。結果腕以外が消炭になった。
「じゃ~な~」
「大丈夫だった?コッペパン」
3秒足らずでリザレクションした美鈴、まあこれぐらい出来なければ門番にはなれまい。
「美鈴さん、御免なさい私の所為でこんな事に」
「いや、気にしないで良いよ。そういえばさ、最近咲夜さんが自分のパッドを」
美鈴は突如現われたコッペパンの精と何気なく会話をしているが、まあこれは関係ない事である。一方此処は図書館。
「くっ、また持って行かれたわ!のれーざーって何よ!」
パチュリー理性ライフポイント
65/100
パチュリーが悔しそう言っている。小悪魔は扉の前で灰になっていた。そんな異常事態にあの喧しいのがやって来た。
「失礼しまーす!パチュリー!あんたにお願いがあるんd」
「失礼だと思っているなら帰って」
イライラしている時に何でこんな奴が、と思ったパチュリーは軽く追い返そうと試みる。
「とりあえずアポを取ってからにして欲しいですね。とりあえず今は忙しいので帰って下さい」
小悪魔やや遅れてリザレクション。これが俗に言うギャグキャラクオリティだ。もう妹紅の能力はこの紅魔館では無いに等しい。しいて言うなら『コメディーの特権を自由に使う事が出来る程度の能力』だ。
「あなたに用なんて無いわよ!邪魔だからどっか行ってて!」
「ええ!?」
小悪魔はまた灰になってしまった。まさか氷精ごときにそこまで言われるとは思わなかったのだろう。
「どっか行くのはあなたよ、と言うか帰れ。そろそろあなたを燃やすわよ?」
パチュリー理性ライフゲージ
30/100
落ち着いた素振りを見せるが内心ではとても苛立っている。だがそれに気付かないチルノはパチュリーの理性に更なる攻撃を仕掛ける。
「じゃあ私の用件を聞いてくれるまで帰らないから!」
そう言うとチルノはどっかりと座り込んでしまう。
パチュリー理性ライフポイント
0/100 DANGER!!DANGER!!
ブチ!
「じゃあ帰らなくてもいいわ。馬鹿な氷精風情が私に逆らうとどうなるかと言う事を頭に刷り込んであげるわ!」
パチュリーはスペルカードを取り出しそれに魔力を送り込む。するとスペルカードが真っ赤な炎を帯びる。パチュリーはチルノを睨みつける。チルノは少し焦ったのか、負けじとスペルカードを取り出す。
「火符 『アグニシャイン』!!」
「雪符 『ダイアモンドブリザード』!!」
「本符 『Stop both foolish』!!」(止めろ馬鹿共!!)
ゴス!!
「うきゃあ!!」
ゴス!!
「痛い!」
今正に二人の弾幕がぶつかり合おうとした瞬間、辞書ほどの大きさの二冊の本の角が小悪魔のやたら発音の良い叫びと共に二人の頭に直撃した。そして二人とも静止した。
「お二人共、今ここで戦ったらここの本がどうなってしまうか判らない訳ではないでしょう!」
本が小悪魔が放ったものだった。
「私にとってはどうでも良いけど。しょうがないわね、今日は此処までにしといてあげるわ。次あったら覚悟しときなさい!紫もやし!」
「私とした事がつい取り乱してしまったわ、大人気無い。まあとりあえず、さっきの非礼を詫び、土下座し、自分の額に犬と書けばあなたの用件を聞いてあげても良いわよ?馬鹿氷精」
「はあ、二人とも子供ですね。まあとりあえず、用件とはなんですか?」
このままでは永遠に口喧嘩が終わりそうに無いので小悪魔が仲裁に入る。二人は今にもガルルルッ!とか言い出しそうな雰囲気だ。
「ああ、その事なんだけどね。私を魔理沙に勝てる位強くしt」
「諦めなさい、あなたじゃ無理よ」
「パチュリー様、黙っていてください」
小悪魔がそう言うとパチュリーは本を読み出してしまった。パチュリーの発言にチルノはむっとした顔になるが今はそんな事より対策を考えねばならない。
「そうですね~~」
小悪魔は必死に考える。だがしかしどんな手を考えても結局チルノが吹き飛ぶ結末にしかならない。此処はやはり知識人に頼るしかないのだろうか。駄目元でパチュリーに頼んでみる事にした。
「パチュリー様~、何か良いアイディアはありm」
「黙ってろって言ったのはあなたじゃない」
