冥界は白玉楼。二百由旬あるといわれている、広大な屋敷。
ここの庭の管理をするのが、庭師としての魂魄妖夢の主な仕事である。
とはいっても、一日で庭の全てを見回ることは、物理的に無理であるから、
庭を1日で見ることができる広さに区切り、順番に見回る。
また、掃除や砂利の手入れは、その辺の暇をしている幽霊達が勝手にやってくれるので、
妖夢は幽霊達への指示と木々の剪定のみ行えばよいのである。
ある晴れた日、昼も少し過ぎた頃、妖夢は仕事を終わり、縁側に座った。
「ふう、今日の分はこれで終わりね。
…それにしてもいい天気。
…ふわぁ」
ぽかぽかの陽気。
とても気持ちよかったのか、妖夢はあくびをひとつして、そばにあった柱に寄りかかった。
そして、そのまま目をつむり
「…すぅ」
かわいい寝息をたて、夢の中へ。
「妖夢ー? よーむー?
どこいったのかしら?いつもなら呼んだらすぐに…。
あ、妖夢、そこにいたの?いるなら返事をって、あら?あらあら?
ふふふ。この子ったら…」
「…ん」
ふと、妖夢は目を開けた。
「…あれ?」
どうやら、眠っていたらしい。それはいいのだが、視界が90°傾いている。
それに、気持ちのいい温かさとにおいに包まれている。
「あら、起きたの?」
「ふえ?」
声のした方に顔を向けると、幽々子の笑顔があった。
「あれぇ?幽々子様?」
「ええ、そうよ」
なんで幽々子様の顔がこんなところに?あれ、頭に感じる柔らかさは、もしかして?
寝起きだった妖夢の頭が覚醒していき、それにより、現在の状況の答えが出る。
あ!え!?私、幽々子様に膝枕してもらっている?と。
そして。
「ええええ!?ゆっ、幽々子様!?どうして!?」
「妖夢、いきなり大きな声を出さないの。びっくりするでしょ?」
全然びっくりしているようには思えない様子で、幽々子が言う。
「え、でも、幽々子様が!?なんで!?」
「妖夢。落ち着きなさい。はい、深呼吸。
吸ってー、吐いてー」
混乱しつつも、妖夢は素直に幽々子に従い、深呼吸する。
「スーーー、ハーーー」
「吸ってー、吐いてー」
「スーーー、ハーーー」
「吸ってー、吸ってー、吸ってー」
「スーーー、スーーー、スーーー」
「吸ってー、吸ってー、吸ってー」
「スーーー?スーーー!?スッ!?ゴホッ!?ゴホッ!!
ゆ、幽々子様!?吸ってばかりじゃ苦しいですよ!!」
一頻りむせ、妖夢は幽々子に抗議する。
「クスクスクス、妖夢ったら。
でも、落ち着いたでしょ?」
「あ、はい…。ありがとうございます。
…すみません、幽々子様」
「あら、どうして謝ってるのかしら?」
「え?いや、役目の途中で居眠りなんて…。それに、幽々子様に、ひ、膝枕を…」
しゅんとしながら妖夢は答える。幽々子はその様子に微笑みながら言う。
「いやいや、妖夢。あなたはとてもできた子よ」
「え?」
よくわからない。きょとんとする妖夢を尻目に、さらに言葉を続ける。
「あなたは眠っていても、私を満足させてくれたのよ?とてもいい子じゃない」
「はうぅ…」
頭をなでられながら伝えられた言葉に、妖夢は顔を赤くする。
そして思う。やはり幽々子様には勝てない。いろんな意味で。
ふと、閃いた。こんな機会は滅多にない。幽々子様を驚かそう。
「で、では、幽々子様!お願いがあります!」
「あら?珍しいわね。妖夢がお願い事なんて。何かしら?」
「も、もう少し、膝枕、していてくれませんか?」
思ってもいなかったことだろうか。予想通り幽々子は驚いた顔をしていた。
そして、笑顔になり。
「クスクス。いいわよ。いい子の妖夢にご褒美ね」
頭をなでられながら、妖夢は再び夢の中に旅立つのであった。
「ほんとにかわいい子ね。そう思わない?紫?」
「あら、やっぱりわかってた?」
「付き合い長いじゃない。私たち」
「そうね。
…やっぱり、寝ている子はかわいいわね。意地悪したくなっちゃう」
「紫、ちょっと機嫌悪い?」
「ええ、幽々子の膝枕を取られたんですもの。機嫌も悪くなるわ」
「あらあら、拗ねないの。今度、してあげるから」
「…約束よ」
「はいはい」
幽々子が妖夢の頭をなで、紫が妖夢のほっぺをつつき、白玉楼の午後は過ぎていった。
やると思ったw いただきますは予想できなかったけどw
のんびりとした風景が簡単に想像できました
こういった雰囲気好きです
某ゆゆ様絵師のあの絵ですね。わかります
ラマーズ法じゃなくてそう来たかw
いい冥界組でもう顔がにやけっぱなし