「ね~、何か思いつかないの~?」
「あなたも静かにしてて下さい」
パチュリーは完全に拗ねてしまった。もはや子供でしか無い。これならすぐに期限を直したチルノの方が大人なのではないか、と小悪魔は考えてしまう。
「ね~、何か思いつかないの~?」
「黙れこのば・・・っと、いけないいけない、すーーはーー!・・・ピカッ!!」
いらない説明だが、チルノが同じ事をなんども聞いてくる事も有り小悪魔にまで徐々にストレスが溜まり始める。だがここは大人の対応をせねば、と思い小悪魔は深呼吸をする。すると脳に酸素が送り込まれ名案が浮んだ。そして小悪魔はパチュリーに囁く。
「パチュリー様、彼女は紅魔湖に住んで居ます。もしチルノが強くなってくれればあの憎き白黒も門番に辿り着く前に帰って行ってくれるかも・・・」
その言葉がパチュリーを変えた。正に悪魔の囁きと言う訳だ。小悪魔は心の中でガッツポーズを決めていた。
「そうね、そこの氷精。今から私を師匠と呼ぶなら教えてあげるわ」
ああ、まったくもう。小悪魔はそう考えていた。この魔女は変な所で強情なのだ。
「良いわよ!」
「いいんですかい!!」
小悪魔はつい突っ込みを入れてしまった。左手をビシー!と横に出して。
「その代わりそこの黒いの!」
「小悪魔です。なんですか?」
ビシ!と小悪魔に向かい指を指す。名前を忘れられて堪るか、そう思った小悪魔は一応指摘しておいた。まあ『小悪魔』自体名前ではないのだが。小悪魔がチルノに指を指した理由を聞いた瞬間、チルノがとんでもない事を言い出した。
「私を神と崇め称えなさい!」
「何でですか!!」
小悪魔は二度目の突っ込みを入れた。
「良いわよ」
「なんでパチュリー様が答えるんですか!!」
勝手に了承された小悪魔は必死だ。無理もない、なにが面白くて氷精などを崇めなければいけないのだろうか。結局、交渉は小悪魔抜きで成立してしまった。
「そうと決まればもうピッタリの符はできているわ」
流石は知識人だ、と改めて関心する小悪魔。だがなぜ案が出ていたのなら言ってくれなかったのか。
「んじゃあ、その符ってなに?師匠、早く教えなさいよ!さあ、さあ!さあ!!」
チルノは興奮していた。まあそれはパチュリーと小悪魔を苛立たせているだけなのだが。
「神様落ち着いて下さい、落ち着いて話を聞きましょう」
二人は切り替えが早い。そこが取り柄な訳だが、悪魔が神を崇めて良いのだろうか?
「使いようによっては最高の符よ。あなたの今までの戦闘データを見た結果・・・・・・・・・・・」
~少女説明中~
「と言うわけで、この“今まであなたになかったタイプの”符を使えば勝てるわ。あとはあなたがどうやって魔理沙を欺くかが鍵よ。まあ、新しい符を作ってもいいかもね」
どうやら説明が終わった様である。説明が終わった後、チルノは頭から煙をだし、小悪魔は顔を引きつらせていた。
「・・・ん~?」ぷしゅ~~
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫のはずよ。でもまあ・・・」
~少女企み中~
「判った!」
「それじゃあ、作戦37-AZ5スタートよ」
「「はい!(37-AZ5?)」」
適当に作戦名を付け、それぞれが行動を開始した。
時は若干進んでここはマーガトロイド邸、玄関前には魔理沙が立っていた。いつもの様にマジックアイテムを永久に借りていく心算なのだろう。
「おーい!魔理沙様が来てやったぜー!」
乱暴にドアを叩くが一向に反応しない。痺れを切らした魔理沙は思い切りドアを蹴破った。
「とりゃー!・・・なんだ、居ないじゃないか。ん?」
せっかく家の中に入って見れば誰も居なかったのだ。魔理沙は少々残念そうに目的のブツを掻っ攫、もとい無断借用しようとしたのだが、何やら扉の奥から啜り泣く声が聞こえた。その事に気付いた魔理沙は早速その声の元へと歩を進める。するとアリスの部屋に辿り着いた魔理沙はベットの上に横たわる何かを見た。
「う・・・ぐす」
「お、おい、もしかしてアリスか?」
「魔理・・・沙?」
横たわっているのは紛れも無くアリスだった。カーテンを閉め切った暗い部屋だったのではっきりとは判らなかったが、声は正にアリスの物だった。
「うう、ま、魔理沙の馬鹿ーーー!!」
「はあ!?」
突然アリスが叫びだした。だがその言葉の意味が判らなかった魔理沙は間抜けな声を上げてしまう。
「な、なんでよりによって、あんな陰気なやつなんかに!うわーーーん!!」
とうとう本気で泣き出してしまった。干からびてしまうのではないかと思うくらい涙を流すアリスに魔理沙は混乱する。
「な、何を言いたいのか判らないぜ!」
「恍けるの!?ふざけんじゃ無いわよ!!魔理沙の癖に!!魔理沙の癖にーー!!」
アリスは暴走しかけていた。このままでは弾幕ごっこにまで発展してしまう恐れがあるので、なんとか宥めようとする。
「とりあえず落ち着け、まず何があったのかを話せ!」
「あなたって、ほんっっとに最低な人間ね!!良いわ、恍けるのなら、弾幕ごっこで!上海!蓬莱!」
人形を数体呼び寄せ弾幕ごっこの体勢に入る。このままでは殺られる!そう思った魔理沙は八卦炉を構える。暗くて良く見えないが今のアリスの顔は怒りに満ちているだろう。
「う!いたたたたっ」
「お、おいどうした?」
突然苦しそうに蹲るアリス。その様子に拍子抜けしてしまった魔理沙。
「まったく、今日のアリスはいつにも増しておかしいぜ」
「どう言う意味よ、いたた」
そのままの意味だ、と言いかけてしまったのだが今それを言うと・・・考えるのも恐ろしい、と考えた魔理沙は取り出しアリスをベットへと運ぶ。
「ほれ、運んでやるから。よいしょっと」
「え?じ、自分で行くから良いわよ!」
「なに言っているんだ。ほれ、病人は寝てろ」
何故ここまで拒絶するのか判らない。まあそんな事はどうでも良いと踏んだ魔理沙は問答無用に運び出す。こうして再びベットに運びこまれたアリスはおかしな事を口にする。
「わ、私の顔、見てないわよね」
「へ?み、見て居ないと言うか見えないけど。それがどうかしたのか?」
突然妙な事を言い出すアリス。その事に魔理沙はまたも間抜けな声を出してしまう。後ろの上海、蓬莱は事情を知っているのかほっ、と胸を撫で下ろしている。
「とりあえず電気点けるぞ、このままじゃろくに看病も出来ん」
「ま、まって!点けなくて良い!点けないで!!」
電気を点けるためスイッチに指を当てようとした瞬間、アリスが声を張り上げた。だがそんな事気にせずスイッチを押す。点けなくて良い云々以前に点けなくては看病が出来ないからだ。
「アリス、さあ看病をし・・・て・・・や」
「あ・・・う」
振り返った魔理沙は目を白黒させていた。一方アリスはこの世の終わりを見たかのような顔をして立ち尽くしている。そして魔理沙は堪え切れなかった何かを盛大に口に出す。
「ぷ・・・あーっはっはっはっは!!あ、アリス!お前そのおでこ!!あはははは!!」
「うう、だ、だから点けないでって言ったのに!」
見るとアリスの顔はやつれていた。いや、それだけなら普通に心配そうにするだけで済むのだが、さらに額に肉と書かれていた。しかも油性マジックで。
「ぷっ、くく、腹筋を破壊する程度の能力、あーはははは!!」
「うるさい!」
アリスは顔を真っ赤に染めていた。黒のマジックで書かれていた為先程は見えなかったが、ベットに運ばれて行くのを拒絶したのも見られるのを恐れていたのだろう。
「と、とにかく、くくくっ、な、何があったのか、ぷっ、き、聞かせ、あはははは!」
「笑うのを止めなさいよ!!」
そしてアリスはベットに横たわり、魔理沙は椅子に座り、プルプルと振るえながら、アリスに起こった一連の出来事の話を聞く事にした。
「今日この手紙が届いたんだけど・・・何も知らないならこれは読まない方が良いわね」
「なんだ?その紙は・・・いや、いい」
アリスがチラつかせた紙に少し興味を持ったが、何かとてつもなく嫌な予感がしたのですんでの所でその紙を見るのを止めた。
実は作戦実行直前に三人はこんな事を計画していた。
「ええ、大丈夫のはずよ。でもまあ一応実験は必要ね」
そう言うとパチュリーは紙とペンを取り出した。そしておもむろに何かを書き始めた。
「これをアリスに送りつけてやるわ」
「へえ、これ何ですか?」
小悪魔が見た紙にはこう書かれていた。
アリスへ
今日魔理沙が図書館にやって来たので思い切って告白したら、
なんとOKされました。ちなみに今は二人でベットの上に居ます。
私達は今とても愛し合っています。私が積極的になればざっと
こんなものです。それでは余生を独り寂しく生きて下さい。
パチュリーより
「よくもまあ、ここまでの嘘を平然と」
小悪魔は突っ込む気力も無いのだろう。ただただ、呆れるだけだった。この人はもう駄目だな、そんな考えと共に、それだけ言う。
「これでアリスを誘いだす。それをあなたが撃退。完璧よ」
「判った!」
「それじゃあ、作戦37-AZ5スタートよ」
と言う事があったのだ。そして、自分の瞳に目いっぱいの怒りを込め紅魔館に向かったアリスは“何故か”チルノにより撃退されてしまったのだ。その一切の内容を魔理沙には話して居ないが魔理沙に額のこと以外でどうにも解せない事があった。
「ところで、なんでやつれているんだ」
「どうだって良いじゃない」
魔理沙はアリスの顔を見ないまま質問をする。それに対しアリスは答えになって居ない返事をするのだ。痺れを切らした魔理沙はアリスに言う。
「あーっ!しょうがねえ!アリス、お前をそんなのにさせたの何処に居るんだ!私もそいつと戦ってくる!」
「え・・・・」
その言葉にアリスは驚いてしまう。そして何故か顔を赤らめる。
「さあ何処だ!言え!」
「あ、あっちの・・・」
「紅魔館の方か、よし!それじゃあ行ってくるぜ」
「うん・・・」
こうして魔理沙は目にも止まらぬ速度で飛んでいった。後に残るのはペタリと座り込むアリスだけだった。
アリスには先程の声がこう聞こえていた。
(アリス、お前に落書きをした奴は何処のどいつだ!私が変わりにぶっ飛ばして来てやる!)
「魔理沙が・・・私の敵討ちを」
乙女の勘違いと飢えた巫女程恐ろしい物は無いのである。
魔理沙は紅魔湖周辺にいた。飛び出してきた時よりも今は割とゆっくりと飛んでいる。
「ここは紅魔湖か、まさかチルノがアリスを倒したって事は無いよな!」
ヘラヘラと笑いながら飛んでいると目の前に小さな誰かがやって来た。
「そのまさかよ!今日こそはあんたを」
「ますた~すp」
「甘いわよ!」
普段ならここでぴゃーー!とチルノが叫んでお終いなのだが今日のチルノはいつもと違った。
「なに!?」
チルノが魔理沙にも劣らない速度で目の前にやって来た。どうやら今回はやられる前にやってやれ、と言う事らしい。単純な作戦だが効果は十分にあったようだ。突然目の前に迫られた魔理沙は一瞬動きを止めてしまう。そこをチルノは見逃さなかった。
「氷符!!」
「アイシクルフォールか!」
我に戻った魔理沙は氷符と叫んだ時点で魔理沙はどんな攻撃が来るかを予測出来ていた。アイシクルフォールは目の前にいれば当たらない。だがチルノは自ら目の前にやって来た。先程の作戦はチルノにしては見事だったが自分から寄って来ては意味が無い。
「残念♪氷符 『フロストペイン』!!」
「な!?なんだそもが!!」
チルノが符と何故か皿を取り出すと、とことん細かく砕かれた氷が皿の上に盛られていく。さらに何やら血の様に真っ赤な液体をその氷の山の上に掛かっていく。それを思い切り魔理沙の口に放り込んだ。普段遠距離戦のチルノに突然何かで至近距離で攻撃してきた事にも驚き、意表を突かれた魔理沙はそれを喰らってしまう。
「ふ、ふざけるな!」
「ふざけてなんか無いわよ、フフン」
魔理沙がチルノに叫ぶ。しかしチルノは得意げに笑っている。それが何を表すのかはすぐに判る事になった。
「何を・・・うあっ!」
ズキーッ!と頭を握りつぶされる感覚に襲われる魔理沙。その赤い液体が毒だったのか判らないが魔理沙は頭を抱え苦しそうに悶える。これがパチュリーの考えた接近戦用スペルカードだ。
「ふふん!この程度終わると思わない事ね!!」
「な!?は、放せ!くあっ!」
チルノが後ろから羽交い絞めにする。その勢いで箒も落としてしまった。普段なら妖精の力などたかが知れているが頭が痛み力が出ない。そしてチルノは妖しく笑うとスペルカードを取り出し、呟いた。
「氷像 『ガール・オブ・フリージング』」
「冷た!!・・・え?」
突然刺すような冷たさに襲われた魔理沙は自分の体を見てみた。するとどんどん凍り始めているでは無いか。
「う、うわーー!!」
「ふふ、先にやって来た人形使いはお腹だけに留めてあげたけど、あんたは容赦しないから。あたいが今までどんな思いでマスタースパークを喰らってきたか、丸ごときっちり思い知らせてあげる」
もう下半身は完全に凍ってしまっていた。焦りがピークに達した魔理沙はひたすら暴れ続ける。今の姿を霊夢が見たら何て言うだろうか。だが今はそんな事関係ない、とにかく暴れるしか出来ないのだ。
「ふふ♪チェックメイト」
「や・・・めろ」
チルノは勝ちを確信した。頭を残し完全に凍ってしまった魔理沙は信じられないと言う表情でチルノを見つめる。
「ばいばい、魔理沙」
「あ・・・」
羽交い絞めしていた手を離す。すると魔理沙は凍りついた状態で湖へと落下してしまった。
「う・・・あ?」
魔理沙は気が付いた時には紅魔湖の近くにいた。誰かが救ってくれたのだろうか。そう思いつつも何気なく湖の底を覗き込むと、とんでもない物を見てしまった。
「な、なんだこりゃーーーー!!!!」
額に⑨と書かれていたのだ。アリスと同様に油性マジックで。慌てて洗い流そうとするが落ちない。
「くそーー、」
仕方なく魔理沙は湖に浮かんでいる帽子を隣に落ちていた箒で取りに行くと帽子をすごく深く被り飛び立った。これが後に妖精達の間で長く長~く伝わった『氷精の初勝利伝説』の正体である。この伝説は妖精達にとても大きな希望と勇気を与えたそうな。
Epilogue
シャクシャクと言う音が響き渡る紅魔館の門前。美鈴は門番隊の一人(以降門番)とある物を食べていた。
「冷たくて美味しいですね」
「そうね~、でも一気に食べると、うっ・・・来た!」
「ああ、辛いですよねそれ・・・ん?」
美鈴は頭を抑えている。すると空から一枚の紙が落ちてきた。何だろうと思った門番はそれを手の持った。その紙は文々。新聞の号外だった。
「何々?今日魔法の森に・・・」
門番がそれを読む。美鈴は復活したのかまたシャクシャクとかき氷を食べる。ちなみに紙面にはこう書かれていた。
『霧雨魔理沙の額の謎』
今日魔法の森に住む魔法使い、霧雨魔理沙が紅魔湖に浮かんでいるのを発見した。私はそれ救うべく魔理沙の元へ向かうと彼女の額に油性マジックで⑨と書かれているのを発見した。私はこれを“霧雨魔理沙は氷精のチルノに負けた”ものと推測する。そんな馬鹿な、と私も思ったのだが自分から書くとも思えないのでこの結論に辿り着いた。以後、何か他にも判り次第紙面にて報告しようと思う。
『魔法の森の店主の筋肉』
今日香霖堂の店主のバストが筋肉の量も手伝いCカップを・・・・・・・・
新聞には額に⑨と書かれた魔理沙の写真と筋肉隆々の霖之助の写真が貼ってあった。
「・・・・・・・」
「くあ!また来た!・・・ん?どうしたの?あなたも来たの?」
門番はプルプルと震えている。美鈴はその様子を不思議そうに見つめている。
「ぷっ、あははは!」
「え!?何なの!?」
此処は永遠亭。今日はどうにも忙しそうだ。
「師匠!患者が多すぎて処置が間に合いません!!」
「落ち着きなさいうどんげ!姫やてゐにも手伝って貰いなさい!」
「駄目です!二人とも行動不能です!!」
「何で!?」
永遠亭が腹筋の肉離れ患者で溢れかえったそうな。めでたしめでたし。
レジェンドの間違いでは?
>だがチルノは自ら目の前にやって来た。先程の作戦はチルノにしては見事だったが自分から寄って来ては意味が無い。
「目の前にいれば当たらない」の間違いですか?でないと意味が分からないので。
とりあえず漫才部分吹きました。チルノ怖いよチルノ。
4の名前が無い程度の能力様、さっそく修正させて頂きました。チルノの豹変を受け入れて貰えた様で嬉しいです。
チルノは伝説となった
誤字か新しい単位かが分らないけど一応